平成8年6月
                    廃棄物政策課

原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第1回)議事要旨について

原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第1回)の議事要旨は、下記により公開されております。

(本件に関する問い合わせ先)

科学技術庁原子力局廃棄物政策課
担当:福本、生駒

〒100 東京都千代田区霞ヶ関2−2−1

TEL:03−3581−5690

FAX:03−3581−1338


高レベル放射性廃棄物処分懇談会(第1回)議事要旨

  1. 日 時
  2.     平成8年5月8日(水)10:30−12:30

  3. 場 所
  4.     KKR HOTEL TOKYO 丹頂の間 (11階)

  5. 出席者
  6.  (原子力委員)
    中川委員長、伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員、依田委員
     (専門委員)
    荒木委員、粟屋委員、石橋委員、大石委員、加藤委員、茅委員、
    川上委員、木元委員、近藤委員、佐和委員、塩野委員、
    鈴木委員、竹本委員、中村委員、野口委員、林委員、深海委員、
    松田委員、南委員、森嶌委員
     (科学技術庁)
    岡崎原子力局長、興審議官、泉核燃料課長、
    川上原子力バックエンド推進室長
     (通商産業省)
    並木資源エネルギー庁審議官、伊沢原子力産業課長

  7. 議 題
    1. 高レベル放射性廃棄物処分懇談会の設置について
    2. 座長の互選について
    3. 今後の審議、検討について
    4. その他

  8. 配布資料
  9. 資料(懇)1−1 高レベル放射性廃棄物処分への取組について
    資料(懇)1−2 高レベル放射性廃棄物処分懇談会の設置について
    資料(懇)1−3 高レベル放射性廃棄物処分懇談会構成員の決定について
    資料(懇)1−4 高レベル放射性廃棄物処分懇談会の運営について(案)
    資料(懇)1−5 高レベル放射性廃棄物について
    資料(懇)1−6 原子力開発利用説明資料
             −もっと知りたい、もっと考えたい原子力のこと−
    参考(懇)1−1 原子力バックエンド対策専門部会の審議状況について
    参考(懇)1−2 原子力委員会関係法令・規程

    参照資料

    ○原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画
    (平成6年6月 原子力委員会)
    ○高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の重点項目と進め方
    (平成元年12月 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
    ○高レベル放射性廃棄物対策について
    (平成4年8月 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)
    ○高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の進捗状況について
    (平成5年7月 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会)

  10. 概 要
    1. 事務局(科学技術庁)より開会宣言が行われ、引き続き配布資料の確認が行われた。

    2. 資料(懇)1−1〜1−3に基づき、事務局より、本懇談会の設置に至る経緯等の説明が行われ、加えて各委員の紹介が行われた。

    3. 中川原子力委員長より開会の挨拶が行われた。

    4. 議題(2)について、近藤委員が座長に選任され、座長就任の挨拶が行われた。

    5. 議題(3)について、資料(懇)1−4に基づき、近藤座長から懇談会の運営について提案がなされ、事務局による補足説明と合わせ、以下の内容について、委員により異議なく了承された。
      • 懇談会について当面、処分問題の背景等の理解を目的として審議を進める。
      • 審議の透明性を高めるため、発言者の氏名は付さないが議事の展開の概要が わかる議事要旨を作成し、科学技術庁内公開資料室やインターネット等を通して公表する。また、資料の公開等、情報の公開に努めるが、審議そのものは公開しない。
      • 必要に応じて特定のテーマを対象とした非公式の特別会合を開催。また、構成員以外の者の意見を聴取するための機会、海外調査等による海外関係者との情報交換の場等を設ける。
      これらに加え、座長指名により森嶌委員が座長代理に就任した。
      また、資料(懇)1−5に基づき、事務局より高レベル放射性廃棄物及びその処分、我が国の処分の概要、各国の状況等について説明が行われた。

    6. 以上を踏まえ、以下のとおり意見交換が行われた。

      ○処分施設の概念

      • 地震による影響が懸念されるとの意見に対し、事務局より、地殻変動の激しくない地域を選定することが技術的に可能である見通しが得られており、また地層中では地表よりも地震による揺れが少ないことから、安全性の確保は可能であるとの説明があった。
      • 検討にあたって施設が必要とする空間の大きさをイメージすることは重要であるとの意見があったところ、技術的には、仮に年間1000本発生した場合の40年間の発生量に相当する廃棄物ガラス固化体約4万本に対し約2キロメートル四方の施設が想定されるが、大きさが問題となるのは一般廃棄物の処分施設においても同様であるとの意見があった。
      • 各国が計画する処分場の岩石・深度が様々であることについての問いに対し、対象とする岩石が異なるのは各国の事情や判断によるものであり、技術的には選択し得る岩石の幅は比較的広く、処分深度については、岩石の力学的性質等を考慮して決定されているとの説明があった。
      • 処分後の施設については、実施主体による管理・関与が望まれ、各国の実施主体の業務内容については、より詳しく調査しておくことが必要との意見があった。

      ○処分に対する国民的理解

      • 再処理の有無にかかわらず原子力発電により高レベル放射性廃棄物の発生は避けられず、また、現に存在していることから、処分問題は避けては通れないことを本懇談会の意見に盛り込む等により、国民の理解を得ることが重要との意見があった。
      • 施設の操業等による環境影響評価の説明等を行うことにより、国民の理解を得つつ進めている各国の例(計画段階から情報を公開している米国等)を参考とし、日本においても、住民参加、国民参加の観点に立って進めることが必要であるとの意見に対し、事務局より、今後国民の理解を得ていく上で、どのような手続きが必要となるのかは重要であり、本懇談会における議論が期待されるとの意見があった
      • 処分場の閉鎖後の監視を行うことにより万一の事態への対応が可能となる地層処分の特質を的確に示すことにより、国民の理解が得られやすいのではないかとの意見があった。
      • 過疎地や財政的に苦しい地域等に経済的な効果を付加して処分場を作るというのでなく、生活感のある意見を入れる、原子力による恩恵を受けている地域に処分するといった観点から検討を始める等発想の転換を図るべきとの意見があった。

      ○審議検討の在り方

      • 将来処分事業に直接関わってくる今の若い世代の人達が議論に参加するべき、との意見があり、各国の委員会構成員の年齢構成、背景を纏めることは参考になるとの意見があった。

      ○国外処分について

      • 放射性廃棄物の国外での処分あるいは国際共同処分についての議論では、事務局より、放射性廃棄物の国家間移動や国際共同処分を禁止する取り決めはないものの、各国とも自国内で処分を行う計画であり、国際原子力機関における国家間移動の実施規則の策定や放射性廃棄物管理安全条約での検討等、これらを規制する枠組みが検討されているとの説明があり、これに関連し、委員より、国際世論として廃棄物の自国内処分主義が強くなる傾向があること、欧州ではオランダが共同処分場の設置を提起するという動きがある等の意見があった。

      ○処分研究開発の状況

      • 処分技術の確立にあたって深部地下の調査研究が重要であるが、各国で実施されているこのような調査が日本では出来ていないという特殊性を認識すべきであるとの意見が出た。また、深部地下の調査は研究開発の側で行うのは負担が重すぎ、実施主体の本格的事業の一貫として取り組むべくその設立が早急に図られるべきとの意見があった。
        これに対して、事務局より、日本の地層が堆積岩と結晶質岩に大別され、動燃事業団により調査研究が進められてきており、前者については幌延で実施されることが計画されており、後者については瑞浪において昨年末に県と市の了解を得て深地層の研究を展開していくこととしているとの説明があった。

      ○処分政策の経緯について

      • 処分政策の経緯について以下のとおり意見があった。 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会においては、「高レベル放射性廃棄物処理処分に関する研究の推進について」(昭和55年)で、2015年頃に試験的処分を行うこととしまた処分に向けた5段階の研究開発の手順が示された。次に、「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」(昭和59年)では、第1段階の「有効な地層」の選定を行うことを目的に進められてきた調査・研究が所要の成果をあげたとの評価がなされ、また、第5段階が第4段階にまとめられており、2000年頃の処分技術の実証を目途に行うこととされた。これら処分政策の重要な変更がなされても、理由が不明確であるとともに、国民に充分に示されておらず、昭和62年及び平成6年の原子力開発利用長期計画では、更に記述が変わり、抽象的になっている。
      • 以上のことから、国がこれまで国民の意見を政策に反映する努力をしてきたか省察すべきであり、処分政策と研究開発が現にある段階等について率直に国民に知らせる努力が必要である。また、原子力船「むつ」が、社会的受容性の困難からも計画の変更を余儀なくされ、当時行われた議論により原子力安全委員会が設立されたことは、我々にも重要な示唆を与える。

    7. 以上の意見を受け、伊原原子力委員長代理より、これまでの原子力委員会はそれなりに努力してきているが、結果として日本においての処分に係る検討が遅れていることは事実であり、国民の合意を得ることについて、これまでの発想を変えて姿勢を正して臨んで行きたいとの発言がなされた。

    8. さらに近藤座長により、懇談会としては、この廃棄物問題に国民の代表として参加して検討をするとの理解であり、今後も各委員の闊達な議論が行われることを期待していると、審議を締め括られた。

    9. 次回を7月17日(水)午後、第3回を8月27日(火)午後に開催することとし、閉会した。

    高レベル放射性廃棄物処分懇談会構成員

     荒木 浩    電気事業連合会会長
     粟屋 容子   理化学研究所主任研究員
     石川 嘉延   原子力発電関係団体協議会会長(静岡県知事)
     石橋 忠雄   弁護士
     大石 博    動力炉・核燃料開発事業団理事長
     加藤 尚武   京都大学教授(文学部)
     茅  陽一   慶応義塾大学教授(工学部)
     川上 幸一   神奈川大学名誉教授
     木村 尚三郎  東京大学名誉教授
     木元 教子   評論家
     熊谷 信昭   大阪大学名誉教授
             (原子力バックエンド対策専門部会長)
     小林 庄一郎  関西電力(株)取締役会長
    ○近藤 次郎   元日本学術会議会長
     佐和 隆光   京都大学経済研究所所長
     塩野 宏    成蹊大学教授(法学部)
     鈴木 篤之   東京大学教授(工学部)
     竹本 成徳   日本生活協同組合連合会会長理事
     中村 政雄   前読売新聞論説委員
     野口 敞也   日本労働組合総連合会総合政策局長
     林  政義   高レベル事業推進準備会会長
     深海 博明   慶應義塾大学教授(経済学部)
     松田 美夜子  生活評論家(廃棄物問題とリサイクル)
     南  和子   評論家
     森  一久   (社)日本原子力産業会議専務理事
     森嶌 昭夫   上智大学教授(法学部)
                   (平成8年4月時点)

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