新たに規定する賠償措置額の特例額について

 

1.原子炉の解体についての賠償措置額について

(1)原子炉の解体の原子炉等規制法上の取扱

(2)具体的な廃止措置のステップ

 原子炉の解体に係る諸作業としては、およそ以下の手順が想定できる。

 @核燃料物質及び冷却材の原子炉からの抜き出し作業
 A核燃料物質の原子炉施設からの搬出
 B配管・容器内の放射性物質を除去・洗浄
 C原子炉施設の密閉管理(5〜10年程度)
 D放射化された構造材等の解体、撤去作業
 Eその他の構造物の撤去
  →廃止措置の終了=全ての運転の廃止

(3)原賠法上の取扱
 現在、原子炉の解体については、原賠法施行令上、賠償措置額の特例額を規定しておらず、原子炉の運転と同額の損害賠償措置を講じなければならないとされているところ。
 しかし、原子炉の解体の具体的な手順を想定した場合、核燃料物質の施設からの搬出後は潜在的な危険度は大きく減少しており、潜在的なリスクの側面からは原子炉の運転と同額の損害賠償措置を講じる必然性は無いと言える。一方で、現在の枠組は、長期にわたる核燃料の搬出後の密閉管理期間中においても賠償措置額が引き下げられないことから、過大な経費を事業者に負担させるものとなっている。
 従来、300億円の賠償措置額を要求される規模の原子炉の解体は商業炉においては例が無いものであり、また、日本原子力研究所の動力試験炉(JPDR)の廃炉(平成8年3月撤去完了)の場合は、同サイト内に他の原子炉が設置されているため、賠償措置額の引き下げの余地のないものであった。このため、原子炉の解体に係る賠償措置額の妥当性が大きく問題となる場面は従来は無かったと言える。
 しかし、日本原子力発電(株)東海発電所の炭酸ガス冷却型炉の運転が平成10年3月末に既に終了し、また動力炉・核燃料開発事業団の新型転換炉ふげんの廃炉が予定されている状況下、原子炉の解体に係る賠償措置額の妥当性を改めて検討すべき時期を迎えようとしていると言える。

(4)原子炉の解体に係る賠償措置額の検討
 @解体作業の各段階における潜在的リスクについて
 原子炉施設の解体の際における安全性の確保のために必要な規定が原子炉等規制法に定められているが、原子炉の解体の具体的な手順については法文上は規定されておらず、規制法上の整理として解体の各段階の手順を整理することは困難である。しかし、潜在的リスクの指標となる施設内の状態、具体的には核燃料物質の有無に着眼して作業段階を区別することにより、潜在的リスクの程度に応じた区分が可能になる。
 即ち、原子炉から核燃料物質が抜き出された段階、及び施設から核燃料物質が搬出された段階で、潜在的リスクの程度が大きく低下する。
 このため、原子炉からの核燃料物質の抜き出し、若しくは施設からの核燃料物質の搬出を要件として、賠償措置額を減額させることが考えられるが、前者と比べて後者の方が潜在的危険の程度の変化が大きいと考えられること、また長期にわたる密閉管理期間に先立って賠償措置額の減額がなされれば事業者の負担を軽減する目的はほぼ達成されることから、後者、即ち施設からの核燃料物質の搬出を要件として想定すべきである。
 A賠償措置額について
 核燃料物質及び冷却材が原子炉から抜き出され、さらに施設から搬出された後には、当該施設内には使用済燃料等は存在せず、運転中に放射化して放射性廃棄物となった設備等が残されているのみであることから、廃棄物の埋設やウラン燃料輸送等と同額の、現行10億円(2倍に引き上げた場合は20億円)の賠償措置額が妥当であると考えられる。
 B留意事項
 これまで述べてきた様に、長期的視野で考えると原子炉の解体の賠償措置額を再検討し、より適切な額を定める時期がきているといえるが、原電東海及び動燃ふげんの廃止措置の具体的計画は定められておらず、具体的な廃止措置の開始の目途が立っていない現時点で、必ずしも今回の原賠法改正に合わせて解体に係る賠償措置額を別途規定する必要性は無い。むしろ、賠償措置額の特例を定めるのは原賠法施行令(政令)であって、10年毎の法律改正期に限られるものでなく、状況を踏まえた柔軟な改正による対応が可能であることに留意すべきである。
 なお、原賠法が第7条においてサイト(事業所)単位で損害賠償措置を講じるものとしているため、動燃ふげんの廃止措置以外には、具体的に商業用発電炉の廃止が賠償措置額に影響するケースはほとんど想定できない状況である。

(5)総括
 以上から、原子炉の解体に関する賠償措置額については、施設からの核燃料物質の搬出を要件として、現行制度上の10億円の賠償措置額の範疇に整理する方向としつつ、具体的な原賠法施行令改正の時期は、商業用発電炉の廃止措置が具体化した際に行う等、適切な時期を待つべきである。

2.使用済燃料の発電所外の貯蔵について

(1)背景等
 使用済燃料は、再処理することによってリサイクルすることが可能な「リサイクル燃料資源」であるため、再処理するまでの間適切に貯蔵・管理することが必要である。しかしながら、使用済燃料の年間発生量約900tUに対し、かかる使用済燃料を再処理する六ヶ所再処理工場(2003年1月操業開始予定)の年間処理能力は800tUであることから、貯蔵される使用済燃料の量は長期的に増大することが想定されている。
 このような現状を背景として、平成9年2月の閣議了解に基づき、平成9年3月から本年3月にかけて、科学技術庁、通商産業省及び電気事業者からなる「使用済核燃料貯蔵対策検討会」において、使用済核燃料の発電所外貯蔵についての検討が実施された。その結果、使用済燃料を2010年までに約6,000tU、2020年までに約15,000tU発電所外において貯蔵し得る施設が必要であること、原子炉等規制法の改正を行うことが必要である旨の結論が出された。また、同検討会の検討結果を踏まえ、本年6月に報告書が取りまとめられた総合エネルギー調査会原子力部会においても同様の考え方が示されている。

(2)制度整備に向けた取組
 これら報告書を踏まえ、原子炉等規制法の改正に向けて検討が行われているところ。

(3)賠償措置額の特例を設ける必要性
 @
現行原賠法においては、第2条において、「原子炉の運転」、「加工」、「再処理」、「核燃料物質の使用」に附随してする核燃料物質等の「貯蔵」を「原子炉の運転等」に含まれるものとしているため、使用済燃料の貯蔵は発電所外にせよ、原賠法上、「損害賠償措置」が義務付けられているものである。このため、貯蔵を行う者が原子力事業者として整理されれば、原賠法上、損害賠償措置を講じることが義務付けられることとなる。
 A
具体的な賠償措置額としては、使用済燃料の輸送や高レベル廃棄物であるガラス固化体の管理及び輸送について現行60億円の賠償措置額の特例額が定められていることを踏まえると、これらと同額を規定すベきである。
 B
このため、使用済燃料の発電所外の貯蔵が事業として開始される場合には、原賠法について必要な改正を行うとともに、原賠法施行令第2条に使用済燃料の発電所外の貯蔵について特例額を規定し、現行60億円(2倍に引き上げられた場合には120億円)の賠償措置額を定めるべきである。
 C
但し、具体的な措置の時期及び具体的な規定内容については、原子炉等規制法の改正、立地点等の検討の進展を見計って検討すべきである。
3.核燃料物質以外の放射性同位元素による損害について

(1)現在の原賠法上の整理
 核燃料物質以外の放射性同位元素(以下RIと略記)による損害は、放射線による損害ではあるものの、原賠法が想定している大規模かつ集団的な損害と類型を異にしていることから、現在、RIによる被ばく等の損害は、原賠法上、原子力損害とされていないところ。

(2)RI・研究所等廃棄物処分の基本的な考え方に関する検討
 RI等の利用に伴い発生した廃棄物(RI廃棄物)及び核燃料物質等の使用や試験研究炉の運転に伴い発生した廃棄物(研究所等廃棄物)については、処分に係る制度整備等がなされておらず、廃棄物の排出事業所等で保管されている状況。このため、原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会はこれらの処分方策の確立に向けて、本年5月、「RI・研究所等廃棄物処分の基本的な考え方に関する検討について」を取りまとめたところである。
 本報告書のポイントは以下の通り。

 (技術的事項)

 ○
RI・研究所等廃棄物のほとんどは、その放射能濃度が、現在埋設処分が行われている低レベル放射性廃棄物と同等以下のものであり、その処理処分は現在の技術で対応可能。
 ○
当該廃棄物はその発生形態が多様(事業所数は5,000を超える)であり、放射性核種の組成が一様でないため、廃棄体中の放射性濃度等の確認手法の検討が必要。
 ○
極低レベル放射性廃棄物であっても、焼却灰等の廃棄物については、「素掘り処分」ではなく、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の「管理型処分場」の構造基準を踏まえた処分施設に処分。
(制度的事項)
 ○
放射線障害防止法等に埋設処分に係る規定の追加等の法令整備が必要。
 ○
廃棄物処理処分は、RI使用者等の廃棄物排出者の責任で実施することが基本。
 ○
処分事業主体の設立は、平成9年10月に設置された「RI・研究所等廃棄物事業推進準備会」で検討を開始。廃棄物排出者等の関係者の参画を得て、検討を進め、2000年頃を目途に設立。

(3)原賠制度上の対応について
 従来、RIによる被ばく等の被害が大規模かつ集団的な損害となることが想定されていなかったため、現行原賠法上はRIを対象としていなかったところであるが、今後、研究所等廃棄物とあわせて大規模な処分が行われる場合、大規模かつ集団的な損害の可能性も想定され得ることから、必ずしも現行原賠法の対象とされる低レベル廃棄物と区別すべき理由は無い。このため、RIによる被ばく等の被害についても、大規模に処分する場合については原賠法の対象として追加する法改正を視野に入れるべき状況となっている。
 但し、規制法上の整理及び具体的な処分のあり方についての今後の検討結果を待たなければならないことから、今回特段の改正を行う必要は無いが、今後の処分方策の検討の具体化の進展の中で、適切な時期に法改正を行う必要がある。

4.核融合について

 現行原賠法においては、原子力損害として@核分裂の過程の作用による損害、A核燃料物質等の放射線の作用による損害、B核燃料物質等の毒性的作用による損害を規定しており、この考え方に基づくと核燃料物質を用いない核融合実験装置による損害については、原賠法の対象にはならないというのが現状の認識である。
 しかしながら、大量の放射化物やトリチウムを扱うことが予想される実験炉等を含めた将来の核融合炉については、その研究開発の進展に応じて然るべき時期に適切に検討を行うべきである。