資料(懇)7-3


特別会合 中間報告



平成9年3月21日

社会的受容性に関する特別会合
サイト選定プロセス・立地地域との共生に関する特別会合




− 目 次 −


第一部  総論

 I.なぜ、高レベル放射性廃棄物処分について議論しなければならないのか


  1.高レベル放射性廃棄物処分にかかる論議の現状

  2.議論をする必要性

 II.高レベル放射性廃棄物地層処分とは

  1.高レベル放射性廃棄物地層処分のプロセスと特徴

  2.高レベル放射性廃棄物地層処分の現状
     −諸外国の状況と日本の状況−


第二部  社会的受容性に関する特別会合

 I.広汎に議論を行うために


  1.処分技術の確立及び透明性のある処分制度の整備
   (1)技術の確立
      a.研究開発の進展
   (2)事業資金の確保
   (3)制度の整備
      a.信頼性のある実施主体の設立
      b.処分場立地地域の選定を含めた事業終了までのプロセス策定
      c.損害賠償制度の確立
      d.処分場閉鎖終了前後の対応
      e.安全基準の策定

  2.透明性
   (1)情報公開
   (2)制度・組織の透明性確保
      a.制度の明確化
      b.事業活動に対する外部者による確認


  3.誠実な対応
   (1)情報
      a.情報の内容
      b.情報伝達の手段
      c.情報伝達を支える仕組み
      d.継続した情報提供

  4.教育・学習
   (1)学校教育
   (2)学校以外での教育・学習


第三部  サイト選定プロセス・立地地域との共生に関する特別会合

 I.立地地域との共生


  1.基本的考え方と検討課題
   (1)共生の考え方
      a.実施主体と立地地域との共生のあり方
      b.「迷惑施設」から「共生施設」へ
   (2)共生方策のあり方
      a.地域振興策の考え方
      b.関係機関の役割
      c.処分場施設の多目的利用の可能性
   (3)立地地域の主体性
      a.共生方策策定における立地地域の役割
      b.共生方策策定の支援体制
   (4)立地地域と電力消費地域の連帯
      a.「連帯」の考え方
      b.電力消費地域への働きかけ



 II.サイト選定プロセス

  1.基本的考え方と検討課題
   (1)情報公開と透明性の確保
      a.情報公開
      b.透明性の確保
   (2)住民の位置づけ
      a.住民の範囲
      b.住民の意見
      c.調整機関の設置
   (3)国、実施主体、電気事業者、自治体の役割の明確化
      a.国の役割
      b.実施主体の役割
      c.電気事業者の役割
      d.自治体の役割
   (4)長期性への対応

  2.処分事業の各段階の検討
   (1)予定地選定までの検討
      a.候補地選定
      b.予備的調査
      c.処分予定地選定
   (2)サイト特性調査以降の検討
      a.処分地の決定
      b.処分場建設及び操業
      c.処分場の閉鎖終了前後の対応

第四部  いま、何をしなければならないか

 I.現世代が決定しておくこと



(参考)
  特別会合開催状況
  高レベル放射性廃棄物処分懇談会 特別会合の設置について


第一部  総論

I.なぜ、高レベル放射性廃棄物処分について議論しなければならないのか

1.高レベル放射性廃棄物処分に関する論議の現状
 我が国の現状として、原子力発電の際生じる高レベル放射性廃棄物やその処分について知らないという人々が多い。また、知っていたとしても廃棄物からの放射線による環境への悪影響があるのではないかという不安や、安全に処分されるという情報に対して不信感を抱いている人が多い。
 一方で、原子力発電や廃棄物処分への漠然とした懸念を持ちながらも、一般の人々の間では、この問題が自分自身の問題であるという意識が薄く、処分問題に対して積極的に発言することも少ない状況にある。
 このような状況にいたった要因として次のことが考えられる。第一に、処分問題は、後に述べるように廃棄物処分場の操業開始までに要する期間が長く、事業の終了まで非常に長い期間がかかるため、一般の人々の議論になじみにくかったという点である。第二に、従来、技術的な側面に議論が集中してきたため専門家・技術者の間から一般の人々の間へと議論が広がりにくかったという点である。第三に、広く各層の人々が議論するような場あるいは議論のための材料が十分に提供されてこなかったという点もある。
 さらに、これまでにも、原子力発電を含めた核燃料サイクル事業の完結性という観点から、高レベル放射性廃棄物の処分に早急に取組むことの必要性が唱えられていたものの、国及び電気事業者は、稼働中の原子力施設の安全性の確保や、電力の安定供給を確保するための発電所の立地などに重点的に対応してきたため、廃棄物処分問題は重要な課題の一つとして残されている。


2.議論をする必要性
 我が国では原子力発電が行われ、1995年度には発電量の約34%が原子力発電によって供給されており、原子力発電は我が国の電力供給に欠かせない部分を担っているのが現状である。とりわけ、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で全国の電力消費量の約25%を消費しているが、この地域に電力を供給している東京電力では、発電量の約40%が原子力発電によってまかなわれている。
 これまでに原子力発電によって発生した高レベル放射性廃棄物の量は、1996年現在で廃棄物のガラス固化体に換算して約1万2千本に相当するが、高レベル事業推進準備会(SHP)の「高レベル放射性廃棄物処分事業に関する検討 中間とりまとめ」(平成7年度) における、現行「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(平成6年6月、以下「長期計画」)の原子力発電規模の見通しに基く試算によると、今後2030年までに約5万8千本相当の高レベル放射性廃棄物が発生し、合計で約7万本相当(地下施設として約7km程度が想定される)になると見込まれている。

 このように、高レベル放射性廃棄物は既に存在しており、今後の原子力発電のあり方いかんにかかわらず、その処分を具体的に実施することが必要である。また、後に述べるように、これまで原子力発電を行ってきた諸外国においては、将来の原子力発電についての立場にかかわらず、既に処分の実施に向けての準備は着実に進められている。
 現世代が発生させた廃棄物について現世代のうちにその処分に関する制度を確立することにより、後世代に負担を残さないことは我々の責務である。原子力発電により社会生活を維持している現世代が廃棄物処分について先送りするならば、そのツケは後世代に残されることになる。我々は今できることについて早期に着手しなければならない。
 また、廃棄物の処分活動の開始時期などの重要な決定を行う際に、国民各層の間における公平と公正を確保することが重要である。
 さらに、処分を行うにあたり、処分場立地地域住民と原子力発電によって電力供給を受けている電力消費地域の住民との間の「公平」を確保することも必要である。電力消費地域の住民が、一方的にその利益を享受することがあってはならず、また、処分場立地地域住民に一方的に処分に伴って生じるかもしれない消費地域とは異なる負担を押しつけることがあってはならない。このために、処分場立地地域と電力消費地域との連携を図って、両者が共生していくという考え方が必要である。
 しかし、世代間及び地域間の公平と公正を図るというような問題は本来専門家の間での技術的な議論だけで解決できる問題ではない。こういった問題をどのように解決していくべきかについては、国民各層の間で広汎に議論が行われ、国民の間の合意形成が図られるべき重大な問題である。我々がここで述べようとしているのは、この問題に関してどのようにすれば国民各層の間で議論が行われる基本的条件が整うのか、また、実際に事業を具体化していく上で、どのような考え方に基いて制度を設けていくのかという点であり、その際に、どのような点に留意しなければならないかという点である。

II.高レベル放射性廃棄物地層処分とは

1.高レベル放射性廃棄物地層処分のプロセスと特徴
 原子力発電所で使用された使用済燃料から再処理によりウランやプルトニウムを取り出す際に、高レベル放射性廃棄物は高レベル放射性廃液の形で分離される。この廃液を安定で取扱を容易な形態にするため、ガラス原料と混ぜて高温で溶かし、ステンレス製の容器(キャニスター)に流し込み、冷やして固める(ガラス固化)。こうしてできたガラス固化体は冷却のため30年から50年間程度貯蔵した後、地下の深い地層中に処分する(地層処分)。
 処分の対象である廃棄物には、半減期は比較的短いが放射能レベルの非常に高い物質(例えば、セシウム-137やストロンチウム-90 )が含まれる。また、放射能レベルは比較的低いが半減期の非常に長い放射性物質(例えば、ネプツニウム-237は約214万年、ジルコニウム-93 は約153万年)が含まれる。
 処分を行う前に、ガラス固化体を30年から50年貯蔵を行うことと、埋設する量が多いことなどから操業期間も数十年にわたり、さらに埋め戻し終了まで含めると非常に長期にわたる事業である。また、埋め戻し終了後は、人間環境から隔絶されることとなるが、世代を超えて長期にわたり放射性物質自体は地中に存在することになる。このため、安全性の確保を前提にしつつも、後に述べるように高レベル放射性廃棄物処分には、それに伴うコストを現世代がどこまで負担し、将来の世代にどういったコストを負担してもらうのかという世代間のコスト調整という問題が含まれている。同様に、現世代のうちにどこまでのことを決定しておき、どういった事項を後世代の判断に委ねるべきかという世代間の意思決定の分担という問題も含まれている。
 また、現在の技術によれば、高レベル放射性廃棄物は深地層中に埋設することがもっとも安全と国際的に考えられているが、深地層中という環境はなじみが薄かったため、地層処分がどのようなものであるかについて理解することは一般の人々にとって困難であるという問題がある。


2.高レベル放射性廃棄物地層処分の現状 −諸外国の状況と日本の状況−
 原子力発電を行ってきた多くの国では、処分する対象が再処理後のガラス固化体か使用済燃料かという形態のいかんにかかわらず、地層処分を実施するための着実な準備が進められている。すなわち、地下研究施設の建設と運用が行われているだけではなく、現実の処分のための実施主体が既に設立され、事業資金の確保等も始められている。また、ほとんどの国は、自国において早ければ21世紀初頭から処分を行うという状況にある。
 例えば、スウェーデンでは、実施主体としてスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)が設立され、電力会社が納付金として事業資金を政府機関に納入し、国はそれを基金に積み立てている。また、処分については2008年から実証処分を行う予定ということである。
 スイスでは、実施主体としてスイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)が設立され、電力会社が事業資金を分担金として拠出しており、早ければ2020年に処分を開始する予定ということである。
 ドイツでは、実施主体として連邦放射線防護庁(BfS)が設立され、電力会社が事業資金を分担金として負担しており、2008年に処分を開始する予定ということである。
 アメリカでは、実施主体は連邦エネルギー省(DOE)であり、電力会社は基金への掛金として事業資金を支払い、2010年に処分を開始する予定ということである。
 カナダでは、公営企業である電力会社のオンタリオ・ハイドロ社を中心に実施主体の設立を進めているところであり、処分開始時期は未定であるが、電力会社はそれぞれ事業資金を引当金として計上している。
 他の大半の国においても、実施主体が設立され、事業資金の確保に着手しており、処分技術についても現在の技術水準で処分可能とされている状況にある。
 これに対して我が国においては、2000年を目安に実施主体を設立し、ガラス固化体の発生時期とその後の冷却期間などを勘案して、2030年代から遅くとも2040年代半ばまでには処分事業を始めることが予定されている。また地層処分を行うシステムの性能評価研究、処分技術の研究開発、地質環境条件の調査研究等が動燃事業団において進められており、地層処分の研究開発の成果を総合的に取りまとめた「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書 (平成3年度)」(以下、第1次取りまとめ)において現在の技術水準で地層処分は可能であることが示されている。さらに、2000年前までにはその信頼性と処分地選定と安全基準策定のための技術的な拠り所が提示される予定である。しかし、研究開発をさらに進めていくためにも深地層の研究施設が不可欠であり、その早期実現が求められている。また、制度面の整備はまだ検討を行っている段階にあり、実施主体の設立や事業資金の確保も開始されていない状況にある。
 このように、諸外国では廃棄物の埋設自体はまだ実施されていないものの、その実施に向け、研究開発に加え、実施主体の設立、資金の確保が既に始まり、着実な準備が進められている。これに比べて、我が国ではいまだに処分事業の具体化がなされておらず、国と電気事業者は、処分制度の整備や事業資金の確保などについて早急に着手する必要がある。あわせて、各層の人々による議論を通じて、高レベル放射性廃棄物処分場の実現に向けての国民の理解と協力を得ていくことが必要である。



第二部  社会的受容性に関する特別会合

I.広汎に議論を行うために

 具体的な処分地の選定、廃棄物の実際の埋設の開始など、将来高レベル放射性廃棄物処分にあたって政策判断を行う段階毎に所要の決定プロセスを踏むことを前提としつつ、現時点で早期に、処分に向けた制度の整備や資金の確保に着手する必要がある。そのためにも、国民の持つ不信・不安に適切に対応し、同時に処分についての議論を各層の人々の間に広げていくことが重要である。このため、議論の広がりを妨げていると考えられる点に対応するため以下の事項について取組むことが重要である。また、例えば、処分に関するシンポジウムの各都道府県での開催などといったことがきっかけとなり、議論が広がっていくとの考え方もある。このような処分に関する国民各層の広汎な議論を通じて国民の理解を得ていく必要がある。


1.処分技術の確立及び透明性のある処分制度の整備
 地層処分への不安を少なくし信頼を得ていくためには、まず、第一に、処分技術が目にみえる形で確立され、第二に、処分事業の裏付けとなる資金が確保され、第三に、体制を含めた制度が十分に整備されることが必要である。
 その際の関係機関の役割は以下の通りである。国の役割は、処分が適切かつ確実に行われることに対して責任を負い、処分の円滑な推進のために必要な施策を策定することである。電気事業者の役割は、廃棄物の発生に責任を有する者としての役割を十分果たすことである。動燃事業団の役割は、研究開発や地質環境調査を着実に推進することである。

(1)技術の確立
  a.研究開発の進展
   1)処分技術の確立が目にみえる形で示されることが重要である。
       (例)
        ・地下研究施設における技術の実証
        ・研究開発資金の確保
        ・幅広い知見の集約(関係機関と学界の連携)
        ・幅広い人材の確保
(2)事業資金の確保
   1)処分事業を行っていく裏付けとなる資金が十分に確保されることが必要である。
   2)高レベル放射性廃棄物の発生に責任を有する電気事業者が、処分に必要な資金の確保に早期に着手する。
(3)制度の整備
  a.信頼性のある実施主体の設立
   1)処分を着実に実施することのできる実施主体を設立することが必要である。
   2)実施主体は長期安定性、柔軟性、効率性を備えていることが必要である。
   3)実施主体は、処分事業を行うにあたり、確実に事業を推進する責任と安全に処分施設を管理する責任を負う。
  b.処分場立地地域の選定を含めた事業終了までのプロセス策定
   1)社会的に合意を得られるような、処分事業のプロセスを策定することが必要である。
   2)実施主体は、廃棄物の発生に責任を有し立地の経験豊富な電気事業者と一体となって処分場の立地を進める。
  c.損害賠償制度の確立
   1)危険責任に基いた損害賠償責任とその履行について明確にしておく必要がある。
   2)埋設事業の終了により実施主体が存続しなくなったような場合であっても事故に対する賠償責任を負う主体を明確にしておくことが重要である。
  d.処分場の閉鎖終了前後の対応
   1)安心感の確保のために、処分場の閉鎖終了前後の管理のあり方を検討することが必要である。
 その際、長期にわたり主坑を埋め戻さずに維持しておく場合には、技術的な観点からは地下深部の地質環境に擾乱を招くことも考えられ、かつ、主坑の構造を強化しておく必要があるため、建設・維持・管理のコストが増加するという問題がある。一方で、万一の事故の際の廃棄物の回収等の対応が容易であるという点で周辺住民の「安心感」が増大する。このように、安全と安心感とのバランスを考慮して検討することが必要である。

       (例)
       ・処分場の閉鎖終了前後の管理のあり方
         :処分坑道埋め戻し後、主坑の埋め戻し(処分場の
          閉鎖)までの期間設定
         :処分場の閉鎖終了後のモニタリングの期間、方法
       ・段階的な管理とチェック・アンド・レビューの考え方の
        導入
         :低レベル廃棄物埋設管理の例を参照
       ・地下空間の利用制限とそれを担保するための手段
         :法律に基づく利用制限
         :地域共生施設などによる地上利用
       ・その他の技術的オプションの検討

  e.安全基準の策定
   1)処分場建設・操業計画の安全審査を行う際の安全基準の策定に向けて、安全確保の基本的考え方を策定しておくことが必要である。


2.透明性
 制度や組織への不安を少なくし信頼を得ていく上で、透明性を確保することが重要である。
 透明性の確保のためには、情報公開の姿勢を徹底し、法制化等により制度・体制を適切に整備することが重要である。
(1)情報公開
1)情報発信者が意図的に情報を隠しているのではないかとの不信感を招かないためにも、事業のすべての段階を通じて情報公開の姿勢を徹底することが必要である。

       (例)
        ・予備的調査段階及びサイト特性調査段階で得られたデー
         タや、操業期間中のデータ等の処分事業に関する情報を
         可能な限り公開とする。
        ・候補地・処分予定地の選定を行う上で選定過程の情報を
         可能な限り公開し、選定結果の科学的・社会経済的な根
         拠を提示する。
2)情報の公開は長期的に継続して行うことが重要である。常時、情報公開がなされていれば情報を入手しやすく、また、時期によるデータの比較をしやすくなることから、情報及び情報発信者への信頼を得ることができる。
       (例)
        ・事業を通じて定期的にデータ及び報告書を公開する。
(2)制度・組織の透明性確保
  a.制度の明確化
 処分を行う過程や体制等を明確化することが必要である。今後どのように処分事業が進んでいくかが明確化されていることにより、将来的な不安を少なくすることができるからである。このため、処分を行う過程や体制等を法律に規定する等の考え方もある。
       (例)
        ・事業の各段階及び手続の法制化。
  b.事業活動に対する外部者による確認
 実施主体の活動内容・操業状況などに対する外部からのチェックを可能とするような仕組みをつくることにより、事業について可能な限り透明性を確保し、信頼を高める必要がある。
       (例)
        ・外部からの定期的なチェック・アンド・レビューの実施。


3.誠実な対応
 2.において情報公開について述べたが、公開された情報が信頼されるためには、以下の考え方が重要である。また、出した情報が理解されるには、正確な情報を受け手側にとって分かりやすい形で伝えることが重要である。その際に、実施主体や関係機関が誠実に対応しなければならない。
 疑問には迅速かつ丁寧に回答し、各層の人々に応じた対応をするなど誠意のある姿勢を継続することが信頼につながることになる。

(1)情報
  a.情報の内容
1)提供する情報が各層の人々に応じて分かりやすいことが重要である。受け取る側に応じて、情報を分かりやすく届けることにより、同じ内容の情報であっても、その理解や印象が大きく異なる。
       (例)
        ・専門知識を持っていない人に専門用語が非常に多い情報
         を届けても、理解されないばかりか、関心を持ってもら
         うことさえ難しい。難解な専門用語の使用は出来るだけ
         避けた上で、どうしても多くなる場合には、用語の分か
         りやすい説明を添付するなどの配慮・工夫が必要である。
        ・説明文だけでなく、Q&A形式を多く取り入れる等の工
         夫が必要である。
2)人々が求める情報を提供することが重要である。そのためにも、求められている情報が何であるかに留意し、情報提供に反映することが重要である。
       (例)
        ・疑問、質問の多い事項を中心にした情報提供を行う。
        ・アンケート、意識調査によりどのような情報が求められ
         ているかを把握するよう努める。
 b.情報伝達の手段
1)情報にアクセスできる手段を多様化することが重要である。一人一人によって生活様式や居住地域は異なることから、情報へのアクセス手段をできるだけ多様化し、より多くの人々が入手できるようにすることが重要である。
        (例)
        ・インターネット利用により時間的・地理的制約をなくす。
        ・ファックスによる情報取り出し等。
        ・図書館・児童館や公的集会所への書物・資料の陳列。
2)情報提供を行う上でその情報がどこにあって、どうやれば入手できるのかという情報源情報を充実させることが重要である。情報源情報が充実していなければ、必要な情報を実際に入手することが困難だからである。
       (例)
        ・広報紙、広告等の広報媒体への掲載等。
        ・インターネットの活用。
3)情報を伝達するスタッフを充実することが重要である。関係者など情報を伝達する者が誠意を持って十分に各層に対応できるよう資質の向上を図ることが重要である。
       (例)
        ・各層の人々に対応できるスタッフを教育・育成する。
        ・研究者の一般の人々への説明責任の啓発。
4)情報の浸透を図っていく中で、ボランティア活動による情報伝達を支援することが重要である。
       (例)
        ・広報ツールを作る際にボランティア活動の場で利用され
         ることも念頭に置いて企画する。
        ・OBのボランティア活動の支援。
5)マスメディアにおける議論の支援
       (例)
        ・議論の土壌を形成するためにも、賛否両論が公平にメデ
         ィアを通じて報道される必要があり、幅広い部署から参
         加するジャーナリストセミナーや公開討論会を積極的に
         支援する必要がある。
        ・事実と相違した情報に対して、適切な対応を行う。
 c.情報伝達を支える仕組み
1)実施主体及び関係機関において、疑問・質問に対して迅速に対応できる体制を整備することが必要である。人々が処分について何か疑問を持った場合に、質問ができ、それに対して迅速かつ丁寧に回答する体制が必要である。
       (例)
        ・質問を受け付ける窓口を明確にする。
        ・窓口で応対するスタッフを育成するとともに、それを支
         える体制を整備する。
2)実施主体においては、処分場の選定過程や建設・操業・閉鎖終了前後におけるあらゆる事態に対応すべく、適確・迅速な情報を出すような体制を整備することが必要である。
3)実施主体及び関係機関と国民や住民とが双方向に情報の交流を行えるような体制を整備することが重要である。
 d.継続した情報提供
1)情報提供を継続して行うことが重要である。継続して提供することにより、情報及び情報発信者への信頼につながると考えられる。逆にスポット的にしか情報が提供されない場合には、その内容にかかわらず、都合のよい情報しか流さず、残りの情報は意図的に隠しているのではとの疑問を招くことも考えられる。


4.教育・学習
 手元に届いた情報を判断する上で基礎的な知識が基盤として備わっていることが重要である。このため、教育や学習の機会を充実することが重要である。また、こうした活動は地層処分への国民の関心を深めることにも寄与することとなる。

(1)学校教育
長期的な観点から、若い世代に関心を持ってもらうことが重要である。
       (例)
        ・若い世代への取組みとして、教育による放射線や放射性
         物質や深地層等についての基礎的な知識の浸透を図る。
        ・若い世代から、環境問題・エネルギー問題・廃棄物問題
         全体に及び広く議論する機会をカリキュラムに取り入れ
         る。
(2)学校以外での教育・学習
各層の人々が基礎的な知識を得ることができるよう、様々な教育・学習の機会を設けることが必要である。
       (例)
        ・各層の人々に対応した説明会、放射線や深地層を対象と
         したセミナー形式での科学講座等の開催。
        ・処分環境を実際に体験できるような地下研究施設等の現
         場訪問の促進。


第三部 サイト選定プロセス・立地地域との共生に関する特別会合




I.立地地域との共生


 ここでは、廃棄物処分場を立地するにあたって、立地地域の住民に対する公平と公 正を確保するために、どのような観点から考えるべきかについて述べる。

1.基本的考え方と検討課題

(1)共生の考え方

 a.
実施主体と立地地域との共生のあり方

 電力消費地域の住民が、一方的に原子力発電による利益を享受することがあってはならず、また、処分場立地地域住民に一方的に処分に伴って生じるかもしれない消費地域とは異なる負担を押しつけることがあってはならない。そのため、事業主体が行う処分事業は、地域における雇用増大、生活水準の向上、インフラ整備、産業振興等をもたらし、事業の実施と地域社会とが「共生」できる関係を 築くものでなければならない。
 「地域住民との共生」という観点からは、事業実施にあたって地域住民の意見が反映されることが不可欠である。そのため、実施主体と地域住民との人的交流が重要であり、とりわけ、実施主体による地域住民の雇用は、実施主体と地域の一体感を深めるために重要である。
 また、「地域産業との共生」という観点から、立地に伴い地域産業が活性化され、処分場の施設を利用した、例えば、処分場の施設と連携した産業の育成が図られることが重要である。

 b.
「迷惑施設」から「共生施設」へ

 高レベル放射性廃棄物処分場は、一般の廃棄物処理場と同じく地域住民によって「迷惑施設」としてとらえられることも考えられる。この点について、事業の安全性を確保することはいうまでもないことであるが、事業の実施と地域の生活が「共生」の関係に立つことによって、地域住民にとって処分場は単なる「迷惑施設」ではなくなることになる。事業はそのような観点に立った地域との共生を常に追求していく必要がある。


(2)共生方策のあり方

 a.地域振興策の考え方

 1)
長期性への対応
  処分事業が長期にわたるものであることから、地域振興の全体的な構想を策定した上で、事業の各段階に応じた方策を行うことが必要である。その上で、地域の社会・経済的変化に柔軟に対応するため、一定期間毎に全体構想を見直すことができるようなシステムを整備することが重要と考えられる。
 また、将来世代との意思決定とコスト負担の分担という考え方から、例えば、現世代は埋め戻し終了時点までの方策を策定し、それ以降の対応については、コストも含めてその時点の世代に判断を委ねるとの考え方もある。


 2)地域特性・事業特性に応じた方策

 地域振興策の内容は、地域の社会・経済的特性に応じたものでなければならない。地域の意向を十分に反映した振興策を策定するにあたっては、実施主体が提示するいくつかの計画案の中から地域・自治体が地元にとって最適と考えられるものを選択するという方法や、地域住民・自治体等の意向を反映させた振興計画を策定するために地域住民が参加する委員会等を設置するなどの方法が考えられる。
 また、処分事業の特性を生かした振興策を策定することも重要である。研究開発機関・教育機関の立地による先端技術・先端知識の集積、坑道を利用した観光・レジャー施設の立地なども考えられる。


 3)継続性のある振興策

 振興策がただ公共施設を整備するだけに終わらないためにも、振興事業や研究事業を募集し、それに対して支援を行うなどの優遇策を準備するなど、継続的に振興事業や研究が集積していくようなシステムをつくることが考えられる。

 b.関係機関の役割

 実施主体は地域との共生を図る中心として、立地地域に本拠を置き、地域住民の雇用や地域住民との交流を進めることが重要である。
 国は、利用可能な既存の地域振興策を有効に活用できる体制を整えることに加えて、地域特性や長期性などの事業特性を考慮した振興方策の整備を検討することが必要との考え方がある。
 また、電気事業者は廃棄物の発生に責任を有する者として地域振興策の実施においても、実施主体と一体となって総合的に取組むことが必要である。

 c.処分場施設の多目的利用の可能性

 立坑を利用した事業や研究など、処分場施設そのものを多目的に利用した地域産業の育成の可能性を検討しておくことが必要である。


(3)立地地域の主体性

 a.共生方策策定における立地地域の役割

 共生方策を策定するにあたっては、立地地域の主体性を尊重しなければならない。地域が主体となって、地域のニーズに応え、地域の特性を生かした共生策を企画・選択することが必要である。そのため、共生方策策定のために地域住民・ 自治体が参加する委員会を設置するなどの考え方がある。

 b.共生方策策定の支援体制

 立地地域が主体となって共生方策を企画・選択していく上で、国・実施主体・電気事業者等の関係機関が人材育成支援やノウハウの提供などの側面支援を行うシステムを構築することが重要と考えられる。


(4)立地地域と電力消費地域の連帯

 a.「連帯」の考え方

 立地地域と電力消費地域の社会経済的公平を確保するためにも、立地地域以外の人々が処分事業を自分たちとも関係のある問題と考えることが重要である。そのため、立地地域と電力消費地域とが情報を交流して直接的な交流を通じて相互に理解を深めることが重要である。

 b.電力消費地域への働きかけ

 立地地域住民と電力消費地域住民とが相互に交流するために、立地地域で消費地域住民との交流会を開催することや、マスコミやミニコミによる立地地域の紹介、あるいは物産展等の催しを消費地域で実施するなどの方策を検討することが必要である。



IV.サイト選定プロセス



1.基本的考え方と検討課題

 処分地の選定プロセスは、「長期計画」によると以下の手順で行われる。

 1)
実施主体は、地層処分の候補地として適切と思われる地点について予備的に調査を行い、処分予定地を選定する。国は、立地の円滑化を図る観点から必要な措置を講ずるため、その選定の結果を確認する。その地点を処分予定地とするにあたって、実施主体は地元にその趣旨を十分に説明し、その了承を得ておくものとする。
 2)
次に実施主体は、実際の処分地としての適性を判断するため、処分予定地において地下施設による所要のサイト特性調査を行う。
 3)
実施主体は処分地として適当と判断すれば、処分場の設計を行い、処分にかかる事業の申請を行う。国は、処分にかかる事業を許可するにあたり、必要な法制度等の整備を図るとともに安全審査を行う。
 その後は、処分場の建設・操業を経て、処分坑道及び主坑の埋め戻しが行われ、施設が閉鎖される予定である。

 処分地選定プロセスに関する制度を今後整備していく上で、国民の理解を得るために検討すべき点は以下の通りである。


(1)情報公開と透明性の確保

 事業のすべての段階を通じて情報公開の姿勢を徹底し、透明性を確保することは処分への不安を少なくし、信頼を得るために重要である。

 a.情報公開

 1)情報公開のあり方
 処分事業を通じて情報公開の姿勢を徹底することが必要である。そのために、処分事業に関する情報を、予備的調査の段階を含めすべての段階で可能な限り公開とする。
 また、情報公開に関する法制度が整備された場合には、これに則って柔軟に対応することが必要である。

 2)具体的内容
 イ.
処分事業では何が行われるのかを明示する。
 例えば、処分事業の手順、タイムスケジュール、処分場の規模、処分するガラス固化体の量等、処分事業では何がどのように行われるのかをまず明示することが必要である。そして、処分事業の安全性や環境への影響の可能性等に関する情報を公開しておくことが重要である。
 また、予備的調査やサイト特性調査では、処分場立地の適性を調査するために行うことを明示したうえで、調査のために何がどのように行われるかについて技術的な面も含めて情報を公開することが必要である。

 ロ.
選定過程での情報公開
 候補地・処分予定地の選定を行う上で選定過程の情報を可能な限り公開し、選定結果の科学的・社会経済的な根拠を提示する。
(例)
・予備的調査・サイト特性調査のデータ等の公開。
・予備的調査とともに環境影響の評価を行い、その情報を公開する。
 ハ.
処分場建設・操業から閉鎖終了まで
(例)
・モニタリングデータ、活動内容・操業状況等の情報公開。


 b.透明性の確保

 1)
処分事業のプロセスの明確化
 サイト選定の手順、処分計画・事業申請・安全審査、処分場建設・操業、埋め戻し、埋め戻し終了後等の処分事業のプロセスを明確化しておくことが必要である。例えば、特別法を制定して、これに則り各段階を明確化するとの考え方もある。

 2)
選定過程・事業活動に対する外部者による確認
 サイト選定過程及び実施主体の活動内容・操業状況等が規定通りに行われているかどうかについて、外部によるチェックが可能な仕組みを作っておくことが必要である。

 イ.
選定過程
 選定経過及び選定根拠について、第三者の立場からチェック。
 ロ.
活動内容・操業状況
 実施主体の活動内容及び操業状況について、第三者の立場からチェック。


(2)住民の位置づけ

 処分事業を行っていく上で住民の意見をどのように反映させていくのかという点を含めて、住民の位置づけについて検討を行うことが必要である。

 a.
住民の範囲

 住民関与の形態の検討とあわせて、地域的にどの範囲の住民の意見を聞くべきかについて検討しておく必要がある。例えば、立地地点を含む市町村の住民とするのか、地区とするのか、あるいは都道府県単位とするのか、周辺の市町村や都道府県も含めるのかという点である。
 また、意見を聞く際に、対象に含まれる住民の意見を全て同じように聞かなければならないのかということも検討しておく必要がある。すなわち、立地地点との関係に応じて意見を聞く程度が異なってしかるべきではないかという点である。

 b.
住民の意見

 処分事業の各段階で様々な決定を行う際に、住民の意見をどのように反映させていくのかについて検討しておくことが必要である。
 情報公開や住民の意見の反映に努めることなどにより、できる限り住民の合意を得ることが重要であるが、候補地決定、予備的調査の実施、予定地決定等の重要な決定に対し、例えば、地域住民の意向を反映した自治体首長の間(知事と市長の間や隣接市町村の首長の間)で意見が分かれた場合や、住民によって選ばれた自治体首長と議会の意見が分かれた場合にどうするか、という問題も検討して おく必要がある。

 c.
調整機関の設置

 住民と実施主体との間に生じる様々な課題について当事者が意見を述べ、また調整を行うための場を設置し、当事者が参加する形で調整を行うことが課題をスムーズに解決する上で大きな役割を果たす。また、発生した問題の内容に応じ、第三者による調整機関を設置することも考えうる。

(3)国、実施主体、電気事業者、自治体の役割の明確化

 a.
国の役割

 国は、処分が安全かつ適切に行われることに対して責任を負い、法制度等の整備や立地の円滑化を図る措置を講じる等、処分の円滑な推進のために必要な施策を策定する。
 b.
実施主体の役割

 実施主体は、処分事業を実際に行う主体として、処分を安全かつ着実に実施する。処分事業を行うにあたって実施主体は、確実に事業を推進する責任と安全に処分施設を管理する責任を負う。

 c.
電気事業者の役割
 電気事業者は、廃棄物の発生に責任を有する者として、処分に必要な資金の確保を行い、また、立地について有する経験を活かして実施主体と一体となって立地活動を行う。
 d.
自治体の役割
 処分事業を行っていく上で、自治体の協力を得ることが不可欠である。
 また、都道府県と市町村の役割は異なるものの、自治体には実施主体が入手しにくい判断材料や地域の要望などの情報を提供し、住民の意見を吸い上げる役割が期待される。
 また、都道府県については、立地地域と周辺地域との間の調整機関となる場合も考えられる。


(4)長期性への対応

 高レベル放射性廃棄物地層処分の長期性に関連して、社会経済的状況の変化に応じて柔軟に対応できるようにしておくことが重要である。
 そのためには、現世代が全て今の時点で決定してしまうのではなく、後世代が、その世代における諸条件の下で、一定の決定をする余地を残しておくような枠組みを設けておくことが重要である。また、制度の整備にあたっては、一定期間毎の見直しを規定しておくことも検討する必要がある。
 一方、意思決定及びコスト負担を後世代とどのように分担するべきか、現世代のうちに意思決定を行っておく必要がある事項について具体的に議論を進めていくことが求められている。
 具体的には、処分場の選定、処分場の建設開始、埋設の開始、処分坑道の埋め戻し、主坑の埋め戻し、閉鎖(主坑の埋め戻し)終了後の管理の期間、実施主体の存続期間等といった事項について、現世代のうちに決めておくべきかどうかを決定する。そして、後世代の判断に委ねることが適当と考えられる事項については、その実施にあたって、後の世代が判断することを要件とするなどの方策が考えられる。
 例えば、現在の技術水準によれば処分場の閉鎖終了後の管理は不要であろうと評価されているが、現世代では処分場の閉鎖(主坑の埋め戻し)終了までのコストを負担することとし、実際に主坑の埋め戻しを行うか、それともそのままの状態でなおも管理を続けるかどうかを、その時点での技術的な水準に照らして、その時点の世代に判断を委ねるとの考え方も可能である。このような場合には、処分場建設時 点で、操業終了後も主坑を長期に維持できるように強度を高めておくなどの長期維持性能をおり込んでおく必要がある。
 また、将来の世代が事業終了を選択することとした場合でも、万一の場合の損害賠償責任が継続される必要があるが、現世代がどこまで賠償の原資を負担すべきかを検討しておく必要がある。


2.処分事業の各段階の検討
 処分地の選定を行っていく上で、以下の点について個別に検討しておくことが必要である。

(1)
予定地選定までの検討

 a.候補地選定

 予備的な調査を行う候補地を実施主体が選定(複数地点を想定)するにあたり、以下の点について検討しておくことが必要である。

1)
候補地選定前の情報の開示
 予め処分場選定の技術的な要件を明らかにした上で、処分事業では何が行われるのかを、共生策の案とともに提示する。
2)
候補地選定方式
 イ.
公募方式
 あらかじめ、処分場選定の要件・地域振興策等の情報を明示した上で、自治体から誘致表明のあった地点の中から候補地を選定する。
 ロ.
申入方式
 候補地として適切であると実施主体が判断する地点について、地域住民に情報を提供しつつ自治体に申し入れる。
 ハ.
公募あるいは申入方式によっても受け入れるところがない場合の対応  候補地として適切であると判断する地点を実施主体が選定する。その結果について必要であれば国が調整を行うとの考え方もある。実施主体が選定する場合であっても、自治体首長の了解を得る手続について検討しておく必要がある。


 b.予備的調査

 1)
予備的調査の申入れ

 調査の実施を申し入れるにあたって自治体、地域住民、土地所有者等の同意が得られない場合の対応を検討することが必要である。
 c.
処分予定地選定

 1)
地元の了承

処分予定地選定の際に「長期計画」では地元の了承を得ておくとされているが、地元とは都道府県・市町村といった自治体を指すのか、あるいは特定の地区を指すのかを検討しておくことが必要である。また、了承とは首長が単独でできるのか、あるいは首長が議会の承諾を得て行うのかなど、首長や議会の役割を検討しておく必要がある。

 2)
国の確認

 調査の結果に基いて実施主体が予定地選定を行うが、その際「長期計画」においては、国が処分予定地の選定結果を確認するものとされている。国の確認については、その内容や手続きがどのようなものであるかを具体的に明らかにしておくことが必要である。


(2)サイト特性調査以降の検討

 a.
処分地の決定
 実施主体は、実際の処分地としての適性を判断するため、処分予定地において地下施設によるサイト特性調査を行う。「長期計画」においては、調査の結果に基き、実施主体が適当であると判断すれば処分地として決定し、処分場の設計を行い処分に係る事業申請を行うものとされている。これに対して、この問題は国民的な問題であることから、処分地選定にあたっては内閣決定や、その決定に対する国会の承認を得る必要があるとの考え方がある。
 b.
処分場建設及び操業
 処分場建設及び操業過程における安全確保策と安全性のチェックについて検討しておくことが必要である。例えば、第三者によるチェックや、問題が生じた場合の通報体制・情報公開体制の整備が考えられる。
 c.
処分場の閉鎖終了前後の対応
 安心感の確保のために、処分場の閉鎖終了前後の管理のあり方を検討することが必要である。
 その際、長期にわたり主坑を埋め戻さずに維持しておく場合には、技術的な観点からは地下深部の地質環境に擾乱を招くことも考えられ、かつ、主坑の構造を強化しておく必要があるため、建設・維持・管理のコストが増加し、経済性の観点からの長期的な配慮が必要となる。一方で、長期にわたり主坑を埋め戻さずに維持することは、万一の事故の際の廃棄物の回収等の対応が容易であるという点で周辺住民の「安心感」が増大するという考え方もある。このように、安全と安心感とのバランスを考慮して検討することが必要である。
(例)
・処分場の閉鎖終了前後の管理のあり方
:処分坑道埋め戻し後、主坑の埋め戻し(処分場の閉鎖)までの期間設定
:処分場の閉鎖終了前後のモニタリングの実施
:処分場の閉鎖終了後のモニタリングの期間、方法
・段階的な管理とチェック・アンド・レビューの考え方の導入
:低レベル廃棄物埋設埋設管理の例を参照
・地下空間の利用制限とそれを担保するための手段
:法律に基づく利用制限
:地域共生施設などによる地上利用
・その他の技術的オプションの検討



第四部 いま、何をしなければならないか



I.現世代が決定しておくこと

 高レベル放射性廃棄物処分について各層が議論し、理解を深めるために、実施主体・国・電気事業者等の関係機関が早急かつ着実になすべきことは、それぞれの役割に応じて本報告書の第二、三部において検討した事項、すなわち、処分技術を確立し、体制を含めた制度を整備し、事業資金の確保に着手することであり、その際に透明性の確保、アカウンタビリティーの向上、教育・学習の場の充実を図っていくことである。
 一方、高レベル放射性廃棄物地層処分の長期性に関連して、意思決定及びコスト負担を後世代とどのように分担するべきか、現世代が意思決定を行う必要がある事項について具体的に議論を進めていくことが求められている。例えば、処分場の選定、処分場の建設開始、埋設の開始、処分坑道の埋め戻し、主坑の埋め戻し、閉鎖(主坑の埋め戻し)終了後の管理の期間、実施主体の存続期間等である。また、制度の整備にあたっては、一定期間毎の見直しを規定しておくことも検討する必要がある。
 他方、原子力発電に伴う高レベル放射性廃棄物処分の問題については、政治の場においても法的枠組という形で現世代の意思の内容が明らかにされることが必要である。
 そのためにも、国民の各層における議論が十分に行われ、国民の合意形成を図る努力がなされなければならない。


( 参 考 )



特別会合開催状況




1.検討の進め方

(1)検討の手順
1)社会の動向を踏まえ、論点を明確にするため、議論の背景及び参考となる共通の知見を整理
2)具体的検討を行い論点を整理
(2)各課題について
1)社会的受容性に関する検討
・高レベル放射性廃棄物処分に関する国民の理解と納得を得るための基本的考え方及び広報等の具体的方策を検討。
2)サイト選定プロセス・立地地域への対応に関する検討
・高レベル放射性廃棄物処分予定地の選定に関するサイト選定プロセス及び立地地域への対応についての基本的な考え方及び具体的方策を検討。



2.開催状況
(1)社会的受容性に関する特別会合
  第1回
   議 題:「社会心理学からのアプローチ」
   日 時:平成8年12月17日 17:00〜19:00
   出席委員:森嶌主査、小西委員、竹本委員、中村委員、松田委員、南委員
        近藤懇談会座長、加藤懇談会委員、木元懇談会委員
     講 師:土田昭司氏(明治大学文学部助教授)

  第2回
   議 題:「広報理論からのアプローチ」
   日 時:平成8年12月26日 10:00〜12:00
   出席委員:森嶌主査、竹本委員、鳥井委員、中村委員、深海委員、松田委員、
        南委員
        近藤懇談会座長、粟屋懇談会委員、木村懇談会委員、木元懇談会委員、
        下邨懇談会委員
   説 明 員:土田昭司氏(明治大学文学部助教授)
   講 師:田中正博氏((社)日本パブリックリレーションズ協会教育研修委員会代表幹事)

  第3回
   議 題:「現状認識と問題点の明確化」
   日 時:平成9年1月14日 15:00〜17:00
   出席委員:森嶌主査、小西委員、鳥井委員、松田委員、南委員
        近藤懇談会座長、木元懇談会委員、下邨懇談会委員
   説 明 員:土田昭司氏(明治大学文学部助教授)
   講 師:根本和泰氏((株)アイ・イー・エー・ジャパン エネルギー・環境研究部長)

  第4回
   議 題:「基本的考え方について」
   日 時:平成9年1月30日 15:00〜17:00
   出席委員:森嶌主査、竹本委員、土田委員、中村委員、深海委員、南委員
   近藤懇談会座長、粟屋懇談会委員、下邨懇談会委員

  第5回
   議 題:「報告書案について」
   日 時:平成9年2月18日 15:00〜17:00
   出席委員:森嶌主査、竹本委員、土田委員、中村委員、深海委員、松田委員
        南委員
        加藤懇談会委員、下邨懇談会委員

  第6回
   議 題:「報告書案について」
   日 時:平成9年2月26日 15:00〜17:30
   出席委員:森嶌主査、小西委員、土田委員、鳥井委員、松田委員、南委員
   近藤懇談会座長、粟屋懇談会委員、川上懇談会委員、下邨懇談会委員
   説 明 員:根本和泰氏((株)アイ・イー・エー・ジャパン エネルギー・環境研究部長)

(2)サイト選定プロセス・立地地域への対応に関する特別会合
  第1回
   議 題:「ダム建設事例の検討」
   日 時:平成8年12月25日 10:00〜12:00
   出席委員:森嶌主査、石橋委員、木元委員、塩野委員、中村委員、深海委員
        近藤懇談会座長、粟屋懇談会委員、加藤懇談会委員、川上懇談会委員、
        下邨懇談会委員、松田懇談会委員
   講 師:宇賀克也氏(東京大学法学部教授)

  第2回
   議 題:「地域共生事例の検討」
   日 時:平成9年1月9日 10:00〜12:00
   出席委員:森嶌主査、石橋委員、木元委員、塩野委員、田中委員(講師)、
        深海委員
        下邨懇談会委員、南懇談会委員

  第3回
   議 題:「地域共生方策の検討」
   日 時:平成9年1月24日 13:00〜15:00
   出席委員:森嶌主査、石橋委員、塩野委員、中村委員、深海委員
        近藤懇談会座長、粟屋懇談会委員、加藤懇談会委員、川上懇談会委員、
        下邨懇談会委員

  第4回
   議 題:「サイト選定プロセスの検討」
   日 時:平成9年2月6日 15:00〜17:00
   出席委員:森嶌主査、石橋委員、宇賀委員、田中委員、深海委員
        近藤懇談会座長、加藤懇談会委員、川上懇談会委員、下邨懇談会委員

  第5回
   議 題:「報告書案について」
   日 時:平成9年2月24日 14:00〜16:00
   出席委員:森嶌主査、石橋委員、塩野委員、田中委員、中村委員
        粟屋懇談会委員、加藤懇談会委員、川上懇談会委員、下邨懇談会委員、
        松田懇談会委員
  第6回
   議 題:「報告書案について」
   日 時:平成9年3月19日 10:00〜12:00
   出席委員:森島主査、石橋委員、田中委員、中村委員、野口委員
        川上懇談会委員、下村懇談会委員
   説 明 員:根本和泰氏((株)アイ・イー・エー・ジャパン エネルギー・環境研究部長)


資料(懇)5-3


高レベル放射性廃棄物処分懇談会 特別会合の設置について



 今後の高レベル放射性廃棄物処分懇談会における審議を効果的、効率的に進めるため、処分懇談会の下に、「社会的受容性に関する特別会合」及び「サイト選定プロセス・立地地域への対応に関する特別会合」を設置する。両特別会合は、それぞれの検討事項に応じて論点を整理し懇談会に報告する。


1.日程
・平成9年春開催の処分懇談会に、それぞれ論点を整理して報告する。議論の進捗については、随時処分懇談会に報告する。
・当面、月に2回程度開催。

2.特別会合の検討事項
(1)社会的受容性に関する特別会合
 高レベル放射性廃棄物処分に関する国民の理解と納得を得るための基本的考え方及び広報等の具体的方策。
(2)サイト選定プロセス・立地地域への対応に関する特別会合
 高レベル放射性廃棄物処分予定地の選定に関するサイト選定プロセス及び立地地域への対応についての基本的な考え方及び具体的方策。

3.構成員
(1)社会的受容性に関する特別会合
   (主 査)森嶌 昭夫 上智大学教授(法学部)
        竹本 成徳 日本生活協同組合連合会会長理事
        中村 政雄 前読売新聞論説委員
        深海 博明 慶応義塾大学教授(経済学部)
        松田 美夜子 生活評論家(廃棄物問題とリサイクル)
        南 和子 評論家
        バックエンド専門部会から
        小西 攻 NHK解説委員
        鳥井 弘之 日本経済新聞論説委員

(2)サイト選定プロセス・立地地域への対応に関する特別会合
   (主 査)森嶌 昭夫 上智大学教授(法学部)
        石橋 忠雄 弁護士
        木元 教子 評論家
        塩野 宏 成蹊大学教授(法学部)
        中村 政雄 前読売新聞論説委員
        野口 敞也 日本労働組合総連合会総合政策局長
        深海 博明 慶応義塾大学教授(経済学部)
        バックエンド専門部会から
        田中 靖政 学習院大学教授(法学部)

(参考)
1.上記構成員については必要に応じ追加できるものとする。
2.高レベル放射性廃棄物処分懇談会の各委員は、本特別会合に適宜参加できるものとする。