高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第3回)議事要旨

  1. 日 時
  2. 平成8年8月27日(火)13:00−15:00

  3. 場 所
  4. 各省庁共用826会議室(通商産業省別館8階)

  5. 出席者
  6. (原子力委員)
    伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員、依田委員
    (専門委員)
    近藤座長、荒木委員、石橋委員、加藤委員、川上委員、木元委員、
    熊谷委員、小林委員、近藤(俊)委員、鈴木委員、竹本委員、
    中村委員、野口委員、林委員、深海委員、松田委員、南委員
    (説明員)
    増田  動力炉・核燃料開発事業団環境技術推進本部部長、
    木佐木 高レベル事業推進準備会事務局長、
    根本  株式会社アイ・イー・エー・ジャパン
        エネルギー・環境研究部部長
    (科学技術庁)
    興官房審議官(原子力局担当)、有本廃棄物政策課長
    (通商産業省)
    伊沢資源エネルギー庁原子力産業課長

  7. 議 題
  8. (1)高レベル放射性廃棄物処分に係る諸外国の技術的事例
    (2)高レベル放射性廃棄物処分に係る諸外国の制度的事例

  9. 配布資料
  10. 資料(懇)3-1 高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第2回)議事要旨
    資料(懇)3-2 高レベル放射性廃棄物処分に係わる海外の動向(技術的観点)
    資料(懇)3-3 高レベル放射性廃棄物処分に係わる海外の動向(制度的観点)
    参考(懇)3-1 高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第1、2回)における主な意見

    参照資料
    高レベル放射性廃棄物処分への取組について
    (平成7年9月12日、原子力委員会決定)
    高レベル放射性廃棄物処分懇談会の設置について
    (平成7年9月12日、原子力委員会決定)
    原子力バックエンド対策専門部会の設置について
    (平成7年9月12日、原子力委員会決定)
    高レベル放射性廃棄物処分事業に関する検討「中間とりまとめ(平成7年度)」〔基礎的検討〕
    (平成8年5月、高レベル事業推進準備会)
    原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画
    (平成6年6月24日、原子力委員会)
    高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の重点課題と進め方
    (平成元年12月19日、放射性廃棄物対策専門部会)
    高レベル放射性廃棄物対策について
    (平成4年8月28日、放射性廃棄物対策専門部会)
    高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の進捗状況について
    (平成5年7月20日、放射性廃棄物対策専門部会)

  11. 議事概要
  12. (1)近藤座長より開会宣言及び、大石博委員の後任として委員に就任した近藤俊幸委員(動力炉・核燃料開発事業団理事長)の紹介が行われた。また、本日出席の説明者の紹介が行われ、引き続き事務局より配布資料の確認が行われた。

    (2)資料(懇)3-1に基づき、事務局より、7月17日に開催された高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第2回)の審議の概要について説明があった。

    (3)事務局より、参考(懇)3-1に基づき、これまで懇談会において出された委員の意見が整理され、紹介された。
    議題(1)及び(2)について、資料(懇)3-2及び3-3に基づき事務局より、高レベル放射性廃棄物処分に係る諸外国の技術的事例と制度的事例について説明があった。

    (4)以上を踏まえて、以下のとおり意見交換が行われた。

    • 国民的理解の促進について
      1. 広報プログラムが成功したスウェーデンの事例や、広報プログラムの方法を変更した経緯のあるスイスの現況等について調査することは重要であるとの意見があった。

        これに対し説明員より、スイスでは技術報告書を中心とした広報プログラムを1991年に変更したこと、及びスウェーデンにおいては1982年から1989年に亘り広報プログラムを実施し、その終了に際して実施した意識調査において、国民の半数が処分場受け入れに賛成するという結果を得ているとの説明があった。

        このような意識調査に関し、調査対象者の職業や年齢等の情報を含め、より詳細に分析することが不可欠との意見があった。

      2. また、同国のオスカーシャムにある地下研究施設では、多くの見学者を受け入れるとともに大学教官等がボランティアで船舶等を利用した広報活動を20年間続けており、処分に対する理解の促進に貢献しているとの説明があった。加えて同国では、「安心」は社会的な、また、「安全」は技術的な問題として区別して認識されており、処分は受け入れざる得ないものとして、肯定的に捉えられていること、更には、研究所を立地することによりもたらされる「専門知識」、「文化」、「世界とのコミュニケーション」をキーワードとして、地域に定着しているとの説明があった。

      3. 我が国においても、実際の地下研究施設を広く国民に開放することにより、地層処分に関する知識を広めることが、国民の理解の促進に効果的であるとの意見があった。

    • 実施主体と立地地域における社会的受容性について
      1. 広報活動が成功裡に進められたスウェーデンにおいては、実施主体が私企業であるという事実を受け、実施主体については、国や公企業が中心的な役割を果たすのみならず、多角的な観点から検討されるべきとの意見があった。また、地域振興方策等については、各国における、立地方策やその成り立ち、仕組み等について、事例を参照に十分分析すべきとの意見があった。

      2. 社会的受容を得ていく上で、周辺住民が長期に原子力施設に慣れ親しみ、安全性を体感して行くことは大切である。スウェーデンのオスカーシャムの地下研究施設の周辺地域においては、同じ地域にある原子力発電施設の長年の運転実績が、住民の同研究施設及び処分に対する受容の形成に寄与したのではないかとの意見があった。

      3. 高レベル放射性廃棄物ガラス固化体や使用済燃料について、実物を見ることによりその性質と安全性をより効果的に実感することができることから、我が国においても、現在貯蔵されている実物や施設の見学などを通して、住民や国民の理解を得ることが、大変重要ではないかとの意見があった。

      4. 安心など心理的側面に関する広報については、それを行う人物や態度、喋り方は重要な要素であり、また、同じ内容を説明する場合でも数字等の表現ぶりを若干違えることによって理解に大きな差が出ることもあるため、受け手の理解と納得の観点を重視して対応すべきであるとの意見があった。

      5. 電気事業者は私企業であるため、原子力施設等の立地活動において、地元に対する信頼性に乏しいのではないかと考えられる。このため、処分場の立地活動においては、国も中心的な役割を果たすことが望まれるとの意見があった。一方、米軍演習場の移転問題等から見ても、立地問題は必ずしも、公的私的観点から割り切れるものではないとの意見があった。

    • 地層処分研究について
      1. 動力炉・核燃料開発事業団が釜石鉱山跡で行っている研究について説明が求められ、説明員より、当該地区において事業団は地層処分研究の基盤となる地下水や岩盤等の研究を行っており、その研究の成果や状況は行政や報道等を通して住民に知らされているとの説明があった。

      2. 地層処分の研究開発は、全国的に広がる国公有地等を活用することで推進出来るのではないかとの意見があった。一方で、高レベル放射性廃棄物の問題が国民に十分認識されていないことに加え、研究施設が最終処分場に結びついてくるのではないかという地域住民の不安が、研究でさえ受け入れ難いという考え方に通じるのではないかとの意見があった。

      3. 研究には、放射性物質を用いる段階とそうでない段階などがあるから、これらのプロセスを明確にすることで、地元の理解を得て進めるべきではないかとの意見があった。これに関して、説明員より、地上の研究施設での研究と、地下水、地下物質の状態等のデータを直接現場で取る地下研究を併行して進めているとの説明があった。

      4. 研究施設が最終処分に繋がるのではないかという不安は、処分実施の体制作りが遅れていることから生じるものである。従って、早急に実施主体、資金の確保等について具体化することが必要との意見があった。

    • 原子力情報の扱いについて
      1. 国民は、テレビから情報を得た後に新聞により理解を深める場合が圧倒的に多い。この様にして得た情報を選択、分析する多面的な情報収集能力を身に付けることが必要。また、明らかに間違った情報、記事に対して指摘することが必要との意見があった。

      2. 一般に記者は、取材を通して確信を得たことを記事に書くという姿勢があるため、専門家が自信を持った態度で取材を受けることが重要であるとの意見があった。

      3. DNAの解析研究の事例では、当初、研究そのものを危険視する風潮が強かったが、研究当事者と解説記者が何度も話し合いを重ねた結果、互いに議論のレベルが高まったという実績があり、このことは本件についても参考になるのではないかとの意見があった。

    • その他
    •  
      1. スウェーデンでは、現在、廃棄物関連の料金として1キロワットアワー当たり2オーレ(約35銭)が支払われており、原子力発電開始期から積み上げた費用が、所要の研究等に充てられているとの説明があった。

      2. 使用済燃料を再処理しない方針をとりながら既に高レベル放射性廃液を保有する国、軍事用の高レベル放射性廃液を保有する国等、各国様々な状況を抱えており、これらの状況を背景とした各国の処分に関する方針、制度等の違いには十分留意すべきとの意見があった。

    (5)座長より、第4回懇談会においては、今後の審議の方向性等について、自由討論を行うこととしたいとの提案がなされ、委員により了承され、10月18日(金)13:00−15:00に開催することとし、閉会した。
以  上  

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