文化的生活をするには電気が必要です
高度の文明社会は大量のエネルギー消費の上に成り立っている。特に電気は夜を昼のように明るく照らし、人間の活動を24時間可能にした。電気は電線さえあれば遠くへ輸送することができ、スイッチ一つで子供でも安全に利用できる。冷暖房は勿論、エレベータ、新幹線など輸送にも使われている。さらにラジオ、テレビなどの他、ファックスやパソコンなどにも利用され、通信・情報の分野でも不可欠の要素になってきている。もし停電が起こるとその地域では大きな混乱が起こる。そこで国では人々の生活を保障し、それを向上させるため電力の確保に努めてきた。
石油や石炭を燃やす発電では地球温暖化が心配です
電気は発電機によって造られるが、それをまわすには水力、火力、原子力のような動力が必要である。火力と原子力では熱で蒸気を造り、それで風車のように回転羽根をまわして発電機を回転する。火力発電では石炭、石油、天然ガスが燃やされるが、そのとき二酸化炭素(炭酸ガス)が大量に出る。これが大気中に溜まると、地球の熱のバランスが変化し、気候が変化する。このことが科学者や政策決定者に深刻に受けとられ、昨年12月の京都会議では長い議論の結果、やっと11日に議定書が纏まった。
原子力発電では放射性廃棄物の処分が課題です
一方、原子力は精製したウラン燃料を核分裂させて熱エネルギーを採り出すものである。これは炭素に酸素を化合させて発熱させる通常の火力発電とは原理が根本的に違うので解かり難いが、炭酸ガスは発生しない。ウラン原子核の分裂が瞬間的に起こると膨大なエネルギーが放出される。これが核爆発である。そこで核分裂をゆっくりと進め、何時でも停めることができるようにした状態で徐々にエネルギーを取り出すことにフェルミが成功したのは1942年12月2日のことで、これは1945年8月の広島、長崎への原子爆弾の投下より前のことである。原子力で発電する研究は戦争で中断されていたが、1951年12月29日に米国で最初に実現した。我が国では1957年8月27日に日本原子力研究所の原子炉で成功した。
さて原子力発電では燃料の燃えカスは極く少量で最初は殆ど問題ではなかった。しかし長い間原子炉を利用しつづけると燃えカスが溜まり、その中には強い放射能を持ち半減期の長い廃棄物が発生する。これが高レベル放射性廃棄物である。それは溶けたガラスと混ぜて安定化し、自然に放射性が失われるまで数千年は安全に隔離しておかねばならない。
我が国では石炭、石油、天然ガスなどの資源はなく、またウラン鉱山もない。海外から原料を輸入して、利用している。我が国の電気の中で純国産といえる水力発電を除いて他の全ては外国産のエネルギーでまかなっている。しかし1970年代に経験したように石油価格が高騰したり、国際情勢の変化でウラン鉱石の輸入ができなくなったりするとたちまち電力供給に大きな影響が現れる。そこで常に国際情勢に注意を払いつつ、各種の燃料を上手に利用するというのが基本の政策である。現在は石油価格がオイルショックのときの半分以下にまで下がっているので危機感が薄いが、それでも原子力による電気は平均にして30%、大都市では40%も使用している。日本の原子力発電は既に30年以上運転され、人間にとって一世代を過ぎた。これによって生じた高レベルの廃棄物はガラス固化体に換算して既に1万2千本になり、今後も処理を必要とするものがあるので、たとえ原子力発電を今の規模で続けたとしても将来的には5万本以上の高レベル廃棄物を処分する必要がある。
地下深くに埋設して住民と共生する方法があります
高レベル放射性廃棄物処分懇談会は平成8年5月に第1回を開いて以来、今日まで約2年議論を深めてきた。報告書の案が出たのは昨年の7月である。電気は日本国民の全ての人がこれを利用している。その廃棄物の処理は国民の支持がなければ進める事はできない。そこで東京を含めて全国6ヵ所で市民との対話集会を開いた。いろいろな意見が出たが、現在のところ原子力発電の先進国ではすべて高レベル廃棄物を地下深くに埋設処分するという方針である。そこで我が国でもこの方式を中心に考えた。また、廃棄物の減量や有効利用という観点も重要である。深い地下であってもこの様な廃棄物を喜んで受け入れてくれる住民がなかなかいないのはむしろ当然である。そこで懇談会は、最終処分の条件や方法、事業を進めるにあたっての制度や体制、処分地の決定手順などをまとめ、処分を安全かつ円滑に進めるために、関係者の一体となった具体的取り組みを求めた。
この問題は極めて難しいが、それだからといって問題を先送りすることは許されない。この最終報告は、懇談会の委員のみならず、対話集会の参加者や意見応募者、あわせると千人を超える方々の熱意の賜物である。これらの多くの方々に感謝するとともに、この最終報告が国民の各位の関心を引き、この困難な問題の解決に向かって可能な限りその意思が政策に反映するよう更に議論が深まり、国会などで審議されることを希望している。
場所を選んで施設を建設し安全に埋設を始めるには30年もかかります 急いでいるのはこのためです