わが国における地下研究施設



 わが国における深部地質環境の科学的研究を行うための地下研究施設については、以下の方針で整備することとなっています

原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書
「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」
(平成9年4月15日)

第2部 第2次取りまとめにあたっての技術的重点課題

第3章 深部地質環境の科学的研究の重点課題
4.深部地質環境の科学的研究を進めるための主要施設

 深部地質環境の科学的研究を行う研究施設は、わが国における地下深部についての学術的研究に寄与できる開かれた研究の場として整備し、広く内外から研究者の参画を得て総合的に研究を進めていくことが重要である。また、これらの施設から得られるデータは、深部地質環境条件として重要な特性の正確な把握や、地層処分システムの性能評価モデルの信頼性向上など、地層処分研究開発の基盤としても活用できるものである。これらの施設については、わが国の地質の特性等を考慮して複数の設置が望まれており、このため代表的な地質として堆積岩計及び結晶質岩系の双方を対象に、表層から地下深部までの岩石や地下水に関する包括的なデータの取得に努めるとともに、地球科学の各分野における学術的研究によって蓄積された関連情報についても広く収集・整理し、その活用を図っていくことが重要である。
 このため、具体的には、東濃鉱山とその周辺における堆積岩やウラン鉱床を対象とした研究及び釜石鉱山における結晶質岩を対象とした研究を推進するとともに、動燃事業団が新たに瑞浪市に計画している、深度1000メートル程度までの結晶質岩を主体とした地下深部の研究施設を積極的に活用していく。また、堆積岩を対象とした科学的研究を推進するため、動燃事業団が北海道幌延町に計画している貯蔵工学センター内に予定されている深地層試験場についても、地元及び北海道の協力を得つつ同計画の推進を図ることにより、その活用を目指していく。
 また、海外の施設についても、積極的に研究の場として活用することが重要である。

原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(平成6年6月24日)

 深地層の研究施設は、深地層の環境条件として考慮されるべき特性等の正確な把握や地層処分を行うシステムの性能を評価するモデルの信頼性向上等地層処分研究に共通の研究基盤となる施設であり、我が国における深地層についての学術的研究にも寄与できる総合的な研究の場として整備していくことが重要です。また、このような施設は、我が国の地質の特性等を考慮して複数の設置が望まれます。さらに深地層の研究施設の計画は、研究開発の成果、特に深部地質環境の科学的研究の成果を基盤として進めることが重要であり、その計画は処分場の計画とは明確に区別して進めていきます。
 動力炉・核燃料開発事業団が北海道幌延町で計画している貯蔵工学センターについては、地元及び北海道の理解と協力を得てその推進を図っていきます。



原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書
「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」(抜粋)


 平成9年4月15日、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会は、報告書「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」をとりまとめました。
 本報告書は、関係研究機関が2000年までに、地層処分の技術的信頼性を明示し、処分予定地の選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所を提示する、いわゆる第2次とりまとめに当たっての研究開発等の進め方について、基本的考え方、技術的重点課題を示したものです。
 以下は、報告書からその内容について概説した部分を抜粋したものです。

第1部 基本的考え方


第1章 概説

 高レベル放射性廃棄物は、当初は放射能が高く発熱量も高い状態にあるが、30〜50年で埋設可能な発熱量となり、含まれる大部分の放射性物質の放射能は数百年の間に急速に減少する。一方、一部の放射性物質は放射能は低いものの寿命が長いため、長期にわたって放射能が存在する。
 地層処分は、このような特徴を有する高レベル放射性廃棄物をガラス固化体という安定な形態とし、人の生活圏から離れた深地層中にそれを安全に埋設することによって、人間環境に有意な影響を及ぼさないようにする措置である。
 深部の地質環境は、一般に地表近くの環境に比べ極めて長期の地質学的時間にわたり安定であると考えられている。したがって、処分場として適切な地点を選べば、放射能レベルが高い期間や、その後の期間においても、埋設された廃棄物が人間環境に有意な影響を及ぼさないようにすることができると考えられる。この際、深地層に存在すると想定される地下水の中に放射性物質が溶出する可能性について考慮しておくことが重要であり、このために多重の防護系(多重バリアシステム)を設けるのが基本的な考え方である。この考え方は高レベル放射性廃棄物の地層処分を検討している各国に共通のものである。
 本専門部会は、動燃事業団が関係研究機関の協力を得て2000年前までに公表することとしている第2次取りまとめに向けて、基本となる技術的考え方と第2次取りまとめに盛り込まれる事項及び第2次取りまとめに向けて実施すべき技術的重点課題について以下のとおり審議した。
 まず、地層処分の技術的信頼性に深く関わる地質環境の長期安定性について、とくに変動帯に位置するわが国の地質学的条件を念頭に、地層処分による安全確保に関連する時間スケールについて審議した。次に、地層処分システムの長期間にわたる安全性を解析評価するにあたり、その方法論、とくに時間の経過に対応させた評価と安全指標をどのように考えるべきかを審議した。
 さらに、処分場の管理について技術的な観点から審議するとともに、処分事業を進める上での処分予定地の選定や安全基準の策定などに際して技術的拠り所とするために第2次取りまとめに盛り込むべき技術的事項について審議した。また、第2次取りまとめが広く国民に理解され信頼を得るために考慮すべき研究開発の透明性や評価のあり方についても審議した。
 最後に、第2次取りまとめにあたっての技術的重点課題を具体的に審議した。これについては本報告の第2部にまとめて示した。
 以下に本報告の概要を示す。

1.地質環境の長期安定性
 わが国は変動帯に位置しているが、天然現象の中で、地震・断層活動、火山・火成活動などの急激な現象については、これまで長期にわたり限られた地域で起こっており、活動及び活動範囲の移動は規則的に推移しているため、その影響を受けない地域の地下深部に処分施設を設置することが可能と考えられる。また隆起・沈降・侵食、気候・海水準変動などの緩慢・広域的現象については、その変化の規則性が過去の地質学的記録から類推できるため、長期にわたりこれらの影響や範囲を推定することが可能と考えられる。このような考え方に基づき、天然現象が地層処分システムへ及ぼす可能性のある影響の性質やその範囲に関する知見を得るための研究の進め方について示した。

2.地層処分システムの安全評価
 第1に、地層処分システムの安全評価にあたって、高レベル放射性廃棄物による人間環境への放射線の影響について、地下水を介して人間に影響が及ぶ場合と、将来の人間活動あるいは天然現象により人間と高レベル放射性廃棄物との物理的距離が接近する場合の2つを考えておくことが必要であることを示した。
 第2に、地層処分システムの安全評価を行う際の時間スケールについて、人間環境の長期的な変化、地質環境の長期安定性及び放射線源としての高レベル放射性廃棄物の特性の観点から検討し、第2次取りまとめにおいては、地層処分システムの安全評価として時間スケールを限ることなく放射線量の評価を行うことが適切であることを示した。
 第3に、安全評価の指標として、放射線量を基本とし、それに対応した線量基準としては諸外国の例を参考とすべきことを示した。また、遠い将来については天然の放射線レベルに有意な影響のないことを確認するための補完的評価指標についても検討すべきであることを示した。

3.処分場の管理
 処分場の地質環境と地層処分システムの状態を監視し安全性を確認するため、建設から閉鎖までの各段階に取得すべき情報、計測方法、所要の措置などの処分場の管理に係る技術的検討を行うべきことを示した。

4.処分予定地の選定と安全基準の策定に資する技術的拠り所
 予定される処分事業に第2次取りまとめの成果を適切に反映し事業の安全かつ円滑な推進に資することが重要であり、とくに、処分予定地の選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所について、第2次取りまとめに盛り込まれるべき項目を整理して示した。

5.第2次取りまとめに対する透明性の確保と評価の考え方
 第2次取りまとめに向けた今後の研究開発の推進にあたって、国民の理解と信頼を得つつその推進を図るために、研究開発の進捗に応じて成果を積極的に公表するとともに国際的なレビューを受けるべきことを指摘し、第2次取りまとめに対する国による評価のあり方を示した。

6.第2次取りまとめにあたっての技術的重点課題
 第2次取りまとめの成果が、わが国における地層処分の技術的信頼性を示すとともに、その後の研究開発及び処分事業の推進に適確に反映されるため、地層処分研究開発及びその基盤となる深部地質環境の科学的研究について個別目標と重点課題を具体的に示した。
 また、動燃事業団を中核として関係研究機関が適切な役割分担と協力の下に、2000年の第2次取りまとめに向けた協力を一層強化すべく「研究調整委員会」(仮称)を発足させることとし、総力を挙げて研究開発を加速して進める必要があることを強調した。
また、海外との緊密な研究協力、研究成果の平易で積極的な公表、研究施設の充実、人材の養成などの必要性についても指摘した。


第2章 地質環境の長期安定性

1.日本の地質環境の特性
 日本は、安定大陸に比し、地震・断層活動及び火山・火成活動の頻度が高く、いわゆる変動帯に位置している。天然現象の中には、地震・断層活動や火山・火成活動のように急激かつ局所的な現象と、隆起・沈降・侵食及び気候・海水準変動のように緩慢かつ広域的な現象があり、それぞれ地下深部の地質環境に影響を及ぼしている。前者については、場所によっては地質環境への影響は大きいものの、大きな変形を伴うような影響を及ぼす地域は比較的狭い範囲に限定されており、また過去数十万年の時間スケールでみれば、これらの現象が規則的に起こっていることから、今後十万年程度であれば、その規則性及び継続性からそれらの影響範囲を推論することができると考えられる。他方、後者は、地下水系などに広い範囲で影響を及ぼすが、緩慢かつ広域的であるから、過去数十万年程度について、広域にわたる比較的精確な地質学的な記録が残されている。それらの記録を基に、将来についても十万年程度であれば、その及ぼす影響の性質や大きさ、また影響範囲の移動や拡大の速度などを推測することができると考えられる。
 このような天然現象の長期的変化に関する調査研究を進めることにより、急激な現象については、その直接的な影響が及ぶことのない、地層処分にとって安定な地質環境が存在し得ることを示し、緩慢な現象については、それによって生ずる処分施設への直接的及び間接的影響を評価し、必要に応じて適切な技術的対策を講じ得ることを示すことができると考えられる。
 したがって、第2次取りまとめに向けては、地下深部環境へのこれらの天然現象の影響の程度とその範囲について事例研究を進め、変動帯に位置する日本においても地層処分にとって十分に安定な地質環境が存在し得ることを明らかにすることが肝要である。
 なお、地層処分の観点からは、天然現象そのものを予測するというよりは、その影響が及ぶ範囲について十分な裕度を見込んで推論しておくことが重要であり、その推論の結果と地層処分の安全性の評価との関連を十分に検討し、とくに留意しておくことが必要な現象を見極めておくことが肝要である。




原子力バックエンド対策専門部会報告書案
「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について案」
に対して寄せられた意見について


 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発計画の策定等、処理処分に係る技術的事項等について調査審議を進め、平成8年11月にその結果をとりまとめた報告書案「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について案」を公表、一般からの意見募集を実施しました。1ヶ月の応募期間に全国から有効総数 63人、186件の意見が寄せられました。これらの意見について同専門部会にて鋭意検討し報告書をとりまとめ、平成9年4月これを公表しました。
 寄せられた意見には、意見の趣旨を踏まえて報告書案に反映すべきもの、意見の趣旨が既に報告書案に反映されているものが合わせて4割程度ありました。残りの意見は、本報告書案の取扱いの範囲外のものを含め、本報告書には反映されなかったものです。

1.本報告書案の取扱いの範囲内であるが本報告書には反映されない意見
 
(1) 研究方法等について
○ まず候補地を選び、その地点回りに関する調査を行うべき。
○ 正確なシナリオを作成するためには処分候補地の実態を基礎としたモデルとデータが必要。
○ 地質調査の範囲が日本全土か処分場周辺なのかが不明確。
○ 研究はデモンストレーションではないため、「〜し得ることを示す」との表現を「可能かどうかを検討する」とすべき。
○ 実証性を欠く楽観的な記述が多く、処分の可能性のPR研究のようにしかみえない。
○ 「安全に埋設する」、「処分施設を設置することが可能と考えられている」等研究結果を断定的に表現すべきではない。
○ 「地層処分にとって安定な地質環境が存在し得ることを示し…」という表現は、存在するか否かは今後明らかになることなので修正が必要。

(2) 長期的な信頼性、日本の地質学的特性について
○ 人間の生活様式、経済状態の変化により長期将来予測は困難。将来の人間環境の予測は不可能。遠い将来を過去の履歴で外挿することは不可能。
○ 突発的事象の予測は困難。
○ 「地震、火山活動は、限られた地域で起こっており」という表現は断定的。
○ 日本は地震国であり、地下深部の地質環境が長期安定とは思えない。地質の安定、安全に疑問。
○ 全国に活断層が分布しているので、地層処分の是非の検討が必要。
○ 高レベル放射性廃棄物は場所の移動ができるように地上付近に保管すべき。代替エネルギーを開発し原子力利用を見直すべき。
○ 処分できる地質環境が見つかると断定できないのではないか。
○ 処分に適した地域を見出すことが可能とは考えられないため、地層処分を止め、少なくとも1000年は中間貯蔵すべき。
○ 安定な地質が存在しない場合の代替案についての研究必要。
○ 地層処分するという結論ありきである。
○ 具体的な時間スケールを特に限定しないとしていることは問題。
○ 固化体の耐久性に問題があった場合の対策の検討が必要。
○ キャニスター材質の健全性に疑問。
○ ガラス固化体の長期特性が不明であり、多重バリア機能が期待出来ないと考える。

(3) 研究体制、実施組織について
○ 動燃が取りまとめることは透明性を失う恐れがある。
○ 動燃が研究の中核であることに反対。
○ 国際的なレビューを受ける必要はない。
○ 第2次取りまとめの評価は科技庁以外の中立的機関がすべき。

(4) 処分全般について
○ 海洋底処分の研究が必要。
○ 十分な安全裕度をみるといっても人間の想定できる可能性は限られているのではないか。
○ 廃棄物の危険度が時間とともに減少するというが、永久的といえるような時間がかかり詭弁である。
○ 地層処分しても廃棄物の存在はなくならないので地層処分に反対。
○ 処分施設の設計・施工技術のさらなる向上が近い将来認められるとは思えず施工、建設を中止すべき。
○ 国民に理解され信頼が得られるか疑問。

(5) 情報公開について
○ これまでの分科会、ワーキンググループの議事録、資料の公開を求める。
○ 案を正としこれに不満があれば意見を述べよという態度では協力は得られない。
○ 報告書案の公表の周知等の情報公開が不十分。
○ 公開の期間を3ヶ月位にすべき、公開の広報がもっと必要、経済的な情報がない、合意のあり方の検討が必要。
○ 意見募集の方法の改善が必要。

(6) 表記、言い回し、用語等の修正・データ等の記載について
○ 地層処分という用語の修正が必要。
○ 「地層」という用語は学術用語での使い方が望ましい。「生物圏」の用語解説は、生物が生息する地球の空間をすべて含むものにすべき。
○ 「安定な形態/安全に埋設/安定であると考える」という表現は情緒的で説明が不足。
○ 廃棄物の量的前提が必要。
○ 処分場の容積と廃棄物の量を示してほしい。
○ 情報を公開し、核のゴミ問題を推進してほしい。廃棄物の貯蔵量、必要な面積、今後の発生量などの具体性に欠ける。
○ ナチュラルアナログ研究で東濃鉱床名のみ例示しているのは唐突。東濃ウラン鉱床のみ記すのはやめてほしい。
○ 国の評価の国とは内閣、原子力委員会、科学技術庁、国会のいずれか責任を明確にすべき。
○ 第2次取りまとめに向けた研究開発のあり方を示した章は、既存報告書との比較に終わっており、判りやすさの観点での積極的な発想に欠ける。

2.本報告書案の取扱いの範囲外であるので本報告書には反映されない意見
○ 処分の問題には、まずPRを徹底することが必要。
○ 処分事業は長期的なものであるため、次世代への教育が重要。
○ 超長期の記録保持は困難であるため、地層処分に反対。
○ 地層処分の国民的合意はまだ得られていないと考える。
○ 使用済燃料の直接処分などいろいろな処分の選択肢を比較検討し国民に提示すべき。
○ 処分という非可逆的行為をすることについて正当付けの考察がない。
○ 廃棄物ばかりでなく、それを生み出す原発も国民に問うべき。
○ エネルギー問題は重大な課題であるため、情報を公開し、いろいろな選択肢を国民に提示すべき。
○ 地層処分以外の方法もリスクとコストを提示し市民を選択決定に参加させるべき。
○ フランスからのキャニスターの材質等の改善が必要。
○ 再処理の必要性、使用済燃料の直接処分を検討してほしい。
○ 地層処分を前提とした研究開発の在り方を見直すべき。
○ 安全評価は社会学的、倫理学的検討及び原子力安全委員会での検討が必要。
○ 安全性のはっきりしない核エネルギーの拡大は反対。
○ オン・サイトでの小規模発電網を考えるべき、直接処分は可能、再処理および地層処分は不要。
○ コスト及び、誰がどんな形で負担していくかが分からないと賛否が言えない。
○ 原子力長期計画の基本方針の議論が必要。
○ 原子力長期計画のスケジュールにとらわれるべきではない。
○ 地層処分を前提とせず、直接処分、地上管理、再処理を国民に問うてほしい。
○ 今後の地層処分の研究開発の地域選定等について、国民の不安を払拭する努力を前提とし、国家プロジェクトとしての権威・権限を法的に与えてもよい。
○ 処分予定地の選定では地域の社会的特性、地理的条件等も基準に含めた方がよい。
○ 処分予定地の選定については地域産業や住民感情への影響を充分考慮すべき。
○ 地震・断層活動、火山・火成活動の影響を受けない地域で、地層処分を受け入れるところが地震国日本にあるか疑問。地上管理が安全。
○ 廃棄物の再利用も可能性があり、掘り返しの可能性も考慮すべき。
○ 本報告書及び研究の成果については、別途社会的アプローチが必要。
○ 実証が出来ないこと、社会不安倫理性問題などから、深地層の研究を進めること、処分推進に反対。
○ 国民レベルの議論を行い、政策の修正もありうることを保証することが必要。
○ 処分の見通しがはっきりしていないから、原子力発電政策の見直しが必要。
○ 廃棄物の輸送のシナリオその他突発的事故のシナリオも必要。
○ 国が関与するのは違法。
○ 国の費用で研究開発、処分することに反対。
○ 人工バリア及び処分施設の設定には、経済的合理性だけでなく環境・人心・生業等を含め検討が必要。





「地層処分における環境と倫理の基準」
についての集約意見の概要


[経済協力開発機構(OECD)/原子力機関(NEA) 放射性廃棄物管理委員会(RWMC)]


○放射性廃棄物の長期管理方策の社会的受容に関する評価に当たっては、世代間及び世代内の公平の原則が考慮されることが必要である。

○世代間及び世代内の公平の観点から、将来世代に対する現世代の責任は、貯蔵よりも最終処分によって適切に果たされる。貯蔵は監視を必要とし、長期にわたる管理の責任を将来世代に残す。さらに、社会構造が安定しているとは限らない将来社会によって、やがては貯蔵が軽視される可能性がある。

○他のオプションも検討した結果、地層処分は生物圏から廃棄物を隔離するためには、現在最も好ましい方策である。

○長寿命放射性廃棄物の地層処分方策は、
1)現在と同じリスク基準を将来も適用し、さらに将来世代への負担を制限することで、世代間の公平の問題を考慮できる。
2)科学的進展を考慮しつつ、数十年間にわたる段階的な実行を提案することで、世代内の公平の問題を考慮できる。その結果、全ての段階で公衆を含む利害関係者との協議が可能となる。

○地層処分の概念は、廃棄物の再取り出しは必要とされないが、たとえ地層処分した後でも、廃棄物の回収は不可能でない。


「使用済み燃料と放射性廃棄物の管理の安全
に関する条約(草案)


[1997年9月29日から10月3日に開催される第41回国際原子力機関(IAEA)総会で署名のため開放される予定]


前文(仮訳)
 (11)締約国は、放射性廃棄物は、その管理の安全と両立する限り、発生国内において処分すべきものであることを確認しつつ、ある状況においては、他の締約国の利益のために、ある国の施設を利用する締約国間の協定を通して、使用済み燃料及び放射性廃棄物管理の安全は、特に共同の計画から生じる廃棄物の場合に、促進されることを認識し、・・・



「アジェンダ21履行の全体的評価」

[国連環境開発特別総会における採択文書(1997年6月27日)]


放射性廃棄物(仮訳)
 一般に、放射性廃棄物は、その管理の安全と両立する限り、発生国の領域内で処分されるべきである。(中略) 国際社会は、また、地域的協定あるいは共同で使用される施設は、ある状況においては、放射性廃棄物の処分に適していることを認識している。





高レベル放射性廃棄物処分懇談会委員による海外調査報告(概要)



T.カナダ
 訪問先 :カナダ原子力公社(AECL)ホワイトシェル研究所
 訪問施設:地下研究施設(URL)
1.処分への理解を得るための方策
(1)公衆参加プログラム
 処分概念に対する一般の人々の認識や支持を高めるため、各層の人々に対して研究施設の見学、教育プログラム、フリーダイヤルの電話による情報提供、広告やダイレクトメールの利用、広報素材・ビデオの制作・配布・展示など様々な方法によって働きかけている。また、国民意識調査が1978年から毎年実施され、その結果をこのプログラムに反映させている。
(2)研究施設の公開
 地層処分への国民の理解を得るために、研究施設の見学と自治体庁舎での説明会を実施している。訪問者への説明は、研究施設でも責任ある立場にある研究者がそのための訓練を受けたうえで行っている。
(3)地域における検討の場
 地下研究施設の立地地域に、どのようにすれば地元の納得が得られるのかについて話し合う場として「コミュニティ対応委員会(CLC)」が設置されている。構成は、自治体代表、教会、地元紙・TV、商工会議所、環境保護団体、地元大学の学生代表、組織を持たない住民の代表およびAECLの代表からなり、この中には反対派も含まれている。

2.サイト選定プロセス
(1)環境評価レビュー・プロセス(EARP)
 公衆参加プログラムの一環であったAECLのパブリック・コンサルテーション・プログラムが、連邦政府による環境評価レビューに発展した。実際のサイト選定に入るためには、このレビューによって処分概念が受入可能であると判断されることが必要である。この環境評価レビュー・プロセスの要は、公聴会と環境影響報告書(EIS)である。
 1)AECLが作成した環境影響報告書に示されている処分概念の環境評価レビューを行うため、1989年に独立の委員会が設置されている。
 2)公聴会での議題は、エネルギー問題(都市問題を含む)、電力・原子力発電、そして高レベル廃棄物、というように広い範囲にわたっている。
 3)環境影響報告書は、処分概念の科学・技術的な事項だけでなく社会・経済的な事項についても言及している。社会・経済的事項は、処分場立地による地元への波及効果の計量予測から倫理的な問題にまで及び、処分についてのカナダ国内の歴史的背景に基づく位置づけや国際的コンセンサスの紹介も行っている。
(2)公募方式のサイト選定
 1)処分地選定の基本原則
     サイト選定にあたっての基本原則は以下の通りである。
     ・安全確保と環境保護(最優先の原則)
     ・ボランタリズム(自治体からの誘致)
     ・共同の意思決定(一方的には決定しない)
     ・公開性(自治体自らが決定できる環境を整える)
     ・公平性(処分地となった自治体が利益を受けること)
 2)公募方式
 自治体自らがサイトとなることを望むことが重視されていることから公募方式が採用されている。このため、まず各自治体に情報を伝達することから始めることとしている。  低レベル廃棄物処分場の場合には、最初 850の自治体から反応があり、その中から11の自治体が候補に残ったという実績がある(1996年に予定地決定)。

3.実施主体
 URLの運営、処分概念の開発、EISの作成など地層処分の研究開発はAECLが実施しているが、サイト選定や処分の実施を担う実施主体は、環境評価レビュー・パネルの答申がなされ、連邦政府とオンタリオ州政府がサイト選定に進む決定を行った後に設立される見込になっている。現在のところ、カナダにおける原子力発電の大半を担っているオンタリオ・ハイドロ社(オンタリオ州営の電力会社)を中心に設立される見込である。

4.事業資金
(1)資金確保の状況
 処分費用については、1994年のカナダ連邦政府の政策声明で廃棄物の発生者が負担するものとされている。このためオンタリオ・ハイドロ社などの電気事業者は、引当金の形で内部留保を行っている。金額は、1994年が9億800万カナダドル (約835億円)、1995年が10億4,500万カナダドル(約961億円)である。
 連邦政府(天然資源省)は事業資金を引当金として企業内部で積み立てるのではなく、外部基金に積み立てることを検討している。現在公聴会が開かれており、1997年中には結論が出される予定であるが、電気事業者も含め大勢はこの連邦の意見を支持している。
(2)資金確保に対する外部チェック機能
 1997年4月に連邦原子力管理法が改正され、原子力管理委員会(AECB)の規制機関としての役割と機能の見直し強化が行われた。特にAECBには、引当金が実際に電気事業者内部で積み立てられているのか、他に流用されていないかどうかのチェックを行う権限が与えられている。したがって、結果的にAECBは、電気事業者の財務評価を行い、場合によっては改善命令も出せるようになるものと思われる。
(3)研究開発資金
 地層処分の研究開発費用(地下研究所に関する費用や処分概念の開発とEIS作成の費用を含む)は、従来連邦政府の国家予算で賄われていたが、現在は廃棄物発生者であるオンタリオ・ハイドロ社1社が引当金を取り崩して賄っている。

U.米国
 訪問先:連邦エネルギー省(DOE)民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)
     ユッカマウンテンプロジェクト(YMP)
 訪問施設:ユッカマウンテン地下探査施設(ESF)
1.ユッカマウンテン地下探査施設(ESF)とサイト特性調査
(1)サイト特性調査  ネバダ州ユッカマウンテンでは、サイト特性調査を実施している。サイト特性調査は、処分予定地とされた場所が、実際に処分場が立地する処分地として適しているかどうかの判定をするために実施されるものである。
 1)地表における作業としては、地形図作成、気象観測、地球物理探査、地震研究、水理学的調査などが行われている。
 2)地表からのボーリング孔などによる地下水のモニタリング、コア(試錐岩芯)の抽出、実験室での試験などと併せて、処分場と同程度の深度に至る地下探査施設(ESF)が建設され、地下の地質構造と化学的組成の調査や地下水の調査などが実施されている。
 3)ESFの施設は、ルーム(室)と横坑(トンネル)およびアクセス坑道から成る。ESFの掘削は1993年初めに開始され、1997年4月にU字型の主要坑道が貫通した。主要坑道の全長は約8kmで、幾つかの地点に試験用の横坑が掘られている。現在ESFで実施されている試験は、熱負荷試験と大型ブロック試験の2つである。
 4)DOEは、処分場、シール・システム、および廃棄物パッケージの予備設計を行っており、サイト特性調査の結果に基づいて性能評価が行われる。ユッカマウンテンでの性能評価では、まず個々のサブシステムの性能が一定の性能基準を満たすことが求められると同時に、システム全体の性能評価が行われている。

2.処分への理解を得るための方策
(1)ユッカマウンテンプロジェクト(YMP)における公衆への情報公開活動
 1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)において「処分場の計画および開発に州および公衆が参加することは、高レベル放射性廃棄物および使用済燃料の処分の安全性について公衆の信頼性をえるために必要不可欠である」と規定されている。YMPにおける情報公開の目的は、一般の人々、関係諸団体、関係自治体、マスメディアとのコミュニケーションにより理解と信頼を得ることである。
 1)情報公開活動の原則
   ・施設、情報の公開
   ・信頼性のある専門家の活用
   ・明確な情報の提供
   ・公衆の参加
 2)情報公開活動
  施設の見学と研究者・技術者による解説・質疑応答、中高生やその教師を対象とした教育プログラム、学校や団体からの要請に応じた研究者・技術者による説明会、インフォメーションセンターの設置(3ヶ所)。

3.サイト選定プロセス
(1)サイト選定プロセス
  サイト選定は以下のようなプロセスで行われる。
 1)サイト特性調査の対象となる処分予定地の決定は大統領が行うが、そのさいに公聴会を開催する。
 2)サイト特性調査の実施前に調査計画、廃棄物の形態、処分場の概念設計を地元の州知事及び州議会に提出し審査がなされる。また、これらについて公聴会が開かれる。
 3)サイト特性調査の実施に当たっては、地元の自治体(郡)は実施主体のDOEと地域共生委員会を設け、サイト特性調査活動を監視し、悪影響のある場合にはその対応策を講じる。
 4)サイト特性調査の結果をもとに処分場の設計に対する性能評価が行われた後公聴会が開催され、評価結果の審議がなされる。
 5)処分地の最終的な決定権は大統領にあるが、地元の州知事・州議会が承認しない場合には、連邦議会が上下両院合同で承認決議を得る必要がある。
 なお、サイト特性調査は、ある処分予定地が処分地として適しているかどうかを科学的に判 定するためのものであるため、NWPA法によって、放射性物質の利用が禁じられている。

4.実施主体
(1)NWPA法では、高レベル廃棄物と使用済燃料の処分の責任は連邦政府にあることが明記されている。このため実施主体として、DOEの下に民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)が設置された。なおOCRWMの局長は上院の助言を得て大統領が直接任命し、省庁の長官に準ずる扱いがなされている。
(2)実施主体が解散した場合は、高レベル廃棄物処分の責任が連邦にあることが明文化されているため、仮にDOEが廃止されたとしても、その機能は他の省庁に移管されるものと思われる。

5.事業資金
(1)事業資金確保制度
 NWPA法によって外部基金制度が創設されている。この高レベル廃棄物基金(NWF)は連邦財務省の独立口座となっており、DOEが管理している。廃棄物発生者は、原子力発電電力量1kWhあたり1ミル(0.001ドル)の掛金(Fee)を基金に払い込んでいる。
(2)処分費用の算定
 処分費用の見積りと1ミル/kWhという掛金の金額の妥当性の評価は、DOEが毎年行っている。見積りの不確実性については、費用要素ごとにコンティンジェンシー係数をはじき出して対処している。例えば廃棄物取扱建屋については22%〜30%、廃棄物のキャニスターへの封入や埋設自体などの取扱いについては19%〜29%などである。

V.スウェーデン
 訪問先:オスカーシャム・コミューン
     スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)
 訪問施設:エスポ島ハードロック研究所(HRL)
1.ハードロック研究所(HRL)への対応
(1)自治体の対応
 HRLの地元自治体であるオスカーシャムでは、自治体が自ら専門家を雇って一般の人には難しいHRLの研究レポートやSKBの技術レポートのわかりやすい説明を受けたり、この専門家を講師にした講習会を行っている。また、研究開発成果などSKBのさまざまな文書の内容評価や、自治体議会での説明も行っている。一般の住民への説明会にもこの専門家に非常に分かりやすい補足説明をしてもらっている。
 また、HRLのあるオスカーシャム・コミューンとその上位のカルマー・カント(県)では、SKBと「研究組合」を作って、HRLの研究設備で環境関係の研究を実施することを検討している。
 なお、HRLは、将来的にも処分場にはならないことになっており、地元オスカーシャム・コミューンとの間で実際の廃棄物は使わないという協定を締結している。
(2)地域における検討の場
 1981年の法律で地方安全委員会(LSB)が原子力施設の立地自治体に設置されることになった。その任務は、施設の安全管理の監視(立ち入り調査権を持つ)、施設設置者からの情報の編集・出版、住民からの質問への回答(義務)、自治体職員(教師、保母など)の教育など施設設置者と住民との橋渡し役である。オスカーシャムにも原子力発電所があるためLSBが設置されているが、その活動対象にはHRLも入っている。メンバーは7名で、いずれも自治体議会の議員が兼務している。年1回LSBが作成するレポートは国会に提出され審議される。国会では、各自治体のLSBからのレポートを非常に尊重している。

2.サイト選定のための方策
(1)地域での検討の場
 現在、処分地の選定過程についての議論が行われているが、カルマー・カントでは2年前にフォーラムを作り、処分場の受け入れをすべきかどうかを判断するための事項について検討を行っている。フォーラムの構成は、カルマー・カントの全コミューンの代表者、SKBおよび政府(原子力発電検査庁、環境省)の代表からなる。具体的な検討議題は、どのような環境影響が、どの程度立地自治体にもたらされるのか、使用済燃料のキャニスターへの封入をどの場所で行うのか、地下のどの場所に廃棄物パッケージを埋設するのかなどである。
(2)国レベルの評価
 SKBの処分事業計画はスウェーデン放射性廃棄物国家評議会(KASAM)によるレビューを受けている。KASAMは社会科学系も含めた広い分野にわたる10名の学識経験者から構成される。KASAMはSKBの事業計画のレビューに加えて、関係当局の諮問機関としての役割も持っている。また、原子力発電検査庁(SKI)、放射線防護庁(SSI)もそれぞれの立場からレビューを行っている。
(3)フィージビリティ調査
 候補地でのボーリング調査を始める前にフィージビリティ調査を実施する。この調査は、処分場受け入れによる経済的波及効果などの社会経済的な影響評価に重点がおかれている。現在10ヶ所の候補地のうち5地点で実施されているが、そのうち1地点(ストールマン)では調査続行の賛否について住民投票が行われた結果、続行しないこととなった。もう1地点での住民投票が1997年秋に予定されている。

3.事業資金
(1)事業資金の算定
 財源法に基づいてSKBは毎年処分費用を計算し、毎年6月までに必要納付金総額としてスウェーデン原子力発電検査庁(SKI)に提出する。これに基づきSKIでは、諸条件を考慮して各原子力発電所ごとの納付額を算定し、10月末までにSKBの提出した費用計算とともに政府(環境・天然資源省)に提出する。政府の承認を得て正式に納付額が決定される。1996年の計算によるバックエンド費用総額は399億クローネ(約6,800億円)で、そのうち、使用済燃料をキャニスターに封入する施設と深地層処分場の立地、建設、運転、閉鎖、それに関連する研究開発および広報活動の費用は、181億クローネ(約3,080億円)である。処分費用を計算するさいの不確実性に対応するため、SKBによる処分費用の計算およびこれを受けてSKIが行う納付金額の積算においては、費目ごとの変動を折り込んだ計算処理を導入している。
(2)情勢の変化への対応
 1996年以降、次のような2つのケースにおいては、使用済燃料の管理(輸送、処理、貯蔵、処分)費用を納付金では賄いきれない可能性があるため、政令に基づいて原子力発電事業者は担保(保証金)を提供することが要求される。
  ケースT:原子炉の寿命期間(25年)が満了になる前に原子炉を停止するような場合
  ケースU:原子炉が寿命を全うした後に、この廃棄物基金では十分に賄えないような追加
       的な費用が必要になった場合

W.スイス
 訪問先:スイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)
 訪問施設:モンテリー試験サイト(MTS)
1.モンテリー試験サイト(MTS)
 モンテリー試験サイト(MTS)は、高速道路モンテリー・トンネルの調査用トンネル(側坑道)を利用した堆積岩での地層処分研究を行う施設(原位置試験施設)である。
 スイスでは結晶質岩と堆積岩という2つの地層オプションについて約20年前から調査研究を行っており、国際共同処分か国内単独処分かの判断も含めて、2000年以降に決めるものとされている。また、結晶質岩の原位置試験施設であるグリムゼル試験サイト(GTS)は、NAGRAが直接進めてきたが、MTSでは地質学会がイニシアチブを取って行っている。

2.処分への理解を得るための方策
 「フォーラム・ベラ」という政治家、スポーツ選手、芸術家など約 300名の会員からなるフォーラムが作られている。「原子力発電への賛成、反対にかかわらず、高レベル放射性廃棄物は存在しており、責任をもって処分する必要がある」という立場から新聞・TV広告、パンフレット発行などのキャンペーンを実施している。

3.実施主体
 NAGRAは4原子力発電会社(株式会社)の共同組合であるが、非営利であることや参加者が対等であることなどが研究開発主体に求められるため、組合の形態を選択したとのことである。地層処分の研究開発(サイト特性調査・処分技術の実証を含む)とサイト選定はNAGRAが行うが、処分場の建設、操業、閉鎖を行う主体については現在のところ未定である。

4.事業資金
 原子力法の規定では、連邦政府は、廃棄物発生者に処分費用を積み立てておくことを強制することができる。NAGRAと連邦政府の試算結果によると、放射性廃棄物の最終処分の総費用は、60億スイスフラン(約5,100億円)、原子力発電電力量1kWhあたり0.7ラッペン(0.007スイスフラン)のうち、高レベル廃棄物の処分費用は0.5ラッペンである。発電コストに占める処分費用の比率は、個々の発電所によって様々であるが、例えばゲスゲン・デニケン原子力発電会社では発電コストの約8%にあたる。
 これらの処分費用を賄うため、廃棄物発生者である原子力発電事業者は、10年前から引当金の形で積み立てを行い、内部留保している。スイスの原子力発電所4カ所全体で必要とされる1995年末時点の引当金は49億スイスフラン(4,165億円)である。しかし、実際の引当金は58億スイスフラン(4,930億円)に達しており、目標額を上回る額の積立がなされている。

5.サイト選定プロセス
 スイスでは、州民投票が処分場のサイト選定の手続き上必要とされている。ヴェーレンベルク低レベル廃棄物処分場のように州民投票で受け入れが拒否された場合は、最初からやり直しをして再び州民投票に問うようにしている。ヴェーレンベルクの場合は、3年後の再投票を目途に手続きをやり直している。

X.フランス
 訪問先:フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)
1.地下研究施設
 フランスでは、1996年に3つの候補地(4県)のそれぞれについて、処分地としてその場所が適当かどうかを調査するための地下研究施設の建設許可申請が出されている。

2.サイト選定のための方策
(1)廃棄物交渉官
 地下研究施設のサイト選定のため、1992年に特別法により廃棄物交渉官制度を制定した。約30の自治体(地域圏、県、コミューン)から応募があり技術的観点(主として地層)から8県に絞り込まれた。この8県の議員や職能団体(農協、漁協、商工会)、公益団体に対し、交渉官が訪問、説明、ヒアリングを行った。自治体との交渉に当たって交渉官は政府に対し補助金の交付を勧告した。その結果、8県のうち県議会および県内のコミューン議会で賛成が絶対多数を占めた4県(候補サイトは3地点)のみ交渉官は政府へ推薦した。
(2)地域での検討の場
 地域情報監視委員会(CLI)が特別法に基づいて3つの候補サイトのある4県に1994年に設置された。目的は、国、地元、事業者(ANDRA)の三者間の情報伝達、地元意見の聴取と調整である。メンバーは、政府、国民議会・元老院の議員、地域圏・県・コミューンの議員、環境保護団体、科学者、農協、地区労組、およびANDRAの代表である。メンバー数は約30名〜80名であり会合も約1年半で10回前後開催された。100万フラン(2,300万円)/年という予算を国が負担しており、独自に調査を実施し、ANDRAの調査結果と比較して検討を行っている。
(3)第三者による評価体制
 特別法により国家評価委員会(CNE)が設置されている。メンバーは12名で、国民議会・元老院の任命委員が6名、科学アカデミーの推薦に基づく政府任命の委員が6名(そのうち2名は外国籍)である。ANDRAが地下研究施設で行う地層処分研究の成果の評価を行い、毎年、国民議会に報告書を提出する。2005年までに地層処分と代替オプション(長期貯蔵と核種変換)を比較して総括評価を行う。ANDRAは毎月CNEからの質問に回答している。

3.事業資金
 フランスでは、法律によって放射性廃棄物を含め全ての廃棄物の処理、保管・貯蔵、輸送、最終処分などの廃棄物管理に要する費用は、その廃棄物の発生者が負担することとされている。このため、高レベル廃棄物(再処理ガラス固化体)および長寿命中低レベル廃棄物(セメント固化体)についても、仏電力公社(EDF)、仏原子力庁(CEA)、仏核燃料公社(COGEMA)、国防省装備庁(DGA)などの廃棄物発生者がその処分費用を賄うために引当金などにより資金を積み立てている。例えばEDFでは、既に数100億フランの引当金を内部留保している。
 ANDRAが策定した1994年〜1998年の5カ年中期計画における地下研究施設を含む深地層処分事業の費用は、総額24億3,400万フラン(約559億8,200万円)で、このうち、1994年には4億1,220万フラン(約94億8,000万円)、1995年は4億8,640万フラン(約111億8,700万円)が支出されている。内訳は、地下研究施設の3つの候補サイトの地質調査と処分場の設計研究であり、1995年には、地質調査に3億9,730万フラン(約91億3,800万円)、設計研究に8,910万フラン(約20億4,900万円)となっている。これらの事業資金は、EDF、CEA、COGEMAなどの廃棄物発生者が出資金の形で拠出している。拠出シェアは、EDFが70%、その他の廃棄物発生者が30%である。これらの事業資金の金額と各廃棄物発生者の出資金の拠出額は、廃棄物発生者と政府により構成されるANDRAの財務委員会で決定される。



高レベル放射性廃棄物処分に係る主な出来事


  年月日               主な出来事            
─────────────────────────────────────---------
1961 昭36. 2.22 原子力委員会、放射性廃棄物の処理並びに処分についての一般的
         基本方針及び廃棄物処理専門部会の設置を決定

1962  昭37. 4.11 原子力委員会廃棄物処理専門部会、放射性廃棄物の処理・処分基
         本方針の検討を行った「放射性廃棄物処理に関する中間報告書」
         をとりまとめ

1964  昭39. 6.12 原子力委員会廃棄物処理専門部会、放射性廃棄物の処理について
         の報告書をとりまとめ

1973  昭48. 6.25 環境・安全専門部会放射性固体廃棄物分科会、報告書をとりまと
         め                                                        
                 ・昭和47年6月長計に示された放射性廃棄物の処理処分に関す
                  る計画の実施具体案の検討

1976  昭51.10. 8 原子力委員会、放射性廃棄物対策を決定
          ・高レベル放射性廃液は、安定な形態に固化し、一時貯蔵した
           後処分 
          ・処分見通しを得るために必要な調査、研究開発を推進
          ・処分については国が責任を負うこととし、経費は発生者負担
           の原則

1977 昭52. 9.30 電力10社と仏COGEMA、再処理委託契約に調印

1978  昭53. 5.24 電力10社と英BNFL、再処理委託契約に調印                    
                                                                          
1979  昭54. 1.23 原子力委員会に放射性廃棄物対策専門部会を設置              
                                                                         
1980  昭55.12.19 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会、「高レベル放射性廃棄
                 物処理処分に関する研究開発の推進について」を報告          
                  ・処分方策としては、当面地層処分に重点                  
                  ・処分の基本的概念:できるだけ地下水が少ない安定した地層
                   を選出し、地層という天然バリアに工学的バリアを組み合わ
                   せることによって処分システムを構成                    
                  ・長期的な展望の下に段階的に研究開発を実施              
                                                                          
1984  昭59. 8. 7 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会、「放射性廃棄物処理処
                 分方策について(中間報告)」をとりまとめ                  
                  ・高レベル放射性廃棄物処理処分の実施具体化及び研究開発の
                   推進は官民の研究機関の協力の下に動燃が中核となって実施
                  ・地層処分に至る全体の流れ                              
                    @可能性ある地層の調査                              
                    A処分予定地選定                                    
                    B模擬固化体による処分技術実証                      
                    C実固化体処分                                      
                  ・動燃は1992年操業開始を目途に貯蔵プラントを建設        
                  ・地層処分は地下数百メートルより深い地層中に行うものとし
                   当面2000年頃の処分技術実証を目途として開発を推進      
                                                                          
            8.10 動燃事業団、横路北海道知事に対し、貯蔵工学センター建設の候
                 補地として幌延町が有力として理解を求める                  
                                                                          
1985  昭60. 6. 3 動燃事業団、横路北海道知事と道議会議長に対し貯蔵工学センタ
                 ー建設に係る幌延町の現地調査の実施を申し入れ              
                                                                         
           10. 7 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会、「放射性廃棄物処理処
                 分方策について」をとりまとめ                              
                  ・第2段階及び第3段階の研究開発:国の重要なプロジェクト
                  ・動燃は開発プロジェクトの中核機関として体制を整備し、電
                   気事業者、民間研究機関等との間の有機的連携を確保      
                  ・国の責任の下に処分の実施を担当していく主体については、
                   適切な時期に具体的に決定                              
                  ・電気事業者は処理・貯蔵・処分の費用を負担              
                                                                          
           11.23 動燃事業団、貯蔵工学センター建設に係る幌延町の現地調査を実
                 施                                                        
                                                                          
1987  昭62. 6.22 原子力委員会、原子力開発利用長期計画をとりまとめ          
                  ・高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30〜50
                   年間程度冷却のための貯蔵を行い、その後地下数百メートル
                   より深い地層中に処分することを基本方針                
                  ・地層処分の進め方                                      
                    第1段階:「有効な地層の選定」                      
                    第2段階:「処分予定地の選定」                      
                    第3段階:「処分予定地における処分技術の実証」      
                    第4段階:「処分施設の建設・操業・閉鎖」            
                  ・第2段階においては国の重要プロジェクトとして          
                    @地層処分技術の確立を目指した研究開発(動燃が中核)
                    A地質環境等の適性を評価するための調査(動燃が実施)
                    B処分予定地の選定(処分事業の実施主体が実施)      
                   を実施                                                
                                                                           
1988  昭63. 4.   動燃事業団、貯蔵工学センター建設に係る幌延町の現地調査結果
                 をとりまとめ                                              
                  ・本計画を進めていく上で特に支障となるような点は見いださ
                   れなかった                                            
                                                                           
1989  平 1. 3.30 日本原燃サービス鰍ェ六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理
                 センターの事業許可申請                                    
                                                                          
           12.19 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会、「高レベル放射性廃棄
                 物の地層処分研究開発の重点項目とその進め方」をとりまとめ  
                  ・地層処分による安全確保の基本的考え方(基本概念、多重バ
                   リアシステムの構成・機能)                            
                  ・研究開発の重点項目:性能評価研究、処分技術の研究開発、
                   地質環境条件の調査研究                                
                  ・研究開発の中核的推進機関である動燃が、成果を適切な時期
                   に報告書として取りまとめ、国が評価する方針            
                                                                           
1991  平 3.10.   高レベル放射性廃棄物対策推進協議会設置                    
                  ・国(科学技術庁、通産省資源エネルギー庁)、動燃、電気事
                   業者(電事連)により構成                              
                                                                          
           10.30 日本原燃サービス轄c激xル放射性廃棄物貯蔵管理センター及び
                 再処理工場に係る公開ヒアリングを六ヶ所村で開催            
                                                                           
1992  平 4. 4. 3 日本原燃サービス轄c激xル放射性廃棄物貯蔵管理センターに事
                 業許可、同5月に着工                                      
                                                                         
            8.28 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会、「高レベル放射性廃棄
                 物対策について」をとりまとめ                              
                  ・官民の役割分担                                        
                    国:所要の施策の策定                                
                    動燃:当面の研究開発及び地質環境調査                
                    電気事業者:処分費用確保、研究開発段階での役割      
                    「高レベル放射性廃棄物対策推進協議会」の場を活用    
                  ・2000年を目安に実施主体の設立を図っていくため、準備のた
                   めの組織の早期発足が望ましい。                        
                  ・処分の手順                                            
                    @地元の了承を得た上での実施主体による処分予定地の選
                     定、国による選定結果の確認                        
                    Aサイト特性調査及び処分技術の実証                  
                    B事業申請及び国による安全審査                      
                  ・2030年代から遅くとも2040年代半ばまでの操業開始を目途  
                  ・研究開発の進め方                                      
                    @動燃は第1次とりまとめを国に報告、第2次とりまとめ
                     (2000年まで予定)で地層処分の技術的信頼性を国の委員
                     会が評価                                          
                    A深地層の研究開発施設の計画は、処分の計画と明確に区
                     別して推進(複数設置が望ましい)                  
                    B広い範囲を対象に地質環境調査を実施                
                                                                          
                                                                         
1992  平 4. 9.   動燃事業団、高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告
                 書(第1次とりまとめ)をとりまとめ                        
                  ・わが国における地層処分の安全確保を図っていく上での技術
                   的可能性を明示                                        
                  ・研究開発の今後の課題を提示                            
                                                                         
1993  平 5. 5.28 高レベル事業推進準備会(SHP)設立                        
                                                                          
   平 5. 7.20 原子力委員会放射性廃棄物専門部会、「高レベル放射性廃棄物地
                 層処分研究開発の進捗状況について」をとりまとめ            
                  ・第1次とりまとめについて、わが国における地層処分の安全
                   確保を図っていく上での技術的可能性が明らかにされている
                   と評価                                                
                  ・その後の研究開発の進め方を示す                        
                                                                          
1994  平 6. 6.24 原子力委員会、原子力開発利用長期計画をとりまとめ          
                  ・安定な形態に固化した後、30〜50年間程度冷却のため貯蔵、
                   その後、地下の深い地層中に処分することを基本方針      
                  ・国は、処分が適切かつ確実に行われることに対し責任を負う
                   とともに処分の円滑な推進のために必要な施策を策定      
                  ・処分事業の実施主体は2000年を目安に設立、その後処分予定
                   地の選定、サイト特性調査と処分技術の実証、必要な法制度
                   などの整備と安全審査、処分場の建設を進める            
                  ・2030年代から遅くとも2040年代半ばまでの操業開始を目途  
                  ・研究開発は動燃を中核推進機関とし、関係機関が協力して推
                   進、2000年前までに成果をとりまとめ、公表              
                  ・国は報告を受けて技術的信頼性などを評価                
                  ・深地層の研究施設                                      
                  ・電気事業者が処分資金確保に関する役割                  
                                                                         
                                                                          
           12.26 日本原燃轄c激xル放射性廃棄物貯蔵管理センターに係る県、村
                 及び事業者間の「安全協定」締結                            
                                                                          
1995  平 7. 1.18 日本原燃轄c激xル放射性廃棄物貯蔵管理センター竣工、保安規
                 定認可                                                    
                                                                          
            2.23 第1回ガラス固化体返還輸送の輸送船、仏シェルブール港を出港
                                                                          
            4.25 科学技術庁長官、青森県知事に「知事の了承なくして青森県を最
                 終処分地にできないし、しない」ことを確約                  
                                                                         
            4.26 第1回ガラス固化体返還輸送の輸送船、青森むつ小川原港に入港
                                                                          
            4.26 日本原燃轄c激xル放射性廃棄物貯蔵管理センター操業開始    
                                                                          
1995  平 7. 8.21 動燃事業団、岐阜県、瑞浪市及び土岐市に「超深地層研究所」計
                 画を申し入れ                                              
                                                                          
            9.12 原子力委員会に                                            
                  @高レベル放射性廃棄物処分に向けた国民の理解と納得が得ら
                   れるよう、社会的・経済的側面を含め、幅広い検討を進める
                   「高レベル放射性廃棄物処分懇談会」                    
                  A処分に関する研究開発計画の策定等の技術的事項について調
                   査審議を行う「原子力バックエンド対策専門部会」        
                 を設置                                                    
                                                                          
           12.28 岐阜県、瑞浪市及び土岐市並びに動燃事業団との間で、超深地層
                 研究所の運営に係る協定を締結                              
                                                                          
1996  平 8. 5.27 SHP、「高レベル放射性廃棄物処分事業に関する検討中間取り
                 まとめ」を公表                                            
                  ・処分事業準備のための基礎的事項(事業化計画、実施主体、
                   事業資金、地域との共生、国民的理解の促進、海外動向)の
                   調査・検討                                            
                                                                          
           11.28 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会、「高レベル放射
                 性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について(案)」を
                 とりまとめ公表するとともに、12月まで一般の方からの意見を募
                 集(有効総数186件の意見)                              
                                                                          
1997  平 9. 1.13 第2回ガラス固化体返還輸送の輸送船、仏シェルブール港を出港
                                                                          
            3.18 第2回ガラス固化体返還輸送の輸送船、青森むつ小川原港に入港
                                                                          
            4.15 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会、「高レベル放射
                 性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」をとり
                 まとめ公表                                                
                  ・関係研究機関が2000年までに、                          
                    @地層処分の技術的信頼性を明示                      
                    A処分予定地の選定及び安全基準の策定に資する技術的拠
                     り所を提示                                        
                   する(第2次取りまとめ)に当たっての研究開発等の進め方
                   について、基本的考え方、技術的重点課題を示したもの
第2回高レベル放射性廃棄物処分懇談会資料「高レベル放射性廃棄物処分に係る政策の変遷」(参考2−1)、日本原子力文化振興財団編「原子力開発三十年史」、原子力委員会編「原子力白書」等に基づき作成