資料第10−1号



高速増殖炉懇談会(第9回)議事要旨



1.日 時 :平成9年9月19日(金) 14:00〜16:30

2.場 所 :科学技術庁 第1、2会議室 (2階)

3.出席者
    (原子力委員)
     田畑委員
    (専門委員)
     西澤座長、秋元委員、大宅委員、岡本委員、小林委員、近藤委員、
     鷲見委員、住田委員、松浦委員、吉岡委員
    (科学技術庁)
     加藤原子力局長、森口動力炉開発課長
    (通商産業省)
     谷口資源エネルギー庁審議官、荒木新型炉開発企画官

4.議 題
  (1)FBR研究開発投資の適正水準について
  (2)「もんじゅ」の安全総点検実施状況について
  (3)報告書骨子案の検討

5.配布資料
   資料第9−1号  高速増殖炉懇談会(第8回)議事要旨
   資料第9−2号  FBR研究開発投資の適正水準について      [近藤委員]
   資料第9−3号  「もんじゅ」の安全総点検実施状況について    [動燃事業団]
   資料第9−4号  これまでの各委員からの意見の整理        [事務局]
   資料第9−5号  各委員からの報告書案に盛り込むべき意見     [各委員]
   資料第9−6号  高速増殖炉懇談会報告書「高速増殖炉開発の在り方」骨子案
                                    [事務局]

  (参考資料)
  ○ 吉岡委員のコメントへの回答(その2)に対する再コメントへの回答
                                    [科学技術庁]
  ○ 資料第7−3号「燃料サイクルの比較−エネルギー、廃棄物および経済性の観
    点から−」に関する吉岡委員のコメントへの回答          [科学技術庁]

6.概 要
(1) 西澤座長より開会宣言と今回の議題の説明がなされた。その後、事務局より配布資料の確認が行われた。

(2) 近藤委員より、資料第9−2号に基づき、FBR研究開発投資の適正水準について説明がなされた。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
○ 現在の投資水準は、政治的選択の結果ではなく、日本の予算システムの特徴によって決まると思う。既得権を持つ省庁が毎年同じ位のペースで予算を増額させてきた結果であり、そこに政治的な選択あるいは選択の際の合理的チョイスが働いてはいないと思っている。いくら使うのが合理的かを、研究者として政策提言する方向にもっていくべき。
・高速増殖炉がフィージブルかどうか色々な点から疑問視されている。一番重要なネックとしては立地ができるかどうかである。30年間に亘り3兆円使ってきたが、フィージビリティが疑わしいものに、年間8百億円ほどの巨額なお金を使い続けることの是非については経済モデルの世界とは別の判断を必要とするのではないか。フィージビリティが疑わしいものの投資に対して、どのような論理によって決めるのかについては、山地氏の方法は一定の限界があると思う。(吉岡委員)
○ 「政治的」という言葉の解釈については水掛論になるが、おっしゃるシステムもまた政治システムであるというのが、政治学の常識。純粋な科学技術者からするとダーティーと思う事も多々あるが、現在の我が国の社会の成り立ちは、我々も一票投じた結果によりできたシステムである。吉岡氏が言われるような面が予算決定のプロセスに含まれているのは否定しないが、それのみで決まっているわけではないことはご存知であろう。
・第2点のフィージビリティは、まさしくここで扱っている成果のリスクである。物が使われるためには、ある性能を満足する技術が開発されて、それが社会にアクセプトされることが重要である。それを含めて、研究開発のリスクとみていくことが必要だと思う。当然、研究開発をする人は、単に性能のみならず、社会的なアクセプタンスを得られるような内容を有する技術の研究開発を実施していくべきであり、時々刻々或いは適当な期間を置いて、将来において社会的成立性があるかについても評価し、必要な研究開発テーマを評価して前進し、あるいはそこでトータルとしてフィージビリティが無いと判断されれば止めればいい。この資料では、そういう観点で将来のシェアとか実現可能性との関係で研究開発の在り方の一つである投資水準を議論している。(近藤委員)

(3) 動燃事業団菊池理事より、資料第9−3号に基づき、「もんじゅ」の安全総点検の実施状況について説明がなされた。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
○ 2点ある。第1点は、「もんじゅ」安全総点検アドバイザリー・グループについて、大きな社会的な論争を呼ぶような事故の場合、放射線被曝がたとえなかったにせよ、この会での私のような積極的に批判してくれる人間をアドバイザリー・グループに加えることが妥当であると思うが、どのようなメンバーからなっているのか。
・2点目は、安全総点検については非常に狭い範囲で実施しているとの印象を持っている。「もんじゅ」に関しては、臨界前から色々な設計上の不備が見つかり、今度の温度計もそうであった。この原子炉そのものが信用できない。安全総点検をするのであれば、設計全体に関してやり直すことが必要と思われる。それは、動燃だけでやることではなく、安全審査をやり直し、設計全体を見直すことが必要であると思う。この総点検の範囲はそうではなく、技術面ではナトリウム漏えい対策だけであり、ソフト面では運転、教育その他の管理・運営だけである。今回の安全総点検で結論が出たとしても、設計から見直さなければ「もんじゅ」は信用できない。(吉岡委員)
○ アドバイザリー・グループについては、原子力だけではなく原子力以外の各工学分野の方もなるべく沢山入れている。リストを吉岡委員にお渡しする。批判派の意見は聞いている。具体的な点検や技術的内容についての対話集会なり討論会等の申し入れをしているが、先方からまだ返事がない。吉岡先生もそのような会に入って頂き、技術的な討論をさせて頂きたい。是非、ご参加頂きたい。
・総点検の分野については、ナトリウムだけではなく、全ての分野について設計に溯って点検している。専門の先生方からご疑念のあった点については、テーマを整理して再評価をまとめている。その問題についても一度公開の場で議論させて頂きたい。(菊池理事)
○ 「もんじゅ」は原型炉であり、不謹慎な言葉として受けとって欲しくないが、事故が起こる可能性がある。事故が起こったから、全部けしからんということは成り立たない。心配している点は、温度計にしても、今度のドラム缶にしても、新しいことをやろうとした時にしくじっている。その時に設計をチェックする組織が弱いのではないかと感じている。(西澤座長)
○ 今回のような温度計の部分については、第一義的には事業者である製作するメーカーの範囲できちんと行い、納入された動燃できちんと行うべき範囲であると思っている。それほど難しい技術ではないので、日常の品質管理の中の点検に不備があったところである。吉岡委員が言われているのは、そもそも高速増殖炉或いは高速炉とはという中での基本的な問題であり、それは座長のご指摘の通り第三者の専門的な方々の公平な議論が当然必要だろうと思う。2種類あるのではないかと思っている。(菊池理事)
○ 座長は、一つの組織の中でのチェックバランス、レビューシステムをどうするかということを言われたと思う。これは非常に重要な問題である。フランスでは、EDFという電力会社の中に、社長に直接セーフティーレポートを書くような見識の高い方が作業している。わりとインディペンデントに社内監査システムとして安全監査システムができあがっているという印象を持っている。それが、日本の経営風土の中で馴染むかどうかは分からないが、私の感じとしては、次第にそのようなものが必要になり、機能するように組織していかないと、国際化の時代には対応できないのではないか。そういうものを是非考えて頂きたい。(近藤委員)
○ 当然考えている。動燃全体としては、品質保証推進室を新たに強化して作り、「もんじゅ」の中にもQA推進本部を作り、人員的にはかなり優秀な人間をそこに割くことを試みとしてやりつつある。過去にも何回かはそういう挑戦してきているが、なかなか馴染み難いところがある。今回は、これまでの失敗を踏まえて充実したものにしたい。(菊池理事)
○ 敢えて言うと、非常に分からないような難しいことで事故が起こったということでは不可避だと思う。しかし、それをやってみるために原型炉を作っている。どちらかというと、極めてローグレードなところでのミスが発見されないで動いてしまったということが問題である。今の考えで結構で、今後とも宜しくお願いしたい。(西澤座長)
○ 今度の事故は、極めて古典的、初歩的であり、複雑な構造を持ったハイテクな事故とは異なるという印象を持つに至った。さや管の損傷から始まって手順書まで、初歩的であり、かつ全てヒューマンエラーで起きている。幸いにして、放射性物質の漏れがなかったから、地元としてはほっとしている。
・ライナーの健全性を守るために、ライナーを追加するのか。(小林委員)
○ 対策としては、複合させたいと思っている。ナトリウムを元から断つために早く抜く。早く消す、冷やす。防御のためにライナーが薄ければ厚くする、ということの組み合わせになる。ただ、主役をどれにするかは、相談して決めていきたい。補助はそれぞれが行うが、何で持たせようとするかはこれから決めていきたい。いずれにしろ、3つの組み合わせになる。(菊池理事)
○ ライナーは、床全面を鋼板の二重構造にする訳ではないのか。(小林委員)
○ 穴が空きやすい条件のところと、そうでないところが場所によって異なり、その辺を詳細に詰めながら、どの範囲を行うかはこれから実施、設計していく中で、決めて行きたい。(菊池理事)
○ 二次系で物の品質の向上という話があったが、それはどういうところで新たな材料を使うのか、あるいは、品質の高い材料を使うということが有り得るのか。(小林委員)
○ 温度計や漏えいに対して、新しい材料を使うことを考えている訳ではない。これまでの品質管理で問題がなかったかどうか、ということのチェックをしている。性能試験等で不具合があったところ、配管や弁等で容量の小さいものはないか、或いは不安定なところがなかったかを摘出して、取り替えるものは取り替えるという手順で進めている。(菊池理事)
○ コンクリートから水分が発生し、これがナトリウム火災に大きく関係した。壁からの水分の発生は予想していなかったのか。(小林委員)
○ 大洗工学センターで再現実験をするまでは、大漏えいの方が大きな影響を及ぼすだろうとの判断であった。ところが実験してみると、小漏えいの方が温度的には厳しいということで、そのため壁からの水分が出てくる。このため、当然「もんじゅ」の場合にも保温材等を貼り、高温になった時に水分が部屋に出てこないような対策も今回の検討に入っている。(菊池理事)
○ 壁には、まだ相当水分が残っている。それをカバーする断熱材で覆って、水分の発生を内部に留めることができると考えているのか。(小林委員)
○ その通り。(菊池理事)
○ 全てナトリウムの漏えいを前提としている。漏えいを先に検知することは難しいことだと思うが、さや管は折れてしまって初めて分かったが、漏えいの一歩前で検知できないか。説明では、全部漏えい以後の対策である。例えば、原始的だが、監視テレビを置いてはどうか。カルマン渦、共振現象でシステム全体のどこかが振動していることを、現代のテクノロジーで検知すること、これこそが早期であって、漏れてからの早期も大事だが、防火にあたるような、リークの前の機器の振動とか、金属疲労を検知するようところに重点を置くべきではないか。(小林委員)
○ 炉心を含め、「もんじゅ」の点検設備は色々な対策を考えている。専門的にはISI装置を開発している。今回の漏えいの直接原因となった温度計の振動は、通常の点検の中でさらに加えていきたい。振動等を早期発見できるようなことは、当然考えている。運転巡視の中で含めていこうと思っている。長期的には、温度計を中に入れる方式ではなく、外から計れるような方式はないかを併せて研究開発として実施している。それから、温度計の数を減らすことも経験を踏まえてやっていこうと思っている。また、研究炉であるので、ある程度データを取ったら、不要の温度計をはずすことを考えている。(菊池理事)
○ 「事故は起こるべくして起こった」は、ご覧になったか。(小林委員)
○ それを読んで、討論会の申し入れをしているが、なかなか受けて頂けない。(菊池理事)
○ その中で、ナトリウムが漏えいした後の化学反応は、第5報までの見解とは異なっている。我々は、ナトリウム-Fe複合腐食と聞いているが、これによると、だいぶ違うことが書いてある。一応、化学方程式も書いてあるので、動燃としてはなにかの形で見解を述べるべきではないか。(小林委員)
○ 公開の場で討論会或いは議論する機会を設けたいと申し入れをしている。具体的にはセットされていない。その時は、ご案内させて頂きたい。(菊池理事)
○ 原子力反対派の多くの人は、そのような場に出てくることを好まない。推進側の土俵における対話に応じることについては大方が否定的である。しかし、一定の条件を満たせば出て来ると思う。それは、中立的な議長団を立てて公聴会或いはシンポジウムという形でやり、そこには、動燃だけでなく、科学技術庁、安全委員会も交えた形で、中立な事務局を作って、徹底的に議論する場を設定するということ。「事故は起こるべくして起こった」でもそのことを要求している。対等な立場での対話が出来る条件を作る配慮があれば、なんとかなるのではないかと思う。
・安全対策を強化すればするほどお金が掛かるが、コスト面での方針についてどのように考えているのか。また、どの程度コストがアップするか、来月の報告で試算を出すのか。(吉岡委員)
○ 対話集会という場は形式に囚われず、カジュアルに、フランクに議論ができることが望ましい。技術的な事実は一つしかなく、公平であることから、そのようなことを淡々と議論することが必要であり、これを一般の方に聞いてもらう機会の方がより大切ではないかと思っている。もちろん安全委員のような権威のある方が出席して議論する場も必要であるが、それ以上に、疑問を持っている者が集まって議論するという方も大事で、大切にして頂きたい。
・コストについては、当然、今回の改造が電気料金なりに大きく響くような範囲ではない。何にクレジットをとって改造していくかがはっきりしていないので、2〜3割の範囲で改造費の誤差があると思う。いろいろなケースを検討しており、いずれ公になっていく話であると思う。(菊池理事)
○ 対話集会等は初めから公開でやる必要はない。我々の分野では、専門家仲間で非公式に話し合って、危ないものは危ないというのをはじき出さないと商売にならない。危険性が非常に大きいという点で特殊な点はあるが、一般論としては共通なことであるので、是非これからコミュニケーションを良くしてやって頂きたい。(西澤座長)

(4) 事務局より、報告書骨子案についての説明があった。主な質疑は以下の通り。

<主な質疑等>
○ このような報告書に署名することはできない。骨子案に総論として反対である。政府の諮問委員会の報告書というものは、複数のオプションを示し、それを評価する際のクライテリアを示した上で、それぞれについて個々のクライテリアを厳しくチェックした上で、どのオプションが良いか総合評価をするべきである。その論理の進め方においても、第3者が見て、論理の繋げ方の妥当性がチェックできるような形で報告書を作らなければいけない。これが米国では、標準的なルールになっている。一例として、米国科学アカデミーの、解体核兵器からのプルトニウムの処分法に関する報告書をあげておく。残念ながら、日本の殆どの政府諮問委員会は、形式的に科学的な報告書を作り、あらゆる角度からの批判に供するという手続きを踏んでこなかった。各方面からの客観的な批判に対して、開かれた論理形式を確立して、その中で議論していくという報告書を作るべき。この骨子案は、そのような形式になっていない。形式的な合理性を満たすためには、「意見の取りまとめ」にある私が示した形式にしなければ、意味のある結論は出てこない。
・骨子案の内容は、プルトニウム利用について多くの人がメリットであると考えるであろう点を列挙するといった、これまでの原子力委員会の報告書と同様の論述形式である。枠組み全体を改めるべき。大筋としてはこの内容とするならば、後ろに少数意見を付けて欲しい。1992年の脳死臨調の答申は、両論併記であった。脳死臨調の答申では、まず多数意見を委員会の勧告として明記した上で、同じ分量で多数意見の否定という形で少数意見を並べた。このようにして欲しい。骨子案は、形式も問題であり、内容も論理の飛躍が多い。(吉岡委員)
○ 少数意見は併記するつもりである。やってみて、予想しないトラブルが出れば中止するというのが建前。そのような形で進めて来ているが、その点で意見の不一致があるかもしれない。それ以外のところは吉岡委員の言った通りで、他の委員の方々の意見も聞きながら、吉岡委員の言うようなものにもっていけると思う。(西澤座長)
○ FBRは30年間で3兆円を費やしてきた。それでこの成果しかないということは、既にもう止める段階に来ている。(吉岡委員)
○ 危険だからやめようではエネルギーは確保できない。そういうことを考えるべき。(西澤座長)
○ この骨子案は、高らかにFBR開発を推進するということが全面に出ている印象。「円滑な研究開発を進めるに当たって」の中に、国民に知らせるとあるが、これは逆である。国民に知らせ、国民が判断した上で、やるかやらないかを決める。骨子案は、研究開発を進めることが前提になっている。どうやって国民を説得するのかが問題である。今までの論議の中で、こんなに全体的に意見が「行け行けどんどん」になっていたのであろうか。
・一番大事なのは、「序」にあるように、一般への周知が不完全であった、ということ。これは、一つ別立てであっても良いと思う。
・種々の選択肢を見せた上で、諸般の事情からこれであるとすべき。間に少数意見を挿入するような話ではないと思う。(大宅委員)
○ この懇談会で、軽水炉発電の必要性まで我々の責任で議論してきたか。既に産業として成立している軽水炉発電を議論するのではなく、長期的なエネルギー開発は国が負うべきとの認識の上で、FBRの研究開発をエネルギー開発の主要な投資先として引き続き進めるか否かを、種々の観点から議論している。FBRの研究開発行為の妥当性を述べることはできるが、FBRの必要性までは無理がある。スコープが重要。(近藤委員)
○ 原型炉は、やってみてまずければ、止めるための炉。これで日本のエネルギーを任せようとは言っていない。可能性があることは否定できない。やってみる価値があるという話だけが書いてるつもり。今回の事故は、プリミティブなミスであり、これがこのような問題に影響を与えることは残念である。(西澤座長)
○ 通産省の立場で意見を述べたい。「もんじゅ」事故以降の原子力政策を巡る状況が厳しい中で、国民に対する当面及び長期的な原子力政策のメッセージと当懇談会を位置付けている。国民の理解・信頼を得るメッセージとは何かを、本懇談会の議論をなるべく正確・忠実に反映してまとめて欲しい。
・ウラン需給、エネルギーを巡る国際情勢、国内の経済構造の改革があり、原子力を取り巻く内外の経済情勢が大きく変っている中で、FBRの開発の在り方については柔軟に考えることが重要である。
・今後は、長期的な原子力の政策展開が重要となっている。時間的ゆとりがあると思うが、経済性、市場の動向、技術の動向を見極めて研究開発の方向を議論することは重要である。FBRについては、基盤的な研究開発をじっくり積み上げていくこと。安全重視の上で研究開発の効率化、スリム化を図りながら、柔軟かつ着実に技術開発を進めることと考える。(資源エネルギー庁谷口審議官)
○ ゆっくりやって良いものではない。大急ぎで調べることがたくさんあり、切羽詰まった状態である。(西澤座長)
○ 時間的ゆとりについては、研究開発のやり方を言ったまで。原子力開発の進め方の検討については、極めて急がれる。分かり易い、信頼のおけるメッセージを早急に出して欲しい。原子力に関する国民の理解・信頼を取り戻すこと。(資源エネルギー庁谷口審議官)
○ 骨子案は、そのような気持ちで書いている。早く調査研究をやろうと言っているまで。(西澤座長)
○ 吉岡委員の報告書の構成案には賛成する。この骨子案は、構成でいえば結論に当たる部分である。いろいろな選択肢を潰していって、帰納的にこれしかないといった結論に達するというのが報告書の形である。吉岡委員が5点の検討項目を上げているが、仮にこのような検討をやるべきならば、前段で論を尽くすべき。
・吉岡委員の実現可能性をもって判断するという意見には反対する。我が国を取り巻く科学技術が大変な勢いで発展し、グローバル経済が我が国を取り残して急速に発展しており、我が国が活力を失っている。SDI計画は完成しなかったが、それによって広範な裾野の基礎研究が発展し、現在の米国の情報通信革命の基盤になっている。具体的な果実を生み出さなければ全て無駄ではないか、といった考えにもなりかねない。研究の実用性が無いからといって、それを一番のクライテリアとして放擲することは、国家の経済、安全保障論から見て、賛成致しかねる。(岡本委員)
○ 巨額なコストと機会費用をかけていることから、実現性の正確な見積もりをした上で、決定すべきとの主旨である。科学技術庁の技術予測を見ても、エネルギー輸送分野は予測通りに進んでおらず、FBRを含めて、惨たんたる状況である。科学技術分野の中には、エレクトロニクスのように目覚しい発展をする分野もあるが、多くの分野はそうではない。FBRの実現可能性の確率は、非常に低いと判断している。実現可能性をきちんと評価すべき。(吉岡委員)
○ 基本的に骨子案は、このような形で良いと思う。但し、この骨子案は結論だけであり、このままでは説明不足。何故このような結論になるのかという説明をきちんと付け加えないと理解されないであろう。特に、ナトリウム冷却MOX型のFBRの研究開発を続けるかどうかがポイントであり、我々が取るべきオプションの重要なものの一つ。原子力を使うかどうかのオプション、原子力の中でのFBRのオプションについて、最低限説明する必要がある。(松浦委員)
○ 私の意見を資料を基に説明したい。素人であった者が、どのような構造で結論に至ったかを、委員の一人として責任上、説明したい。法律家として、根拠付けから入って結論に至る、といった論理構造を取りたいということで書いたもの。原子力基本法は、今にも通じる問題である。我が国及び地球の将来像の観点からのエネルギー政策として、化石燃料と資源の将来の枯渇をどう考えるかは抜きに出来ない。枯渇に対して、進化論的アプローチとして、その時考えれば良いといった、一種の問題の先送りは、今現在から進めていくべき者の立場としては無責任であると思う。現在でも化石燃料の大量使用を抑制する必要がある。今後のエネルギー需要は、地球レベルで見れば、アジア・アフリカを見れば急増するのではないか。また、既に我が国が3割は原子力発電を行なっている現実は、抜け出すことができない。国際貢献の立場については、原子力基本法を思い返すべき。このような視点が、女性・一般国民に分かり易い流れと考える。
・一般市民として、科学技術の専門用語の多用やカタカナは出来るだけ避けて欲しい。適切な日本語にすべき。(住田委員)
○ 炭酸ガス問題が世の中で認識されていない。火力に対する恐怖が徹底していない。また、我々はエンジニアとして、国民・人類に対するエネルギー供給の義務があると考える。エネルギー供給は命題である。危ないから止めてしまえ、と言った論法は通用しない。(西澤座長)
○ 各委員から意見が出て来る問題点としては、表現が形式的であるから。今、軽水炉の必要性を議論するのではない。FBR開発をする意味があるかどうかについての現状認識として、現在軽水炉時代にあることを示すべきである。
・特に、核不拡散に関する表記の中で、「IAEAの保障措置を受け入れ、余剰プルトニウムを持たないことを世界的に宣言しており、プルトニウムの兵器への転用はあり得ないことになっている。」との表現はおかしい。あり得ないことになっているからやらないのではない。消極的。高速炉開発は、積極的なプルトニウムの平和利用であるという志を表に出して欲しい。何故やるのか、という説明が書き足りない。報告書は国民に対するメッセージであり、理解できるものでなければならない。(秋元委員)
○ この骨子案は、論議を呼ぶために作成したのか。小骨を論議して和らげれば良いのでは。FBRの安全性、将来のエネルギー問題を基に書いているようだが、公開に当たってはその基となる情報を書くべきである。(鷲見委員)
○ 化石燃料枯渇は根拠が不確かであって、政策議論の基礎に据えるべきでないと考える。確かに石油はいずれ枯渇するかもしれないが、天然ガスについては、無尽蔵にあるという学説もある。また、石炭は事実上無限に存在する。エネルギー消費についても、世界人口は数百年後には大幅に減少しているだろうと考える。これについては、進化論的にやるしかない。一方、CO2問題は遥かに重要であって、 CO2かそれとも放射能かという形で問題を立てることには意味がある。(吉岡委員)
○ 「もんじゅ」の地元の住民として、原子力発電は地元住民の十分な理解が立地には必要である。地元に関する記述は、たった2行程度であり、違和感がある。国民へのメッセージにはほど遠い。実証炉・実用炉の問題も含めて、地元住民・自治体の理解を得る、といった少なくとも1項目立てるべきである。また、「もんじゅ」の運転再開についての表現は、再検討して欲しい。再起動は、地元の住民は重大な関心を持っており、総点検の結果が知らされていない段階としては、研究開発のために進めるということに直結するということであるが、ストレート過ぎる表現ではないか。
・現代文明は、FBRを持ってしても、いつかは滅びると思っている。(小林委員)
○ 今のままの文明は、絶対にあり得ないだろう。炭酸ガスの問題で化石燃料が使えなくなることと資源の枯渇は等価である。枯渇したら持っている所だけが強くなり、使えなくなれば持っていてもだめ、という国どうしのアンバランスはある。これから先のことを考えて、今のうちに出来るだけとことん理解できるところまで議論すること。(西澤座長)
○ 20世紀にはエレクトロニクスと匹敵するブレークスルー技術として、原子力があったと考えている。エレクトロニクスが発達していくためにも、それをサポートするエネルギーが必要。原子力が与えられたのは偶然ではない。しかし、原子力システムは未だ不完全であり、だから今のような議論している。ヨーロッパが炭酸ガスの発生量を下げたと言えるのは、仏国が原子力を80%以上やっていること、スウェーデンが水力と原子力で90%以上賄っていることなども大きな要素だ。日本の場合、炭酸ガスを減らせと言っている人々も原子力については口を濁す。現実として、原子力をやらずして、炭酸ガスを減らし、エネルギーも確保するといった解は無いと思う。原子力の持っている問題点を解決して、エレクトロニクスと並ぶブレークスルーエネルギーとして、人類の文明に貢献できるかどうか議論すべき。FBRは、原子力の持っている問題点を解決する鍵であると思っている。単なる資源論だけではなく、廃棄物問題、軍事に振り回されず、平和利用が独立してやっていくために必要との原点が重要。高速炉の可能性を引き出す必要がある。これらの議論を盛り込んで欲しい。(秋元委員)
○ エネルギー源は、どれも環境負荷の点でひどく悪いものである。水力についても、原子力のように厳しい批判的議論が必要。特に、熱帯地域でのダム開発は問題が多い。秋元委員から、ヨーロッパがCO2削減で大きな顔ができるのは、原子力と水力があるからだとの話があった。しかしながら、ヨーロッパでは80年代に既に大方原子力発電の新設をやめてしまった。その次に、火力発電も抑制し、石炭からメタンへの転換を図っており、第2ラウンドにヨーロッパは入っている。日本のように、化石燃料を減らすために原子力に、といった枠組みとはギャップがある。(吉岡委員)
○ 英国は、天然ガスにすることによって、炭酸ガス発生量が半分になると言っているが、これで良い訳ではない。日本はアジアの中心にあって、増大するエネルギー消費に対して、道義的責任がある。これらを踏まえて、虚心担懐いろいろな状態を比較する必要がある。試験をしようと言っているのであって、FBRにエネルギーを託そうと言っているのではない。(西澤座長)
○ エネルギー源は全て環境負荷が大きいという話であれば、仙人のような生活をするということか。(大宅委員)
○ その通り。(西澤座長)
○ 世界の将来のエネルギーを原子力もFBRも無しにどのようにやっていくのかについて、具体的に吉岡委員に示して欲しい。(鷲見委員)
○ 具体的なプログラムは持っていない。懇談会が終わるまでには示せないであろう。長期的に研究すべきテーマである。今後、高木氏などと協力してやっていきたい。(吉岡委員)
○ 将来のエネルギーを具体的にどうすべきかの選択肢のひとつとして、脱原発についての根拠を示さないと議論が進まない。反対のデータを出して欲しい。(鷲見委員)
○ 人類は、独自のエネルギーを使うことによって、はじめて文明を築き上げることが出来た。エネルギーは、目に見えないので重要性が認識されにくく、定性的な議論になりがち。エネルギーマネジメントが重要である。リサイクルをすることにも新たなエネルギーが必要である。エネルギーを節約すれば良い、といった精神論では空約束になってしまう。(秋元委員)
○ アジア地域の長期的なエネルギー需要に対応することは、日本の責務であると考える。(岡本委員)
○ どのような方法も必ず環境破壊がある。どれが少ないかということで選ぶ。エネルギーは、生活必需品である。環境負荷がより少ないものを選択するということが、私の基本姿勢である。(西澤座長)
○ エネルギー消費の総量の大幅削減のためのプログラムを立てる必要があると考えている。技術的には、可能であると考えている。現在の日本人一人当たりの1次エネルギー消費量は、石油換算5トンだが、60年代後半には1トンだった。百年前は、100kgだった。大幅に減らせるはず。また、総量が今後伸びると仮定しても、原子力やFBRが必要とは思っていない。環境問題はあると思うが、資源的制約は無いと思っている。化石燃料を減らすことを自明の前提とせずに、原子力と化石燃料の優劣を比較すべきである。(吉岡委員)
○ 表現の良くない点については、指摘の通りである。事務局の方に次回までに再整理をして貰う。次回議論して、最終的な案に持っていきたい。なるべく早く結論を出したいのは、研究のためになるべく時間を残したいからである。(西澤座長)
○ 次回議論する報告書案は、前日までに入手したい。(住田委員)

(5)座長及び事務局より、次回以降の予定等について説明があり閉会した。

○ 骨子案は、基本的に事務局の主観を入れないで、各委員からの意見を抜粋して作成した。これはたたき台である。この骨子案は、結論に至った部分が書いていないこと、小骨を強調した内容となっていた。次回までに、本日の議論を踏まえて報告書案を作る。吉岡委員の意見については整理して頂き、少数意見として載せられるものの形にして、次回までに出して頂きたい。報告書案は、事前に各委員に送りたい。
・次回以降の日程は、第10回が9月30日、第11回が10月9日の開催である。その後、一般からの意見を1ヶ月募集した後、第12回として11月28日を予定している。(事務局)