資料第9−1号


高速増殖炉懇談会(第8回)議事要旨


1.日 時 :平成9年8月27日(水) 14:00〜16:45

2.場 所 :科学技術庁 第1、2会議室 (2階)

3.出席者
 
(原子力委員)
 伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員、依田委員
(専門委員)
 西澤座長、秋元委員、植草委員、内山委員、大宅委員、小林委員、
 近藤委員、鷲見委員、住田委員、中野委員、松浦委員、吉岡委員
(科学技術庁)
 加藤原子力局長、森口動力炉開発課長
(通商産業省)
 谷口資源エネルギー庁審議官、三代原子力発電課長

4.議 題
(1)原型炉「もんじゅ」と実証炉の開発の在り方
(2)FBR開発の投資効果
(3)これまでの各委員の意見の整理
(4)今後の高速増殖炉懇談会の進め方

5.配布資料
資料第8−1号 高速増殖炉懇談会(第7回)議事要旨
資料第8−2号 「もんじゅ」の目的、意義と今後の計画  [動燃事業団]
資料第8−3号 高速増殖炉開発の進め方について      [鷲見委員]
資料第8−4号 FBR開発の投資対効果に関する評価例    [事務局]
資料第8−5号 これまでの各委員からの意見の整理      [事務局]
資料第8−6号 今後の高速増殖炉懇談会の進め方(案)    [事務局]
資料第8−7号 高速増殖炉(FBR)の開発         [事務局]
(参考配布) 「もんじゅ」における開発の概略スケジュール[動燃事業団]

[小林委員配布資料]
○メモ(当日の意見概要)

[吉岡委員配布資料]
○ FBR懇談会の今後の進め方(提案)
○ 高速増殖炉懇談会資料第7−3号「燃料サイクルの比較−エネルギー、廃棄物および経済性の観点から−」へのコメント

6.概 要
(1)
西澤座長より開会宣言と今回の議題の説明がなされた。また、吉岡委員からの資料第7−3号に対するコメントについては、次回事務局が回答することとなった。その後、事務局より配布資料の確認が行われた。

(2)
事務局より、資料第8−7号に基づき、原子力長計等における我が国のFBR開発の概要について説明があった。説明に先立ち、動燃東海ウラン廃棄物貯蔵ピットの問題に関しての状況説明があった。続いて、動燃事業団須田副理事長から、資料第8−2号に基づき、「もんじゅ」の目的、意義と今後の計画に関する動燃事業団の考え方について説明があった。説明に先立ち、上記ウラン廃棄物貯蔵ピットの問題に関して謝罪がなされた。さらに、鷲見委員から、資料第8−3号に基づき、高速増殖炉開発の進め方に関する電力の考え方について説明があった。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
  ○
1994年の原子力長計には実証炉2号の記述はなかったと記憶している。(吉岡委員)
  ○
記述はある。(該当部分読み上げ。)(事務局)
  ○
実証炉1号を2010年とし、実用炉を2030年とすると、実証炉2号はその中間で2020年。10年毎にFBRを建設するというステップアップは現実的な数字でないと思う。
  
資料第8−2号に、高速炉の柔軟な炉心特性とあるが、転換比が0.7にしか下がらないのではそれほど柔軟ではないという印象。また、転換比を0.7に下げるには炉心の設計を全面的に変える必要があるのか。(吉岡委員)
  ○
様々なサーベイをしているが、転換比を0.5位まで変動させることは可能と考えている。0.5であれ、0.7であれ、かなり低い転換率の場合には大幅な炉心の材料・組成等の変更が必要になる。(動燃事業団)
  ○
質問の主旨は、「もんじゅ」を増殖なしの高速炉にするには、かなり長期をかけて炉心の再設計が必要と考えていたから。
  
フランスも、ロシアもFBR開発を中止していると理解している。ロシアでは80万kWの実証炉の建設が滞っていると聞いており、事実上フランスもロシアも次のステップに進まないということで、中止ではないか。(吉岡委員)
  ○
フランス、ロシア両政府共に、「FBR開発は継続中」との立場である。スーパーフェニックスは民間電力が所有しているプラントであり、採算性の観点から運転中止の声明が出された。フランスは将来に向けて、フェニックスの運転及び研究開発の継続の意思表明をしている。ロシアもBN−800を造るべく、研究開発をやっている。ロシアは、財政事情から計画通りにプラントが造れていないのは事実。ただし放棄はしていない。「中断」とは再開を考えていることと理解しているので、他の欧米各国に関しても永久の放棄ではないと理解している。(動燃事業団)
  ○
マイナーアクチニド(MA)を燃焼するには、再処理でMAを取り出す必要がある。その工程に関する研究開発の現状と、そのためのコスト増加はどうなのか。またMAは軽水炉でも燃焼することが可能である。両者の効率は桁違いに違うとは思わないので、FBRの特長と言えないのではないか。また、核分裂生成物(FP)の高速炉での消滅は、あまり聞いたことのない話。FPの大部分は寿命がそれほど長くない。(吉岡委員)
  ○
軽水炉と比べて、なぜ高速炉が有利であるかに関しては、核分裂を起こしたとき中性子の発生数が高速中性子の場合には約1個多い。この1個余分の中性子を、 MA燃焼やFP消滅に有効に使えることが大きな特長。
  
MAの燃焼のために燃料中にMAを入れるためには、燃料製造に当り、遠隔操作が必要となりコストアップ要因となる。但し、プルトニウム燃料製造の自動化という技術革新の流れが有り、その中で、同一に扱えるようになると考えている。コスト分析結果については、第3回の懇談会で紹介した通りである。
  
現在、「もんじゅ」の炉心内の燃料は、時間が経過していることからPu−241の核変換によって生成されたアメリシウムが約3%含まれており、これを燃やせば結果的にMAの燃焼特性が判る。また、高次の同位体は中性子が高速であればあるほど燃えやすいことから、プルトニウム等の同位体組成を若返らせることができる。そのような観点で高速炉の炉心特性は柔軟性があると言える。
  
長寿命FPの消滅に関しては、現在、加速器等を用いて核断面積の測定等を実施しているといった、基礎的な研究の段階である。長寿命FPには半減期が約2千万年のI−129や約20万年のTc−99のように長半減期のものがあり、環境負荷低減の観点で、こうした核種の消滅は意味がある。100万kWのFBR1基で軽水炉3基分の長寿命FPが、また軽水炉6基分のMAの燃焼が可能と試算している。基礎的な研究を積み重ねながら実用化に繋げていくべきものと考えている。(動燃事業団)
  ○
稼働率向上の話があった。内山委員の以前の資料では、設備利用率90%で試算していた。「もんじゅ」の設備利用率はどの位を目指しているのか。(吉岡委員)
  ○
「もんじゅ」は研究開発のために使っていく原子炉であり、商用炉としての位置付けを狙っている訳ではない。ここで稼働率向上とは、照射場として稼動している時間帯を増やしたいということ。ここでの試算では、約4ヶ月運転、約1ヶ月燃料交換、約4ヶ月運転、約4ヶ月の定期検査及び燃料交換という運転パターンを想定して、6割強という稼働率を設定し、当面の目標としている。これを将来は上げられるように努力していきたい。(動燃事業団)
  ○
鷲見委員の話で、初めて「もんじゅ」を再起動させて欲しいという話が出てきた。「もんじゅ」の運転再開を前提にした方針・流れは、地元に違和感を持って受け取られると思う。
  
プルトニウムのエネルギー源としての重要性は理解している。「もんじゅ」の高性能炉心や高燃焼度燃料の研究開発の話となると、今まで聞いていた「もんじゅ」の概念から一歩踏み込んでいる。地元の意思の確認を十分にとる必要がある。資料第8−2号では、地元について短く触れられているのみであり、かなり不満がある。
  
資料第8−7号は、「もんじゅ」の再起動を前提に書かれている。まだ、安全総点検の最終報告が出されていない状態である。以前、懇談会では7月に終了と聞いたが、9月だか、10月だか終わりが判らない状態。総点検を実施している中で、再起動させて欲しいとか、従来より一歩進んだ研究開発の話とかは地元としてはかなり違和感がある。
  
実用炉は2030年頃という話。日本の人口推移の推計では、2007年頃には人口増加は止まる。最近、福井県の経済団体が県内の人口の推定を実施しており、2030年頃には十数%減るとの推定である。高齢化、少子化も社会問題になっている。人口の急激な減少、高齢化で産業構造が変わっていく。2030年のFBR実用化という時代に、どういうエネルギー事情になっているか疑問である。(小林委員)
  ○
地元はもちろん一番大切である。技術者としては、「もんじゅ」を動かして、その経験を電力に頂きたいという願いがあるが、そのためには地元合意を当然得る必要がある。総合エネ調の報告では、2030年にはエネルギー量は増えるとの結果が出されている。日本の人々が、FBRや将来のエネルギーの選択等をどう考えるかを踏まえて、実証炉の開発をじっくり進めたい。(鷲見委員)
  ○
日本は今後、高齢化が進む。高齢者はエネルギー消費量が多いという傾向がある。人口減少以上に高齢化が進むということは、エネルギー消費はなかなか減らない。また、日本は化石燃料依存度が高い。特に、石油は60%近く依存している。代替エネルギー開発は、確実なものを確保する必要があり、今後とも予断を許さない状態である。
  
「もんじゅ」を今後続けて行く上で、どの位の費用がかかるのか。(内山委員)
  ○
関連で発言したい。コンセプトは良く判る。原子力を導入してしまったから何とかやって行かねばならない、エネルギーは沢山必要である、環境問題、国際貢献等。しかし、問題は、動燃の事故で原子力に対する信頼を失ってしまった点である。元のレベルに戻すだけでも非常に難しい状況である。
  
動燃の説明で所要経費の削減努力の話があった。コスト削減は結構な話だが、よっぽど下がる話でないと一般への説得力がない。また、時代の要請に合わせた研究開発という話があったが時代の要請とは具体的に何か。(大宅委員)
  ○
運転経費は約230億円/年と推定。売電による収入については、電力と契約をしている訳ではないので皮算用だが、約130〜190億円/年と考えている。従って、年当たり約40〜100億円の経費が必要になる。昨今の財政状況を勘案すると合理的に可能な限り経費を削減する努力が要請されていると考えている。運転経費の内、約50億円は燃料費である。燃焼度の向上ほか、利用効率の向上でこれを何割か落とすことは可能と考えている。また、設備の維持・管理のための費用に関しても、検査のやり方・内容とか、定期検査期間の短縮化等で人工数を下げることは可能と思われる。但し、差し引き100億円全てが無くなると申し上げる程楽観的ではない。(動燃事業団)
  ○
鷲見委員から、「会社で売るものが無くなる。」との発言があったが、「国民へのエネルギー供給ができなくなる。」と言って頂きたい。また、プルトニウムを増やすというよりは、ウランという原料をとことん燃やす、廃棄物を減らし、残留放射能も一番減るということが重要。(西澤座長)
  ○
前回、小林委員から高木氏に対して国民的合意に関する質問があった。高木氏は「吉岡さんから聞いて欲しい。」と発言したので、責任上、返答したい。以下の6つが、我々が示した合意条件である。
  
動燃改革の在り方は国民的議論によって決めることである。その後、吉川委員会の報告が出た。しかし、批判的立場の人間がいない委員会で、回数少なく結論を出した、核燃料サイクルに関する議論無しに「推進」との結論を出した、国民の意見聴取をしなかった、といった問題があった。
  
意見募集が1ヶ月では短い。意見の採否を懇談会が一方的に決めるのはおかしい。双方向の対話になっていない。
  
「もんじゅ」の事故原因究明については、科学技術庁や原子力安全委員会とは違う意見がある。シンポジウム等を開催して議論する必要がある。
  
安全審査を公開でやり直す必要がある。
  
本格的な公聴会が必要である。アメリカではECCS公聴会を230日間連続でやった。そこまでやらないにしても徹底した議論が必要。また、国民投票、住民投票の実施を考える必要がある。
  
原子力長計を見直す必要がある。
6つといったが、もう一つ、地元との合意がある。(吉岡委員)
  ○
それぞれの議論の場がある。動燃改革については動燃改革委員会で議論すべきものである。
  
小林委員の意見については、近隣諸国、東南アジア諸国での人口の爆発に関しても視野に入れて考える必要がある。(西澤座長)
  ○
FBRの研究開発のクライテリアを考える必要がある。ウランの有効利用をどのくらいのスパンで考えるのか。これから1000年間、ずっと先の話までしても仕方がない。せいぜい100〜300年先までを考えたクライテリアとすべきではないか。FBRでウランの有効利用を図る場合、その増殖比と炉から取り出されたプルトニウムが再び炉に戻るまでのサイクル時間が決定的に効くことになる。必要なタイムスパン、その時のFBRの果たすべき役割、さらにそれを果たす時の増殖比、サイクル時間をきちんとセットする必要がある。これを実現できる研究開発計画をセットする必要がある。倍増時間が90年、50年で本当に良いのかという疑問がある。どのようなクライテリアをセットしたらFBR開発が意味あるものか、きちんと示すべき。
  
「常陽」、「もんじゅ」、それに関連する研究開発施設全てを含めた研究開発ステップを判りやすく示す必要がある。特に、現在FBR開発がつまずいている原因がナトリウム技術であるとすると、これをどのようにマスターするのかについて、「もんじゅ」のみならず関連の研究開発施設を含めて、ステップワイズに示すべきである。
  
動燃の説明で、「もんじゅ」の役割をかなり先の先まで描いている。現段階では、ファーストステップとして、この10年なり15年位に何をやるかをしっかり示すべき。
運転経費等についての動燃の説明は楽観的すぎる数値だと思う。(松浦委員)
  ○
鷲見委員から倍増時間の話があった。これは、FBR時代になってからの議論。今の軽水炉時代の中でFBRがどうあるべきかを議論すべき。一遍にFBRの社会になる訳ではない。トランジションの時代は、軽水炉とFBRがお互いに補完し合って進化していく時代。これが長く続く。今の時代にFBRがどう役立つかが重要。軽水炉は、最初から全部のサイクルを十分考えたものではなかった。サイクルで辻褄が合わない部分がある。その辻褄を合わせる能力があるのが高速炉と考える。辻褄を合わせながら高速炉が発達することによって、いずれ高速炉で全ての原子力エネルギーが賄えるようになっていく。実証炉1基を作る程度の時期には、倍増時間は意味がない。高速炉が今の軽水炉で出来ないことをどの程度補完できて、それをどのくらいの期間で実証できるかが重要。(秋元委員)
  ○
資料第8−7号について、実証炉運開まで13年しかない。実用炉は、2030年。用地確保等のリードタイムを考えればこんなに早く進んで行くはずがない。用地も確保されていないのに無理である。
  
将来のエネルギーを考えた場合、FBRの位置付けは大事であることは理解する。現在の動燃の組織で、「もんじゅ」を使って研究開発をやっていくことへの信頼が私には無い。「もんじゅ」を再開し、実験を行い、それを実証炉・実用炉に繋げたいという話は良く分かる。しかしながら、現在の不信が募っている状態をどう考えるか、議論が必要である。
  
運転経費等について、以前に説明して貰った詳しい資料は良かったが、資料第8−2号には含まれていない。それにコメントをしたかった。研究開発にどれ位まで出すべきかは非常に難しい問題。電源特会、税、電気料金等、色々な問題が絡んでいる。必要という議論と、どこまで認められるかは別の話。きちんと資料を出して欲しかった。(植草委員)(植草委員が指摘された資料を参考に配布。)
  ○
動燃改革の作業部会で抜本的な改革を検討している。我々としても、委員会報告の具体化の中で、答を出していきたい。動燃組織の問題については、動燃改革委員会での検討事項であると整理している。(事務局)
  ○
根は深い問題である。「もんじゅ」に限らず最近いろいろな問題で、きわめて事故が多い。私は共通の現象と思う。職業人の自分の仕事に関する責任感の問題である。議論するのは良いが、一ヶ所にストレスがかかることを大変心配する。(西澤座長)
  ○
植草委員の言うとおり、実証炉のサイトがある訳ではない。「もんじゅ」の経験を踏まえることを考えているので、2010年の運開は今のところ考えられない。実証炉2号も環境、資源、社会的な問題を踏まえて柔軟に考えて行きたい。資料第8−7号の通りに行くわけではない。
  
何千年も先を考えている訳ではないが、ウランの究極埋蔵量1500万トンの内、日本で使えるのは1割の150万トン程度と考えており、75年位で尽きると考えている。2030年位には軽水炉の代替エネルギーが実用化できる技術が必要と考えている。我々は実証炉を必ずやろうという意思には燃えているが、周囲の状況に柔軟に対応して行くつもりである。(鷲見委員)
  ○
資料第8−7号は、分かり易くするために「運開」という言葉で整理した。しかし、これは長計の表現とは一致していないということをお断りしておきたい。(事務局)
  ○
提示された計画は過去のものと事故を踏まえたものとがあり、これらのことをマクロに捉えて判断することが重要。「もんじゅ」の位置付けは、こんなものかと思う。計画は本来変わっていくものであり、数字が一人歩きしないように注意する必要がある。電気事業者の「もんじゅ」への期待と動燃の「もんじゅ」の研究開発計画は平仄が合っていると思う。
  
この懇談会のミッションは、動燃の在り方を議論することではなかったが、前提として関係ないでは済まない部分がある。これをどう纏めていくか。(近藤委員)
  ○
無視はしないが、本質の議論を行った上で、どれ位のファクターがあるかを考えるべき。
  
我々は、将来の子孫にとり返しがつかないものが残らないように、彼らの時代になった時に事態が収拾することを頭において今日を考えている、というのが本当のところと思う。(西澤座長)
  ○
鷲見委員の実証炉開発の現状に関する資料について聞きたい。誰がお金を出して、どの位のお金を使ってやっているのか。動燃との役割分担は。「もんじゅ」の成功さえ不明なのに、なぜお金を出しているのか。また、アメリカのFFTFは実験炉という認識である。倍増時間について、増殖率や工程上のロスはどのように考慮しているのか。英仏での実績値に基づいて議論して欲しい。さらに、プルトニウムの毒性に関して聞きたい。セラフィールドで事故があり、再臨界事故の可能性まであった。紙一枚で遮へいできるというのは楽観的すぎる。食べたプルトニウムの排泄についても、必ずしもリスクが低い訳ではない。(吉岡委員)
  ○
電力としては、50億円/年位の研究開発費でやってきている。燃料設計等は動燃の分担である。研究は時間がかかるものであり、今から進めている。また、FFTFは出力規模で言えば、原型炉レベルと言える。倍増時間は、海外の経験を踏まえて計算をしたもの。セラフィールドの事故に関しては、あまり良く知らない。プルトニウムの毒性については、グローブボックスで扱えば安全にやっていけると考えている。(鷲見委員)
  ○
計画は絶対的なものではない。(西澤座長)
  ○
通産省の考えを補足したい。総合エネ調の原子力部会の結論では、高速炉の技術は重要であるという認識。また、同時に長期的な観点では、経済的、革新的な技術を導入する必要があり、具体的な展開については本懇談会の結論を踏まえるということになっている。エネルギーの面からみた時代の要請については、できるだけ経済性を重視した柔軟な対応であると考えている。長期のセキュリティと環境問題と経済性重視とどうバランスを取るかが難しいところ。この12月に気候変動枠組条約のCOP3という会議が京都で開催される。これに前後して、エネルギーの長期的見通しを見直す必要が出てくるだろう。今まで長期的見通しは2010年までしかなかった。2030年の数字は、長期のエネルギー問題をシミュレーションするための人為的数字にすぎなかった。COP3に向けては2010年以降についても本格的に考えないといけない。エネルギー政策を考える上で、今のセキュリティと環境問題についてどう対応していくか、特にセキュリティのシンボルでもあるFBRにどう対応していくかついては、この懇談会の結論を踏まえて検討していきたい。
  
鷲見委員の説明で、原子力を取り巻く社会情勢の厳しさ、「もんじゅ」事故を真摯に受け止める、研究開発課題としての経済性の重視、といった3つの基本的な認識が示されたが、私共の認識と一致している。柔軟性とか、革新的・経済的技術をじっくり開発して貰うといったことがキーワード。当面は懇談会の話を聞かせて貰い、今後の政策展開に反映させて頂きたい。(谷口審議官)

(3)
事務局より、資料第8−4号に基づき、FBR開発の投資効果に関する山地東大教授及び米国原子力委員会(AEC)の論文の要約について説明があった。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
  ○
竹内委員からは研究開発投資の金額の在り方について質問があった。本日の資料では希望に応えるまで完結していない。もう少し時間を頂いて補足できたらと思っている。難しい問題ではあるが、何とか定量的な議論ができるまでのものを纏めたいと考えていた。山地氏の論文は、FBRというより非化石燃料に共通して書かれているものと解釈できる。
  
研究開発投資については、民間企業の方からすれば費用対効果比を考えると、投資可能な金額はここに示された値の10分の1である約30兆円ぐらいが頭か。約30兆円を限界として、これを非化石燃料の技術開発のためにどう配分するかが世界的な課題。例えば、FBRと太陽で50%ずつとした場合、FBR開発のために世界全体で15兆円が現在価値でいう研究開発投資の限度と仮定。この内、日本がどれ位研究開発を分担すべきか、投資した利益を日本が享受できる立場にあるか等、難しい問題はある。世界のGNPでいえば1/7の2兆円位が日本の限度か。年間投資額は、現在価値換算率5%を用いて20で割ると年間均等1000億円が限度という感じ。
  
もう一つのパラメータサーベイとして、FBRのニーズが10年早まればつかみで1.6倍の投資が必要。10年遅くなれば1/1.6が限界値。財政事情が逼迫している場合、現在価値換算率及び投資可能金額は状況に応じて減るもの。
  
現在、日本における原子力と太陽に係る「官」のエネルギー研究開発費は5000億円位である。
  
炭素税が議論されており、専門家の間では経済学的に100〜200$/トンといわれている。これで計算すると世界的にほぼ同じ様な額の税をとることになり、おおよそ300兆円位になる。米国で議論されている10$/トンとか40$/トンを日本に置き換えると、3000億トンの炭酸ガスを排出している日本では3000億円とか4000億円という金額が出る。それと見合いで考えると、このぐらいのオーダーの数字は、そうおかしくないかなという程度の議論が出来るかと考える。結論としては、この10年、この3年の議論を行うには財政事情等、トータルの許容投資金額を踏まえ、国民の同意を得て、決めて行かれるべき数字だと思う。(近藤委員)
  ○
1969年のAECの評価は現在では意味がない。ウランの需給、FBR及び再処理の建設費の予測等、状況が全く変わってしまっている。山地氏の論文は、投資効果の評価なのか疑問。これは、将来の経済性に対する予測を、かなり無理して転用しているものである。竹内委員は、FBRの実用化の目処が立たないまま、巨額の開発費を投資し続けることを問題にしているが、山地論文はその答えになっていない。(吉岡委員)
  ○
AECの論文から得られるメッセージは、もし技術的にリスクが無ければ早く導入した方が良いということ。山地氏の論文に関しては、ここで示された数値を非化石燃料エネルギーへの投資額の最大として、どういう比率でFBRを研究開発することがリスクミニマムとなるかを見ればよい。(近藤委員)

(4)
事務局より、資料第8−5号「これまでの各委員からの意見の整理」をまとめの議論の際に活用していただきたい旨の説明があった。

(5)
事務局より、資料第8−6号「今後の高速増殖炉懇談会の進め方(案)」について説明があった。

<西澤座長説明>
  ○
今後の審議に当たっては、予備が1回とってあり、必要ならば臨時に会合を挟むことも考えられる。(西澤座長)

(6)
事務局より、小林委員、吉岡委員より資料が提出されている旨の説明があった。

<吉岡委員説明>
  ○
代案として今後の進め方に関する私の提案を説明したい(吉岡委員の配布資料を説明)。事務局案とどちらかを選ぶと言うことではなく、私の案の良いところを取り込んで欲しい。
  
私は懇談会の議論はまだ3合目くらいと考えていた。まだFBRの政策論として議論すべきことがある。早く纏めたいという事務局案に多少当惑している。例えば、FBR以外の路線の話や軽水炉の補完炉として高速炉を使うというオプションの話はまだ議論していない。ここに書いた14項目の全部を取り上げろとは言わないが、幾つかは時間をかけて議論したい。
  
進め方としては、総括討論が必要。その上で報告書を作って行くべき。私の意見は少数意見だと思うが、少数意見も十分に反映して欲しい。報告書の構成についても提案したので見ておいて欲しい。
  
行政改革会議の議論のように、3日間ぶっ続けで議論するようなことが必要になるのではないか。(吉岡委員)

  ○
広く考えた上から選び抜かれたものが実用化に向かっていくということであると思うが、何故原子力学会等であってそれが議論出来なかったのか。また、生の資料を持ってここで議論する素養を私は持っていない。別のところで議論して貰いたい。(西澤座長)

  ○
報告書案に盛り込むべき内容に関する委員の方々の意見を9月10日(水)までに寄せていただきたい。それを基にして、報告書骨子案を取り纏めたい。
  
次回(9月19日)は、各委員からの意見を踏まえて、追加検討と骨子案の検討をしたい。予定した結論に持って行くつもりはない。
  
新しい開発は、全てが判るまでやらないというのは本質的に不可能な話である。危ないことが明らかとなれば、いつでも止めれば良いということ。(西澤座長)