資料(懇)14-7

所 感
−高レベル放射性廃棄物処分懇談会の意見のとりまとめを終えて−



電気は私たちの生活を支えています
 高度の文明社会は大量のエネルギー消費の上に成り立っています。特に電気は夜を昼のように明るく照らし、人間の活動を24時間可能にしました。電気は電線さえあれば遠くへ輸送することができ、スイッチ一つで子供でも安全に利用できます。冷暖房はもちろん、エレベータや新幹線などの輸送にも使われています。また、高度な医療や豊かな食生活のためにも電気が必要です。さらにラジオ、テレビなどのほか、ファックスやパソコンなどにも利用され、通信・情報の分野でも不可欠になってきています。もし停電が起こるとその地域では大きな混乱が起きます。そこで国では人々の生活を保障し、それを向上させるため電力の確保に努めてきました。

地球温暖化が心配されています
 二酸化炭素(炭酸ガス)が大気中にたまると、地球の熱のバランスが変化し、気候が変化します。このことが世界中の科学者や政策決定者に深刻に受けとられ、昨年12月の地球温暖化防止のための京都会議では長い議論の結果、やっと議定書がまとまりました。電気は発電機によってつくられますが、それをまわすには水力、火力、原子力のような動力が必要です。最近では太陽光や風力などの新エネルギーも注目され始めました。火力と原子力では熱で蒸気をつくり、それで風車のように回転羽根をまわして発電機を回転させます。火力発電では石炭、石油、天然ガスを燃やしますが、そのとき炭酸ガスが出ます。地球温暖化防止への国際的な約束を守っていくためには、石油や石炭による発電だけでなく、省エネルギーの推進や新エネルギーの可能性を追求するとともに原子力発電に頼らざるを得ないでしょう。

原子力発電では放射性廃棄物の処分が課題です
 原子力は、精製したウラン燃料を核分裂させて熱エネルギーを取り出すものです。これは炭素に酸素を化合させて発熱させる通常の火力発電とは原理が根本的に違うので、炭酸ガスは発生しません。ウラン原子核の分裂が瞬間的に起こると膨大なエネルギーが放出されます。そこで核分裂をゆっくりと進め、いつでも止めることができるようにした状態で徐々にエネルギーを取り出すことに人類が初めて成功したのは1942年12月のことで、これは1945年8月の広島、長崎への原子爆弾の投下より前のことです。原子力で発電する研究は戦争で中断されていましたが、1951年12月にアメリカで最初に実現しました。わが国では1957年8月に日本原子力研究所の原子炉で成功しました。
 さて原子力発電では燃料の燃えカスはごく少なく最初はほとんど問題はありませんでした。しかし長い間原子炉を利用し数が増えてくると多くの燃えカスがたまり、その中には強い放射能をもち半減期の長い廃棄物が発生します。これが高レベル放射性廃棄物です。これを溶けたガラスと混ぜて安定化し、自然に放射能が失われるまで数千年は安全に隔離しておかねばなりません。

 わが国は石炭、石油、天然ガス、ウランなどの資源に恵まれていません。海外から原料を輸入して利用しています。わが国の電気の中で純国産といえる水力発電を除いてほかのすべては外国産のエネルギーでまかなっています。しかし1970年代に経験したように石油や天然ガスの価格が高騰したり、国際情勢の変化で石油やウラン鉱石の輸入ができなくなったりするとたちまち電力供給に大きな影響が現われます。現在は石油価格がオイルショックのときの半分以下にまで下がっていて安定的に電気が供給されているので危機感が薄いのですが、常に国際情勢に注意を払い、いろんな燃料を上手に利用するというのが基本の政策です。わが国の原子力発電は、茨城県東海村で始まってから30年以上たっており、人間にとって一世代を過ぎました。現在では、電力のうち平均すると30%が原子力による電気であり、大都市圏では40%になっています。これによって生じた高レベルの廃棄物はガラス固化体に換算してすでに1万2千本になっており、原子力発電を今の規模でつづけたとしても将来的には5万本以上の廃棄物を処分する必要があります。

地下深くに埋設して住民と共生する方法があります
 高レベル放射性廃棄物処分懇談会は平成8年5月に第1回を開いて以来、今日まで2年議論を深めてきました。報告書の案が出たのは昨年の7月です。電気は日本国民の全ての人がこれを利用しています。その廃棄物の処分は国民の理解と信頼がなければ進めることはできません。そこで半年間国民の方々から意見を求めるとともに、東京をふくめて全国6ヵ所で市民との意見交換会を開き、その中でいろいろな意見が出されました。現在のところ原子力発電の先進国ではすべて廃棄物を地下深くに埋設処分するという方針です。そこでわが国でもこの方式を中心に考えました。また、廃棄物を減量したり有効に利用するという観点も重要です。深い地下であってもこのような廃棄物を喜んで受け入れてくれる住民がなかなかいないのはむしろ当然です。そこで懇談会は、最終処分の条件や方法、事業を進めるにあたっての制度や体制、処分地の決定手順などを具体的にまとめ、処分を安全に円滑に進めるために、関係者の一体となった取り組みを求めました。

 この報告書は、懇談会の委員のみならず、意見交換会の参加者や意見応募者をあわせると千人をこえる方々の熱意の賜物であり、これらの多くの方々に深く感謝します。この課題は大変難しいものですが、それだからといって問題を先送りすることは許されません。いろいろな意見を出し合い、これからの技術の進歩や社会の変化に柔軟に対応することも大切です。この報告がさらに多くの国民の方々の関心を引き、この困難な課題の解決に向かって可能な限りその意思が政策に反映されるようさらに議論の輪が広がり、国会などで審議されることを希望しています。

場所を選んで施設を建設し安全に埋設を始めるには30年もかかります今、取り組んでいるのはこのためです