資料第8−1号


高速増殖炉懇談会(第7回)議事要旨


1.日 時 : 平成9年7月30日(水) 14:00〜17:00

2.場 所 : 科学技術庁 第1、2会議室 (2階)

3.出席者 :
 
(原子力委員)
 伊原委員長代理、田畑委員、藤家委員
(専門委員)
 西澤座長、秋元委員、内山委員、木村委員、河野委員、小林委員、
 近藤委員、鷲見委員、住田委員、竹内委員、中野委員、松浦委員、
 吉岡委員
(招へい者)
 高木 仁三郎 原子力資料情報室代表
(科学技術庁)
 加藤原子力局長、今村審議官、森口動力炉開発課長
(通商産業省)
 谷口資源エネルギー庁審議官、三代原子力発電課長

4.議 題
(1)仏スーパーフェニックスの検討状況
(2)燃料サイクルの比較
(3)各界からの意見(高速増殖炉計画の基本的困難について)
(4)これまでの各委員の意見の整理
(5)動燃改革検討委員会報告書(案)について
(6)「もんじゅ」の安全総点検について

5.配布資料
資料第7−1号 高速増殖炉懇談会(第6回)議事要旨
資料第7−2号 仏スーパーフェニックスの検討状況           [事務局]
資料第7−3号 燃料サイクルの比較                 [事務局]
資料第7−4号 高速増殖炉計画の基本的困難について
                     [高木仁三郎 原子力資料情報室代表]
資料第7−5号 これまでの各委員からの意見の整理          [事務局]
資料第7−6号 動燃改革検討委員会報告書(案)の概要        [事務局]
資料第7−7号 「もんじゅ」の安全総点検について [動力炉・核燃料開発事業団]

  

[吉岡委員配布資料]
○吉岡委員のコメントへの回答(その2)に対する再コメント

6.概 要
(1)
西澤座長より開会宣言の後、事務局より動力炉開発課長の交代について説明があった。また、事務局より配布資料の確認が行われた。

(2)
事務局より、資料第7−2号により仏スーパーフェニックスの検討状況について説明があった。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
  ○
仏左派政党は、スーパーフェニックスの廃止を公約に掲げて、選挙に勝って実行した。民主主義のルールに従ったことで、その政治決定は重い。これに関しては、外から異を立てる必要はない。問題は、どういう理由でやめたかであり、これを他山の石にすべきである。財政的な負担が相当大きいということと、成功の確実性に欠ける、との二つの理由で止めたことになっている。財政的には日本も厳しい面がある。財政構造改革会議で、科学技術庁予算が言及されており、「もんじゅ」も問題があれば全面的に見直すと言っている。これは、「もんじゅ」をどうするかに関しては、色々なオプションを幅広く柔軟に考えろ、ということと受け止めている。問題は、成功の確実性があるかどうか。仏は、あまり目処がないから止めると判断した。この懇談会では賛否があり、結論が出ていない。これをどう考えるかである。仏の決定を見ながら、我が国と比べることが一つの視点として重要である。
もう一つは、財政論から言えば、仏では先進国の政権でありながら、法人税の増税を決定した。それだけ財政的に苦しいと言うこと。仏では、財政面で止めるというのは通り易い。日本の場合、「もんじゅ」は特別な財源があっての話である。仏が止めたから日本も止めるといった短絡的な議論はしたくない。日本は日本の状況で結論を出すべきであろう。(河野委員)
  ○
スーパーフェニックスは実証炉であり、主に電力が負担しており、予算の問題以上に、電力の経営の問題がある。それは消費者の負担にも関わってくる。資料第7−2号のスーパーフェニックスの収支表をみると、実証炉としては滅茶苦茶に悪い。ここで電力収入は、10年間の合計である。仏は1960年代の末に、国内開発をしていたガス炉から軽水炉に転換した。この時は、電力業界が原子力庁を押し切って軽水炉に転換した。スーパーフェニックスの場合に、電力業界がどう考えたかを調べたい。(吉岡委員)
  ○
EDFや、COGEMAからも、スーパーフェニックスの開発コストはかなりの額にのぼったということはあるが、「だからやめる」というようなことは出ていなかったと理解している。原子力推進当局者や民間がどう思っていたか、事務局で把握していれば教えて欲しい。また地元の反応はどうか。(秋元委員)
  ○
CGTは、スーパーフェニックスの閉鎖については民主的な議論なしに決定されるべきではないと言っている。EDF-GDFの組合は、スーパーフェニックス閉鎖のコミュニケを出した。またCFE-CGC等の組合は、閉鎖を決める前に真の調整が行われるべきと言っている。このように、幅広い意見が出されているというのが実態である。大臣等の発言はあるが、企業体からの意見は入っていない。(事務局)
  ○
議論の経過を見ると結論が出ている部分と出ていない部分がある。原子力政策の問題とFBRの問題は切り離しが可能なのか。仏のように、FBRについては経済的リスク等の考え方を導入すべきという考え方もある。仏の場合、ウラン燃料の限界が低いことが理由といっているが、はっきりしない。また、安全性・環境面よりも経済的リスクが大きいという捉え方がされているようだ。安全だから良いという訳でもないと言っている。日本でも原子力とFBRの問題が切り離せるかどうか。仏でも切り離せるかどうかはっきりしていない。(竹内委員)
  ○
切り離し論について。なぜFBRを考えたのかというと、ウランの利用効率が軽水炉の1%程度から60〜70%に上げることができるからである。超長期のエネルギーを考えての話である。原子力を現在程度の規模で、数十年のつなぎのエネルギーと考えるならFBRは必要ない。プルサーマルでも良く、10%とか20%の有効利用が図れる。大雑把に言うとFBRの位置付けは、そういうことになる。非常に長い期間を考えるならば、加速器の利用ということを言っている人もいるが、FBRが主たる方法として必要であるということで開発してきた。
スーパーフェニックスは実証炉であるということが重要である。経済的にも、技術的にも使えることを示すことが使命である。スーパーフェニックスは、オイルショックの後に作られた。その時は、ウランマーケットがタイトになり、原子力が必要になると確信していた。その後、冷戦構造の崩壊等によるエネルギーマーケットの変化と仏の国内事情を勘案した結果、廃止という選択がなされた。しかし、大事なのは実証炉であるということ。「もんじゅ」は研究開発のツールといった位置付けである。スーパーフェニックスの議論を「もんじゅ」に直ちに翻訳するのは間違い。日本でも将来実証炉として相応しいものができれば電力が自らおやりになるという位置付けであり、まだ時間がある話。将来を考えてFBRの研究開発が必要と考えるならば、「もんじゅ」は技術をビルドアップするためのツールとして重要である。ここでは、まだそこまでの議論になっていない。(近藤委員)
  ○
日と仏を比べることを前提として、仏は実証炉としてのスーパーフェニックスをやめるが、原型炉のフェニックスはどうするのか実状がわかれば知りたい。(住田委員)
  ○
フェニックスは、現在炉の寿命延長のための改造中であり、年末以降運転するとみられる。FBR開発そのものの政府の見解は正式には出されていないが、青森県知事が最近仏を訪問した折のピエレ閣外大臣の談話では「FBR開発はやめていない」と発言している。(事務局)
  ○
竹内委員への回答であるが、私はFBR無しの原子力政策は可能と考えている。殆ど全ての人は可能であると考えていると思う。核燃料サイクル路線として、脱原子力も含めて、どのオプションが短期的、長期的に最も妥当なのかを評価して、我々が一つを国民に対して提案するということだと思う。それを受けて国民がどう答えるか、公聴会が必要である。このような形で議論が進むことが良い。医療のインフォームドコンセントと同じ手続きである。オプション毎の利害を良く説明した上で、国民に決めさせるということ。FBR無しのオプションも考慮する必要がある。(吉岡委員)
  ○
ここでは、経済性に関しては厳しい結果が出ているが、原型炉、実証炉の段階が経済性では一番リスクが高いのは当たり前。産みの苦しみの時期を乗り越えて初めて経済的にも技術的にも明るい展望が出て来る。これまでは、大型技術に関しては米国と欧州がリードしてきたが、経済的理由から厳しくなっている。どこかの国でこれをやらないと新しい技術は生まれ出ない。新技術の在り方も議論していきたい。(内山委員)
  ○
竹内委員の質問に関して、近藤委員と同意見。100万kWの軽水炉は、寿命30年として、約4000トンの天然ウランが必要。経済的な資源量約400万トンは、1000基30年間でなくなる。今は、100万kW換算で約350基ないし約400基の原子力発電所がある。1000基に比べてかなりのところまで来ている。そのくらいの時間の幅があるということ。それ以降も核燃料を使うならFBRは切り離して考えられない。そのための開発オプションは必要であり、開発には時間が必要という面もある。(松浦委員)
  ○
ジョスパン首相の「スーパーフェニックスと呼ばれる高速増殖炉は放棄する」といった表現は、昔の魔女裁判の時と全く同じ。この世から無くしてしまうという極めて厳しい表現である。参考までに。(木村委員)
  ○
資料第7−3号は、各委員からの意見もあり、私が素人にも分かり易いように事務局に纏めてもらった。この資料の説明の後、今の問題に関連して発言して欲しい。(西澤座長)

(3)
事務局より、資料第7−3号燃料サイクルの比較について説明があった。主な質疑等は以下の通り。

<主な質疑等>
  ○
リサイクルの比較について良く分る資料と思う。ただ、廃棄物の毒性については、これまで色々な形で出ている。心情的に反対の人はひっかかっていると思う。この資料では、毒性だけが抽象的に書かれている。もう少しきちんと説明して欲しい。また、毒性の図は、1000万年より先を出されても、殆ど意味がないと思う。そうすると、1〜10年のピークの意味が大きくなる。具体的な説明が欲しい。(中野委員)
  ○
毒性といっても、半減期をパラメータにしなければいけない。(西澤座長)
  ○
何らかの基準、半減期なり、生態への影響なりをみなければいけない。(中野委員)
  ○
毒性の定義は、核種毎に許容濃度に薄めるまでに必要な水の量を足し合わせたもの。相対的な比較に意味があると考えている。軽水炉ワンススルーは、プルトニウムの毒性が効いて、相対的に毒性が高くなっている。(事務局)
  ○
3つのサイクルの比較について、これでは判断材料にならない。長期的な研究のリスクと経済的なリスクをどのように比べるかに関心がある。本当に知りたいのは、研究開発費にこれからどのくらい掛かるのか、実証炉の段階でも多少失敗があるとしてどのくらい国民の財産が失われるのか、それに対して、公益的なエネルギーが得られるか。これが経済性という問題である。ここに示されたのは架空の数字である。日本の経済成長のニーズに合わせて最大限の電力を供給する努力をするのはナショナルミニマムに照らしてどうなのか。そこまで国が供給責任を負う必要があるのか。これから選択しようという時に、この資料は技術者には良いかもしれないが根本的に抱えるテーマ、国の供給責任はどこまでか、電気はどこまで検討しなければならないかが、曖昧。(竹内委員)
  ○
数値だけを見ても判らないと思う。基本的なコンセプトの違いを示す必要がある。一般の廃棄物の問題とかなり似ている部分がある。ワンススルーは、廃棄物の一方向社会と同じ。現在社会で使われている商品は、資源の有効利用や廃棄物処理の側からはオプティマイズされた設計になっていない。軽水炉も電気を取り出すところまでは効率的であるが、同様に最適ではない。最適でないシステムを使って、なるべくリサイクルするのがプルサーマル。それでも資源の無駄使いは無くならない。FBRは、技術的にはまだ完成している訳ではないが、リサイクルを繰り返すことによって自然から掘り出した貴重なウラン資源をエネルギーとして燃やしきってしまうことができる。燃料資源を徹底的にエネルギーに変えることにより、廃棄物による社会への負担低減を同時に実現するという立場から考えられたシステムである。国連大学の先生方が言われているゼロエミッションという運動があり、それは商品そのものをリサイクルし易い立場で設計を変えていくというものである。FBRは理論的にそれができるシステムであるが、軽水炉は到達できないというバリアがある。人間社会は、リサイクルするように変わっていかないと21世紀の発展は望めない。同じように、原子力を基幹エネルギーとして長く使うのであれば、高速炉で天然エネルギーを使い尽くすというシステムに転換する必要がある。リサイクル側から原子炉のコンセプトを考えたのか、原子炉をはじめに考えてそれからリサイクルの問題を考えたか、そこに違いがある。天然資源の問題、廃棄物の問題のみならず、プルトニウムのリスクの低減は原子力を進めていく上での必要な一つのオプションである。高速炉開発を進めるということは、原子力がこういうコンセプトに乗るのか乗らないかであり、ポイントである。(秋元委員)
  ○
資料第7−3号に関して、2030年は誰にも判らない話であって、架空の数字しか出せないというのが正直なところ。歴史的にみると、1950年代はFBRの電気はただ同然になると言われていた。70年代初頭には「もんじゅ」、SNR-300は300〜400億で建設できると言われ、20年後には20倍になった。原子力では当初の見積もりと最終的なコストの差が10〜20倍となるのは当たり前。それでは何も分らないかというとそうでもない。第1回で近藤委員が使われた表現だが、進化論的アプローチで、その時点、その時点で将来を見こして考えるしかない。スーパーフェニックスは、ここまでやったが数字が悪すぎる、ということが止めた一因だと思う。ステップバイステップに一歩先の将来までを見て決断するのが良い。OECD/NEAのコスト計算に関しては、プルサーマルがワンススルーより10%しか高くないという結論は日本には当てはまらない。私の試算では200%も割高。廃棄物の発生量に関しては、重量だけで比較することは十分ではない。(吉岡委員)
  ○
米国は、日本のプルトニウム政策に最大の疑念を持っている。経済性が成り立たないのに日本が強行しようとしているのは、裏に将来核武装があるのではないか、という疑念がある。政府は色々説明しているが信用されていない。これを払拭する議論をしっかり展開する必要がある。
経済性比較の話は、現実論として軽水炉ワンススルーからプルサーマルは陸続きの話。プルサーマルからFBRに何年かかって進んでいくのか。FBRに繋げるオプションは今考えられているもの以外に色々あるのではないか。時間はあるのだから、幅のある形で考えることが良い。後になって、研究者がどのような選択がなされても自由にできるようにすることが一番のポイントである。核不拡散に関しては、日本が核武装するなんて荒唐無稽の非難だということが巧く言えるか否かだ。(河野委員)
  ○
電力会社は、どのように電力を供給するかを真剣に考えている。吉岡委員が言われたように2030年のことが判らないようでは電力会社は勤まらない。原子力発電所を作るまでに30年、火力でも20年掛かる。長いスパンで考えないと。7月始めに、サンタフェでロスアラモス研究所と会議をした。我々は軽水炉の安全性のみを発表し、米国側は核不拡散だけを話していた。エネルギー供給と共に核不拡散も考えなければならない。また彼らの一部は、100年先のエネルギー供給を盛んに言っていた。(鷲見委員)
  ○
今回の資料は、素人の私に判るように資料を作ってもらったもの。毒性に関しては、長く続くものとそうでないもの、エネルギーも違う。それらを掛け合わせたものを毒性としてこの資料で定義している。半減期を考えることによって、やっとここまでカットダウンできるということである。改良すべき点があれば指摘して欲しい。
昨日海洋関係のシンポジウムがあった。米国は火力による炭酸ガス増加については無関心である。他のエネルギー源に対する評価が絡んで来る。やってみないと判らないことを推定してやらざるを得ない。現実にやってみた時に、推定が変われば緊急にまた議論するということではないか。今回の資料は、ベースとして使えると思っている。目標値は、全くあてずっぽという数字では無い。(西澤座長)
  ○
今後議論すべき内容として20項目くらい考えている。その第一項目が核不拡散であり、徹底的に議論すべき。これについて、クリントン政権の関係者、反対署名運動をやっている人を呼んで議論したい。(吉岡委員)
  ○
この資料のメッセージは、FBRを使えばウランのエネルギー供給能力が上がるということ。それをやるべきと考えるか否か。竹内委員は、国の役割論、エネルギーと電力のインフラ、研究開発費投入に関して、システマティックな議論ができるような資料を望んでいたようだが、経済計画は難しい。研究開発費を出して、一方、将来のエネルギー需要を見越して、FBRが無ければどうなるのかを評価する。原理的にはそれをやってものが決まっていくのだと思う。我が国だけを考えれば良いのか、国際貢献も考えるのか。長期的な話は定性的にならざるを得ないところはある。しかし、定量化の努力は必要。そういう評価をどこかの機関でやっていれば紹介して欲しい。(近藤委員)
  ○
補足したい。河野委員の質問で、プルサーマルからFBRの話があったが、技術的なポイントとして、プルサーマルの多重サイクルではプルトニウムは高次化して燃えなくなることが示してある。一方、FBRではブランケットを合わせればプルトニウム組成の劣化が進まず効率的に燃やせる。(事務局)
  ○
私は、この懇談会は科学技術の会議で、政治問題を論ずるのは別の土俵だと考えている。核不拡散まで議論することは考えていない。(西澤座長)
  ○
米国を納得させるには核不拡散の話が必要。しかし、米国の主張は本当に平和のために言っているのか疑問がある。軽水炉を運転すればプルトニウムも出てくる。原子力システムを使う以上はプルトニウムを切り離して考えることができない。平和利用の立場の中で、プルトニウムを無くす技術が重要である。FBRはそれに役立つ。仏のキュリアンレポートでもプルトニウムやアクチノイドを効果的に減らす唯一の方法であると述べている。我々はプルトニウムを減らす技術を開発しているのだと自信を持つべき。この問題は、平和利用の問題と切り離せる問題と考える。(秋元委員)
  ○
反論はない。しかし、有力なるパートナーである米国から言われたときに、西澤委員会で、核不拡散を前提として平和利用で行く、テンポはゆっくりやる、といったメッセージを出せることが重要。スキができては攻められるだろうということ。長く議論する必要があるとは思わない。(河野委員)
  ○
疑われるものは全て燃してしまえということからFBR研究を進める路線もある。また、疑われないためにどうしたら良いかも考えておくべき。経済的には、ウランを溜めておくという話との対比もある。今後、秋元、河野委員の言われたことを念頭に置いて議論をしていきたい。(西澤座長)
  ○
日米関係だけで核不拡散を議論するのは良くない。FBR技術が色々な国に拡がったらどういうリスクがあるのか。国際的な視点で考えるべきである。(吉岡委員)
  ○
核不拡散は大きな問題。原子力政策を維持、発展させるために情報開示を常に考えるべき。(住田委員)
  ○
国際信義にかけて守り通すといった観点も要ると思う。(西澤座長)
  ○
原子力委員会の長計でプルトニウムの議論がされて、余剰のプルトニウムを持たない、疑念を持たれないようにするということが政策として明らかになっている。従来、プルトニウムの情報の取扱は慎重だったが、情報公開が進んできている。(事務局)
  ○
国内並びに国際的にも保障措置のシステムが出来ている。FBRは、これから良いものを作っていこうとしており、核不拡散の観点からの研究開発課題を提起することが適切であると思う。(近藤委員)
  ○
航空機は国際共同で開発されている。なぜFBRはそうならないのか。仏もスーパーフェニックスは、一国で開発しており、軍事との係わりも否定できない。日米の関係も今のままの良好な状態が続くかは疑わしい。ニール・ジョーダンの映画にさそりとかえるの寓話が出てくるが、文化・宗教・伝統の違いが、一体的な関係を壊すことだって有り得る。30年先は見通せない。なぜ日本だけがFBR開発する必要があるのかどのように説明されているか。(木村委員)
  ○
今まで、原型炉までは国毎に開発を進めてきている。実証炉のスーパーフェニックス、その先のEFRはヨーロッパ共同でやっている。原型炉までは日本でやれるとの判断であった。但し、国際的な協力関係の上に立っている。実証炉に関しては、電力がどのように考えるか。国際共同開発も有り得ると思う。(伊原委員長代理)
  ○
国際貢献、エネルギー需給、廃棄物等周辺の問題があるが、予算についてはきちんと説明して欲しい。経済性の問題から逃げないで欲しい。周辺の問題は切り離して、経済性とエネルギーの問題だけを取り出して説明して欲しい。長期的なFBRの研究開発予算についてどうなのか。エネルギー需要予測についてもコンセンサスが得られていないと思う。何が確証あるデータなのか。国で評価をきちんとやっているのか。どの程度緻密な経済性の議論ができるのか。(竹内委員)
  ○
将来の不確実性はあるが、その時点でベストな方法で計画を立てざるを得ない。アジア圏の事情を考えるとエネルギーの大量供給が必要である。原子力の位置付けを避けて通れない。経済性の方は、導入されれば安くなってくるものと考えられる。軽水炉からFBRへの路線は、極めて地に着いた開発路線であるので、他の技術と比べれば経済性の見通しはかなり確度が高いと考える。5年くらいの予算を評価するのは可能だが、10年から30年となると難しい。(内山委員)
  ○
少し調べて、我が国のなすべき投資の持つ意味について計算して見れば良いと思う。事務局と相談して考えたい。FBRを一国で開発して導入しても資源の需給には効果が無いものである。国際公共財と考える必要がある。なぜ、我が国が一国でやってきたかというと、後発国であったということが大きい。そのため、自主開発を重視した。これをものにしてこそ一流国だという考え。しかし、フェーズが変わった。これからは、国際協力、共同開発をもっと真剣に考えるべき。(近藤委員)
  ○
「国の誇り」。ロケットと同じということですね。(木村委員)
  ○
今まではそうだった。(近藤委員)
  ○
炭酸ガスの問題等もあり、アジアの中心の国として、FBRの問題に見通しを立てることは重要と考えている。(西澤座長)

(4)
資料第7−4号に基づき高木仁三郎原子力資料情報室代表より、高速増殖炉計画の基本的困難について講演があった。主な講演内容と質疑等は以下の通り。

<主な講演内容>
  ○
FBRは、軽水炉とは異なるかなり大きな困難を抱えている。根本にあるのは、プルトニウムを使うことによる困難である。プルトニウムそのものの毒性という問題。再処理してプルトニウムを取り出すことに伴う問題。核兵器に係わる問題。日本だけでなく、他国にも拡散するという問題。日本が核兵器に関する技術能力を持つことが海外からどう評価されるのかという問題。日本が平和利用を意思表明すれば良いという問題ではない。プルトニウムの同位体は長寿命核種であるという問題。増殖が困難であるという問題。ナトリウムを使うという問題。FBRという原子炉の問題以外に、“増殖”するためには、FBR用の再処理、MOX加工、輸送といった大きなシステムを動かさなければいけないが、今後ともそれが可能とはとても思えない。本当に無限回のリサイクルなんて考えられるのか?大変大きな困難を伴うと考えている。増殖は、おおよそ非現実的である。数字の上だけで言っている話ではないか。
  ○
FBRは長い歴史を持った技術である。50年経ってもこの状態ということを冷静に評価する必要がある。60倍のウラン利用効率は机上の計算。歴史の上では、破綻した。50年経っても技術はほとんど進んでいない。無理な技術であるということを冷静に評価すべき。なぜ日本だけができると考えるのか。日本には計画を中止するシステム、評価するシステムが存在していない。戦争中の軍部と同じである。イケイケといったら止まらない。原子力関係の人間はどうしてもイケイケになってしまっている。根拠である資源小国の話が一般論としてあるが、FBRの増殖が原理的に可能であっても、技術的可能性、経済性、国際的な問題等々を考慮して、冷静に評価すべきである。長計のFBR実用化予測においても、1960年頃には実用化時期が1980年頃と言われていた。実際には、長計改定の度にFBR実用化時期は遠退いているが、エネルギー状況はそれでどうこうということになっていない。長計は、意味が無かったのではないか。原子力界の人だけの議論なのでゴーサインしか出ない。
  ○
資料第7−3号でも、2030年の楽観的な予測による数字が出ている。別のサイドからは、全然違った数字が出る可能性がある。廃棄物の発生量を発電量で割っている。無限回リサイクルすれば分母が大きくなるので、見かけ上廃棄物量が減ったような印象を受ける。
  ○
スーパーフェニックスも海外招へい者が出席した第4回懇談会では、ストップするという話になっていなかった。
  ○
核燃料サイクルの比較は、定性的な結論があって、それを数字で説明づけているだけということではないか。いつも結論を先取りしたような楽観的な予測が情報として流されており、ミスインフォームであると思う。総合評価が多様に出されるようにすべき。動燃の2つの事故があった。国民の意思を考え、長計は全面的に見直すべきである。色々な広い層の意見を求めて議論して方向を決めて、動燃をどうするかの問題はその後考えるべきことではないか。
  ○
FBR懇談会では、FBR計画のメリットデメリットについて、色々な立場の人に分析させて、レポートを書かせて評価し、それを基に議論し、結論を出すべき。そして、もう一度意見を求めるべきである。

<主な質疑等>
  ○
プルトニウム政策は放棄した方が良いということだが、政策として軽水炉路線をどの程度続けるのか。トータルとして、日本の電力供給構造をどうするのか、時間軸の中でどう考えるのか。(河野委員)
  ○
私は脱原発という立場。早くやめられれば早いほど良い。原子力をやるかやらないかという問題とプルトニウムは切り離せると思っている。原子力をやるという前提に立てばリサイクルが必要だという話があるが、それによって問題が生ずれば意味が無い。プルトニウムは原子力の廃棄物の中でほんの一部である。廃棄物のリサイクルを考えた一番オプティマイズされたシステムは、原子力をやらないという議論が当然ある。原子力であれ石油であれ、今のままのエネルギー消費が右肩上がりでは、仮に太陽エネルギーをもってしても地球は持たない。右肩下がりのシステムをどのように開発していくかを本気に考えなければ最終的な回答にならない。(高木代表)
  ○
最後に言われた定性的な議論は魅力的だが、トータルとして脱原発を何年かかってやるのか。需要を本当に抑制できるのか。(河野委員)
  ○
それは技術的な問題ではない。政治の問題である。シミュレーション計算の数字だけでは意味が無い。社会的、政治的にどのような合意が得られるかということである。(高木代表)
  ○
それでは答えを避けている。(河野委員)
  ○
目標を立てて、政策を打ち立てるべきである。右肩上がりを暗黙の前提としている政策では行かないところに来ている。(高木代表)
  ○
どういう政策を立てるのか、時間軸を入れたプログラムを持っているかを聞いている。(河野委員)
  ○
シミュレーションはしているし、出来ると思う。政策は誰かがシミュレーションをやって決めるものではない。(高木代表)
  ○
貴方の技術的信念は尊重する。その考えに我々が乗れるのかを技術的に判断したい。(河野委員)
  ○
これからは、右肩下がりの努力が必要である。その点に合意ができるか。合意できるならば一緒に考えていくべき。原子力をやっていけば、経済成長が伸びていくような話は止めて欲しい。(高木代表)
  ○
それはちょっと違う。(河野委員)
  ○
高木氏には、この資料のどこがどうおかしいと具体的に言って頂きたい。そういう議論をしないと水掛け論になる。そのようなことが終結するように資料を出した。(西澤座長)
  ○
そういう求めなら別途数値を検討して、この資料の具体的な批判を後刻提出する。ここのシナリオは、2030年にある状態を想定している。それは楽観的だと考える。それが変わると数字が違ってくる。FBRの稼働率やエネルギー収支をどう考えているのかが明らかでない。(高木代表)
  ○
我々は、将来どうやったら安定したエネルギーを確保できるのかを念頭においてエネルギー問題を考えている。特にアジアの人口、経済成長が爆発的に増えてくる。本当に省エネが可能なのか。観念論でなく、具体的に示して欲しい。資料で提示して欲しい。(内山委員)
  ○
いろいろやっているから、そのようなものはある。今の社会を前提として、同じようにエネルギーを確保していくというシナリオは無理である。円卓会議でも感じたことだが、原子力の枠内で議論されるときはエネルギー不足から議論が出発している。それに異論を述べると、現実論から巻き返してくる。FBR自体だって同じ程度に先が無い話である。将来のエネルギーを議論する時には、このような方向に行くべきだということを基本的に考え、それをどのように実現するかを議論すべき。(高木代表)
  ○
その問題は、ここでやるわけにはいかない。(西澤座長)
  ○
明日から社会のエネルギーを半分にするという訳にはいかない。石油ショックの時に、エネルギー担当者は必死になってエネルギーをどう確保するかについてがんばった。先程高木さんは結論を先取りだといったが、先生の方もプルトニウムは反対という結論の先取りだ。我々も原子力に対する思い入れがあるかもしれないが、少なくともエネルギーを国家的な立場から供給するためにはこのような枠組みが必要との信念を持っている。信念無しにただプルトニウムが悪いと言っているだけでは議論にならない。オイルショックの時に原子力にエネルギーを回して中東依存度を低くし、多様なエネルギーを持っていたから軽症で済んだ。多様性の議論をしているのであって、省エネをしましょうと言うだけでは無責任である。(秋元委員)
  ○
それに対して答えることは可能である。しかし、この懇談会の場では話を絞って、私は、エネルギー問題から短絡的にFBRが必要と言うのはおかしいと言っているのである。FBRに人的、技術的に投資するリスクの方がはるかに大きいと言っている。冷静に考えてより望ましい知的な投資の仕方を言っており、FBRに金をかけるということは他のエネルギー研究に手が回らなくなるということがある。(高木代表)
  ○
軽水炉とプルトニウムは切り離せないと考える。軽水炉のエネルギーの半分はプルトニウムの燃焼による。プルトニウムに関する技術を放棄してしまえば、使用済み燃料にリスクのあるプルトニウムを永久に置くことになる。我々の子孫にリスクを残すことになる。電力の20数%は原子力である。プルトニウムが貯まっている。プルトニウムを取扱う技術をセットでやっていかなければ、我々は原子力エネルギーに対して責任を持ったことにならない。(秋元委員)
  ○
推進者はすぐにそこへ傾斜する。プルトニウムを取り出せば役に立つと思えばそういうことになる。しかし私は、プルトニウムを取り出すと大きな困難を背負うことになるので取り出さない方がよいと言っている。したがって切り離して考えられる。
原子力で全てを救えるわけではない。せいぜい一次エネルギーの20%までである。原子力を止めることがエネルギー全体を全然使わないような議論では無い。冷静に議論すべきである。(高木代表)
  ○
懇談会は、その点の結論をまだ出していないので誤解の無いように。私は原子力を万能と思っていないし、そういう結論をまとめる気もない。(西澤座長)
  ○
プルトニウムの毒性の強さについて、人間は毒性の強い他の物もコントロールしている。プルトニウムもコントロールしていると思う。民間利用で傷害事件はほとんど起こっていない。ちゃんとした対応をすればプルトニウムの毒性はコントロールできる。どうしてできないと考えるのか。また、高速中性子の困難については、炉物理・炉工学の観点から根本的な困難は無いと思う。ナトリウム冷却に伴う困難については、これが今までFBR開発が遅れた原因の一つだと思う。技術開発のレベルが上昇する速度は、その技術開発の1サイクルの長さがどの位であるかということで決まってくる。原子炉の技術開発サイクルは非常に長い。FBRの50年は長いようであるが、せいぜい2〜3サイクルの技術であり、それほど長くはない。コンピュータのチップはサイクルが短いので進歩が早い。ナトリウム技術は重要であるが、これはコントロールできないと考えるか?その理由は?(松浦委員)
  ○
実際に事故が起こっていることが困難を示している。50年は、サイクルが短いからといって急に楽観的になる。また高速中性子炉の困難で、大型炉心にボイドが生じたら暴走する可能性がある。そこは、軽水炉と異なる基本的な困難である。(高木代表)
  ○
化石燃料を使えば、炭酸ガス、SOx、NOxが出て来る。これらをリサイクルすると3〜4割効率が落ちる。化石燃料を使う限りリサイクルは不可能。太陽光は、膨大なガラスや半導体の廃棄物が出る。FBRでリサイクル型でプルトニウムを利用すると、廃棄物を減らしエネルギーが発生する。技術的に可能性が高い。その他はリサイクルするとエネルギーを失う。この点について議論をしていきたい。(内山委員)
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FBRを議論するのに、エネルギー全体の話にならない方が良いと思ってここでは自粛している。FBRでリサイクルすると廃棄物が増えるだけである。(高木代表)
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様々な人にレポートを出してもらって総合評価するという高木提案は私は賛成。その方向で議論を進めていきたい。(吉岡委員)
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その話は懇談会の出発の時に議論すべき話だった。反対の人として高木氏に来てもらった。これからもそういう人が居れば話を聞きたい。(西澤座長)
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私は消費者、人の母としてこの会に加わっている意味がある。高木さんがFBRに反対であれば対案のビジョンを示していただきたい。それと比較して判断したい。高木さんが吉岡委員の言うような化石燃料枯渇論を原子力政策における判断要素から捨て去るといった話だと我々と議論が噛み合わない。将来において、化石燃料は枯渇するということを前提にして議論して欲しい。それが母親として、次世代に対する義務とも思う。資料に技術論における困難性とあるが、不可能性と違って困難性は克服できると思う。一方、推進派は困難を解決する答えを示すことが必要である。(住田委員)
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高木氏はイケイケと言われたが、懇談会は高木さんを呼ぶ余裕を有している。(小林委員)
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この懇談会のことを批判して、「イケイケ」と言ったのではない。(高木代表)
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国民的合意と言われているが、具体的にどうするのかを聞きたい。(小林委員)
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吉岡委員と共同で書いた第15章に具体的に書いている。後程、吉岡委員から聞いて欲しい。少なくともこれだけの手続きが必要なのではないかといった議論の在り方について詳しく書いている。(高木代表)
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省エネは日本だけではダメである。アジアの省エネをどうしたら良いのか。(鷲見委員)
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FBRをやるかやらないかは、エネルギー全体とは切り離して議論できると再度言いたい。再処理が環境に与える影響を考えてもプルトニウムは止めるべきと考えている。世界的にもそれで来ている。日本だけがエネルギー問題にFBRを絡ませている。化石燃料をやっていれば良いとも言っていない。(高木代表)
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推進派の一つのシナリオとしてFBRが出てくる。高木さんは、省エネで行けるとおっしゃった。もう少し省エネがどうあるべきか、後で良いから教えて欲しい。(鷲見委員)

(5)
西澤座長より、次回は「もんじゅ」、実証炉等の今後のFBR開発の在り方、FBRの投資効果等について議論したい旨の発言があった。

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資料第7−5号から第7−7号は配布資料扱いとする。
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次回(第8回)は8月27日(水)14時、第9回は9月19日(金)14時、第10回を9月30日(火)14時から開催することとしたい。