今後の高速増殖炉開発の在り方について

 

平成9年12月5日

原子力委員会決定

 

 

1. 平成7年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故を機に発足した原子力政策円卓会議での提言を受けて、本年1月末、当委員会は「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発の在り方について幅広い審議を行うため、「高速増殖炉懇談会」(以下、「懇談会」と言う。)を設置した。懇談会はこれまで12回の会合を行い、当委員会は今般その報告を受けた。懇談会は、原子力の専門家のみならず、我が国各界各層の有識者で構成され、審議の過程では内外の様々なご意見の方々と直接意見交換を行った。さらに報告書とりまとめにあたっては、国民からの意見募集に加え、「ご意見を聞く会」を開催し、寄せられた意見を報告書に反映している。当委員会としては、懇談会報告書は、今後の高速増殖炉開発の在り方について国民各界各層の意見が適切に集約・反映されたものであると受け止めるものである。なお、懇談会報告書中に賛否両論の形で記された諸意見についても、当委員会としては、高速増殖炉研究開発に対する貴重な意見として真摯にこれを受け止めるものである。

 

2. 我が国は、これまで原子力開発利用長期計画で、高速増殖炉を将来的に核燃料リサイクル体系の中核と位置付け、相当期間にわたる軽水炉との併用期間を経て将来の原子力発電の主流にしていくべきとし、動力炉・核燃料開発事業団において原型炉「もんじゅ」の研究開発を、また、実証炉については、2000年代初頭着工を目標に電気事業者が建設の準備を進め、  2030年頃までには、実用化が可能となるよう高速増殖炉の技術体系の確立を目指すこととしてきた。

懇談会報告書では、高速増殖炉を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、その実用化の可能性を追求するため、安全確保、地元の理解などを前提に研究開発を進めることが妥当としており、その際には、適切な評価と見直しを行うなど、柔軟な計画の下に進めることが必要であるとしている。また、原型炉「もんじゅ」についてはこの研究開発の場の一つとして位置付け、実証炉については、「もんじゅ」の成果及び民間の進めている研究開発の成果などを評価した上で具体的計画を決めることとし、さらに、高速増殖炉の実用化にあたっては、実用化時期を含めた開発計画について、柔軟に対応することとしている。

  

3. 当委員会としては、長期エネルギー源確保の必要性、安全確保及び地元の理解の重要性、財政事情の逼迫、経済性の追求重視といった内外の諸情勢も踏まえ、また、今後の原子力研究開発は資源論的観点に加え環境論的観点も重要であるとの当委員会のこれまでの指摘に鑑みても、懇談会報告書の結論は妥当と判断し、今後は同報告書を尊重して高速増殖炉開発を進めることとする。