資料市懇第1-2号
最近の原子力を巡る情勢について
平成13年9月20日


平成11年 5月 原子力委員会が「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(以下、長期計画)」の策定を決定
「長期計画策定会議」を設置
   
平成12年 8月~10月 長期計画(案)についての意見募集を実施
(意見応募者:773名、意見総数:1,190件)

「ご意見をきく会」開催(東京都、青森市及び福井市)
   
11月 原子力委員会が長期計画を決定
閣議に報告
   
平成13年 1月 6日 原子力委員会が内閣府に移行
23日 原子力委員会が「21世紀の原子力委員会の発足に当たって」を表明 【別添資料1】
   
_______5月15日~16日
  IEA(国際エネルギー機関)閣僚理事会最終コミュニケ (原子力が各国の燃料ミックスの選択肢として明記された。
原子力という表現が盛り込まれたのは8年ぶり。) 【別添資料2】
   
17日 米国ブッシュ政権 国家エネルギー政策(National Energy
  (多様なエネルギー源の供給拡大を重視し、原子力を積極的に位 置付けた。) 【別添資料3】
   
18日 フィンランド 使用済核燃料地下処分場(オルキルオト地区)の建設を国会で可決 【別添資料4】
   
27日 新潟県刈羽郡刈羽村が「柏崎刈羽原子力発電所におけるプルサーマル計画の受け入れの是非に関する住民投票」を実施
・有権者数4,090人
・投票総数3,605人(投票率88%)
・賛成1,533人、反対1,925人、保留131人 無効16
   
6月 5日 栗田福井県知事及び河瀬敦賀市長が高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい対策等に係る工事計画に関する安全審査入りを了承
  栗田福井県知事が藤家原子力委員会委員長に「高速増殖原型炉もんじゅの安全性等にかかる要請について」を提出 【別添資料5】
  原子力委員会が「国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について」を決定 【別添資料6】
   
11日 ドイツ 連邦政府と電力事業者との原子力コンセンサス合意書の最終署名 【別添資料7】
(なお、9月5日、これを法制化する原子力法改正法案が閣議で決定された。)
(合意の主な内容は、①原子力発電所の運転期間制限(基本的に32年間)、②バックエンド対策の実施等)
   
15日 平山新潟県知事、西川柏崎市長及び品田刈羽村長が平沼経済産業大臣に「プルサーマル計画をめぐる最近の地元動向から見た原子力政策の今後の在り方について」を提出 【別添資料8】
   
25日 英国 エネルギー政策の検討開始
  (温室効果ガスの長期的削減と今後のエネルギー需要の増大への対応方策検討のため、エネルギー政策の検討に着手。原子力も検討対象の一つ。)
   
8月 8日 「プルサーマル連絡協議会」において、中間的な取りまとめについて審議・公表



21世紀の原子力委員会の発足に当たって
 
平成13年1月23日
原子力委員会
 
 21世紀を迎え、またこの度の中央省庁等改革により、原子力委員会が内閣府に移行するに当たり、所信の一端を申し述べたいと思います。
 
(原子力委員会の位置付け)
 原子力委員会は、昭和31年に、原子力の研究、開発及び利用、即ち「原子力利用」に関する行政の民主的運営を図るために設置されました。委員会は、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法により、原子力利用に関することについて企画し、審議し、及び決定することとされています。これまで40年以上にわたって、「原子力研究開発利用長期計画」の策定を始めとして、さまざまな活動を行ってきましたが、ここであらためて、21世紀の原子力委員会がどのような役割を果たすべきかについて、初心に立ち返ることが必要であると考えております。
 
(原子力を巡る現在の情勢及び今後の展望)
 まず最初に銘記すべきことは、20世紀最後の数年に起こった事故や不祥事により、国民の間に、原子力に対する不安や不信が高まったことです。しかしながら、他方で、地球温暖化問題に対してぎりぎりの対応が求められている中で、エネルギーの安定供給と二酸化炭素の排出量の削減の二つの側面から、現時点では、引き続き、核燃料サイクルの確立を図りつつ原子力発電を基幹電源として最大限に活用することが不可欠です。また、放射線利用の理解と普及が国民生活の向上に貢献することや、原子力科学技術の研究開発が、人類の知的フロンティアの開拓や我が国の新産業の創出に貢献することも忘れることはできません。これらのことは、実にさまざまな立場の方々のご意見を伺って昨年策定した「原子力研究開発利用長期計画」に述べられています。
 これからの原子力委員会の役割を考えるに当たっては、まず、この「長期計画」を誠実に、また積極的に具体化し、着実に進めていくことが第一歩であると考えております。
 
(21世紀の原子力委員会のあり方)
 原子力委員会がこのような役割を果たしていくためには、委員会そのもののあり方についても再検討する必要があります。新たな世紀を迎えるとともに中央省庁等改革が行われるというこの機会に、原子力委員会のあり方を考えることは不可欠です。
 昨年の「長期計画」の議論を始めとするいろいろな場で、異なった立場からさまざまな意見や期待、批判が寄せられました。その中には、国民からより信頼される原子力委員会を求める声もあれば、関係省庁から独立して等距離に位置する委員会を望む声もありました。また、原子力政策の決定過程へ国民が積極的に参加することや政策決定後の評価も、強く求められています。
 今後、委員会の具体的な組織や活動の内容について早急に検討を進めていきますが、いずれにしても、原子力委員会は、柔軟かつ機動的な組織として、国民の皆さんや各地域の方々と常に接し、さまざまな意見を十分に反映していく努力をしてまいります。そして行動に当たっては、常に自己評価していくつもりです。
 
 新しい原子力委員会が具体的に行動していくに当たり、我々原子力委員は、あらためて、民主主義が発達した国では、いかなる政策も国民や社会の理解と協力なしには進められないことを肝に銘じています。また、国際社会に対しても、我が国の原子力平和利用の大原則が十分に理解され、その協力が得られるよう努力を重ねていきます。
 
 原子力委員会は、原子力に関するどんなことについてでも、国内外を問わず、「いつでも、どこでも、だれとでも」対話することを心がけていきます。
 
 以上述べた考え方のもとで、新しい原子力委員会は、21世紀における我が国の発展に必要な原子力の円滑な利用ができるよう、より広い視野に立って、主体的かつ積極的に努力していきたいと考えております。













フィンランドにおける使用済燃料の最終処分場について

平成13年8月

 2001年5月、フィンランド国会は、同国にある原子力発電所から生じた使用済核燃料の最終処分場計画作業を継続することを可能とする決定を圧倒的多数で承認した。背景及び今後の展望は以下の通り。

  1. 国際的背景
     フィンランドに所在するロビーサ原子力発電所とオルキルオト原子力発電所から生じた使用済核燃料は、96年までロシアのマヤク処理場に運搬されていた。しかし、ロシア側が使用済核燃料運搬時の安全性向上を要求してきたことや、国際社会により、ロシアが右使用済核燃料から核兵器を製造しているのではないかとの疑念をもたれたことにより、フィンランドは、原子力法を改正し97年から使用済燃料を国内にて処分することにした。
  2. 国内的背景
     放射能原子力安全センター(STUK)は、環境アセスメント等の科学的・技術的側面から処分方法の検討及び最適地選定を行った結果、2001年1月にポシヴァ社提案による処分場の建設・運営方法について問題なしとし、使用済核燃料の処分場候補地であるオルキルオト地区を所轄するエウラヨキ市議会も賛成20、反対7で処分地建設を承認した。
     エウラヨキ市議会が使用済核燃料の処分場建設を承認した理由としては、ポシヴァ社が住民に処分場が危険でないことを時間をかけてよく説明し、住民がこれを納得したことや、処分場の完成予定が約20年後であること、ポシヴァ社が本社のエウラヨキ市への移転を決定し、住民に誠意を示したことがあると思われる。また、エウラヨキ市にポシヴァ社よりの税収が増え、住民には職場が増えることも処分場建設承認の理由の一つであると思われる。
  3. 今後の展望
     今後の使用済核燃料処分場については、事業主体であるポシヴァ社が提出する施設の安全性等についての検討書を政府が審査した上で、政府が2010年頃までに建設許可を与え、2020年頃までに施設の営業許可を与える予定。
     ただし、今回は当国国会による使用済核燃料処分場の承認であり、実際の処分場の建設許可及び営業許可は内閣により別途決定される必要がある。また、本件につき当国は政治決定を下したという意味で他国よりも先行したが、技術的に先行しているわけではなく、今後技術的な問題が立ちはだかる可能性が全くない訳ではないと思われる。

(出典):外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/jijyo/finland.html










国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について

平成13年6月5日

原子力委員会決定

  1.  核融合は、将来のエネルギー供給に有望な選択肢を付与し得るもので、開発に長期間を要する高度な科学技術であり、基礎・基盤研究との均衡ある発展を図りつつ研究開発を効率的かつ着実に進めてきております。

    具体的には、我が国における核融合の研究開発は、平成4年5月に定めた「第三段階核融合研究開発基本計画」(以下、「基本計画」という。)に基づき、総合的に推進しています。

  1. 当委員会は、これまで累次にわたり、核融合会議からITER計画の推進について報告を受けてきました。また、本年5月18日には、ITER計画懇談会(以下「懇談会」という。)より、今後の我が国のITER計画への取り組みに関する検討結果の報告を受けました。

    ITERは、基本計画の目標に合致したトカマク型の実験炉です。技術的な側面においては、これまで核融合会議より報告されてきた検討結果から、設定された技術目標を満たし得るものです。

    これに加え、懇談会では、各界各層の有識者で構成された専門委員により、ITER計画の進め方について、将来のエネルギー供給や国際貢献をはじめ社会的、経済的側面を含めた幅広い調査審議を行い、さらに報告書のとりまとめにあたっては、報告書案に対し、国民の方々から広く意見を募集しました。

  1.  当委員会としては、人類の直面するエネルギー制約、その中での核融合エネルギーの意義、そしてITER計画の実現可能性等の技術的側面と、我が国の国際的役割や国家的アイデンティ、我が国社会の倫理性・公共的意識等の社会的側面とを勘案し、核融合会議及び懇談会におけるITERへの取り組みに関する検討の結果を適切なものであると判断し、今後、核融合研究開発を総合的に推進していく中で、ITER計画については、懇談会の報告書を尊重して推進していくことが適当と結論しました。

     同時に、当委員会としては、懇談会が、「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した。」としていることを踏まえつつ、ITERの我が国への誘致を念頭において、当面、

    (1) 「サイト選定調査」を行い、我が国にサイトとなり得るところがあるかどうかを見極めること、

    (2) 他極の状況の把握に努めるとともに、ITER計画が我が国の利益を最大化するものとなるよう他極と協議を行うこと、

    が必要と考えます。これらの経過及び結果を注意深く見守り、財源や人材の確保など懇談会報告に示された今後検討すべき事項についての関係者の検討結果や検討状況も勘案して、その上で、必要な判断を行うこととします。

  1.  当委員会としては、今後とも、基本計画に基づき、ITER計画に積極的に取り組みつつ、バランスのとれた総合的な核融合研究開発を推進していきます。

     その際、ITER計画をはじめとする核融合研究開発の意義、進捗状況について、節目ごとに評価し、その結果を公表するとともに、安全面も含めた情報の提供を行うなど、十分な国民理解が得られるよう、透明性の高い継続的な努力を行うことが重要であると認識しています。関係者の一層の努力を求めるとともに、当委員会自らも積極的に取り組んでまいりたいと考えます。