高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について
(案)
平成9年5月29日
社会的受容性に関する特別会合
サイト選定プロセス・立地地域との共生に関する特別会合
合同会合
−目次−
はじめに
第一部 総論
I.なぜ、今、議論するのか
1.高レベル放射性廃棄物に関する議論の現状
2.議論をする必要性
II.高レベル放射性廃棄物処分とは
1.高レベル放射性廃棄物地層処分の特徴
2.高レベル放射性廃棄物地層処分の現状
第二部 各論
第一章 廃棄物処分について社会的な理解を得るために
1.広汎に議論を行うために
2.透明性確保と情報公開
(1)制度・組織の透明性の確保
1)制度の明確化
2)処分地選定の過程や事業活動に対する外部者による確認
(2)情報公開
1)情報公開のあり方
2)具体的内容
(3)誠実な対応
1)情報の内容
2)情報伝達の手段
3)情報伝達を支える仕組み
4)情報提供の継続
3.教育・学習
(1)学校教育
(2)一般の人々への教育や学習
第二章 処分の技術と制度について
1.処分技術への理解と信頼を得るために
(1)処分技術の信頼性の向上
1)研究開発の方向
2)広く開かれた研究の推進
3)処分技術のわかりやすい説明
4)社会に受け入れられる技術
(2)深地層の科学的研究施設
1)研究開発状況の伝達
2)深地層の環境の体験
3)地域住民の理解
(3)技術的要件の検討にあたって
2.事業資金の確保
(1)事業資金に関する諸外国の状況とわが国の状況
(2)事業資金の考え方
1)事業資金の負担
2)事業資金の範囲
(3)資金確保制度の考え方
1)事業資金を確保できる制度
2)機動性および柔軟性を備えた制度
(4)資金確保制度の確>立
1)事業資金の算定
2)事業資金の見直し
(5)資金確保における関係機関の役割
3.実施主体
(1)実施主体の役割
(2)実施主体の備えるべき要件
1)処分の実施能力
2)長期安定性、柔軟性
(3)実施主体が重視すべき点
(4)実施主体のあり方
4.諸制度の整備
(1)処分地の選定を含めた事業終了までのプロセス策定
(2)処分場閉鎖終了前後の管理のあり方
1)処分坑道埋め戻し後、主坑の埋め戻し(処分場の閉鎖)までの
期間の設定
2)処分場の閉鎖終了後の管理、モニタリングの方法、期間
(3)処分場地下空間の利用制限とそれを担保するための手段
(4)損害賠償制度の確立
(5)安全基準の策定
5.長期性への対応
第三章 立地地域との共生
1.基本的考え方
(1)実施主体と立地地域との共生のあり方
(2)「共生施設」としての位置づけ
(3)立地地域と電力消費地域の連帯
1)「連帯」の考え方
2)電力消費地域への働きかけ
2.立地地域との共生に向けた取組
(1)地域との共生に向けた取組の考え方
1)長期的視点に立った地域共生の取組
2)地域特性・事業特性に応じた地域共生の取組
3)継続性のある地域共生
(2)立地地域の主体性
1)共生方策の策定における立地地域の役割
2)共生方策策定の支援体制
第四章 処分地選定プロセス
1.基本的考え方と検討課題
(1)透明性の確保と情報公開
(2)住民の位置づけと調整の場
1)住民の範囲
2)住民の意見
3)調整機関の設置
(3)自治体の役割
2.処分地選定の各段階の検討
(1)処分候補地の選定
1)処分候補地選定前の情報の開示
2)処分候補地選定方式
(2)予備的調査
(3)処分予定地選定
1)地元の了承
2)国の確認
(4)処分地の決定
さいごに −いま、何をしなければならないか−
はじめに
- 高レベル放射性廃棄物処分懇談会(以下、懇談会)は、平成7年9月に設置され、高レベル放射性廃棄物処分(以下、廃棄物処分)について社会的・経済的観点を含めて幅広い
議論をすることとされた。懇談会は、今日まで8回開催し、昨年12月には懇談会の下に
社会的受容性に関する特別会合、サイト選定プロセス・立地地域との共生に関する特別会
合を設置し、それぞれ6回、合同会合を2回開催した。この度、廃棄物処分に向けた基本
的考え方をまとめ、国民各層の意見を求めることとした。
この報告書の目的は、関係機関に対して施策の提言を行うこと、および国民にこの問題
を周知し議論を深めることにある。
この報告書では、廃棄物処分について議論をする必要性、社会的に受容される前提とし
ての情報公開のあり方、廃棄物処分のための資金確保や実施主体の設立など、信頼性と透
明性ある制度の整備、立地地域との共生、そして廃棄物処分地の選定プロセスのあり方な
どについて検討し、法律の制定を含めて今後、関係機関が進めるべき具体的な方策の策定
に向けた基本的考え方や検討すべき点について提言した。特に、事業資金の確保、実施主
体の設立、深地層の研究施設の実現の3項目については、早急に着手する必要があり、そ
のための努力を関係機関に強く要請するものである。
現在、化石燃料の廃棄物であるCO2、SOx、NOx の問題が国際的に深刻になってい
るが、高レベル放射性廃棄物処分問題については対応が遅れることはあってはならず、現
に社会に存在する避けては通れない問題である。
廃棄物処分問題に対するわが国の取組は、すでに具体的な施策が開始されている諸外国
に比べて10年程度遅れていると言わざるを得ない。先進の国においても社会的な受容な
しに進めることはできないことを見れば、わが国においても幅広い国民各層の意見を聞く
ことが不可欠である。残念なことに、わが国では原子力開発に重要な役割を担っている動
力炉・核燃料開発事業団において最近発生した2つの事故およびその処理をめぐって国民
の不信を招く事態が発生した。このような事態が生じる限り、原子力行政に対する国民の
理解を求めることは到底不可能である。懇談会は、動燃事業団の抜本的な改革及び原子力
政策について国民の信頼を回復する積極的な方策が講ぜられることを期待したうえで、廃
棄物処分のあり方について本報告書案を公表する。この報告書案については、国民の各層
から意見を求めるとともに、全国各地において各方面と意見交換の場を設けたいと考えて
いる。このようなプロセスを通じて、さらに議論を深めたうえで報告書をとりまとめる予
定である。
- 第一部 総論
- I.なぜ、いま、高レベル放射性廃棄物処分問題を議論するのか
- 1.高レベル放射性廃棄物に関する議論の現状
- わが国では、原子力発電の際使用済燃料棒からとり出される高レベル放射性廃棄物やその処分について知らないという人々が多い。このことについて何らかの知識がある人でも、廃棄物からの放射線による環境への悪影響があるのではないかという不安や、安全な処分に対して不信感を抱いていることが多い。
このように、一般の人々の間では、原子力発電や廃棄物処分への漠然とした懸念を持ちながらも、この問題がわれわれが解決しておかなければならない差し迫った問題であると意識してもらえる状況になっていないため、処分問題に対して積極的に発言することも少ない状況にある。
このような無関心の原因としては、後に述べるように、廃棄物処分場については操業開始までに要する期間が長く、事業の終了までにさらに長い期間がかかるため、一般の人々には身に迫った問題として意識されにくいということがあるであろう。また従来、技術的な側面に議論が集中してきたため、専門家・技術者の間だけで専門的な議論がなされてきたということもある。それに加えて、広く各層の人々が議論するような場や議論をするための情報が提供されてこなかったという点がある。
さらに、これまで国や電気事業者は、現在稼働している原子力施設の安全性の確保や、電力を安定供給するという観点から、原子力発電所の立地に重点を置いてきたため、廃棄物処分問題に対する対応を十分にしてこなかったうらみがある。
- 2.議論をする必要性
- わが国では1963年に原子力発電が開始され、1995年度には発電量の約34%が原子力発電によって供給されており、原子力発電はわが国の電力供給の重要な部分を担っているのが現状である。とりわけ、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で全国の電力消費量の約25%を消費しているが、この地域に電力を供給している東京電力では、発電量の約40%が原子力発電によってまかなわれている。
これまでに原子力発電によって発生した高レベル放射性廃棄物の量は、1996年現在で、廃棄物のガラス固化体に換算して約1万2千本に相当する。今後の発生量については、高レベル事業推進準備会(SHP)が「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成6年6月原子力委員会、以下「長期計画」)の原子力発電規模の見通しに基いて平成7年度に行った試算によると、今後2030年までに約5万8千本相当の高レベル放射性廃棄物が発生するものと予測されており、すでに存在するものと合わせると約7万本相当(それを埋設する地下施設の広さとして約7ku、2.7km四方程度が想定される)になる。
したがって、今後の原子力政策がどのような方向に進められるにせよ、少なくとも既に存在する高レベル放射性廃棄物については、その処分を具体的に実施することが必要である。
われわれが発生させた廃棄物については、われわれの世代がその処分に関する制度を確立する必要がある。後世代に影響を及ぼす可能性のある廃棄物の処分について、後世代に負担を残さないことがわれわれの責務である。原子力発電により社会生活を維持している現世代が廃棄物処分について先送りするならば、そのツケは後世代に残されることになる。我々は今できることについて、早急に着手しなければならない。
さらに、廃棄物処分を行うにあたり、原子力発電によって電力供給を受けている電力消費地域の住民と処分場立地地域の住民との間の「公平」を確保することも必要である。電力消費地域の住民は電力供給を受けることによって便益を得ているのであるが、他方で処分場立地地域住民は、廃棄物処分に伴って生じるかもしれない負担を被ることになる。このため、処分場立地地域と電力消費地域との間の住民の連携を図って、両者が共生していくという考え方が必要である。
しかし、世代間および地域間の公平と公正を図るというような問題は、本来専門家の間での技術的な議論だけで解決できる問題ではない。こういった問題をどのように解決していくべきかについては、国民各層の間で広汎に議論が行われ、国民の間の合意形成が求められるべき重大な問題である。我々がここで述べようとしているのは、
この問題に関して、どのようにすれば国民各層の間で議論が行われる基本的条件が整うのか、また、実際に事業を具体化していくうえで、どのような考え方に基いて制度を設けていくのかという点である。
- II.高レベル放射性廃棄物処分とは
- 1.高レベル放射性廃棄物地層処分の特徴
- 現在の国際的な技術レベルによれば、高レベル放射性廃棄物は深地層中に埋設することが共通の考え方である。
原子力発電所で使用された使用済燃料から再処理によりウランやプルトニウムを取り出すさいに、高レベル放射性廃棄物は高レベル放射性廃液の形で分離される。この廃液を安定で取扱を容易な形態にするため、ガラス原料と混ぜて高温で溶かし、ステンレス製の容器(キャニスター)に流し込み、冷やして固める(ガラス固化)。こうしてできたガラス固化体は、冷却のため30年から50年間程度貯蔵した後、地下数百から千メートルの安定した地層中の岩盤に埋設し、処分する(地層処分)。
処分の対象である廃棄物には、放射能レベルは非常に高いが半減期は比較的短い放射性物質(例えば、セシウム-137は約30年、ストロンチウム-90 は約29年)と、放射能レベルは比較的低いが半減期の非常に長い放射性物質(例えば、ネプツニウム-237は約214万年、ジルコニウム-93 は約153万年)とが含まれている。放射能量としては前者の方が強いため、全体の放射能量としては1000年後には約1万分の1になる。
地層処分はガラス固化体を30年から50年貯蔵した後に行われる。その後数十年にわたり順次埋設するために、廃棄物処分事業は地下処分施設の埋め戻し終了まで非常に長期にわたる。さらに、埋め戻し終了後は、廃棄物は人間環境から隔離され安全性が確保されることとなるが、放射性物質自体は世代を超えて長期にわたり地中に存在することになる。このため、廃棄物処分については、そのコストを現世代がどこまで負担し、将来の世代にどのような負担を残すことができるのかという世代間のコスト調整という問題が含まれている。同様に、現世代がどこまでのことを決定し、どういった事項を後世代の判断に委ねるべきかという世代間の意思決定の分担という問題も含まれている。
- 2.高レベル放射性廃棄物地層処分の現状
- 原子力発電を行ってきた多くの国では、すでに地層処分を実施するために着実な準備が進められている。すなわち、深地層研究のための地下研究施設の運用が開始されているだけではなく、廃棄物処分を行うための実施主体が設立され、事業資金の確保の取組がなされている国がほとんどであり、早いところでは21世紀の初めから自国において処分を開始することが予定されている。
例えば、スウェーデンでは、実施主体として1984年にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が設立され、1990年に地下研究施設の建設が開始されている。事業資金は電力会社が納付金として政府機関に納入し、国はそれを基金として積み立て、運用している。また、2008年から試験的に処分を開始し、2020年から本格的に処分を開始する予定である。
スイスでは、処分場設置の準備とプロジェクトの策定を行うために1972年にスイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)が設立され、1983年に地下研究施設の建設が開始されている。事業資金は電力会社が分担金として拠出しており、早ければ2020年に処分を開始する予定である。
ドイツでは、実施主体として1989年に連邦放射線防護庁(BfS)が創設された。事業資金は電力会社が分担金として負担している。1986年には処分候補地の調査のための地下探査施設の建設が開始され、2008年に処分を開始する予定である。
アメリカでは、1982年に連邦エネルギー省(DOE)が実施主体とされた。事業資金は電力会社が法律によって国の管理する基金への掛金として積立てている。1993年には処分候補地の適性を調査するための地下探査施設の建設が開始され、2010年に処分を開始する予定である。
カナダでは、公営企業である電力会社のオンタリオ・ハイドロ社を中心に実施主体の設立を進めているところであり、処分開始時期は未定であるが、1983年に地下研究施設の建設が開始され、電力会社はそれぞれ事業資金を引当金として計上している。
他の大半の国においても、実施主体が設立され、事業資金の確保に着手しており、処分技術についても現在の技術水準で処分可能とされ安全確保の考え方も示されている状況にある。
これに対してわが国においては、2000年を目安に実施主体を設立し、ガラス固化体の発生時期とその後の冷却期間などを勘案して、2030年代から遅くとも2040年代半ばまでには処分事業を始めることが予定されている。また地層処分を行うシステムの性能評価研究、処分技術の研究開発、地質環境条件の調査研究などが動燃事業団において進められており、地層処分の研究開発の成果を総合的に取りまとめた「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書−平成3年度−」では現在の技術水準で地層処分が可能であることが示されている。さらに、2000年前までには、地層処分技術の信頼性と処分地選定と安全基準策定のための技術的な拠り所が提示される予定である。しかし、より実証的な研究開発を進めていくためには深地層の研究施設が不可欠であり、その早期実現が求められている。また、廃棄物処分についての制度面の整備はまだ検討を行っている段階にあり、実施主体の設立や事業資金の確保も開始されていない状況にある。
このように、諸外国では、廃棄物の埋設自体はまだ実施されていないものの、その実施に向け、研究開発に加えて、実施主体の設立、資金の確保などが既に始まっており、廃棄物処分の実施に向けて着実な準備が進められている。これに比べて、わが国では、いまだに処分事業の具体化がなされておらず10年程度の遅れがあると言わざるを得ない。国と電気事業者は、処分制度の整備や事業資金の確保などに早急に着手する必要がある。そのためには、国民各層の議論を通じて、高レベル放射性廃棄物処分のあり方について検討し、国民の理解と協力を得ることが必要である。
- 第二部 各論
- 第一章 廃棄物処分について社会的な理解を得るために
- 1.広汎に議論を行うために
- 高レベル放射性廃棄物処分にあたっては、具体的な処分地の選定や廃棄物の埋設の開始などを行う段階毎に、後に述べるような透明性の高い決定プロセスを踏むことが必要である。しかし、一般の国民の間には原子力に対する不信・不安があり、廃棄物処分事業を進める前提として、まず、国民の持つ不信・不安に適切に対応し、同時に処分についての議論を国民各層に広げていくことが重要である。そのためには、以下の条件が確保される必要がある。 さらに議論を行う場として廃棄物処分に関するシンポジウムを各都道府県で積極的に開催していくことも考えられる。
- 2.透明性確保と情報公開
- 制度や組織への不安を少なくし信頼を得ていくうえで、透明性を確保することが前提となる。そのためには、法制化などによって透明性の高い制度や仕組みを整備することが必要であるとともに、情報公開の姿勢を徹底しなければならない。
- (1)制度・組織の透明性の確保
処分事業が今後どのように行われていくのかを明確にしておくことによって、将来に対する見通しが与えられ、事業に対する不安を少なくすることができると考えられる。このため、処分事業を進めていくにあたって、法律などによって事業の過程や体制などを明確化しておくことが必要である。
また、透明性を確保するために、制度的に外部からチェックできる仕組みを設けておくことが必要な場合がある。
1)制度の明確化
処分地選定の手順、処分計画・事業申請・安全審査、処分場の建設・操業、埋め戻し、埋め戻し終了後の対応など事業の過程を明確化しておくことが必要である。そのためには、法律などを整備して各段階を明確にしておくことが妥当である。
2)処分地選定の過程や事業活動に対する外部者による確認
事業について透明性を確保し、信頼を高める必要があることから、処分地選定の過程や処分場の建設・操業の過程における安全確保策など、実施主体の事業活動が予め定められた通りに行われているかどうかを外部から確認する仕組みを検討しておくことが必要である。
例えば、処分地の選定経過や選定の理由について、第三者の立場からチェックを行うことや、実施主体の活動内容や操業状況について、外部から安全性を含めて定期的に確認し、評価する仕組みが考えられる。
(2)情報公開
処分事業の透明性を確保し、意図的に情報を隠しているのではないかという不信感を招かないために、事業のすべての段階を通じて情報公開の姿勢を徹底することが不可欠である。このたびの動燃事業団の事故をめぐる情報秘匿ないしは操作は、この点に関する基本的な認識の欠如によるものであって、いかなる情報であれすみやかに情報を公開することが社会的な信頼を得る第一歩である。
情報公開に関する法制度が整備された場合には、それに則って対応することが必要である。
また、情報が常時公開されていれば情報を入手しやすく、データの比較も容易になることから、情報の公開は長期的に継続して行わなければならない。
1)情報公開のあり方
予備的調査の段階を含め処分事業の各段階で、処分事業に関する情報を公開するのが原則である。
例えば、処分候補地や処分予定地の選定を行うさい、選定過程の科学的・社会経済的な情報を公開して、処分地の選定の根拠を提示することが必要である。また処分予定地を選定したうえで、予備的調査やサイト特性調査で得られたデータ、また操業中に得られたデータなどを公開するべきである。さらに、事業を通じて、定期的にデータや報告書を公開することも重要である。
2)具体的内容
(a)処分事業では何が行われるのかを明示する。
処分事業について具体的内容、その手順、作業日程、処分場の規模、処分するガラス固化体の量など、処分事業では何がどのように行われるのかをまず明示することが必要である。さらに、処分事業の安全性や環境への影響の可能性などに関する情報を公開することが重要である。
また、具体的な処分事業に入る前段階としての予備的調査やサイト特性調査においては、調査が処分場立地の適性を調査するために行われることを明示したうえで、調査のために何がどのように行われるかについて技術的な面も含めて情報を公開することが地域住民の信頼を得るうえで不可欠である。
(b)選定過程での情報公開
候補地や処分予定地の選定を行うさいには、選定の根拠となる科学的・社会経済的な情報を公開しなければならない。
(c)事業の進行にともなう情報
処分事業の進行にともなって得られる情報についても常に入手可能な形で整理し公開することが必要である。
(3)誠実な対応
公開された情報が国民に信頼されるためには、次に述べる考え方が重要である。実施主体や関係機関は、求められる情報の提供に誠実に対応するとともに、出した情報が理解されるには、受け手側にとってわかりやすい形で正確な情報を伝えることが重要である。
疑問には迅速かつ丁寧に回答し、各層の人々に応じた対応をするなど、誠意のある姿勢を継続することが情報および情報発信者に対する信頼につながることになる。
1)情報の内容
(a)わかりやすい情報の提供
提供する情報が受け取る側にとってわかりやすいことが重要である。情報の提供は、国民の知る権利に対応するものであることを前提にして、誰にとっても理解できる情報であることが要求されている。
例えば、専門知識を持っていない人に専門用語を用いた情報を届けても、理解されない。難解な専門用語の使用は避け、用語のわかりやすい説明を添付したり、専門家の用いる言い回しを別の表現に代えるなどの配慮・工夫が必要である。Q&A形式や視覚的な情報を多く取り入れるなど情報の伝え方にも工夫が必要である。
(b)求められている情報の提供
人々が求める情報を提供することが重要である。そのためにも、求められている情報が何であるかに留意し、情報提供に反映することが重要である。とくに安全性に関しては、リスクや不確実性について明示することが必要である。
例えば、疑問、質問の多い事項を中心にした情報提供を行うことや、アンケートや意識調査を行ってどのような情報が求められているかを把握するように努めるべきである。
2)情報伝達の手段
(a)情報伝達手段の多様化
情報にアクセスできる手段を多様化する必要がある。生活様式や居住地域が人によって異なることから、情報へのアクセス手段をできるだけ多様化し、より多くの人々が必要な情報を入手できるようにすることが重要である。
例えば、情報入手についての時間的・地理的制約をできるだけ減らすために、インターネットの利用やファックスによる情報取り出しなどが考えられ、また、図書館・児童館や公的集会所への書物・資料の陳列によって、広く一般の人々の目に触れやすくすることが考えられる。
(b)情報源情報の充実
情報提供を行ううえで、情報がどこにあって、どうやれば入手できるのかという情報源情報を充実させることが重要である。情報源情報が充実していなければ、必要な情報を実際に入手することが困難だからである。
例えば、広報紙、広告などの広報媒体への掲載や、インターネットの活用などが考えられる。
(c)情報伝達スタッフの充実
第一線で情報を伝達するスタッフを充実することが重要である。多様な情報に対する需要に誠実に対応できるように情報を伝達する者の資質の向上を図らなければならない。
例えば、各層の人々に対応できる専門スタッフを教育・育成することや一般の人々に対する研究者や技術者の説明能力を高めることが必要である。研究者や技術者も、研究や技術の正確な内容を一般の人々に説明する義務を負っていると考えるべきであろう。
3)情報伝達を支える仕組み
(a)疑問・質問への対応
実施主体および関係機関は、外部の疑問・質問に対して迅速に対応できる体制を整備しておくことが必要である。人々が廃棄物処分について疑問を持った場合に、質問ができ、それに対して迅速かつ丁寧に回答する体制が必要である。
例えば、質問を受け付ける窓口を明確にし、その窓口で応対する専門スタッフを配置するとともに、スタッフが受け付けた質問が適切な部門に照会されて解答が正確であることを確認するなど、組織全体にフィードバックできる体制を整備することが重要である。
一方で、事実と相違する外部の情報に対して正確な情報を提供するなど適切な対応を行う体制を整備しておくことも必要である。
(b)情報開示の体制
実施主体は、処分場の選定過程や建設・操業・閉鎖などのそれぞれの段階で生ずるかもしれない事故などのあらゆる事態に関して、的確・迅速な情報を出す通報体制・情報開示体制を整備することが必要である。
(c)双方向の情報交流
実施主体および関係機関と国民や住民とが双方向に情報の交流を行えるような体制を整備することが重要である。
(d)ボランティア活動の支援
情報を広く伝達するには、ボランティア活動による情報伝達を支援することが重要である。
例えば、広報ツールを作る際にボランティア活動の場で利用できるような材料を企画し提供することなどによる支援が考えられる。
(e)マスメディアにおける議論の支援
国民の間で賛否にかかわらず広く議論が行われるようにメディアを通じてさまざまな意見が報道されることが重要である。このため、メディアに対する積極的な情報の提供や幅広いジャーナリストが参加するセミナーや公開討論会を支援する必要がある。
4)情報提供の継続
継続して情報提供を行うことが重要である。継続して提供することにより、情報および情報発信者に対する信頼が生まれると考えられる。逆にスポット的にしか情報が提供されない場合には、その内容にかかわらず、都合のよい情報だけを提供し、不利な情報を意図的に隠しているのではないかという疑問を招くことも考えられる。
- 3.教育・学習
- 情報を的確に判断するためには、情報の内容を理解するための基礎的な知識が必要である。このため、エネルギー、原子力、廃棄物の基礎的な教育や学習の機会を提供し支援することが重要である。このような活動は地層処分に対する国民の関心を深めることにも寄与するであろう。アメリカやカナダでは学習用の教材を作って教育機関に提供することや専門家との対話の機会を設けたり、広報センターや地下研究施設の見学を積極的に働きかけている。
(1)学校教育
長期的な観点から、若い世代に原子力に対する理解と廃棄物処分への関心を持ってもらうことが重要である。このための取り組みとして、学校教育によって放射線や放射性物質や深地層などについての基礎的な知識の浸透を図ることが重要である。
そのため、小中学校教育のカリキュラムに、環境問題・エネルギー問題・廃棄物問題全体にわたる広い分野の学習を取り入れることができるように学習教材や専門家派遣の機会を提供する必要がある。
(2)一般の人々への教育や学習
さまざまな人が基礎的な知識と認識を得ることができるように、多様な教育や学習の機会を設けることが必要である。
例えば、多様な知識や関心を持つ人々に対応した説明会や、エネルギー、原子力、深地層を対象としたセミナー形式での科学講座などを開催することが考えられる。
とくに地下の環境を実際に体験できるような深地層の研究施設などの現場訪問の機会を多くすることは施設の公開という目的に資するだけでなく、人々に廃棄物処分に対する正しい理解をもってもらうためにきわめて重要である。アメリカでは年間3000人以上、カナダでは年間2000人以上、スウェーデンでは7000人以上の人々が地下の研究施設を訪れている。
- 第二章 処分の技術と制度について
- 地層処分への不安を少なくし国民の信頼を得るためには、第一に、処分技術が国民に理解・信頼され、第二に、処分事業の裏付けとなる資金が確保され、第三に、処分を安全かつ着実に行う実施主体が設立され、第四に処分場のサイト選定から処分終了にいたるプロセスを規定する透明性の高い制度が整備されることが必要である。
そのさいの関係機関の役割は以下の通りである。国は、原子力行政を担う責任を負っているところから、処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負い、処分の円滑な推進のために必要な施策を策定する。電気事業者は、廃棄物の発生に責任を有する者として国民の理解を得るための活動を進め、資金拠出に責任を負う。動燃事業団の役割は、研究開発や深地層の科学的研究を着実に推進することである。
1.処分技術への理解と信頼を得るために
処分を行ううえで技術的に安全性が確保されることが前提であるが、それとともに、処分技術について国民の理解と信頼を得て社会的に安心を与えることが重要である。
(1)処分技術の信頼性の向上
1)研究開発の方向
平成9年4月15日に、原子力バックエンド対策専門部会は「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方について」報告書をとりまとめた。
2000年前までに、この報告書に示された技術的な目標を達成し、わが国における処分技術の信頼性を明らかにするとともに、処分予定地の選定および安全基準の策定に資する技術的拠り所を明らかにすることが必須である。
2)広く開かれた研究の推進
地層処分に関する研究は極めて学際的であることから、関連する広汎な諸分野の人材を幅広く確保し、関係機関と学界との連携なども含めて幅広い知見を集約し、それぞれの研究成果を有機的に統合すると同時に、研究活動が広く国民に公開され、透明性が確保されることが重要である。
処分技術の研究開発を推進していくためには、深地層の研究施設をはじめとする施設・設備の整備・充実および人材の養成・拡充を図ることが重要である。またこれら研究開発資金を十分に確保することが必要である。
3)処分技術のわかりやすい説明
処分技術についての理解と信頼を得るためには、一般の人々にわかりやすく説明することが重要である。地層処分の技術には、放射線に関する用語などの原子力科学のわかりにくさに加えて、深地層中という環境については一般の人々にほとんど知られておらず、また地質学的な年代という、一般にはイメージしにくい要素があるため、説明にあたっては一層の工夫が必要である。
4)社会に受け入れられる技術
技術はその時点での最高の知見を集めたものであるが、一方でその時点での知見に基くものであることから予見されていないことが起こりうる。このことを前提として、社会的に受け入れられるような仕組みや制度をつくることが必要である。
(2)深地層の科学的研究施設
処分技術について国民の理解と信頼を得るためには研究開発の成果が目にみえる形でわかりやすく示されることが必要である。特に深地層の研究施設は深部地質環境の科学的研究を実施するために建設されるが、同時に、一般の人々が実際に見て体験できるという意味で社会的な観点からきわめて重要な役割を持つことから早期に実現することが必要である。
1)研究開発状況の伝達
深地層の研究施設を建設し、深地層の研究が総合的に進められていることを示すことにより、地層処分研究の基盤が整いつつあることを社会に伝達することができる。
2)深地層の環境の体験
国民の各層が、深地層の研究施設において深地層の環境を体験できることに加え、研究者と直接的な対話を持つことにより深地層の環境についての科学的な理解を深めることができる。
できるだけ多くの国民が施設を見学する機会を持つためには、地上の生活環境と隔離された深地層の環境という特性に着目して考古学、化石など地下の幅広い特徴を示す施設をあわせて整備することも考えられる。
3)地域住民の理解
深地層の研究施設の早期実現を図り研究を推進していくうえで、地域住民の理解を得ることが必要である。科学的な研究施設といえども地域住民に不安や懸念を惹きおこした状況では施設の建設や研究の推進は困難である。研究施設がそのまま処分場となるのではないかといった不安や懸念を解消し信頼を得るためには、情報ネットワークを駆使した的確な情報の公開、施設の位置づけの明確化、施設の公開、現場研究者の真摯な対応などあらゆる手段をつくすことが必要である。
(3)技術的要件の検討にあたって
処分技術や実際に処分を行うことに対する国民の理解や信頼を得るうえで、専門家の間での技術的な議論だけでは解決できず、技術的要件について社会的な受容という観点から議論すべき課題が存在する。
例えば、処分の安全対策上の措置とその期間をどのように設定すればよいのかといった問題については、技術的な安全確保という観点と社会の安心という観点からの受容性とのバランスの中で定まってくる性質のものであるとの考え方がある。例えばカナダでは、安全性を評価するにさいし、1万年で処分場の放射能レベルはウラン鉱床と同じくらいのレベルにまでさがることと、サスカチュアン州にある数百メートルの深さのウラン鉱床では表面からはその放射能の影響が全く検出されないことから、1万年程度を考慮することが適当とされている。
また、処分場の操業が終了し処分坑道が埋め戻された後、どれだけの期間主坑を維持しておくべきかといった問題や、主坑が埋め戻され地上と隔離された後のモニタリングを行うべきかという問題は、技術的には主坑の維持やモニタリングは不要であるとしても、「安心感」を得るために社会が技術に対して要請していく問題であるという考え方もある。
このような問題の検討にあたり、技術的な「安全」と社会的な「安心」とのバランスを十分に配慮することが必要である。
2.事業資金の確保
廃棄物処分事業を具体化するためには、実際に事業を行う裏付けとなる資金が確保されることが必要である。処分の前段階としての候補地選定や予備的調査などを含め処分場の建設や操業、埋め戻しなど処分事業を行っていくには多くの費用がかかる。
海外ではほとんどの国がすでに基金や引当金などのかたちで資金確保を進めているが、わが国においては、過去30年の原子力発電の結果、ガラス固化体に換算して既に1万2千本相当(1996年3月現在)の廃棄物が蓄積しているにもかかわらず、処分資金の確保はいまだに開始されていない。資金の確保はむしろ遅きに失していると考えられ、後世代に負担を回さないためにも資金確保の体制づくりに早急に着手することが重要である。
(1)事業資金に関する諸外国の状況とわが国の状況
諸外国における事業資金について、アメリカでは、使用済燃料の中間貯蔵、輸送、研究開発費を含む処分の全費用を確保するために、議会の決定によって1983年から基金が設けられており、そのための拠出金として現在電気料金1kWhあたり1ミル(約12銭)が徴収されているが、拠出率の妥当性については毎年検討されている。
スウェーデンでは、使用済燃料やすべての放射性廃棄物の管理、原子炉の解体、研究開発などを含めたすべてのバックエンド費用について、発電所ごとに異なるが平均すると電気料金1kWhあたり2オーレ(約33銭)とされている。この費用については1981年から徴収されており毎年必要額が算定されている。
カナダでは、電力会社各社がそれぞれ使用済燃料の輸送・処分費用をカナダ原子力公社(AECL)の処分コンセプトを用いて算定し、例えばオンタリオ・ハイドロ社では1982年から電気料金1kWhあたり0.88ミル(約8銭)を徴収している。この水準が適切であるかについては各社とも定期的に見直しを行っている。
わが国においては、SHPが「高レベル放射性廃棄物処分事業に関する検討 中間とりまとめ(平成7年度)」の関連資料において、処分に要する費用のモデル計算を行い、その代表例として、事業全体で3兆円から5兆円(地域共生方策の実施に要する費用は除く)、電気料金1kWhあたり数銭から10銭程度と試算しているが、現時点では資金の確保は行われていない。
(2)事業資金の考え方
1)事業資金の負担
事業資金の範囲については後に述べるが、処分に直接要する費用は、受益者負担の考え方から電気料金の原価に算入し電気利用者が負担することが適当である。
2)事業資金の範囲
事業資金の範囲については、処分場の埋め戻し以降の管理費用をどうするのかという問題と、処分場の立地地域との共生に関する費用を事業資金に含めるかどうかという問題がある。
処分場の埋め戻し以降の管理費用については、管理の実施を次世代の判断に委ねるかどうかという問題とともに議論することが適当である。管理の要否については社会的な受容という点から重要な問題であるが、事業資金の確保を早急に行うためには、現時点において少なくとも必要となる処分場の主坑の埋め戻しまでの資金について考えることとし、それ以上の問題については基本的な考え方を早急に確立していくことが適当と考えられる。
また、共生費用については事業内容によって区分して考えることが適当である。立地地域との共生は実施主体が中心となって取り組むことが重要であるが、事業内容によっては国の事業として行うことが適当である。
(3)資金確保制度の考え方
1)事業資金を確保できる制度
事業資金の確保制度を確立するうえで、実際の処分場の建設や操業、埋め戻しに要する費用だけでなく、候補地の選定や予備的調査など前段階を含めた事業全体の費用が確保できるような制度とすることが必要である。
2)機動性および柔軟性を備えた制度
事業資金を必要な時期に機動的かつ円滑に支出することができるような制度であることが必要である。このためには、実際に資金が積み立てられるような制度とすることが適当である。また、事業の進展や事態の変更により事業資金の必要額が変動することが考えられることから、必要に応じて柔軟に確保額を変更できるような制度とすることが必要である。
(4)資金確保制度の確立
1)事業資金の算定
現世代が負担する事業資金の確保制度を早急に確立し、資金の確保を始めることが必要である。事業資金を電気料金の原価に算入するには、そのための制度の整備が必要であるが、そのさいに処分費用の算定がポイントになる。
処分場の設計・建設・操業と進めていく中で初めて明らかになってくる事項があることから、処分費用の算定を行ううえで、現時点では不確定な事項についてどう対応するのかという問題がある。つまり、電気料金の一部として支払を受ける以上、事業全体を通じて国民が納得できるような合理的積算を示すことは重要であるが、算定根拠となる処分事業の細部まで決める必要があるとすれば、合理的積算が出来るまで制度の整備が出来ず、事業資金の早期確保はできなくなる。
現時点では、事業資金の積算は特定サイトの施設設計に基くものとせず、現在の技術と知見とを前提として処分事業全体についてのモデルケースを設定し、それに基いて試算を行うとの考え方が適当である。
2)事業資金の見直し
処分事業の終了まで長期間を要するため、事業資金の算定に当たっては、当初想定した諸条件が変動することを前提として、一定期間毎に費用の見直しを行い、その時々の条件に応じて費用の確保額を見直していく仕組みを作っておくことが必要である。
(5)資金確保における関係機関の役割
廃棄物の発生に責任を有する電気事業者が、処分に必要な資金を確保することが適切であるが、国はそのための制度を早期に確立するべきである。
3.実施主体
国と電気事業者は、処分事業を安全かつ確実に実施することができ、国民から信頼される実施主体を早期に設立することが必要である。国は、廃棄物処分政策の責任者として円滑な処分実施と安全確保のため立法措置などにより制度と体制の整備を行うべきである。また、処分事業を実施する実施主体の活動の監督・援助を行うべきである。一方、電気事業者は、廃棄物の発生に責任を有するとともに、立地についても多くの経験を有する立場から、資金の確保と処分地選定という、処分事業でもっとも重要な事項について実施主体と一体となって行うべきである。
実施主体を設立するための法的措置の策定に早急に着手するにあたり考慮すべき点は以下の通りである。
(1)実施主体の役割
実施主体は、処分事業を実際に行う主体として、処分を安全かつ着実に実施する。処分事業を行うにあたって実施主体は、確実に事業を推進する責任と安全に処分施設を管理する責任を負う。
(2)実施主体の備えるべき要件
実施主体は、国の廃棄物処分政策に沿って処分事業を遂行する者であることが明確に位置づけられることが必要である。また、処分を安全に行うために技術的能力と経済的基礎を十分に備えることが重要である。さらに、事業の長期の操業、操業終了後の長期の監視などが必要となるため、長期安定性が必要であるが、他方で事態の変化に対応した組織として機動性、柔軟性が要求される。これらを備えたうえで、実施主体は国民から信頼されるものであることが必要である。
1)処分の実施能力
(a)技術的能力
処分を実際に行うことができる技術的能力を持つことが必要である。そのためには、サイティング、調査、設計のみならず安全性を含め総合的に処分技術を熟知した技術者の確保が必要である。
(b)経済的基盤
処分事業に必要な資金が確保され、必要な時点に円滑に支出できるように財務運営がなされることが必要である。
(c)運営・管理能力
処分事業が安全かつ確実に行われ国民から信頼されるためには事業の運営・管理が適切に行われることが必要である。このためには、内部でのチェック機能が十分働くと同時に、外部(第三者)からのチェックが可能であるような実施主体の組織や体制を整備することが必要である。また、組織や体制のあり方について適宜見直しを行い、その結果に応じて迅速に対応出来ることが必要である。
2)長期安定性、柔軟性
(a)長期安定性
処分事業の長期の操業、操業終了後の長期の監視などが必要となるため、その間、実施主体が存続できることが必要である。実施主体の長期に安定して存続するためには、経済的基盤の確立と解散に対する歯止めが必要である。実施主体の形態が国に近いものであれば長期安定性は増すが、民間に近い形態であっても、解散について立法措置により歯止めをかけることは可能である。
(b)柔軟性
処分事業は長期間にわたることから、事態の変化に柔軟かつ機動的に対応出来ることが必要である。一定期間毎に見直しを行うことを規定しておくことによってある程度の柔軟性を確保することは可能であるが、法令や予算などによる制約が少ない方が、柔軟性の点からは優れていると考えられる。
(3)実施主体が重視すべき点
処分事業は経済性・効率性を考慮して運営されることが重要であるが、最も重視しなければならないのは国民にとっての信頼性の確保であり、安全性確保という公共的側面が重要である。このため、経済性を重視するあまり、例えば過度に下請け依存するような体制を取ってはならない。
(4)実施主体のあり方
実施主体のあり方を考える場合に、処分事業を国の事業と捉えるか民間の事業と捉えるかという問題がある。
廃棄物処分はエネルギー政策に関する国民全体の問題であり、国が直接事業を行うことが適当であるという考え方がある。国が直接事業を行うことにより信頼性や長期安定性を確保することができ、事業資金の裏付けも確実であり、処分場の立地においても円滑に進めることができるという考え方もある。しかし、この場合発生 者負担の原則が不明瞭になり、また国が事業の実施と監督をともに行うという問題点がある。また、実施主体の技術者集団が公務員として国の中に組み入れてしまうと民間との技術交流に支障が出るのではないかとの懸念もある。
一方で、発生者負担の原則から民間の事業として行い、国は事業の監督・援助を行うことが適当との考え方がある。民間の事業とした場合、国は外部から監督を行うことからその効果は高い。また、経済性・効率性や柔軟性・機動性に優れているという長所があり、処分事業者としての明確な位置づけや長期安定性については立法措置などにより補うことができる。
処分事業の主体を考えるさいに重視すべきは発生者負担の原則と安全性の確保である。このため、実施主体のあり方としては国が直接事業を行うのではなく民間を主体とした事業とし、事業に対して法律と行政による監督が行われることが適当である。また、国は廃棄物処分政策の責任者として資金の流れや健全な経営などに対する監督および安全規制を行い、立地活動を含めたサイト選定のプロセスの中で適切な役割を果たすことが適当である。
4.諸制度の整備
国は上に述べた、資金、実施主体に関連する制度に加えて、次の項目についてもあわせて制度の整備を図るべきである。
(1)処分地の選定を含めた事業終了までのプロセス策定
処分事業のプロセスについて、社会的に合意を得られるような透明性の高い制度を策定することが必要である。特に処分地の選定プロセスについては後に述べるが、このようなプロセス・手続は法律あるいは閣議決定などによって国民の前に明らかにされていることが重要である。
(2)処分場閉鎖終了前後の管理のあり方
国民および地域住民の安心感の確保のために、処分場の閉鎖終了前後の管理のあり方についても次の点を明らかにしておくことが重要である。
1)処分坑道埋め戻し後、主坑の埋め戻し(処分場の閉鎖)までの期間の設定
処分場の操業が終了し処分坑道が埋め戻された後も、主坑を一定期間閉鎖せずに維持しておくなどの措置が必要という考え方がある。例えば、アメリカでは現在50年から100年の間主坑を閉鎖しないこととされている。主坑を埋め戻さずに維持するのは、処分された廃棄物が予測通りの動静を示すのかどうかモニターするとともに、万一の事故の際の廃棄物の回収などの対応が容易であるという点で、周辺住民の「安心感」が増大するという考え方によるものである。他方で、長期にわたり主坑を埋め戻さずに維持しておく場合には主坑の構造を強化しておく必要があるため、建設・維持・管理のコストが増加し、これに対する手当てをしておく必要が生ずるだけでなく、長期間主坑が残されることの地質環境への影響について技術的な配慮が必要となる。このように主坑の埋め戻しまでの期間については安全と安心のバランスを考慮して検討することが必要である。
2)処分場の閉鎖終了後の管理、モニタリングの方法、期間
技術的には不要という考えがあるが、国民の安心を得るためには、処分場の閉鎖終了後も一定期間の管理体制を維持することが必要と考えられる。例えば、モニタリングを継続し、一定期間毎にチェック・アンド・レビューを行い、その結果に応じて管理の方法を変えるという考え方もある。
(3)処分場地下空間の利用制限とそれを担保するための手段
人間活動による廃棄物への接近を防止するため、法律に基づく処分場地下空間の利用制限を検討することが必要である。また、処分についての記録の永続的な保存の方法と制度について検討することが必要である。
なお、処分場の地上部分は安全が確保されているため、実施主体の本部および地域共生施設などによる地上利用を検討する必要がある。
(4)損害賠償制度の確立
危険物管理責任に基いた損害賠償責任とその履行について明確にしておく必要がある。処分事業は、従来の原子力事業と異なり、埋設事業の終了後も長期にわたって放射能が残留しているので、実施主体がたとえ存続しなくなった場合であっても万一の事故に対する賠償責任を負う主体を明確にしておくことが重要である。
(5)安全基準の策定
処分場建設・操業計画の安全審査を行う際の安全基準の策定に向けて、安全確保の基本的考え方とその体制を策定しておくことが必要である。かかる基本的考え方が策定されることが国民の理解と信頼を得るとともに、処分地の選定を円滑に進めるためにも重要になる。安全基準の策定に際し、単に技術的な観点からだけではなく、安全性に対する社会の考え方についても十分考慮することが必要である。
5.長期性への対応
高レベル放射性廃棄物地層処分の長期性に関連して、社会経済的状況の変化に応じて柔軟に対応できるようにしておくことが重要である。
そのため、制度の整備にあたっては、一定期間毎の見直しを規定しておくことも検討する必要がある。また、現世代が全て今の時点で決定してしまうのではなく、後世代が、その世代における諸条件の下で一定の決定をする余地を残しておく枠組みを設けておくことも重要である。そのさい、意思決定およびコスト負担を後世代とどのように分担するべきか、現世代のうちに意思決定を行っておく必要がある事項について具体的に議論を進めていくことが求められる。
具体的には、処分場の選定、処分場の建設開始、埋設の開始、処分坑道の埋め戻し、主坑の埋め戻し、閉鎖(主坑の埋め戻し)終了後の管理の期間、実施主体の存続期間などといった事項について、現世代のうちに決めておくべきかどうかを決定することになる。
例えば、現在の技術水準によれば処分場の閉鎖終了後の管理は不要であろうと評価されているが、現世代では処分場の閉鎖(主坑の埋め戻し)終了までのコストを負担することとし、実際に主坑の埋め戻しを行うか、それともそのままの状態でなおも管理を続けるかどうかを、その時点での技術的な水準に照らして、その時点の世代に判断を委ねるとの考え方も可能である。このような場合には、処分場建設時点で、操業終了後も主坑を長期に維持できるように強度を高めておくなどの長期維持性能をおり込んでおく必要がある。
また、将来、実施主体が解散した場合でも、万一の場合に対する損害賠償責任が継続される必要があるが、現世代がどこまで賠償の原資を負担すべきかを検討しておく必要がある。
第三章 立地地域との共生
ここでは、処分場を立地するにあたって、立地地域の住民の理解を得るために、どのような観点から考えるべきかを検討する。
1.基本的考え方
(1)実施主体と立地地域との共生のあり方
電力消費地域の住民が原子力発電による利益を一方的に享受し、他方で処分場立地地域住民に処分に伴って生じるかもしれない負担を一方的に押しつけることがあってはならない。そのため、事業主体が行う処分事業は、地域における雇用増大、インフラ整備、産業の活性化など地域住民の生活水準の向上や、地域の活性化につながり、事業の実施と地域社会とが「共生」できる関係を築くものでなければならない。
地域住民との共生のためには、事業実施にあたって地域住民の意見が反映されることが不可欠である。 また、実施主体と地域住民との人的交流が重要であり、とりわけ、実施主体による地域住民の雇用は、実施主体と地域の一体感を深めるために重要である。
また、地域産業との共生のためには、立地に伴い地域産業が活性化され、処分場の施設を利用した、例えば、処分場の施設と連携した産業の育成が図られることが重要である。
(2)「共生施設」としての位置づけ
高レベル放射性廃棄物処分場は、一般の廃棄物処理場と同じく地域住民によって「迷惑施設」としてとらえられることも考えられる。この点について、処分事業の安全性を確保することはいうまでもないが、事業の実施と地域の生活が「共生」の関係に立つことによって、地域住民にとって処分場は単なる「迷惑施設」ではなくなることになる。処分事業は、そのような観点に立って地域との共生を常に追求していく必要がある。
(3)立地地域と電力消費地域の連帯
1)「連帯」の考え方
立地地域と電力消費地域の社会経済的公平を確保するためにも、立地地域以外の人々が、処分事業を自分たちの問題であると認識することが重要である。そのため、立地地域と電力消費地域とが情報を交流して直接的な交流を通じて相互に理解を深めることが重要である。
2)電力消費地域への働きかけ
立地地域住民と電力消費地域住民とが相互に交流するために、立地地域で消費地域住民との交流会を開催することや、マスコミやミニコミによる立地地域の紹介、あるいは物産展などの催しを電力消費地域で実施するなどの方策を検討することが必要である。
2.立地地域との共生に向けた取組
実施主体は、地域との共生を進める中核的機関として、立地地域に本拠を置き、地域住民の雇用や地域住民との交流を進める必要がある。また、共生方策を進めていく中で、地域住民の意見が十分に反映され参加意識を持てるよう地域住民が企画段階から参画する仕組みをつくることが重要である。
国は、廃棄物処分政策の推進者として、地域振興策を有効に活用できる体制を整えることに加えて、地域特性や長期性などの事業特性を考慮した共生方策の整備を図ることが必要である。また、事業内容によっては国の事業として行うことが適当である。
電気事業者は、廃棄物の発生に責任を有する者として、地域共生方策の実施においても実施主体と一体となって総合的に取組むことが必要である。
(1)地域との共生に向けた取組の考え方
1)長期的視点に立った地域共生の取組
処分事業が長期にわたるものであることから、まず地域共生の全体的な構想を策定しておき、事業の各段階に応じて具体的方策を行うことが必要である。そのうえで、地域の社会・経済的変化に柔軟に対応するため、一定期間毎に全体構想を見直すことができるようなシステムを整備することが重要と考えられる。
また、処分場の埋め戻し以降の共生方策については、埋め戻し以降の管理の実施の問題とともに議論することが妥当である。このため、現時点では処分場の埋め戻しまでの共生方策について議論することが適当である。
2)地域特性・事業特性に応じた地域共生に向けた取組
地域共生に向けた取組の内容は、地域の社会・経済的特性に応じたものでなければならない。地域の意向を十分に反映した方策を策定するにあたっては、実施主体が提示するいくつかの計画案の中から関係地域の自治体が地元にとって最適と考えられるものを選択するという方法や、地域住民・自治体などの意向を反映させた共生計画を策定するために、地域住民が参加する委員会などを設置するなどの方法が考えられる。
また、処分事業の特性を生かした共生方策を策定することも重要である。研究開発機関・教育機関の立地による先端技術・先端知識の集積、坑道や地上地下空 間を利用した教育施設やテーマパークの立地など処分場施設そのものを多目的に利用した地域産業の育成の可能性を含めて検討することが必要である。
3)継続性のある地域共生
共生方策がただ公共施設を整備するだけに終わらないためにも、例えば、振興事業や研究事業を募集し、それに対して国や実施主体が支援を行うなど、継続的に振興事業や研究が集積していくようなシステムをつくることが考えられる。
(2)立地地域の主体性
1)共生方策の策定における立地地域の役割
共生方策を策定するにあたっては、立地地域の主体性を尊重しなければならない。地域が主体となって、地域のニーズに応え、地域の特性を生かした共生策を企画・選択する仕組みを作ることが必要である。
2)共生方策策定の支援体制
立地地域が主体となって共生方策を企画・選択していくうえで、国・実施主体・電気事業者などの関係機関が地域における人材育成支援やノウハウの提供などの側面支援を行うシステムを構築することが重要と考えられる。
第四章 処分地選定プロセス
処分事業を通じて処分場の立地は特に重要である。ここでは、処分地の選定にあたって国民および立地地域住民の理解を得るために、どのような観点から考えるべきかを検討する。
1.基本的考え方と検討課題
処分地の選定プロセスの概略は、「長期計画」によると以下の通りである。
1)実施主体は、地層処分の候補地として適切と思われる地点について予備的に調査を行い、処分予定地を選定する。国は、立地の円滑化を図る観点から必要な措置を講ずるため、その選定の結果を確認する。その地点を処分予定地とするにあたって、実施主体は地元にその趣旨を十分に説明し、その了承を得ておくものとする。
2)次に実施主体は、実際の処分地としての適性を判断するため、処分予定地において地下施設による所要のサイト特性調査を行う。
3)実施主体は処分地として適当と判断すれば、処分場の設計を行い、処分にかかる事業の申請を行う。国は、処分にかかる事業を許可するにあたり、必要な法制度などの整備を図るとともに安全審査を行う。
その後は、処分場の建設・操業を経て、処分坑道および主坑の埋め戻しが行われ、施設が閉鎖される予定である。
処分地選定プロセスに関する制度を国民の理解を得て今後整備していくために、検討すべき点は以下の通りである。
(1)透明性の確保と情報公開
先に述べたが、処分事業のすべての段階を通じて情報公開の姿勢を徹底し、透明性を確保することは、処分への不安を少なくし、信頼を得るために不可欠である。
(2)住民の位置づけと調整の場
処分事業を行っていくうえで住民の意見をどのように反映させていくのかという点を含めて、住民の位置づけについて検討を行うことが必要である。
1)住民の範囲
住民関与の形態の検討とあわせて、地域的にどの範囲の住民の意見を聞くべきかという点に関する基本的考え方について検討しておく必要がある。例えば、立地地点を含む市町村の住民とするのか、地区とするのか、あるいは都道府県単位とするのか、周辺の市町村や都道府県も含めるのかという点である。
また、意見を聞く際に、対象に含まれる住民の意見を全て同じように聞かなければならないのかということも検討しておく必要がある。すなわち、立地地点との関係に応じて、意見を聞く内容や程度が異なってしかるべきではないかという点である。
2)住民の意見
処分事業の各段階で様々な決定を行う際に、住民の意見をどのように反映させていくのかについて検討しておくことが必要である。
情報公開や住民の意見の反映に努めることなどにより、できる限り住民の合意を得ることが重要であるが、候補地決定、予備的調査の実施、予定地決定などの重要な決定に対し、例えば、地域住民の意向を反映した自治体首長の間(知事と市長の間や隣接市町村の首長の間)で意見が分かれた場合や、住民によって選ばれた自治体首長と議会の意見が分かれた場合などにどうするか、という問題も検討しておく必要がある。
3)調整機関の設置
実施主体と住民との間に生じる様々な課題について当事者が意見を述べ、また調整を行うための場を設置し、当事者が参加する形で調整を行うことが重要である。また、発生した問題の内容に応じ、第三者による調整機関を設置することも検討すべきである。
(3)自治体の役割
処分事業を行っていくうえで、自治体の協力を得ることが不可欠である。
また、都道府県と市町村の役割は異なるものの、自治体には実施主体が入手しにくい判断材料や地域の要望などの情報を提供し、住民の意見を吸い上げる役割が期待される。
また、都道府県は、立地地域と周辺地域との間の調整機関となる場合もありうる。
2.処分地選定の各段階の検討
処分地の選定を行っていく上で、以下の点について個別に検討しておくことが必要である。
(1)処分候補地の選定
実施主体が予備的な調査を行う候補地を選定(複数地点を想定)するにあたり、以下の点について検討しておくことが必要である。
1)処分候補地選定前の情報の開示
予め処分地選定の技術的な要件を明らかにした上で、処分事業では何が行われるのかを、共生方策の案とともに提示する。
2)処分候補地選定方式
(a)公募方式
あらかじめ、処分地選定の要件・地域共生方策の案などの情報を明示した上で、自治体から誘致表明のあった地点の中から処分候補地を選定する。
(b)申入方式
処分候補地として適切であると実施主体が判断する地点について、地域住民に情報を提供しつつ自治体に申し入れる。
(c)公募あるいは申入方式によっても受け入れるところがない場合の対応
処分候補地として適切であると判断する地点を実施主体が選定する。その結果について必要であれば、国が調整を行うという考え方もある。実施主体が選定する場合であっても、自治体首長の了解を得る手続について検討しておく必要がある。
(2)予備的調査
予備的調査の実施を申し入れるにあたって自治体、地域住民、土地所有者などの同意が得られない場合の対応を検討しておく必要がある。
(3)処分予定地選定
1)地元の了承
処分予定地選定の際に「長期計画」では地元の了承を得ておくとされているが、地元とは都道府県・市町村といった自治体を指すのか、あるいは特定の地区を指すのかを検討しておくことが必要である。また、了承とは首長が単独でできるのか、あるいは首長が議会の承諾を得て行うのかなど、首長や議会の役割を検討しておく必要がある。
2)国の確認
調査の結果に基いて実施主体が予定地選定を行うが、その際「長期計画」においては、国が処分予定地の選定結果を確認するものとされている。国の確認については、その内容や手続がどのようなものであるかを具体的に明らかにしておくことが必要であるが、関係行政機関が一体となって確認のプロセスに参画することが望ましいと考えられる。
(4)処分地の決定
実施主体は、実際の処分地としての適性を判断するため、処分予定地において地下施設によるサイト特性調査を行う。「長期計画」においては、調査の結果に基き、実施主体が適当であると判断すれば処分地として決定し、処分場の設計を行い処分に係る事業申請を行うものとされている。これに対して、この問題は国民的な問題であることから、処分地の決定にあたっては、内閣や国会による意思決定を行う必要があるとの考え方がある。
さいごに −いま、何をしなければならないか−
高レベル放射性廃棄物処分を進めていくうえで必要なことは、廃棄物処分の安全性が確保され、透明性ある制度が作られ責任体制が明らかにされることであり、処分事業に対する国民および地域住民の理解を得ることである。そのためには、国民各層の間でこの問題についての議論がなされ、一人一人が自らの身に迫った問題であると意識してもらうことである。国、電気事業者、実施主体などの関係機関がなすべきことは、それぞれの役割を果たすと同時に、上にあげた点について国民の各層に議論してもらえるよう努めることである。特に事業資金の確保については制度確立に向けて1998年度には処分費用の算定に取り組み、実施主体については2000年目途の設立に向けた法的措置の整備に早急に着手するべきである。
他方、原子力発電に伴う高レベル放射性廃棄物処分の問題については、政治の場においても法的枠組という形で現世代の意思の内容が明らかにされることが必要である。
そのためにも、国民の各層における議論が十分に行われ、国民の合意形成を図る努力がなされなければならない。