参考資料 「吉岡委員のコメントへの回答(その2)に対する再コメントへの回答」

科学技術庁



 いっしょに考えよう「FBR」のこと
 (30ページ)実証炉の炉型を、「トップエントリー方式ループ型炉」に決定したというのは、あまりにも性急である。また、もんじゅのチェック・アンド・レビューを行う前から、炉型を決めてしまうのは問題である。さらに、新しい炉型を開発する以上、再び実験炉から始めるのが適切である。

【回 答】

○これまでに世界中で設計された種々高速炉も含めて、我が国に適した高速増殖炉についての検討を10年以上の期間にわたり行ってきました。現時点では、原子炉容器の構造が単純でまた検査や補修が容易であるという観点からトップエントリー方式ループ型炉を対象にプラント設計を進めています。

○トップエントリー方式ループ型炉は、建設コストを下げるために原子炉、中間熱交換器及び、冷却ポンプを逆U字管でつなぐことにより配管の長さを短くし近接配置したものであり、原子炉設計の改良というよりは配管設計の改良といえます。

○燃料、炉心に関してはフェニックス、スーパーフェニックスやもんじゅの設計とほぼ同じであるため、改めて実験炉や原型炉が必要とは思われません。

 いっしょに考えよう「FBR」のこと
 (30ページ)「軽水炉並みの連続運転」とは、1年程度の連続運転のことか。

【回 答】

○その通りです。

 いっしょに考えよう「FBR」のこと
 (31ページ)研究開発目標にある「軽水炉の価格動向と連動した経済性向上」とは何か。将来の軽水炉のコストダウンを見込んで、将来の安い軽水炉と同等にするということか。それはFBRの寿命の短さを考慮したコストダウンなのか。また「開発の見通しが立っています」とは、具体的にどのような客観的・学問的根拠によるものか。

【回 答】

○「軽水炉の価格動向と連動した経済性向上」
 ・現在研究を進めているプラントシステム設計では常に同時代の軽水炉のコストに注目し将来軽水炉とのコスト差がかけ離れたものにならないようにするよう努力を続けています。このように軽水炉のコストが下がれば実証炉のコストを下げるよう努力を続けて来ております。・高速増殖炉の設計を進めるにあたって40年の寿命が維持されるよう必要な中性子遮蔽を施したり、機械的性能をもたせております。従って、必要となる対策が施された設計においては、特にFBRの寿命が短いとはいえません。また、コストを比較する際、当然、寿命も考慮されます。

○「開発の見通しが立っています」
 ・高速増殖炉の種々の技術についての研究開発が長期にわたって行われてきており、その成果を取り入れ、プラント設計が進められています。現時点のプラント設計でも軽水炉と同等の安全性が達成されることが確認されております。従って、実証炉開発の見通しは得られているといえます。また、今後、実施される研究開発や「もんじゅ」の運転経験などを反映しながら設計ができれば、さらに正確な見通しを得ることができると考えております。

1.(1~2ページ)私は、IIASA/WEC等の報告自体が、客観性が疑わしいと指摘しているのである。つまり石油・ガス・石炭の三者を合わせて石油換算36.7兆バーレルという報告の推定自体について、その客観性が疑わしいと指摘しているのである。従って「膨大にあるといわれている資源は、すべてが実際に確認されているわけでなく、また採掘できる保証もない」(2ページ冒頭)という指摘は、資源枯渇に関する論点として無意味である。

(回答)

○ここでは「経済性や地球環境問題といった制約から、利用できる資源量に限りがある」ことを述べています。

2.(2ページ)「いつかは有限な天然資源である化石燃料が枯渇することは自明」という論点を、私は否定しないが、その論点は、政策的判断を行うに際して、何の意味もないと思う。それは「太陽の寿命は有限である」「宇宙の寿命は有限である」といった論点と、同程度の意味しか持たない。政策的には、実際に化石燃料の幾つかの種類(石油、あるいは石油と天然ガス)が枯渇してから、対応策を考えても手遅れではない。そうした「進化論的アプローチ」(近藤駿介委員の表現)を取るのが妥当であると思う。この際、勧告しておくと、化石燃料枯渇論を、原子力政策における正当化の論理から捨て去ることが、きわめて重要である。それは原子力開発の推進論者にとって、核兵器開発の推進論者における「核抑止論」に匹敵する、セントラル・ドグマの位置にあるイデオロギーであるが、それを捨てなければ、大方の知識人の同意を得ることは出来ない。

(回答)

○過去において、局地的紛争が引き起こす極めて短期間の需給のアンバランスさえ、社会に大きな混乱を与えたという事実を思い出せば、化石燃料が枯渇した場合、それを補う原子力発電の対応には時間を要することを考えておく必要があります。それは数十億年後でもなく、今後数十年程度の話であることに目を向けなければなりません。

3.(2ページ)「利用の制約」をここで持ち出すのは論理的に妥当でない。ここでの論点は「資源量の評価」である。「エネルギー供搭に関するさまざまの選択肢を立て、それぞれの合理性を複数の尺度  私の尺度では、実現可能性、軍事合理性、安全合理性、環境合理性、資源合理性、経済合理性の6つ--に照らして総合評価し、ひとつの選択肢を選ぶ」というのが、適切なアプローチだと思う。これは医療におけるインフォームド・コンセントと同様の方式である。そのアプローチでは、「資源量の評価」を独立項目として行うのが妥当である。「利用の制約」については、総合評価の作業の中で当然考慮される。特定の治療法のメリットを列挙してしつこく勧誘するのは医師失格である。

(回答)

○「資源量」の中で最も重要な量は、「利用できる資源量」です。これは資源の絶対量に、技術的可能性、経済性等の様々な因子を加味することによって求められるもので、利用の制約もそれら因子の一つです。

4.(2ページ)「究極可採埋蔵量」というのは、学問的な批判に耐える実証的基礎をもたない。そのような脆弱な概念の上に、真剣な政策的議論を組み立てるのは、健全なアプローチであるとは言えない。

(回答)

○「究極可採埋蔵量」は、様々な方法を用いて推定しうる現在利用可能な資源量の最大量であり、定量的・客観的な議論を進めるうえで重要な指標となります。

5.(2ページ)石油は化学繊維・プラスチックの原料としても有用」「石炭は二酸化炭素の排出量が多い」といった論点についても、総合評価の作業のなかで考慮されるものであり、そうした性質をことさら強調することによって、それらの使用抑制を主張するのは、論理的に妥当でない。

(回答)

○ここではことさら利用の制約を強調したのではなく、化石資源を利用するうえで考慮すべき因子として、資源量のみならず原料としての有用性や地球環境問題などもスコープに入れる必要性を述べたに過ぎません。

6.(2ページ)オイルシェール、タールサンドについて、「現在あまり使用されていない」というのは十分適切ではない。石油価格の安値安定のために、「現在まであまり使用されていない」のである。

(回答)

○経済性という観点を考えれば、委員のご趣旨は含まれるものと思います。

7.(3ページ)「回答」は、「ウラン資源は21世紀中にも枯渇する可能性を有しています」という主張を、事実上撤回した内容のように読める。その点を評価する。たしかに将来についての「楽観視」は禁物であるが、ウランの「可採年数」(確認可採埋蔵量を現在の生産量で割った値)が、後述のように約80年もある現状のもとで、新たなウラン鉱を見つけなければ安心できないと考えるのは、政策的に健全な判断ではない。30年を切ってから考え始めればよい。

(回答)

○新たな鉱床を発見しても、今後、増加が予想される世界の原子力需要に応えるだけの量を供給できる保証はありません。現に、IAEAの評価によれば2010年までのウラン需要を現鉱山では供給できず、今後、鉱山を開発していく必要があると評価(1)されています。(参考文献)(1) URANIUM 1995 OECD/IAEA//NEA, P78

8.(4~5ページ)プルトニウムによる体内被曝に関する定量的なリスク評価を「絶対的リスク」評価として、示していただきたいと私は要請したのである。要請に見合う回答が、「回答」の中で全く出されなかったことは、きわめて残念である。再度、明確な回答を求めたい。

(回答)

○ご要請の「絶対的リスク」とは、人体に対するプルトニウムの影響を表わすものとして、摂取量と発病率との関係、死亡に至る限界摂取量等を指摘されているものと理解します。

○ICRPでは、プルトニウムによる内部被ばくの人体へのリスクは、これまで発病や死亡に至る実例がないことから、マウスや犬等の動物実験データを用いた疫学上の評価等に基づいて設定しています。

○したがって、ご指摘の「絶対的リスク」評価は、実例がないため行われておりません。

9.(5ページ)プルトニウムの体内被曝のリスク評価は、実効線量(シーベルト)の概念に基づいて行うものではなく、核種毎の動物実験(まれに人体実験)に基づいて行うものである。従って、1行目から5行目の記述は、全く的外れである。

(回答)

○ここでは、プルトニウム(239Pu)を飲み込んだ場合と吸い込んだ場合の放射線毒性の差異を、ICRP Publication 72(1996年勧告)に示されている各々の線量係数(1990年勧告前の年摂取限度に相当)を用いて述べたまでです。

○線量係数をはじめ、ICRPが定める放射線防護上の評価方法や管理目標値等は、数多くの動物実験等に基づく知見を踏まえて設定されてます。

10.(5ページ)「難しい学術的な表現をできるだけ使わないよう心がけたことをご理解ください」とあるが、摂取量をグラムで表示し、そのリスクを発病率で表示したグラフを示せば、何ら「難しい学術的な表現」を使う必要はない。

(回答)

○ご提案頂いたグラフ(摂取量をグラムで表示し、そのリスクを発病率で表示したグラフ)は、ICRP勧告書には掲載されていません。また、これまでにプルトニウムの内部被ばくによる人体障害例がないため、そのようなグラフは作成不可能と考えられます。

11.(6~7ページ)「回答」にあるウラン利用効率に関する計算は、教科書どおりであり、異議はない。しかし4つの疑義がある。第1の疑義は、ロス率の見積りの客観性についてのものである。L=3%というのは根拠がない。英仏で運転された高速増殖炉用再処理施設の実績を踏まえて、ロス率の見積りをやり直してほしい。第2の疑義は、「FBRではプルトニウムの同位体組成は変化しません」とあるが、何かの問違いではないかという点である。もちろん、プルトニウムの同位体組成を変化させないような設計・運転方式も可能であろうが、それには一定の条件を満たさねばならないと思われる。それを明示してほしい。第3の疑義は、ウランの同位体組成が、再処理の繰り返しによってどのように変化していくかである。これについて何も言及しないのは何故か。第4の疑義は、プルトニウムとウランの微量同位体の組成が、再処理の繰り返しによって、どのように変化していくかである。

(回答)

○燃料サイクルのロス率の実績は、ベルギーの「DEMOX」MOX加工工場で約0.1%、英国の「Dounreay」FBR燃料再処理工場で約0.5%であり、OECD/NEA報告書から採用した数値3%よりも低い値が報告されており、設定は妥当であると考えられます。

○プルトニウム組成が変化しないというのは、組成が全く変化せず一定値であるというのではなく、FBRでの燃焼やプルトニウムの取扱いに支障をきたす様な組成変化をしないという意味です。

○同様にウランの組成変化に関しても、FBRでの燃焼やウランの取扱い上支障をきたすことはありません。

12.(8ページ)「73年よりも早くこの資源量が枯渇する可能性があります」という指摘はひどい。現在の確認量(およびそれに準ずるもの)のみに基づいて議論するのは、昔の狼少年と同じである。また3ページの回答との首尾一貫性もない。こんな議論をしていたのでは、原子力村は一般社会から相手にしてもらえなくなると思う。また真剣な政策的議論の場で、このような低水準の主張をすれば、アカウンタビリティーが欠如していると一般社会から指弾されると思われる。

(回答)

○ウラン探査努力にも触れており、8ページの回答で十分御説明できるものと考えます。

13.(9ページ)欧州の原型炉・実証炉の実績データを踏まえて、1.2という増殖率を評価し直して頂きたい。また、OECD/NEA報告書にあるL=3%というのは根拠がない。英仏で運転された高速増殖炉用再処理施設の実績を踏まえて、ロス率の見積りをやり直して頂きたい。いつまでも目標値をもとに議論していたのでは意味がない。

(回答)

○海外のFBRにおける増殖比は、米国のEBR-氓ナ1.27±0.08、仏国のフェニックスで1.16等が実証されており、また、もんじゅの初期炉心における増殖比の予備的評価では1.18が得られています。これらの実績及び評価値から増殖比1.2という設定は妥当であると考えられます。

○また、海外のMOX加工及びFBR燃料再処理施設のロス率の実績も、合計で3%を下回っており、設定は妥当であると考えています(本紙7ページ参照)。

14.(11ページ)私が聞いているのは、1次エネルギー需要の予測の現実性ではなく、原子力の割合の予測の現実性である。どのような根拠によって2100年に28%と推定しているのか。

(回答)

○世界エネルギー会議における予測は、21世紀の主要エネルギーオプション(化石燃料、再生可能エネルギー、原子力)の供給能力に、二酸化炭素排出による環境への影響を抑制する効果を加味して設定しています。原子力に関しては、化石燃料と再生可能エネルギーによる供給量の不足分を供給する水準として設定されています。

15.(12~13ページ)マイナーアクチニド燃焼技術は、「実績に基づいた現実性のある技術」ではなく、実験段階の技術に過ぎないと思う。『基礎高速炉工学』(日刊工業新聞社)などの専門書にも、そのことが明記してある。また文献2については、定量的検討のためにコピーを頂きたい。

(回答)

○マイナーアクチニドの燃焼技術については、ウランやプルトニウムの燃焼技術と基本的には変わるものではなく、実炉を用いたマイナーアクチニドの燃焼も進められているところから、「実用化はされていないものの、照射実績に基づいた現実性のある技術」と考えています。

○ご要望の文献2を回答集の文末に添付しました。

16.(16ページ)1956年長期計画では、熱中性子増殖炉という選択肢をも考慮に入れて、増殖炉の国産化を最終目標とすることが決定されたのであり、高速増殖炉のみが念頭に置かれていたのではない。

(回答)

○1956年長期計画及び1957年12月策定の「原子力開発利用長期基本計画―その1」では、 増殖動力炉開発の選択肢として熱中性子増殖炉も考慮されています。また、「原子力開発利用長期基本計画―その1」には、両者を並行して開発すると記載されています。○しかし、1961年長期計画の第。部研究開発 3.原子炉の研究開発に、〔高速中性子増殖炉〕:(長期計画の)前期段階の後半または後期段階の前半に小規模の実験炉を建設し、〔水性均質炉〕:動力炉として有望であることが明らかとなった場合には、小規模の実験炉を建設することを考慮する、と示されたように、高速増殖炉の開発に重点が移っていったことも事実です。

○いっしょに考えよう「FBR」のこと 19ページはこの後の開発の経緯も考慮し、現時点で開発の経緯を振り返って見た場合、前回回答の第2項目の計画の内容も含めて、1956年長期計画でFBRを本格的に開発することが決定されたと表現したものです。

17.(17ページ)「実証炉」とは「商用炉の試作炉」を指すというのが、この分野での世界の常識であるように思う。今の科学技術庁の定義を明記してほしい。

(回答)

○「実証炉」とは、ある特定の動力炉について、実用規模プラントの技術の実証と経済性の見通しを確立するために作られる原子炉のことをいいます。なお、新しい原子力発電炉の開発は、実験炉、原型炉、実証炉の段階を経て実用炉(=商用炉)として商業化されるのが一般的です。

18.(18ページ)実用炉としての「技術体系の確立」を判定するには、実用炉の試作炉を作り、高い信頼性を誇る運転を成功させる以外に方法がないと思う。それ以外の方法があると考えるのならば、どのような方法によるのかを具体的に示していただきたい。

(回答)

○長計で言う技術体系の確立とは、2030年の段階で、軽水炉に匹敵する安全性、信頼性、経済性を備え、商業ベースでの採算が見込めるFBRプラントが建設・運転できる技術体系を確立することを意味しています。

○「技術体系の確立」は、実証炉の建設・運転経験に加え、再処理・燃料加工技術を含む核燃料サイクル技術全般について、それまでに蓄積された経験と実績に基づき、安全性、信頼性、経済性に関する総合的な評価を行うことにより可能と考えます。

19.(19ページ)回答になっていない。どのような諸国に、どのような技術情報を、どのような条件で提供するつもりなのかを聞きたい。その際、公開の度合いがきわめて高くなければ、国際公共財とは呼べないはずである。

(回答)

○いっしょに考えよう「FBR」のこと20ページのF項及び前回の回答は、FBR開発に当たっての長期計画における国際協力の進め方の基本的考えを示したものです。従って「どのような諸国に、どのような技術情報を、どのような条件で提供する」かは、この基本的考えに従って、今後具体的に検討されるべきものと考えます。

20.(20ページ)原型炉から次の段階の炉への開発ステージの前進の是非を判定するに際しては、厳しいチェックアンドレビューが必要である。そしてチェックアンドレビューでは、事前に立てた目標体系をクリアしているかどうかが、厳しく詮索される。ところが「回答」を読むと、目標体系に具体性が無い。これでは厳正なチェックアンドレビューが不可能である。航空機と同じように、運用要求性能を数値で示すことが必要だと思う。

(回答)

○航空分野における運用要求性能とは、実機の基礎設計等を終えて最終的に確定した設計目標性能と理解されます。その運用要求性能に相当する「もんじゅ」の設計主要目あるいは運転目標値等については、12~13ページへのコメントで委員が引用されている『基礎高速炉工学』(日刊工業新聞社)の第14章基礎資料集、動燃事業団が公開している下記の公開資料を参照していただきたい。(動燃事業団公開資料) (1)“高速増殖原型炉もんじゅ:設計・建設・試運転の軌跡”,動燃事業団もんじゅ  建設所, 1994年7月, PNC TN2410 94-023 (2)高速増殖炉もんじゅ発電所原子炉設置許可申請書:本文及び添付書類

21.(21ページ)私は「長期間使用できる燃料」という表現の不適切さを指摘したのに、それを認めないのは感心しない。高速増殖炉では、炉心燃料を半年又は1年ごとに交換するが、それは軽水炉よりもむしろ短い。つまり「短時間しか利用できない燃料」である。「回答」は、核燃料の単位重量当たりの発熱量が、高速増殖炉では軽水炉の約3倍であると指摘し、この点が核燃料サイクルにおけるコスト軽減に貢献できる可能性があると述べている(ただし軽水炉に優る経済性を達成できる可能性があるという前言を事実上撤回している)。しかしブランケットも含めて考えれば、単位出力当たりの再処理量はほとんど変わらないと思われる。なお、単位重量当たりの核分裂物質の量が、高速増殖炉では軽水炉の約5~6倍であることを考慮すると、3倍という数字はむしろ控えめである。

(回答)

○ここで述べている「長期間使用できる燃料が可能」とは、高速増殖炉の天然ウラン利用効率が軽水炉に比べて約60倍も高めることができるため、使用済燃料を「リサイクル(使用済燃料に含まれるPu-239等を再び使用する。)することによって長期間使用できる燃料物質の確保が可能」であることを意味しています。

22.(22ページ)高速増殖炉の寿命を縮める要因は、中性子照射ばかりでない。ナトリウムによる腐食、熱衝撃、高温運転といった要因も考慮しなければならない。それでも、軽水炉と同等の寿命とすることができるのか。

(回答)

○ご指摘のとおり、高速増殖炉の寿命には、中性子照射量のみならずナトリウム腐食、熱衝撃等の影響があります。実証炉では、原型炉と同様に、これらの要因を考慮したうえで、軽水炉と同等の寿命となるように技術開発を進めています。

23.(22ページ)ここで議論しているのは、「商用高速増殖炉」の期待寿命に関してである。ところで「回答」には、「炉の寿命は40年以上となるよう設計しています」とあるが、それはあり得ない。なぜなら商用高速増殖炉については、設計自体が存在しないからである。

(回答)

○ご指摘の「炉の寿命は、40年以上となるよう設計しています」とは、「炉の寿命が40年以上となるよう技術開発を進めていきます」という意味で述べたものであり、後者の表現に訂正します。

24.(22ページ)「炉の寿命は40年以上となるよう設計しています」というのが、原型炉もんじゅに関する指摘なのであれば、一応は理解できる。ところで、もんじゅでは、いかなる方法で、設計上の寿命を推定しているのか。またそれはユーザーに対する寿命保証なのか。寿命推定や寿命保証は、契約書や他の文書に明記してあるのか。

(回答)

○「炉の寿命は40年以上となるよう設計しています」 本回答は、原型炉もんじゅについて述べたものではありません。実証炉の設計寿命を指しています。

○原型炉もんじゅでは、設計寿命については「30年」を目処にしています。また、もんじゅの設計は、安全上適切と認められる国内外の規格および基準により行っており、運転後も30年近く経過した時点で寿命評価などを行い、その後の運転の要否が検討されます。なお、「もんじゅ」の設計図書に寿命30年を記載しています。

25.(22ページ)「商用高速増殖炉」は厳しい条件のもとで連続運転される。一部の実験炉が20~30年間、運転を続けているからといって、それは商用高速増殖炉の寿命の長さの保証にはならない。

(回答)

○ご指摘の条件も考慮したうえで、軽水炉と同等の寿命となるように技術開発を進めています。

26.(25ページ)高速増殖炉の核燃料サイクルコストについて、たしかに第3回懇談会の席上、動燃から資料が配付された。しかし、それには2つの欠陥がある。第1は、FBRサイクルのコスト評価が、単なる目標値の羅列に終わっていることである。ところで原子力開発の世界では、当初の目標値と最終的なコストとの間に、10倍以上の格差が生ずることは珍しくない(例えば、もんじゅの建設費は、当初見積もり350億円が、最終的には6000億円となった)。従って私は、歴史的経験を踏まえて、目標値の客観性を全く信用していない。第2の欠陥は、日本国内での核燃料サイクルコストの評価が、燃料製造および燃料輸送という割合末梢的な項目を除いて、示されていないことである。東海村・人形峠・六ケ所村におけるウラン濃縮と再処理のコストを、示していただきたい。

(回答)

○第3回懇談会で動燃が配布した資料(「FBR燃料サイクルの経済性の見通し」)の趣旨は、開発課題の一つであるコスト低減の定量的目標と、それを実現するための研究開発を如何に行うかについて述べたものです。

○また、現状技術による核燃料サイクルコストおよび算出根拠については、ご指摘の配布資料と、委員の要請により第5回懇談会で動燃が配布した参考資料(「燃料サイクルコスト試算条件の設定根拠」)で理解し得るものと考えます。

27.(27ページ)プルトニウム増殖型の原子力発電システムを構築した場合、初期段階では「ウランの反復利用」や「天然ウラン利用」(軽水炉システムの衰退による劣化ウランの枯渇にともなう)等に関わる問題は全く生じないが、中期段階以降では重要になってくると思われる。その点について、考えておくべきであると、私は指摘しているのである。現在の検討状況についてお聞きしたい。

(回答)

○プルトニウムはウラン(U-238)を変換して生産する訳ですから、ウラン資源が有限である以上、プルトニウムも有限です。超長期的な視点に立てば、ご指摘のような問題点が生ずると考えられますが、ブランケット燃料で用いられている劣化ウランは、数百年のスパンでは無くなることはないと考えます。

28.(28ページ)「可採年数」での資源量の表示は、やめたほうがよい。「絶対量」の表示に切り換えるべきである。

(回答)

○「利用できる資源量」を表す尺度である「可採年数」を用いることとしました。
(参考資料)
・石油の埋蔵量 : エネルギーフォーラム 1996年7月号、P68より

29.(29ページ)石油資源に関するキーワードは、誤解を招きやすいものが多い。また石油資源問題を論ずる論者の間でさえ、意味が一定していない。そうした状況を打開する必要がある。本題に入ると、「回答」にある「未発見埋蔵量」は、「究極可採埋蔵量」という概念を前提としたものであり、前述の理由により、客観性が疑わしい。このような脆弱な概念を、真剣な政策的検討の場で使うべきではない。また、どうしてもこの概念を出すならば当然、「推定可採埋蔵量」「予想可採埋蔵量」についても、触れておかねば、話が完結しない。参考までに、エネルギー・資源学会編『エネルギー・資源ハンドブック』(オーム社、1996)94ページには、米国石油協会(API)の定義が示されているので、それを紹介しておく。@確認可採埋蔵量:坑井掘削により、油、ガスの存在が、地質学や油層工学の技法により合理的に確実と判断される水平的・垂直的な油層の広がり内にある原始鉱量に対する、可採埋蔵量。A推定可採埋蔵量:坑井掘削による確認地域外ではあるが、同一地質構造内で地質学や油層工学の技法により、石油・天然ガスの存在が合理的に類推できる油層外縁域を対象とした可採埋蔵量。B予想可採埋蔵量:坑井の掘削はされていないが、同一堆積盆地内で地震探査から判明した封塞構造について、近隣の類似地質構造で石油、ガスの存在が確認されていることから予想される未発見地域の資源量。なお三者に共通して使われる「可採埋蔵量」とは、現在の技術水準により経済的に採掘可能な埋蔵量を指す。

(回答)

○ご指摘の「推定可採埋蔵量」および「予想可採埋蔵量」は、まさしく「未発見埋蔵量」約0.5兆バレルのことであり、その意味では話は完結しております。繰り返しになりますが、「未発見埋蔵量」とは未だに発見されていませんが現在の技術水準で経済的に採掘可能な埋蔵量と期待されているものです。

30.(30ページ)私は、「倍増時間」が十分に短くなければ、高速増殖炉の導入シナリオが大幅な制約を受ける可能性があることを指摘し、それにもとづいて、高速増殖炉の導入シナリオの「倍増時間」による制約を、定量的に示してほしいと要請したのである。全く回答が出されなかったことは残念である。再度、回答を要請したい。

31.(30ページ)100万キロワットの高速増殖炉1基の初期装荷プルトニウムとしては、核分裂性プルトニウムで約4.3トンが必要である(「基礎高速炉工学」,12ページ)。これは軽水炉約30基分に相当する。また六ヶ所村再処理工場の約1年分の操業(しかもきわめて高い設備利用率を達成した場合)に相当する。この点だけを見ても、軽水炉との共存時代における高速増殖炉の増設ぺースには大きな制約がかかると思われる。

32.(30ページ)「十分な基数のFBRを建設しておけば、・・・新設ペースにも倍増時間はあまり影響しなくなります」というのは誤りである。複利倍増時間は単利倍増時間と比べて、約3割ほど有利であるに過ぎない。「あまり影響しなくなります」というのは暴論である。

(回答)

○インベントリー倍増時間が65年の場合、FBR1基の新設と、自らの使用済燃料を再処理し再びFBRに装荷するまでの数年間に必要なプルトニウムは核分裂性プルトニウムで約6~7トンです。一方、六カ所再処理工場の1年間の運転で約5トンの核分裂性プルトニウムが得られ、また、海外からの返還プルトニウムも利用して、毎年1基程度のFBRの新設が可能となり、FBRの増設ペースに大きな制約とはなりません。

○実用化時期のFBR(燃焼度15万MWd/t程度)では、原子炉倍増時間は約30年、燃料サイクル施設や輸送中のプルトニウムも考慮に入れたインベントリー倍増時間は約65年、多数基のFBRが存在する場合の複利倍増時間は約45年となります。

○複利倍増時間が45年の場合、45年で基数が倍増することとなります。従って、毎年のFBRの伸び率をXとすると、 (1+X)45 = 2(倍) より、X=0.015 となり、毎年約1.5%の伸び率となります。 例えば、FBRが本格導入され既に100基存在する様な場合、1年間でFBR1.5基分のプルトニウムを得ることができます。つまり、毎年1.5基のFBRを新設することができ、45年後には200基になるということです。

33.(31ページ)「高純度(プルトニウム239の純度がきわめて高い)プルトニウム」の生産工場は、そのまま原爆用プルトニウム生産工場に転用できるものであり、本質的に核拡散のリスクが高い。高速増殖炉が日本をふくめて世界中に拡散すれば、それは核不拡散にとって重大な脅威となる。またそれは、兵器用核物質生産禁止条約の締結の障害となることによって、結果的に世界の核軍縮に悪影響を及ぼす。炉心のプルトニウムとブランケットのプルトニウムを、各々を抽出したあとに混合するという方法を採用しても、軍事転用のリスクが若千減る程度である。「混合再処理」(抽出工程に入る前に炉心のプルトニウムとブランケットのプルトニウムを混合すること)をすれば、さらに若干、軍事転用のリスクを軽減することができるが、それでも不十分である。また現在のリサイクル機器試験施設(RETF)の事業計画を見ると、「混合再処理」さえ実施されないことになっている。なお最後に付言すると、MOX燃料製造におけるウランとプルトニウムの「混合転換法」も、軍事転用のリスクを若干減らす程度のものである。

(回答)

○現在、建設が進められている動燃のリサイクル機器試験施設(RETF)では、FBRブランケット燃料から得られる高純度(高フィッサイル率)のプルトニウムについては、炉心燃料の低純度(低フィッサイル率)のプルトニウムを抽出以前に混合するなど、高純度(高フィッサイル率)のプルトニウムが単独で存在しないようにする考えです。

34.(32ページ)ここでは、「グローバル・プルトニウム・エコノミー」(数百基以上の高速増殖炉が世界全体に拡散した社会)における核拡散のリスクを、科学技術庁がどう評価しているかを、聞いているのである。質問に答えて頂きたい。

(回答)

○プルトニウムを大量に扱う六ヶ所再処理工場等は、在来の精密な核物質計量管理と封じ込め、厳密なIAEAの監視活動の下に置かれることとなっております。加えて近年、イラク、北朝鮮の核疑惑を契機にIAEA保障措置の技術手段は、施設内外のあらゆる不当な活動を検知するため、施設の運転状況、環境放射能レベルの測定等、大幅に高度化され、転用防止策の信頼性は極めて高い水準にあると考えています。

35.(34ページ)「プルトニウムを消費しやすくした場合」について、具体的な設計又は試算があれば、もんじゅに関してその設計又は試算を示してほしい。また、そのために必要な費用と所要期間についての見積もりも、示してほしい。それによって「よく燃焼(消費)させる」という指摘の妥当性が分かるであろう。

(回答)

○現在の「もんじゅ」の炉心は、プルトニウムの増殖性を確認するため、初装荷炉心の炉心燃料の 増殖比が0.61、ブランケット燃料の増殖比が0.57、全体で1.18になるように設計され ています。従って、現行炉心からブランケットを取り去ることにより、増殖比を約0.6にすることができます。

○「プルトニウムを燃やしやすくした場合」については、ブランケットの削除に加え 、炉心燃料のプルトニウム量の調整や炉心構成の工夫により、増殖比を約0.5にできるという試算結果があります。この場合の プルトニウム消費量は、年間400~500Kg(平均プルトニウム富化度30~35%、稼働率0.8)と評価されています。

36.(36ページ)歴史的な事実を十分に踏まえて、回答を出していただきたい。1956年の最初の長期計画は「総論編」に当たるもので、その「各論編」がのちにまとめられている。これも長期計画に含めて考えるべきである。具体的には1957年12月、「発電用原子炉開発のための長期計画(原子力開発利用長期基本計画-その1)」がまとめられている。その中に、「ほぼ昭和40年代の中ごろからこの型〔増殖型〕の発電炉が実用されることを目標とする」という記述がある。なおすぐ後のくだりに、「熱中性子型ならびに高速中性子型を並行的に開発することが必要であると考える」との指摘もある。

(回答)

○1956年長期計画自体には、増殖動力炉の実用化目標時期に関する記述はありませんが、1957年12月策定の「原子力開発利用長期基本計画―その1」では、「昭和40年代の中ごろには、この型(増殖炉)の発電炉が実用化されることを期待する。」及び「ほぼ昭和40年代の中ごろには、この型の発電炉が実用化されることを目標とする。」と記述されています。

37.(38ページ)回答には、「『もんじゅ』を100万kWe級のプラントに仮定した場合の建設費は大まかに8千億円となり」とあるが、この推定の根拠を示してほしい。なぜなら、あまりにも安価に見えるからである。スーパーフェニックスと同規模のものが、購買力平価換算でスーパーフェニックスよりも大幅に安価に、日本で建設できるというのは常識的には信じがたい。

(回答)

○「もんじゅ」の総建設費は、吉岡委員のコメントへの回答(その2)に示しましたように、約5,900億円です。これには通常、建設費には含めない初装荷燃料費、準備工事費等が含まれており、これを除いた費用は約5,000億円となり、これが算定の基礎となる費用です。

○高速増殖炉プラントは、「あなたの疑問にお答えします-FBRに関する国の考え方-」Q-15の回答にありますように大型化による経済性向上効果(スケールメリット)が出やすいという特長があります。これを考慮して「もんじゅ」の建設費を100万kWe級に換算する場合のスケール係数を定め、建設費を推定しました。

○なお、フランスのスーパーフェニックス(約120万kWe)の建設費は約255億フラン(1986年1月NERSA発表)で、KW当たりの建設単価はフランスP4型PWRシリーズの最初のパリュエル1号機,2号機に対して、2.3倍と評価されています(原子力年鑑、昭和61年版、P124)。 したがって、「もんじゅ」の建設費を100万kWe級に換算した場合の評価が安すぎるとは考えておりません。

38.(39~41ページ)「事故解析」の目的は、建設計画の「遡及的な正当化」にある、と私は理解している。すなわち法令上許容される範囲内に、事故の被害想定を十分小さくおさめることができるように、「事故想定」を立てるのが、事故解析における最重要の点であると私は理解している。それは原子炉のみならず、砂防ダムなどのあらゆる建設計画に共通して当てはまるものであると思われる。そして建設物の破壊が起きた場合、「想定外の事象が起きた」という結論で、事態の収拾が図られるのが常である。こうした疑義を晴らすためには、「事故想定」の客観的な妥当性を、安全審査を行う者は立証しなければならない。残念ながら現状は、そうした立証がなされる状態には程遠い。全ての審議過程(事故想定の選定過程を含む)と、審査に関係する全ての情報(生データを含む)を公開し、また中立的な第三者による厳格なチェックアンドレビューを行う体制を作ることが必要である。さらに多くの人々からの請求があった場合、本格的な公聴会を実施することが必要である。そうした制度面での改革の他に、安全審査の内容面でも、確率論的リスク評価(PRA)を義務づけるなど、客観性を担保するための方策を進める必要がある。

(回答)

○設計基準事故の解析の目的は、プラントの特徴的・包絡的な事故を想定した評価を行い、その防止・抑制等について適切な設計対応がなされていることを確認するためのものです。従って、事故解析は設計と並行して、あるいは設計後にその妥当性を確認するために実施され、当然のことながら、解析結果は随時設計に反映されます。ご指摘のような、設計・建設を遡及的に正当化するためのものではありません。

○設計上考慮すべき事故想定については、軽水炉の評価例や海外の高速炉の評価例、さらに「もんじゅ」の特徴を勘案した上で、確率的な起こりやすさも含めて選定されており、想定の妥当性も含めて2段階(科技庁及び安全委員会)の判断が、学識経験者の意見を取り入れるなど客観性を確保しつつなされています。また、これらの想定を越えるような事故に対しても、放射性物質の環境への放散が適切に抑制されることが確認されています。○なお、安全委員会、審査会および専門部会では、国民に開かれた審議会を目指して、一般傍聴者の参加や議事録等の公開などを進めております。

39.(40ページ)動燃事業団資料「もんじゅの安全評価項目について」PNC N24381- 09(1981)のコピーを、是非拝見したい。

(回答)

○当該資料は動燃事業団の資料であり、同事業団に資料請求を行っていただきたい。

40.(40ページ)小林圭二氏の『高速増殖炉もんじゅ』の記述内容について、「回答」では、小林氏がFBR開発の初期の炉における事故の例を挙げて「事故想定」の恣意性を批判している、と指摘しているが、これは妥当ではない。小林氏は初期の炉の事故以外にも、さまざまの事故の可能性を検討している。以下、2点のみ例示し、具体的な回答を求めたい。第1に、一次系主冷却材管のギロチン破断について、ドイツの原型炉SNR-300ではそれを設計基準としているのに、なぜもんじゅでは、そうしていないのか。第2に、R.E.We b bが起こりうると考える「2回目の燃料圧縮による核的爆発」を、なぜもんじゅでは想定していないのか。

(回答)

○高速炉の1次系主配管の場合には、内部の冷却材圧力が低いことや延性に富んだステンレス鋼を使用するという特徴から、き裂が進展して配管の破損に至るという、いわゆる破断前漏えい(LBB)の概念が成立します。従って、設計基準としては配管のギロチン破断を想定する必要はありません。

○R. E. Webb のいう、「2回目の燃料圧縮による核的爆発」は、核暴走事故が進んだ段階(いわゆる遷移過程)における再臨界の問題です。核暴走事故の評価に関しては、安全審査後も国際共同実験等を行うことにより、実験データの蓄積や評価手法の改善が進められています。 これらの研究から、遷移過程の再臨界の問題を含めても「もんじゅ」の安全審査で想定しているエネルギー放出の値を越えることはなく、安全審査での想定が十分に保守的なものであることが確認されています。

41.(43~44ページ)耐震性の確認についても、上記38と同じ改善を求めたい。(回答)

○安全委員会では、国民に開かれた審議会を目指しており、審査会や専門部会等への一般傍聴者の参加や議事録等の公開などを進めております。

42.(44ページ)「許容応力は、材料の特性から決まり、機器の形状や板厚には関係しません」という指摘は、不可解である。耐震工学のどの本を読んでも、薄い壁、細い柱、断面積の小さな梁などの「保有耐力」は小さいと書いてある。なぜ原子炉に関してだけ、耐震性能が「機器の形状や板厚には関係しません」と言えるのか。

(回答)

○「機器の形状や板厚には関係しない」というのは、「許容応力」のことであり「保有耐力」のことではありません。「保有耐力」とは、構造物が外力などに対して持つ抵抗力です。また、薄い壁、細い柱、断面の小さな梁ほど外力に対する「保有耐力」が小さいのは事実です。FBRは、軽水炉に比べて薄肉に作られるので、地震や内圧に対する「保有耐力」は相対的に小さいと言えます。一方、熱荷重に対する「保有耐力」は軽水炉より相対的に大きいと言えます。

○耐圧性、耐熱性および耐震性等は、「保有耐力」の大小で決まるのではなく、構造物に作用する荷重と「保有耐力」との比較で決まります。例えば、FBRは、圧力に対する「保有耐力」は小さいのですが、作用する圧力が軽水炉より小さいので、十分な耐圧性を有しています。一方、熱荷重に対する「保有耐力」は大きいのですが、熱荷重が大きいため軽水炉より厳しい耐熱設計が必要になります。

○軽水炉とFBRでは、原子炉容器や配管の形状や板厚が異なるため、地震に対する「保有耐力」はそれぞれ異なります。それと同時に、原子炉容器や配管の重さ、それを支持している位置や支持方式などが異なるため、軽水炉とFBRでは作用する地震荷重も異なります。さらに、FBRの原子炉容器や配管は、耐震支持装置を設け「保有耐力」を大きくするとともに、作用する地震荷重を小さくする工夫をしています。

○耐震性の評価は、形状や板厚の比較ではなく、発生する応力と許容応力、あるいは発生する荷重と許容荷重を比較することによって行われます。このような評価は、原子炉の設計に限るものではなく、一般の建築物や構造物でも同じです。なお、原子炉施設では、想定される地震の大きさや安全裕度が一般の建築物や構造物に比べ遥かに大きいということだけです。

43.(45ページ)私は、1987年2月27日のPFR蒸気発生器細管の多数破断事故が、その1年半後の88年7月のPFR予算停止決定の主たる原因となったとは、初めから考えていない。経済的な見通しのなさが主たる原因となったと思う。しかし政策決定に一定の影響があったのではないかと考えている。全く影響がなかったと断定する根拠はないと思う。

(回答)

○前回回答で示した資料の通りです。

44.(45ページ)「回答」はプーリUKAEA総裁の次の発言(5月26日、第4回懇談会)を引用している。「原型炉PFRまでに高速増殖炉は産業規模で実証された」。私は何ら実証されていないと思う。なぜならPFRは「産業規模」の発電炉としては小型過ぎる。また通算の設備利用率は20%前後に過ぎなかった。このことを科学技術庁はどのように考えるのか。

(回答)

○5月8日の第4回高速増殖炉懇談会でのプーリUKAEA総裁の発言は、イギリス、フランス、ドイツが個別に進めていた大型高速炉の設計を統合し、イギリスのPFR、フランスのフェニックス及びスーパーフェニックスの運転経験を反映して進められた欧州統合高速炉(EFR)の開発において、概念設計実証フェーズの経済性評価及び安全性評価が終わり、実用段階の大型高速炉の建設に移行できる技術レベルにあると評価していることを背景にしていると理解しています。

45.(46ページ)ドイツの原型炉SNR-300の建設中止の原因が、安全上の懸念を理由とするノルトライン・ヴェストファーレン州政府の反対と、それに対する拒否権を連邦政府が発動しなかったことによるというのは、歴史的事実である。「回答」で引き合いに出されているIAEA/IWGFR年会で行われた報告や、第4回懇談会(第3回ではない)におけるケスラー委員の講演は、「ノルトライン・ヴェストファーレン州政府の指摘する安全上の懸念は、言いがかりである」という見解を取る一部の人々の唱える政治的解釈に過ぎない。歴史的事実と政治的解釈とを、混同してもらっては困る。

(回答)

○ドイツにおける許認可制度において、許認可当局は連邦政府(環境省)、州規制当局、州合同原子力委員会等であり、これらの調整の基に許認可が行われます(原子力ポケットブック)。従って、州政府の反対に対して連邦政府が拒否権を発動し、許認可を発給できる制度になっているとは理解していません。

○ノルトライン・ヴェストファーレン州政府が安全上の懸念を表明した後のドイツ原子炉安全委員会の検討結果は、第4回高速増殖炉懇談会でのケスラー委員の講演資料に紹介されていますが、これらが政治的解釈によるものとは理解していません。IAEA/IWGFRの資料等についても同様です。

○高速増殖炉の安全性については、いっしょに考えよう「FBR」のこと、あなたの疑問にお答えしますーFBRに関する国の考え方ー、さらに第6回高速増殖炉懇談会で、ご説明しました。

46.(49ページ)高速増殖原型炉もんじゅのあり方を、研究炉への転換やさらには廃炉の可能性も含めて検討している現段階で、リサイクル機器試験施設(RETF)の建設計画を進める正当な理由はない。「回答」にある「それぞれの技術レベルを同一にして進めることが重要である」という論点も、もんじゅの位置づけが不明確となっている現状においては、全く説得力がない。しかもこの論点は、実用化へ向けてのFBR開発を続けるという前提の上に立つ論点であり、われわれの懇談会の結論を勝手に先取りしている。この点については強く抗議したい。

(回答)

○リサイクル機器試験施設(RETF)は高速炉燃料再処理に必要な技術を開発する施設であり、その建設計画は、原子力委員会の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」に基づく、将来の核燃料リサイクル体系の確立に向けた技術開発の一環として進めています。

○FBR懇談会での審議を踏まえ、上記長期計画の見直しがなされれば、その中でRETF計画も見直すことになります。