高速増殖炉懇談会(第12回)議事要旨



1.日 時 :平成9年11月28日(金) 14:00~15:30

2.場 所 :科学技術庁 第1、2会議室 (2階)

3.出席者
(原子力委員)
伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員、依田委員
(専門委員)
西澤座長、秋元委員、内山委員、大宅委員、岡本委員、小林委員、近藤委員、鷲見委員、住田委員、松浦委員、吉岡委員
(科学技術庁)
加藤原子力局長、森口動力炉開発課長
(通商産業省)
谷口資源エネルギー庁審議官、荒木新型炉開発企画官

4.議 題
  (1)報告書の取りまとめ

5.配布資料
資料第12-1号  高速増殖炉懇談会(第11回)議事要旨
資料第12-2-1号 高速増殖炉懇談会報告書案に関するご意見と回答(案)[事務局]
資料第12-2-2号 高速増殖炉懇談会報告書国民意見への回答 (吉岡委員担当分)[吉岡委員]
資料第12-3号 「高速増殖炉研究開発の在り方」(修正案)[事務局]

 [委員配布資料]
  ○「反対意見の理由説明」[吉岡委員]
 [参考資料]
  ○ 高速増殖炉懇談会報告書案「高速増殖炉研究開発の在り方(案)」に関するご意見集[事務局]

6.概 要
(1)西澤座長より開会宣言と今回の議題の説明がなされた。その後、事務局より配布資料の確認が行われた。

  ○前回了承いただいた報告書案について、1ヶ月間の意見募集を行い、また「ご意見を聞く会」を開催し、多数のご意見を頂いた。これらのご意見を踏まえて、住田委員に取りまとめをお願いし、4人の委員の方に回答案の検討をしていただいた。本日はこれらの検討結果を基に議論していただき、本懇談会の最終報告書を取りまとめたい。(西澤座長)

(2)事務局より、資料第12-2-1号、第12-3号及び参考資料に基づき、報告書案に対するご意見の概要とそれに対する回答案などの説明があった。また、吉岡委員より、少数意見に対するご意見への回答について説明があった。主な説明内容及び質疑は以下の通り。

 <報告書(修正案)作成までの作業の進め方について:事務局>
  ○10月14日から11月14日にかけて意見募集を行い、電子メール、封書、ファックス及び葉書の四つの手段により、659名から1063件のご意見を頂いた。ご意見の取扱いについては、原子力委員会決定「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」の手続きに従った。
  ○事務局でご意見を百数十に類型化し、回答案を作成した。その後、座長の指名により住田委員に取りまとめをお願いし、内山委員、近藤委員、吉岡委員の4人の委員の方に、意見の整理と反映の仕方の検討を行っていただいた。整理は、「Ⅰ.報告書案に反映して修文すべきご意見」、「Ⅱ.論点について既に記述があり、報告書案の記述でよいと考えられるご意見」、「Ⅲ.報告書案の内容以外の事項に関するご意見」の3つに分類し、回答案を基に議論していただいた。
  ○それを踏まえて事務局で整理して各委員に送付し、各委員からご意見を頂いた。各委員からのご意見等を踏まえて修正したものが本日の資料である。最終的には、座長の了解を頂いている。
  ○資料12-3号は、ご意見を反映した結果、どこが修正されたかが分かり易いように手書きで修正したものである。
  ○吉岡委員の少数意見に対する意見については、吉岡委員に回答案を作成していただいた。資料第12-2-2号により後程説明していただく。

<具体的な修正箇所などについて:事務局>
  ○(1頁5行目)「事故そのものの重大さに加え」については、安全規制でいう「重大事故」と誤解される恐れがあるため、「事故は放射線被ばくにはかかわらないものであったとはいえ、社会的には重大なものであり」に変更。これは、小林委員と座長のご意見によるもので、最初に各委員にお配りした案からは若干変更になっている。
  ○(3頁12行目)我が国のエネルギー状況の記述が必要と考えられるため、「また、近年の中国、東南アジア諸国など・・・」という記述を「また、我が国のエネルギー需要も今後とも増えると考えられています。さらに、近年の中国、東南アジア諸国など・・・」に変更する。
  ○(4頁1行目)原子力は新しい非化石エネルギーとは言えないので、「原子力などといった新しい非化石エネルギー」の記述を「原子力などといった非化石エネルギー」に変更する。
  ○(4頁23行目)廃棄物の問題は相当な覚悟で取り組む必要があると認識している。中野委員からの修正案として、「原子力については、高レベル放射性廃棄物処分や新規立地が進まない」という記述を強調して、「原子力については、何よりも高レベル放射性廃棄物処分という重大な課題があり、それに加え新規立地が進まない」に変更する。
  ○(5頁4行目)未開発大規模水力資源利用が進まないのは、「技術的・経済的制約」の他に、「環境保護的制約」なども考えられることから、「技術的・経済的制約」の記述を「技術的・経済的制約など」に変更する。
  ○(6頁10行目)<参考資料1>は、高速増殖炉の問題点についても記述していることから、題名を「高速増殖炉の主な特性」から「高速増殖炉技術について」に変更する。
  ○(6頁16行目)高速増殖炉は、ウランの利用効率を軽水炉に比べ高くできる、またマイナーアクチニドを効率良く燃焼でき廃棄物の負荷を低減することができるという点は、実証されておらず可能性であることから、「軽水炉に比べて極めて高くできる」の後ろに、「可能性がある」を追加。さらに吉岡委員のご意見で「負荷の減少できる」の後ろに、「可能性がある」を追加する。
  ○(7頁20行目)これまでも国際的な協力を積極的に進めてきたところであり、「こうした研究開発に当たっては、各国との国際協力も行ってきました。」を追加する。
  ○(9頁12行目)ウラン資源量に関して、原案の「約73年分でしかありません。」は推進的立場で書いてあるともとれるので、「約73年分です。」と変更する。
  ○(14頁11行目)燃料サイクルの重要性については、<参考資料1>にも記載しているが、本文にも記載することとし、「燃料サイクル技術開発は原子炉の開発と同様に重要である、」を挿入する。かつ読みやすくするため14頁最初の段落をさらに段落分けする。
  ○(16頁9行目)「問題があるからというだけで、」という記述は、主旨を明確にするため、「当面の困難について、その原因を反省して合理的な解決策を探求してこれを乗り越える努力をせず」に変更する。
  ○(16頁10行目)座長のご意見で、将来の費用についてもこれまでの費用と同様に重要であることから、「これまでの成果を無にすることに等しく」の記述を「これまでの成果とともに今後の可能性をも無にすることに等しく」に変更する。
  ○(17頁11行目)実証炉の設計研究についても反映することから、「「もんじゅ」で得られる種々の研究開発の成果」以降に「及び電気事業者が中心となって進めている設計研究の成果」を挿入する。また、7頁19行目の記述を、「設計研究が進められ」から「設計研究及び関連技術開発が進められ」に変更する。
  ○<参考資料2>について、データの説明が不十分なところ、記号の使い方が紛らわしところがあり、ご指摘の通り修正した。

  ○4人の委員の方から、「Ⅱ.論点について既に記述があり、報告書原案の記述でよいと考えられるご意見」について、今日の懇談会で議論すべき点を次のようにご指摘いただいたので、それを紹介したい。
  • 「諸外国がやめたのに何故日本だけがやるのか明快な記述はない」という点については、本報告書案の7頁から8頁に各国の事情や我が国の立場が書いてあり修文の必要はないと考えられるが如何か。
  • 「高速増殖炉」を「高速炉」に変えるという点については懇談会の場でも議論したが、原子力委員会で検討を委ねては如何か。
  • エネルギー問題に関する教育の必要性を原子力委員会に報告するが、これについては座長も常日頃からご意見を言われており、懇談会の場で補足的意見があるか。
  • 「重大な問題が発見された場合には、直ちに同計画の抜本的な再検討を行わなければなりません。」という記述について、中野委員から「抜本的な再検討」の中には「中断・中止」の可能性も含むのかとのご質問があり、事務局で概念的には入ると答えた。この点については「ご意見を聞く会」でも発言があり、懇談会の場でも議論いただいては如何か。

  ○秋元委員の補足意見に対して3件のご意見があった。この点について秋元委員から補足があればご発言をお願いしたい。

  ○「Ⅲ.報告書の内容以外の事項に関するご意見」に関して、必要なものについては原子力委員会などに報告することとしている。
  ○「懇談会メンバーが偏っている、意見募集が1ヶ月で短い、「ご意見を聞く会」が東京で一回だけ」などの懇談会の運営に関するご意見については、結果的に「600人以上の方からご意見が寄せられたことから運営については妥当」と事務局作成の回答案では述べている。「ご意見を聞く会」についても、「書面によるご意見を補完するものであり、役割は十分果たした」ものと答えている。

 <少数意見への回答について:吉岡委員>
  ○「少数意見」は、「反対意見」ではないかとのご意見が1件あり、何の目的の少数意見であるかを明確にするため、「反対意見」に変えたいと考えている。
  ○63件のご意見を頂いた。全体の6%ということで感謝している。その中の8割はFBR開発中止という私の判断の根拠を示していないというものであった。「少数意見」は、本文の2割程度にするとの自主規制で2枚に収めたが、判断の過程と根拠を書き切れないと判断した。そこで、付属資料として判断の根拠を示した文書を採用して欲しい旨、事務局及び西澤座長に諮った。しかし、それは通らず、本日の委員配布資料ということで議事録に残すということにした。これに判断の根拠のエッセンスが書いてあるので、参照して検討いただきたい。

 <主な質疑>
  ○修正すべき案以外で、特に審議すべき事項を取り上げた。その点についても、審議していただきたい。(住田委員)
  ○葉書も含め非常に多くの人が各地での説明会の開催、意見の交流を図って欲しいとのこと。これについて、どう考えるのか徹底的に議論すべきだ。何故時間を区切るのか、東京でしか「ご意見を聞く会」を開催しないのか、という点について、新法人設置法案のスケジュールに合わせるとの説明では不十分だ。改組や予算のスケジュールと国民のご意見を聞くことをどのように秤にかけるかを我々が判断すべき。スケジュールよりも色々な専門家を交えて徹底的に議論していただきたい。これからでも遅くはない。他の委員の方の意見を聞きたい。(吉岡委員)
  ○出来るだけ早く決めなくては、と常日頃言ってきた。京都でフォーラムが開催されることもあり、私としてはそれくらい緊迫感を持っている。いずれにしても、早急に調べ始めなければならないというのが一貫した考えである。(西澤座長)
  ○意見募集の期間は十分である。当懇談会は第1ステップとして国民のご意見を聞くものであり、審議に8ヶ月間もかけており、これ以上延ばしても同じような形でまとまっていくものと考える。ここで8ヶ月かけた成果をまとめておくことが大事。(内山委員)
  ○最終的に、国民あるいは世界の人達にエネルギーを安定供給することが、最大の義務。そういう意味でも、決して急ぎ過ぎていない。しかし、止めなければならない場合は、会議を招集して審議をする等の方法を講じなければならない。(西澤座長)
  ○今の話は4人の委員で回答案を検討した時にも先ず出た議論。これが妥当であったがどうかは、手続き論としての一つの問題である。国民のご意見を聞くということは原子力行政の透明性、民主制というレベルでは非常に大事な問題。今後どのような形であるべきかということを提案するという点では、前例がなかったことから、今回が残された例になったと思う。
  • 期間が十分であったかという実質論では、これだけの意見が分類され、かつこれまで審議済の議論も沢山あり、審議は済んだものと思われる。それでも国民のご意見を聞いたのであるから、最後まで再考する機会があるべきであり、修文すべき意見でなくても本日協議していただきたい。実質論的には、内山委員は言われたように、ご意見や合理的な理由については出尽くしている。(住田委員)
  ○住田委員の見解とは違う。事務局が整理したのは要約であり、このような整理の仕方では落ちているものが沢山ある。私は全ての意見を熟読したが、要約に収まらない重要な意見が多くあった。実質論的に熟読しないで、審議が尽きたと結論するのは早計。(吉岡委員)
  ○全部取りまとめ今は前を向いて歩き出そう、ということを決めようではないかということ。問題が後で出てきた時は、再考慮をするということ。結果的に、吉岡委員の言われることは入っている。
  • この分野では定量的に問題点を世の中に明らかにしていなかったことが批判されている。動開課長にも解説本を書いて欲しいと言っている。他の方も本を書いていただいて、国民に正しい知識を渡すことが必要。
  • 安定エネルギー供給が大きな問題。その過程で、色々やりながら変えていかなければならない。一つの方法でずっと行くとは決められない。(西澤座長)
  ○意見を読んでみて全体としては座長が言われるように、技術的な情報が公衆の利用できる形では十分に整理されていない、あるいは正確な情報がない、といったご意見を頂いたと感じた。しかし、この懇談会で意見を開陳し、批判を受けるという役割を担ったものとして、報告書は個別の意見についてはそれなりの議論があり、それらを踏まえた形で書かれていると判断している。(近藤委員)
  ○「少数意見」を「反対意見」とすることについて、少数意見の冒頭に「原子力発電に絶対反対の立場を取る者ではない。21世紀の有力な選択肢である。」との記述があり、次の頁に「「もんじゅ」は純粋な研究炉として存続させる可能性が残っている。」と記されている。必ずしも反対とは言っていない。反対意見とすることは如何なものか。(内山委員)
  ○100%反対ではないが、大部分に反対である。特に強い反対のポイントは、総合評価のプロセスを踏まえていない点と、商業化計画を継続して「もんじゅ」を再開するという点である。「研究炉としての可能性をさらに検討する」としているが、研究炉としての存続が合理的とは直感的には思っていない。パーセンテージで表現するのは必ずしも適切ではないが、多数意見に75%位は反対と思っており、反対意見としても不自然ではない。反対意見で良いと感じている。(吉岡委員)
  ○今迄少数意見との心持ちで書かれてきて、一人の意見で変わることはないのではないか。少数意見で良いのでは。(近藤委員)
  ○了解した。(吉岡委員)
  ○こういうところを調べる必要がある、ということを出して欲しい。学会誌に是非投稿されて、どういう点を懸念しているかを明白にしていただきたい。(西澤座長)
  ○原子力学会誌に出すということではないが、私が関連する学会の学会誌や、或いは著書として世に問うということで、意見を聞いていただくよう努力する。(吉岡委員)
  ○今まで、懇談会の席上でも、報告書案の補足意見でも申し上げたいことはきちんと述べた。補足意見に対して一般の方々からご賛成を頂き、投げかけた問題点を正確に把握していただけて嬉しく思っている。
  • 「高速炉」と「高速増殖炉」という名称の問題を提起したが、この点に関しては、今も「高速炉」が正しいと思っている。「高速増殖炉」というのは「高速炉」の中における「増殖」という機能に力点を置いたものである。「増殖」は「高速炉」時代において最後に完成する最重要の機能である。「高速炉」が最終的に「高速増殖炉」になることに異議を唱えている訳ではなく、現時点で「高速炉」は「増殖」以外に色々な使い道がある。
  • 現在の軽水炉時代において、軽水炉の持つ問題点を補完する意味があり、それを大いに利用することが軽水炉のためにも、高速炉のためにもなる。これが、「高速増殖炉」という名称の中ではうまく表現されない。
  • 「高速増殖炉」という名称から「増殖」をとるべきでないという国民からのご意見を頂いているが、ご意見には2種類ある。一つは、「高速増殖炉」は危ない原子炉であるという認識があるので、「増殖」をとると、「猛犬注意」が単に「犬注意」になるようなものであり良くない、という意見。もう一つは、「高速増殖炉」の名前を変えることは国の原子力政策を変えることに通じ、原子力推進を後退させる印象を与えるものであるから、「高速炉」とすることに反対である、という意見である。
  • 原子力を推進、反対する両方の立場で、名称をもてあそんでいる印象があり、高速炉にとって不幸な立場になった。もっと素直に考え、高速炉を開発するメリットを検討し、それにふさわしい名称が何かを考えると、高速炉のあらゆる機能を利用するという観点で、敢えて「増殖」という形容詞を外してもっと広く把握すべき。それは原子力推進派が言う原子力路線の後退・変更ではなく、社会のニーズに合わせて原子力開発をする姿勢の現れと解釈したい。この問題について原子力委員会で検討いただきたい。(秋元委員)
  ○実際に原子炉の設計を考えるとき、「増殖」を念頭に置かなければ設計が出来ない。秋元委員のご意見も理解できない訳ではないが、「高速炉」の中に「増殖」とそれ以外の機能をはっきり書いた上で開発を進めなければならない。「高速炉」という言葉のみで開発を進めることは危険。(鷲見委員)
  ○それらの議論を踏まえ、両方の意見があることを明記したのが報告書案である。本日は報告書案の書きぶりを議論するべきであり、これ以上の技術的な議論はすべきでない。頂いたご意見に誤解があり、それが報告書案が不完全であることに起因するならば別であるが、今日は、報告書の書きぶりについて不十分であるというご発言のみが許される。秋元・鷲見両委員のエールの交換が終わったところで、この議論を打ち切ることが適当。
  • 重要な審議事項としては、住田委員からも確認の要請があった、国民のご意見の中で多かった、「諸外国が高速増殖炉開発をやらないといって日本でやらない理由はない。」、あるいは「諸外国が止めているので日本でも止めろ。」について、理由が明確でないということについて意見を述べたい。これらは報告書案7頁の海外の動向をまとめている部分の7頁21行目に対してのご意見としては、ややずれていると感じる。これは住田、吉岡、内山委員と議論した時にも同様の判断が出た。報告書は、7頁に述べた状況も踏まえて本懇談会は3.2節の判断をしたとしている。それらの観点について議論をした上で、「一つの有力な選択肢」として研究開発を進めるべきという判断に至った。その論理展開がおかしいとのご意見であれば真剣に議論すべきであるが、寄せられたご意見はそうではない。他方、報告書案に記述してある4、5点の理由が不十分であるというご指摘については、懇談会の議論を総合的にまとめたものが本文の記述であるとご理解いただくほかは無い。要すれば、「諸外国がやらないといって、日本がやらない理由は無い」というご意見については、お気持ちは理解できるものの、報告書案に対する意見としては、やや肩に力が入りすぎたご意見である。懇談会としてはこれらのご意見に基づいて、これ以上修正する必要は無いと判断する。(近藤委員)
  ○「高速増殖炉」と「高速炉」については、「高速増殖炉」という名称で始めたのであるから、「高速増殖炉」のままやった方が良いと考える。つまり「増殖」という言葉をことさら切り放してその機能を重視するのではないということ。「増殖」という機能は研究開発の重大理念であり、言葉の問題ではない。この方向でここはまとめたい。原子力委員会の方にお願いしたいと思っている。(西澤座長)
  ○「もんじゅ」における研究開発の記述の中で、運転管理のことを触れているが、もう少し運転管理の重要性を強調した方が分かりやすい。研究開発の中に運転管理は入っていると思うが、動燃には悪いが、「もんじゅ」では運転管理が悪かったのでトラブルを招いたと考えられる。それを反映して、本文中に運転管理の改善について付け加えた方がよい。(鷲見委員)
  ○おっしゃる通り。私も今後、最も恐れていることである。教育上の重大ミスであると考える。大学を卒業する時点で、職業人の倫理を身につけておくべきであった。本件は、動燃改革の審議会での検討事項であり、本懇談会で言及しすぎるべきでない。動燃改革が研究開発の条件であることは指摘するべきであるが、動燃改革の内容について言及するべきではない。(西澤座長)
  ○近藤委員が言及されたことで、「なぜ日本だけが高速増殖炉開発を続行するのか明快な理由が記載されていない」というご意見については、報告書において高速増殖炉の研究開発を継続することの明快な論証がなされていない、ということと考える。その観点から9頁以降をじっくり読んだが、多数意見であるから妥当であるという論理が使われ、しかも多数意見と書かれているのは2点のみであった。2点とは、10頁の人類に対する義務、11頁の人材が育っている、ということ。分析的に読むと、この2点が多数意見で、それゆえ高速増殖炉開発を継続するという文章に読める。この報告書が全体として高速増殖炉開発が是であると論証していると解釈することもできるが、そのように論証されているようには読めない。しかし、それを詮索すると全面的に書き直さなければならなくなる。少数意見を述べた立場としては、これ以上は詮索しないが、高速増殖炉研究開発続行の明快な理由がきちんと論証されていないという印象は強く持っている。だから、少数意見を書いたというのが私の立場である。(吉岡委員)
  ○研究開発を否定する明確な理由がなく、エネルギー供給に関する他の方法が無いから選択肢の一つとして研究開発する必要があるということ。絶対だと言って研究開発を始めて、後でその通りになるかというと、そうとは限らない。正直に、他に良い方法が無いからやるべきだという程度の書き方が良いと考える。止めるべき理由が無いということ。(西澤座長)
  ○吉岡委員の解釈が定番になると困るので異論を述べておく。10から11頁の記述で、11頁はじめの「これが大勢を占めました」の「これ」は「また」以下の人材論だけを指すのは解釈が誤っており、10頁の「これに対しては、「常陽」が...」以下から始まる文章全てを指して、「大勢を占めました」と解釈すべき。したがって、「人材」のみならず、そこにある歴史や「海外の経験を参考にしつつも原型炉を用いた研究開発を中心に高速増殖炉技術の実用化の可能性を探求し、...」が重要であり、これが意見の大勢を占めたと読むべき。(近藤委員)
  ○そのように読める可能性を探ったが、読めなかった。近藤委員がそのように解釈するのであれば、それを尊重する。他の委員がそのように考えるのも尊重するが、もう少し明確になるように修文した方が良い。(吉岡委員)
  ○最後の部分は、それまでの文節を受けたまとめとなっていると読んでいただけると確信する。(近藤委員)
  ○中国では三峡ダムの閉め切りが行われた。依田原子力委員に人材を出していただいたりし、中国に随分お手伝いするように働きかけてきた。これは、選択肢の一つとしてそのようなものがあるのだ、ということを自分なりにできる範囲でやってきたもの。原子力界の諸先生方にも是非そのような道を探っていただきたい。
  • ご意見は議事録に記録されるので、ここでの議論は決して無駄にはならないと考える。(西澤座長)
  ○3点程、文章表現について再考を求めたい。
  • 1点目は、16頁9~13行目の「これまでの成果とともに、今後の可能性をも無にすることに等しく、大きな損失と言えます」、さらにその4行下の「さらに中断の後、将来必要なときに再び研究開発を始めようとしても...大きな損失といえます。」の部分について。13行目の文章に関しては、中断されてまた始めるという仮定の議論であるので、「大きな損失」といえるかどうかは分らないので、「大きな損失となる可能性がある」との修文を提案したが採用されなかった。国民のご意見にも「損失」と断言することは早計であるとの指摘があった。9行目を修文する根拠となった国民意見がそれに相当する。
  • 大方の委員が「これまでの成果とともに、今後の可能性をも無にすることに等しく、大きな損失」と考えるならば、そのままでも良いが、私の考えとしては、「これまでの成果」は研究開発を将来続けるべきかどうかを検討する際には、これまでどれだけお金をかけたかはご破算にして考えるべき。現在、どれだけの情報が蓄積され、将来の実現可能性がどうで、今後どうすればどのくらいのことが期待できるかという、現在及び将来のことのみを考えて判断するのが適切。そうでないと、今までに巨額のお金をかけたプロジェクトは止めにくくなる。過去の苦労はその都度ご破算にするべきと考えるし、国民のご意見にも2、3件同様の内容があった。以上、ここの、「これまでの成果」や、再開する場合の「大きな損失」といった表現については異論がある。(吉岡委員)
  ○大変金をかけたが駄目だったことがことが分かり、止めることは無駄ではない。今は当然やるべきである。そういう意味の記述である。駄目になると無駄になると考える人が多く、後追い技術をやっている場合にはそういう論法が成立する。決して意味がおかしいとは思わない。(西澤座長)
  ○他に意見が無ければ、座長の解釈で結構である。(吉岡委員)
  ○この文章の背後には金額的な問題もあるが、技術の継承の問題があると考える。エネルギーの技術開発は、絶えずこつこつと基盤を築かないと、必要になったときにすぐに開発できるものではない。特に高速増殖炉のような大量電力消費社会に対応する大型技術は、常に技術開発に向けた努力をする必要があることが、背後に強く現れていると考える。(内山委員)
  ○技術屋、教育者としては、おっしゃることは良く分かる。しかし、今の段階でそれを表に出すと誤解を招く。2次的に表現すべきで、頭から表現するのは誤解を与える。(西澤座長)
  ○先ほど3点あるといった文章表現の修文案の2点目を述べたい。
  • 報告書案9頁23行目に「ウラン資源量の推定は困難であり、かつ過小評価の場合の多いことが明らかであること」とある。これに対して国民から、付属資料の中で具体的に過小評価の例を示せというご意見が出された。だが私がその案を作ったところ却下された。だが採用して欲しい。1967年の原子力委員会の長期計画には、1965年の欧州原子力機関の推定値が紹介されており、ウラン確認埋蔵量は62万トンとある。つまり、今の1/7以下であり、その後30年を経て451万トンとなった。30年で7倍強であり、外挿すると100年後には700倍位になる。このようにウラン資源量の推定は困難であることを具体的に示す数値を挙げてみたが、却下された。このような記述があった方が良いと考える。(吉岡委員)
  ○資源の埋蔵量は、経済情勢や技術水準によって変化し、推定の難しさがある。過去の埋蔵量について述べられたが、ウランだけでなくあらゆる化石資源も含めて同様の問題を持っている。この文章がおかしいとは思わない。(内山委員)
  ○私もおかしいとは思わないが、さらに良くするために提案した。(吉岡委員)
  ○そのような意見を踏まえ総括して、「歴史的に見てウラン資源量の推定は困難であり、かつ過小評価の場合が多いことが明らか」と書いた。過去100倍の誤差があったということで、今後も100倍であることが予想され、それが結論に重要な意味を持つならば書くべきであるが、「慎重に扱うべきもの」と述べるためには必要ではないと考える。(近藤委員)
  ○100倍ではなく7倍である。しかし修文しないという点は同意する。(吉岡委員)
  ○7倍という数字は議事録に残るので、結論を出すのに自信が持てると考える。正確な表現に近くなっていると言える。(西澤座長)
  ○本当は沢山の修文案があるのだが、3点だけと約束したので、3点目を指摘する。10頁の6行目の「我が国社会の人類に対する義務」という表現について。核兵器開発の歴史を研究しているが、核兵器開発関係者の多くは「人類」という言葉が非常に好きであり、エドワード・テラーなども多く使っている。例えば、中性子爆弾の開発を中止することは「人類に対する犯罪」であるとか、何にでも「人類」を持ち出すという軽率な表現が多い。そうした悪習は良くないため、少数意見では「人類」という言葉は一カ所も使っていない。ここの記述を全部削れという国民意見もあり、また「人類に対する義務」を「国際社会への貢献」と置き換えよ、という国民意見もあった。「人類に対する義務」を残すよりは、これらのいずれかの方が良いと考える。全部削ることは委員の同意が得られないと考えるので、「国際社会への貢献」に書き換える方が良い。(吉岡委員)
  ○「人類への貢献」と「国際社会への貢献」のどこが違うのか理解できない。実質的には同じではないか。(西澤座長)
  ○ 表現上の問題。私のような学者だけかもしれないが、「人類への義務」は核屋が好きな言葉であり、その言葉自体に非常にネガティブな印象を受ける人が多い。言葉の歴史性の問題であり、内容的には西澤座長のおっしゃる通り同等である。(吉岡委員)
  ○「人類への義務」が最も適切であると考える。「国際社会への貢献」という表現では、技術や資材を供給したり、貢献の方法は種々ある。しかし、「人類への義務」とすると、「エネルギーを将来に残す」という意味が入る。もう一つは、この報告書を読んだ高速増殖炉の開発関係者が、「我々は人類のために」開発しているという非常に大きな意識を持つことになる。これら2点の理由から、「人類への義務」が最も適切であると考える。「国際社会への貢献」は良く言われる表現であるが、本当のところ何であるか良く分からない。(鷲見委員)
  ○鷲見委員の意見に同感である。「人類」という表現が最も的確。(西澤座長)
  ○吉岡委員は核屋が好きというが、核屋だけではなく「人類」は他の分野の人達も一般的に使用している言葉であり、違和感は無い。(近藤委員)
  ○一般国民、法律家の立場からして、「人類に対する義務」にネガティブな印象は無い。(住田委員)
  ○住田委員から指摘のあった懇談会での懸案事項の中で残っている、「抜本的な再検討」についてご検討いただきたい。(事務局)
  ○「抜本的な」という表現で十分。「中止・中断を含めた」という意見もあるが、急いで開発をすべき、という全く逆の状態も想定され、それも記述する必要が生ずる。「抜本的な」の中で両方の状態を含ませることで十分。(松浦委員)
  ○ここでの表現は「問題が発見された場合には抜本的な再検討」であり、進めるという意味合いは自動的に無いと解釈している。「抜本的な再検討」には中止も含むことを、西澤座長は再三明言されている。それはそれで、大変結構であるが、文章をより明確にするために、「中止・中断を含めた」を入れた方が良いと再三主張している。入れないという意見が大勢のようであるが、私及び中野委員は入れた方が意味が明確になってより良いと考える。賛成される方がいれば有り難いが、いなければ座長判断で良い。(吉岡委員)
  ○再三申し上げているが、私自身は「抜本的な再検討」に「中止」が含まれることは当然であると考えている。もし、ご異論が無いようならば、原文通りとさせていただく。(西澤座長)
  ○国民意見の回答案を事務局が作成されているようであるが、回答の内容が良くないものも散見される。これについてはまだ委員の皆さんも目を通してないと思われる。その扱いについては、今日でなくても良いが、委員の意見を聞いてその上で座長の責任において、必要ならばそれを取りいれるという形で処理していただきたい。(吉岡委員)
  ○お送りした各ご意見に対する回答案を事務的には用意したが、これは全体を整理するに当たっての途中のものであり、公式なものとしては扱わないと考えている。座長とも相談してそのようにしたい。(事務局)
  ○一つ一つ間違い無いというところまで検討してから出すという時間が無い。
  • 再三お願いしているが、良く理解してもらうことが大事。そのためには本を書いていただきたい。それが一番大事なことと思っている。(西澤座長)

  ○特にないようなので、この辺で意見は出尽くしたと判断させていただきたい。本日頂いたご意見を報告書案及び回答案に反映し、最終報告書として本文を修文するとともに回答を確定したい。今後の取扱いについては、私に一任させていただきたい。(西澤座長)

  ○懇談会の報告書については、「ご意見の回答」と合わせて12月1日に開催される臨時の原子力委員会で西澤座長から報告の予定。報告書あるいは「ご意見の回答」の扱いは、印刷された段階で希望者に配布する。ご意見集については部数の都合等あり、未来科学技術情報館、原子力公開資料センター、サイエンスサテライト、連絡調整官事務所などの科技庁の閲覧施設で閲覧していただきたい。(事務局)

  ○本懇談会は2月に第1回の会合を行ってから今日で第12回目になる。お蔭様で、先生方のご努力で最終報告書をまとめることができた。委員の先生方には約9ヶ月間に亘り精力的に審議をしていただき心から感謝したい。
  • ようやく世の中も、エネルギー問題に注意が行き届くようになってきたのではないかと思う。まだまだ、山あり谷ありで、技術的なことになってくると厳しい問題が出てくると思っている。今後ともこの問題を慎重に検討しながら、是非21世紀に向けて、孫の代まで安定な生活ができるよう、努めて行く責任があるのではないかと思う。本当に心から御礼を申し上げたい。(西澤座長)