第3回原子力試験研究検討会議事録

 


第3回 原子力試験研究検討会議事録

1. 日 時:平成13年7月6日(金)13:00〜14:30
2. 場 所:原子力委員会会議室(物産ビル別館8階)
3. 出席者
原子力委員会:藤家洋一委員長、遠藤哲也委員長代理、竹内哲夫委員
検討会: 岩田修一座長(東大)、阿部勝憲委員(東北大)、井上弘一委員(埼玉大)
小柳義夫委員(東大)、北村正晴委員(東北大)、小泉英明委員(日立製作所)
澤田義博委員(名大)、嶋 昭紘委員(東大)、三宅千枝委員(大工大)
村田 紀委員((財)放射線影響協会)
内閣府:青山 伸参事官(原子力担当)
文科省:工藤敏夫量子放射線研究課長

4. 議 題
(1) 原子力試験研究に係わる研究課題の事前及び中間評価について
(2) その他
5. 配布資料
資料3-1:原子力試験研究検討会委員名簿
資料3-2:原子力試験研究検討会(第2回)議事録(案)
資料3-3:原子力試験研究の事前及び事後評価
資料3-4:研究開発専門部会の設置について

6. 議事内容
(1)開会挨拶
青山参事官による開会の辞、原子力委員会の今後の体制(資料第3-4号)についての概略説明の後、到着の遅れている岩田座長の代役として、藤家原子力委員会委員長が臨時で座長を務める旨が提案され了承された。配布資料の確認については省略された。前回議事録の確認については、不備があれば後ほどご指摘を賜ることで了承された。

(2)原子力試験研究の事前・中間評価報告

 2-1.生体・環境影響基盤技術WG

嶋委員(生体・環境基盤技術WG主査)より、資料第3-3号および第3-3-1号に基づき、生体・環境影響基盤技術WGにおける事前・中間評価結果の報告が行われた。また、一部課題で認められる研究終了年度における高額の設備要求は、研究計画の立案上不自然で、やや問題があるとの指摘が嶋委員よりなされた。質疑は以下の通り。
(遠藤)中間評価でCとなった場合はどのような措置がとられるのか。
(嶋)今回、中間評価でCとなった課題の成果が全くないというわけではない。しかし、今後研究費を引き続き投入しても研究進捗の見通しが難しい、あるいは研究の継続が理論的に無理と明らかに判断される場合、中止もやむを得ないと考える。勿論、過去に投入した研究費を無駄にしないための何らかの方策も考えねばならないが。
(藤家)将来展望がないものについては中止でも仕方がない。
(嶋)原子力試験研究でありながら内容が放射線に全く関係しないというのも問題。そのような課題では過去に事前評価が実施されていなかった。そのような課題が原子力試験研究として無理に続けていくことは、研究者にとっても時間の無駄になると考える。
(藤家)一度予算をつければ最後までやらせるというのでは、中間評価の意味がない。評価というのが如何に難しいかは、私も実感している。

 2-2.防災・安全基盤技術WG
澤田委員(防災・安全基盤技術WG主査)より、資料第3-3-4号に基づき、防災・安全基盤技術WGにおける事前・中間評価結果の報告が行われた。質疑は以下の通り。
(嶋)Cのついた「中86」(地下水汚染対策のための水中放射能探査手法の確立と短絡的な地下水流動系の解析技術の開発:(独)農業工学研究所)の課題は、事前評価が行われていたか。
(澤田)行われていなかった。原子力とも関係のない課題だった。
(藤家)このような課題に対してWGとして指導はないのか。
(澤田)このような地下水の問題が、原子力の必要とする環境問題まで適用可能なら問題ないとの意見もあったが、当初からそのような意図はないとのことだった。それならばここで終了し研究計画を練り直してはということになった。原子力に利用できるということになればよかった。こうした課題を除外するというのではないが、原子力というものを考えて欲しかった。
(藤家)「中87」(同時多発火災リスク評価手法の研究:(独)海上技術安全研究所)の課題について。原子力施設は不燃性・難燃性等相当気をつけて設計しているはず。それとこれはどう関係するか。
(澤田)一般的には、原子力プラントでこのようなことはあり得ないが、(可能性が)ゼロかどうかということは何とも言えない。今までも若干の火災事故が無かったわけではない。これもある種の仮定のシナリオでやらざるを得ない。今までこのようなことはやっていないので、やってみる価値はあるかとも思う。
(藤家)今まで、火災の例として、チェルノブイリの事故や米国ブラウンズフェリー原子力発電所におけるロウソクの火の引火によるケーブル火災以外、このような事故は無かったし、これほどプラントワイドで何をやるのかという気がした。
(澤田)このような研究は、原子力関係機関と連携をとりながらやっていかねばならない。
(竹内)「新82」(高選択制分離膜による放射性廃液処理と放射性廃棄物エミッションの低減化:(独)産業技術総合研究所)の課題について。これまでの波及効果はなかったか。
(澤田)自分は専門でないが、将来あると思う。このように膜で分離するのは、ある意味単純で扱い易く、効率がよい。
(竹内)このような研究は、機器開発につながるし、工業所有権の発生という成果にすぐ関係すると思う。
(遠藤)なぜ事前評価が無かった課題があるのか。それが問題ではないか。
(澤田)過去の経緯にかかわらず、少なくともここでもう一度作り直して頂くということで評価している。
(北村)「新84」(地殻変動モデルの開発:(独)産業技術総合研究所)の課題。合意プロセスの話というのはデリケートな話を含む。安全業界の世界で、基礎データがないとき専門家との意見交換で決めるということは、一つの方法論として確立されている分野もある。議論はあったと思うが、Cまで判断してしまうのは厳しいのではないか。
(澤田)中身についてもう少し具体的な議論の余地があった。また、大事な課題とは思うが緊急性は低く、もう一度考えて次回にご提案頂けないかということになった。
(北村)合意形成モデルをつくるということと地殻変動モデルの開発とは大分距離があり、タイトル自体も大きすぎるというのはその通りだと思う。

 2-3.物質・材料基盤技術WG
阿部委員(物質・材料基盤技術WG主査)より、資料第3-3-2号に基づき、物質・材料基盤技術WGにおける事前・中間評価結果の報告が行われた。質疑は以下の通り。(ここより、岩田座長に交代)
(藤家)クロスオーバー研究全体としての評価は別に行なっているのか。
(事務局)行っていない。交流委員会主査よりクロスオーバー課題全体の概略をご説明頂いた後、各機関ごとに個別研究として評価を実施した。
(藤家)全体としての評価は行われないのか。
(事務局)全体としてはないが、評価チェックシートにクロスオーバー性についての項目があり、そこで評価して頂いている。
(岩田)「中66」(高速電子励起による材料構造変化に関する研究:(独)産業技術総合研究所)の課題については、マンパワー不足の見込みは事前には分からなかったのか。なぜそうなったのか。
(阿部)事情は担当者にも確認したが、(研究者数が年々減少するという)数字は変わらないということであり、現在の計画に対してはこのように判断せざるを得なかった。クロスオーバーは機関として参画する研究であり、その機関から少ないマンパワーでも実施する、あるいはどの部分を分担するという積極的な再提案があれば、その時に考慮されてもよい。
(藤家)どれか1つの機関が欠ける場合、クロスオーバー研究全体としてはどうなるのか。
(阿部)このテーマは、アト秒パルスレーザー光の開発とその利用に関するものであるが、(後者を担当する当該サブテーマでは)そのような短いパルスで初めて物性が測れるのものが対象とされておらず、内容に関する再考も必要と思われた。
(岩田)当初のクロスオーバー研究では、研究者の層を拡充することが重視されたと思うが、マンパワーがなくなるということは、クロスオーバー研究の趣旨も外れてきている感がある。そうした現実の把握も必要ではないか。
(小柳)クロスオーバーは護送船団だという考えは成り立たない。
(小泉)「中65」(アト秒パルスレーザーの発生と計測に関する研究:理化学研究所)の課題については、総合評価はAだが、総合所見ではクロスオーバーに言及されていない。その点はどうか。
(阿部)次の段階では、是非積極的に中身を再構築して欲しいというのがWG全員の意見。
(小泉)個別評価は高いが、全体の中では縦割り的で、クロスオーバー性はまだ無いということか。
(阿部)ここでは、テーマ全体としての評価はさておき、あくまで個別の内容での評価を示している。

 2-4.知的基盤技術WG
小柳委員(知的基盤技術WG主査)より、資料第3-3-3号に基づき、知的基盤技術WGにおける事前・中間評価結果の報告が行われた。質疑は以下の通り。
(竹内)国土交通省(独)海上技術安全研究所と原子力分野との関係は。
(藤家)ここは旧船舶技術研究所であり、原子力船「むつ」など、舶用炉の研究の流れからの実績がある。
(北村)クロスオーバー研究推進WGとして、この先、クロスオーバー研究の進め方をどのように考えればよいか、クロスオーバー研究と個別研究をどのように区分けすればよいかについてもご議論願いたい。
(岩田)「中77」(マルチスケールモデリングによる物質・材料挙動の研究:日本原子力研究所)の課題については、一組織で全てをカバーするのは難しい問題ながら、原子力分野で30年以上やっていた話が、マルチスケールというキーワードのもとに形としてうまくまとまりつつある。原子力分野からの発信ということで、クロスオーバーの良い宣伝材料だし、インターナショナルに連携を拡大することもできる。高い評価が得られたことは、クロスオーバー研究にとって喜ばしい。
(小柳)国内外の機関との交流もあり、閉じていないという意味では高く評価している。
(北村)本来、「中80」(高密度マルチスケール計算技術の研究:(独)産業技術総合研究所)の研究が基盤で、その上に「中77」のような技術がのっているという話のはず。
(小柳)そういう研究も試験的には行なっている。
(嶋)そもそも、クロスオーバー研究の成立する要件は何か。例えば、「前5」(電子線照射生鮮食品の検知に関する研究:国立医薬品食品衛生研究所)と「前22」(低エネルギー電子ビーム利用による臭化メチルくん蒸代替食品貯蔵害虫防除技術の開発:(独)食品総合研究所)はいずれも食品照射に電子線を使うという研究。特に後者は、オゾン層破壊の指摘される臭化エチル殺虫法の代替技術を2005年までに探索するもので国家的課題ともいえる。両者が補完し合えばより望ましいとのWGの意見であった。各機関ごとにばらばらに行われることは、ある意味国益に反する。事前評価の段階で、そのような研究を統合・集約することも必要ではないか。このような場合はクロスオーバーにはならないか。
(藤家)クロスオーバーの枠組の一つに、異分野間の交流というのがある。例えば、生物の分野である染色体異常の研究に物理の測定手法を取り入れるなど。加速器による癌治療も異分野間の交流としてクロスオーバー研究の一例。その後、ロボットや計算機など明確に異分野と言えないものも含まれてきた。異分野間の交流では、お互いの良いところを探さなければだめ。そういう意味では、少しクロスオーバー研究もマンネリになってきたとの感はある。先生方のご意見を伺いながら将来の事は考えさせて頂きたい。
(村田)クロスオーバーで一つ穴があいてしまうのは大変ではないか。
(北村)各プロジェクトの中身が各組織で並列になっている緩いクロスオーバーとタイトカップリングのクロスオーバーがあると思う。後者の場合はどこかが抜けると大変。緩い枠組みでもそれなりに面白い発展もあったと思う。クロスオーバーはこうだとあまりたがをはめるのも、逆に自立性を損なう心配がある。現状ではB評価でも最後にA評価であれば良いとの考えでも当面良いと思う。
(岩田)プロジェクト的な研究では、やり易いように大きなグループをつくること、他方、少人数でじっくりやる研究では、補完・刺激しあうことが必要。将来の原子力を支える可能性を持つ研究を出来る限り奨励するため、制度本来の目的と現時点での枠組みは常に検討し直さなければならない。中間評価の内容を受けて次の制度の検討が進められるべき。事前評価でそういう意見が出たとしたら中間評価のときに一緒になって良い研究が出来るようなチームを作ったらという提案をしても良いと思う。

事務局より、今回の中間評価で事前評価を受けていなかった課題が存在する理由について、本年度より4分野に再編された原子力試験研究の区分が従前は細分化されており、旧区分で先端的基盤研究および総合的研究に該当する課題以外については、昨年度または一昨年度より事前評価が導入されるようになったため、本年度の中間評価では事前評価を実施していなかった時期に採択された課題が一部含まれることが説明された。

岩田座長より、本結果の原子力委員会への報告後、事務局により予算査定がなされる旨が伝えられた。

(8)今後のスケジュールについて
事務局より、事後評価の実施およびクロスオーバー研究推進WGの開催に関する今後の予定が説明された。また、次回(第4回)検討会の日程が平成14年3月中旬で調整されることが伝えられた。

(9)その他
嶋委員より、原子力試験研究費により実施された成果が誌上発表される場合、その旨を謝辞に記載させること、またその日本語および英語表記を定めることが提案され了承された。

以上