資料第7-5号


これまでの各委員からの意見の整理






1.高速増殖炉開発の現行計画及び現状について


主な講演(説明)内容
<現行の高速増殖炉開発計画について>
○ 資源少国日本が経済・社会を維持・発展させていくためには、将来を展望しながらエネルギーセキュリティーの確保を図っていく。
○ 核燃料リサイクルの実用化を目指して着実に研究開発を推進。
○ 相当期間に亘る軽水炉との併用期間を経て将来の原発の主流に。
○ 余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持。
<高速増殖炉開発の現状(原型炉まで)>
○ FBRを「国のプロジェクト」として推進することとし、動燃を設立。FBRの特徴に着目し多面的な研究及び「常陽」「もんじゅ」の開発実施。
<高速増殖実証炉の開発>
○ 実証炉については日本原子力発電株式会社が主体となって実施。
○ 実証炉の課題は経済性。トップエントリー方式ループ型炉を考えだし、将来軽水炉とほぼ同等のコストで建設できる見通しを得ている。
○ 安全に関する研究開発成果を取り入れ、より高い安全性を目指す。安全評価、安全設計指針の検討は国レベルで進めている。

主な質疑等
<現行の高速増殖炉開発計画>
○ 必要性ではなく、合理的論理的な総合評価を行うべき。
○ 「もんじゅ」中心であるが、「常陽」に関する資料も提出して欲しい。
<高速増殖炉開発の現状(原型炉まで)>
○ 増殖性の確認のためには、工程でのロスも評価すべき。
○ 海外にも「もんじゅ」事故を連絡、開示しているのか。
<高速増殖実証炉の開発>
○ 実際の出力規模のプラントのコストを示すべき。
Q:チェック・アンド・レビューしてから次の炉を設計すべき。今の状況で実証炉の詳細設計を行うのは問題。
A:実証炉は初期設計段階で、詳細設計は行っていない。「もんじゅ」の設計は終わっており、それは反映。
○ 原子力以外の発電コストが上下する等、将来の状況が変わり得るのでフレキシブルに対応すべき。
○ 最終的には処分コストも必要。設計目標を聞いた程度。
○ 経済性だけでなく、環境の観点等も重要。

2.「もんじゅ」事故の概要及びその後の取組みについて


主な講演(説明)内容
<高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故の概要>
○ 1995年12月8日19時45分、2次主冷却系Cループ中間熱交換器出口配管の温度系よりナトリウム漏えい発生。
○ 温度計細管部段付き部が振動による高サイクル疲労を受け破損したと判明。
○ 大洗工学センターの燃焼実験で、今までにない腐食機構が観察。
○ ナトリウム関連施設/運転手順書/品質保証体系の点検、研究開発成果・技術情報の反映等の観点から安全総点検を実施。
<「もんじゅ」事故第5報報告書の概要及び「常陽」の運転状況について>
○ 熱電対が段付き部で曲がって挿入され減衰効果が小さくなり、当該温度計のみが破損。エアロゾルによる機器への影響は無いと確認。
○ もんじゅ事故における燃焼のメカニズムはナトリウムと鉄の複合酸化型腐食であり、一方大洗工学センターの燃焼実験Ⅱは溶融塩型腐食と結論。
○ 「常陽」は最終検査に合格し、30サイクル運転に入った。

主な質疑等
<高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故の概要>
Q:事故隠し問題に関して3行の記載しかない。
A:意識改革等を行っており、他意はない。
Q:安全総点検は運転再開を前提とした動きか。
A:プラント全体についての点検であり、また、再開には地元の理解が必要。
<「もんじゅ」事故第5報報告書の概要及び「常陽」の運転状況について>
Q:熱電対の曲がりがなぜチェックされなかったか。設置後に曲がりをチェックできるのか。また、異なる2つの腐食機構があったと推定されているが、結論がない。
A:技術的には不可能ではないが難しい技術。反省点は設計ミスで新しい設計に全数交換する。腐食機構の話は、対策として溶融塩型腐食を防止すること。

3.地方自治体の立場から「もんじゅ」に対する要望(栗田幸雄福井県知事)


主な講演(説明)内容
○ 福井県には15基の原発が立地し、我が国の原子力発電量の約3割、関西電力の発電量の約5割を占め、エネルギー政策、原子力政策に先駆的に協力。
○ 「もんじゅ」は、国が安全性確保に責任を持つこと等を前提に同意。
○ 「もんじゅ」事故及び不適切な対応から、地元及び国民全体に原子力政策に対する不安感と不信感を与えたことは極めて遺憾。
○ 東海の事故は、「もんじゅ」事故の教訓が生かされていない。
○ プルサーマル計画をはじめとする核燃料サイクルの推進には、国民、県民に安全性等の不安がある。従って、国が前面に立って、国民全般にわたる合意形成に向けて、より一層の取組みが必要。
○ 「もんじゅ」事故は、設計思想や安全審査の在り方まで溯って総点検し、改めて「もんじゅ」全体の安全性を確認する必要がある。
○ FBRの在り方については、現行長期計画に拘らず、色々な観点から幅広い議論を行い、その在り方を国民に明確に示す必要がある。
○ 検討に際しては、技術的安全性の観点はもとより、①意義と必要性、②プルトニウムを巡る国際環境及び海外状況、③経済性や開発体制のあり方、④軽水炉の高度化やプルサーマル計画との関係、⑤安全審査や評価システムのあり方、⑥実証炉が中止となった新型転換炉「ふげん」の取扱い、等総合的な検討、判断が必要。
○ 懇談会の結論をまとめる際は、その内容を情報公開し幅広い国民の意見を的確に反映させ、国民合意形成に努める必要がある。

主な質疑等
Q:プルサーマル計画に対する原子力委員会決定等は三県知事提言に答えていない。軽水炉発電も国の方針に基づいて進めるべきと考えるのか。
A:今後さらに国の説明を聞き、提言との関係を明確にしてもらう必要がある。軽水炉についても原子力政策の一環であるので、国に合意形成を求めたい。
Q:国民的な合意形成とはどういうものをイメージしているのか、また、当懇談会の結論はそれにどのように関わるのか。
A:国会で十分な論議がされ、懇談会等で国民の意見を集約して原子力政策が打ち立てられ、県議会や地元自治体で議論することと考えるが、国民や県民が納得できる政策を打ち出してほしい。当懇談会で方向付けされた場合には、説明あるいは情報公開を通じて国民に理解を求める努力をしてほしい。


4.原子力~総合科学技術への道~ (藤家原子力委員)


主な講演(説明)内容
○ 原子力は総合科学技術であり、利用から調和への転換が必要。
○ 原子力エネルギー開発に当たって、「エネルギーの汎用性と高効率利用」、「長期に亘る資源の確保」、「放射性物質の消滅・処理」、「安全の確保」の4つの項目の同時達成が究極の目標であり、このための優秀な人材を保持していく必要があり。柔軟性のある対応を当面図っていくべき。

主な質疑等
Q:消滅処理が出来れば、高速増殖炉推進路線として大きなメリット。フィージビリティーの厳格な評価が必要。
A:消滅処理に関し科学的解は有るが、工学的アプローチを目指す時代。どの核種をターゲットにすべきか絞り込みは出来ている。
○ メリットのみを列挙せず、デメリットも含めて総合判断すべき。
○ 「国際貢献」については、各国がどうあろうと我が道を行くべき。本音で必要性を言うべき。もっとプリミティブな議論をすべき。
○ 「国際貢献」は別の観点から危険。兵器用プルトニウムを生産できる。本当に国際公共財として良いのか。米国は核不拡散の観点からFBRをやめた。
○ 科学的、技術的、社会的フィージビリティを考慮すべき。FBRの科学的フィージビリティ既に証明されており、技術的可能性を確立する時代。社会的成立性に向けて何が必要かを議論すべき。国民の選択として、我が国だけでなく、人類への貢献も大事。
○ 研究は国際貢献は当然。これを強調しなければならないことが日本の科学の問題。今回の事故はハイテクに付随するローテクの問題。メンタルな面で問題にすべき。

5.世界の超長期エネルギー展望及び資源問題、地球環境問題と高速増殖炉への期待(藤目和哉(財)日本エネルギー経済研究所常務理事)


主な講演(質疑)内容
○ 可採年数(R/P)は、石油45年分、天然ガス63年分、石炭219年分、ウラン約70年分とか書かれているが、その年数が経てば無くなるというものではない。可採年数は、確認され現状の技術で回収可能な埋蔵量で、在庫のようなもの。
○ 資源量があっても地球環境問題から使えないものもある。技術、経済性、環境から見て採掘しうるものが本当の埋蔵量である。
○ ウランの究極埋蔵量は確認可採埋蔵量(70年)の3~5倍あると考えられ、軽水炉で350年分になる。高速増殖炉を導入すれば、それが60倍になる。
○ 資源制約より環境(CO2)制約が強いこともあり得る。化石燃料の資源が有っても、環境制約がある場合は、CO2を出さないエネルギーが必要で、不足分を省エネ、太陽、原子力で埋めなければならない。
○ 今後の対応策としては、省エネ、太陽光、風力エネルギー等が考えられるが、出来得る限り導入しても足りないため、原子力を導入せざるを得ない。軽水炉ベースではウランの埋蔵量が有限であるため、高速増殖炉を導入しないともたない。
○ 2100年以降は環境制約に加えて資源制約が強くなる。超長期を考えると高速増殖炉で核燃料サイクルを確立しないと地球温暖化問題に対応できない。

主な質疑等
Q:地球上に存在する資源量を評価する客観的な手法とはなにか。
A:埋蔵量は不確実性がある。原始埋蔵量も推定値であり、これに頼るのは危険。確認埋蔵量は比較的信頼性が高い。
Q:可採埋蔵量の推定に、新たに発見される量や今は高くて掘り出せないが今後回収出来る量がカウントされていない。
A:可採埋蔵量は新たに発見される量等は入れない。コストをかければ回収可能な資源が期待できるが、その推定量は不確実。
○ 人口急増による需要増加も考慮に入れるべき。今後、世界の環境破壊が進む。ここに原子力開発を進めていくことの基本がある。
Q:エネルギー不足分とは何を意味するのか。石油が無くなったら、エネルギー需給構造が変り、需要は減少する。
A:現在のトレンドから見る必要がある。原始の生活には戻れない。エネルギーを使わないと人口を維持できない。
○ 環境制約だけでなく、平和制約や安全制約等も考慮すべき。
○ エネルギー不足だからFBRをやるという論法はやめてるべき。
○ 今後のエネルギー供給のあり方について総合的資料で長期見通しを提示すべき。他エネルギーの研究開発費のデータも出すべき。
○ 世論調査等では、原子力発電は人気が低く、太陽光発電の人気は高い。色々なエネルギーについて、共通の土俵で議論をすべき。
○ アジアのエネルギー需要を提示すべき。
○ 化石エネルギーの長期需要見通しは、現在価格で評価されており信用できない。

6.高速増殖炉の建設コスト目標


主な講演(説明)内容
○ 建設コストは、軽水炉並みの建設コストを最終的な目標としている。
○ 技術開発戦略として、エネルギー需給逼迫が緩やかに到来し当面は化石燃料が確保できるとの前提の下、高速増殖炉と軽水炉がかなりの期間共存する。
○ 「もんじゅ」の設計と建設経験を生かした結果、実証炉では経済性が向上し、100万kWの実証炉の建設コストは100万kWの軽水炉の1.5倍という推定。
○ 実用炉は、新しい技術開発、設計の改善等(2重回転プラグ、一体貫流型蒸気発生器、トップエントリー方式配管等)によって軽水炉並みのコスト達成が可能になると考えられている。
○FBRは将来のエネルギー源の重要な選択肢の一つとして着実に技術の開発、蓄積を図っていくことが重要。

主な質疑等
Q:2030年頃までに実用化が可能となるような技術体系を確立するとは何をやることか。66万kWの実証炉はいくらで作れるか。
A:2030年頃までには使えるようにしたいということ。実証炉の建設費の設計に基づく推定では4000億円弱。
Q:国際的競争等が無い状況下で、コストが下がるとは信じがたい。
A:実際のコストは競争等の要素で変る。技術開発としてやるべきことは、安くなる可能性のある技術を探しながら確実に進めること。
Q:格納容器や配管等のコンパクト化により負荷等の問題が生じないか。将来もサイトを求めるのは困難だと思う。
A:コンパクト化過ぎると問題。軽水炉並みにコンパクト化する。サイト問題は、軽水炉でも高速増殖炉でも同様。
○ FBRが確立されれば、燃料サイクルの負担も低減可能。同時に、再処理、廃棄物の処理・処分というリスクも小さくできる。
○ 高速増殖炉の燃焼度が軽水炉より高いから良いという比較は不適切。システムが違うのに単純に長短を比較するのはどうかと思う。
○ オイルショックによりFBR炉が有利になると思っている人がいる。原子力はセキュリティ論である。経済性は難しい要素をはらんでいる。
○ オイルショックが突然起きても、FBRは急には間に合わない。エネルギー需給逼迫を想定して技術開発を進めているわけではない。
○ FBRは運転温度が高く効率向上に繋がる。1.5倍を目標として何をすれば良いかというもので、技術屋としての判断の話。
○ 廃棄物の放射能量と得られたエネルギーの比率で比較すべき。

7.FBR燃料サイクルの経済性について


主な講演(説明)内容
○ FBRの燃料サイクル費を軽水炉と同等以下にすることが目標。
○ 燃焼度を上げることにより、燃料製造や再処理の単価が減る。目標は15万MWd/tで軽水炉の3倍。軽水費のサイクル費と等価にするために、燃料製造単価で3倍、再処理で2.5倍を目標と設定。
○ 燃料製造に関しては、工程設備の高度化、検査基準の合理化、保障措置の高度化、バイパック燃料の開発、革新型燃料の開発等の技術的ブレイクスルーにより目標以下になる可能性がある。
○ 再処理に関しては、現状技術レベルの高度化、自動化技術の採用、スケールアップを考慮すれば目標をクリアできる。

主な質疑等
○ 燃料サイクル費試算は前提条件の値のみで、その根拠がない。数値の推計根拠を出してほしい。
Q:研究開発費は年単位ではどのくらいか。他の原子力開発費用と比較してはどうか。
○ 超長期の経済性では世代間のコスト負担が問題。現在、軽水炉で高レベル廃棄物処分費がコストに含まれていない。
Q:優秀な技術者と実用化問題の見通しが示されていれば、与えられた予算枠の中で、経済性について2~3年で結論が出るのでは。
A:研究開発課題の解決戦略を示している。年代は、研究開発の完了目標。今すぐ完了するということでなく、何をすべきかを述べた。
○ これは研究開発の戦略書。仕事のリストを作ったということ。楽観的すぎる点もあるが、戦略としては、一応組み上がっていると思う。

8.各国における高速増殖炉開発の現状(仏、英、独)


主な講演(説明)内容
<仏国B.バレ氏>
○ 世界のエネルギー消費量はほぼ倍増し、この需要を満たすためには原子力エネルギーが必要。ウランの利用効率が高いFBRが必ず必要。
○ ウラン資源はFBRを利用すると、今後何世紀にもわたってエネルギー供給の持続が可能。原子力エネルギーも当然のことながらリサイクルが必要。
○ 最適化するには、ウランをプルトニウムに転換する高速中性子炉が必要。
○ SPXはナトリウム漏えい等のトラブルや許認可上の問題で長期の停止を経験したが、1996年は順調に運転。高速炉の柔軟性等を実証する等の3つの目的を有する知識獲得計画(PAC計画)を進めている。
○ FBRは将来のウラン不足に対する保険料。技術的な観点から言うと、「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故はマイナーなもので、安全上問題ではない。
<英国D.プーリ氏>
○ 英国は鉱物資源に恵まれておらず、ウランの安定確保が将来問題となると認識していたため、1951年にはFBR開発を開始。
○ 政府は、今後、FBR計画を進めるかは電力業界が決定すべきとしている。
○ 英国政府と電力業界は、今のウラン価格や発電コストの条件下では、FBRが近い将来選択される技術ではないと結論。
○ 英国はFBRサイクルが必要になった場合の技術を蓄積。日本もFBRサイクルのオプションが必要になった時、それを利用できる経験を積む必要がある。
<独国G.ケスラー氏>
○ 原子力委員会により、SNR-300はチェルノブイル炉と類似性はなく十分な安全性を有するとの結論。また、炉心損傷事故に関しても、設計は妥当との結論。
○ 18年の間に建設コストは当初の10倍の70億マルクにも上った。
○ SNR-300のサイトがあるノースラインヴェストファーレン州政府の与党である社会民主党(SPD)による政治的な反対により許可が下りず、経済上の理由から、結果的にSNR-300プロジェクトを断念せざるを得なくなった。
○ 現在、CEA、UKAEA、BNFLと協力して、プルトニウム、アクチニドの燃焼に関するプログラム(CAPRA計画)を行っている。
○ SNR-300の終結、再処理工場閉鎖等は、核不拡散が原因ではない。

主な質疑等
Q:SPXとフェニックスは、IAEAやユーラトム(欧州原子力共同体)の査察を受けているか。SPXは実証炉として失敗ではなかったか。プルトニウム燃焼炉として使う場合、炉心構成の変更が必要か。
A:SPXはユーラトムの査察を受ける。1996年はベストな年であった。多くのトラブルを経験したが技術的な問題は解決。SPXを燃焼炉にするには炉心構成を変える必要がある。
Q:FBRは軽水炉に比べて核拡散のリスクが増加すると考えるか。
A:軽水炉とFBRの燃料構成は同じで、核拡散のリスクは全く同じ。
Q:プルトニウムだけの炉にすると制御上難しいが、技術的な見通しはどうか。ナトリウムは技術的に制御可能なものか。
A:プルトニウム燃焼はドップラー効果に影響が出る。人工的にドップラー効果を与えるため、タングステン等を添加することも考えられる。
○ 「もんじゅ」のナトリウム漏えいは技術的にはマイナー。
Q:いつかは役立つというものに今どれ位のお金を掛ければよいのか。
A:経済成長や気候変動の懸念から原子力が魅力的になる。発電能力向上のためにはFBRよりガスに関心が寄せられている。
Q:アジアは仏国以上に資源小国。保険としての技術開発が必要。仏国は発電の75%が原子力。国民、立地地域の考え方はどうか。
A:資源に関してアジアは深刻。原子力開発が活発なのも当然。フランスでは原子力に関する世論調査を毎年実施。
Q:FBRを軽水炉を補完するとしたサイクル技術開発をどう考えるか。
A:軽水炉では限界がある。MA燃焼や高速炉再処理を実施した経験がある。最終的には、FBR専用の再処理施設が必要。
A:英国の実証再処理プラントでFBR燃料再処理の試験経験がある。
A:軽水炉で燃焼度を5万MWd/tにすると1回位しかリサイクルできない。これ以上についてはFBRが必要となる。
○ 原子力を続ける以上リサイクルは必要。米国式の使用済燃料直接処分は廃棄物にプルトニウム等が加わり環境的解決策でない。
○ 数千億円も掛けた「もんじゅ」を国際的に活用しないのは残念。
○ CO2の問題で化石燃料を使うエネルギー確保は早晩やらなくなる。定量的な議論をして、FBRをどうように進めるかを決めるべき。
○ 今後、各国の経済成長が進み、化石燃料の価格が高騰し、原子力エネルギーの経済性が上がると考えている。
○ アジア地区では、ガス発電に変えてもCO2が増加する。
○ 技術継承のため大型プラントの建設は必要。日本は「もんじゅ」を使うことが大事で、「もんじゅ」からの知見・情報が必要。
○ 少なくとも1基が運転中であれば人材の維持が可能。次の具体的なプロジェクト計画がなければ、数年後には研究が死に絶える。
Q:「もんじゅ」の研究は続けるべきだが、研究目的では規模が大きすぎないか。運転面の経済性等はどうあるべきか。
A:システムの経験を蓄積するには大きくない。運転費用は売電収入でカバーでき、研究結果を得るための新たな投資は必要ない。
Q:将来の開発再開に備えて技術や人材の保存を考えているか。
A:軽水炉の開発等に当たり引退。炉物理や安全性研究等は継続。日本では開発を止め3年も経つと、作り方を忘れてしまう状況になる。
A:重要な情報は書庫に納められており、必要な時に取り出せるような体制を整備。
○ FBR開発を日本で進めることは、日本だけでなく世界全体の仕事。

9.新エネルギー政策


主な講演(説明)内容
<我が国のエネルギー政策の現状と課題>
○ 我が国におけるエネルギー政策の基本的な目標は、「経済成長」、「エネルギー需給の安定の確保」、「環境の保全」の3つのEを同時達成すること。
○ 1994年に「長期エネルギー需給見通し」が策定され、2000年、2010年における需給関係を政策目標として表している。
○ 見通しのポイントは、2010年までのエネルギー需要の伸びを年平均1%程度に抑制、二酸化炭素排出の抑制を図るとともに石油依存度の低減、2000年以降一人当たりのCO2排出量を概ね1990年レベルに安定化の3点。
○ 95年度は「長期エネルギー需給見通し」における2000年の値に達している。
○ 国内的課題としては、特に、民生・運輸部門のエネルギー消費の伸びが著しい。新エネルギーは1%台の横ばいで推移。また、原子力に対する国民の不信感により原子力発電所の立地が不透明化。1人当たりの二酸化炭素排出量は、90年代のレベルを5~6%超過しており、これを引き下げるのは厳しい。
○ 国際的側面では、世界的に石油依存度、中東依存度が上昇。アジア地域のエネルギー需要の増大は地球温暖化問題につながる。アジア地域は、2010年にはエネルギーの一大消費地に変貌する。日本を含めアジア全体が中東に依存して行かざるを得ないという懸念もある。
○ 2030年度に向けたシミュレーション計算の結果、中長期的に3つのEを達成していくためには、ライフスタイルの抜本的改変、膨大なコスト負担、規制的措置の導入といった「痛み」を伴う厳しい選択に直面せざるを得ないことを示唆。
<新エネルギーの導入促進について>
○ 長期エネルギー需給見通しでは、新エネルギーを1992年に1%、2000年で2%、2010年で3%に増加させることが目標。
○ 新エネルギー大綱の供給側新エネルギーは再生可能エネルギーやリサイクル型のエネルギーを挙げている。需要側の新エネルギーは従来型エネルギーを今まで使われていなかった形態で効率良く利用するものを掲げている。
○ 太陽光発電は市場を大きくして自立させる必要がある。風力発電は新たな送電線の整備によるコスト上昇や風況による量的限界がある。廃棄物発電は、発電量がゴミの量に依存するため潜在的導入量に限界がある。
○ シミュレーション中における新エネルギー導入量は、並々ならぬ努力が必要。新エネルギーは潜在供給量を有しているが、技術的、経済的制約等により現在の導入量は1%に留まっている。今は、長期的展望の出発点の段階であり、1%、2%、3%という目標に向かって最大限努力していきたい。

主な質疑等
○ コスト計算で補助金は入っているか。今後、新エネルギーから出る廃棄物量とその対応に掛かる費用かを示す必要がある。
Q:3つのEは、夫々がトレードオフではない。目標(経済と環境)と手段(エネルギー)を同じ項目で並べるのもおかしい。
A:3つのEの同時達成はエネルギー政策という観点から見た基本的な目標。3つEのトレード・オフ関係を調和のある方向に持っていくかがエネルギー政策の課題である。
Q:原発と炭酸ガスの伸び率が世界最高という状況をなんとかすべき。
A:1人当たりのエネルギー消費量とCO2排出量から見ると、日本は、仏、スウェーデン、伊に次いで低く抑制。夫々の国のエネルギー事情なり消費傾向等を踏まえて、対策を議論している。
○ 太陽光発電の耐久期間は20年位。廃棄物発電のコストは、電力会社全体の発電コストが10円で、これより高いとコストが上がる。太陽とか風力ではそれより高く買っているのは確かだが、クリーンエネルギーの質の違い等が原因。
○ 新エネルギーの伸びの見通しについては、その時々の最大限の情報を使ってエネルギー価格の予測をしながら見通しを作るが、残念ながら前提が崩れたということ。現時点の情報と価格予測に基づいて、正確に予測するよう努力している。
○ 新エネルギーに対する補助金に地域格差を付けてはどうか。また、産業構造の問題や国際関係にも配慮する必要がある。
○ 新エネルギーの内、化石燃料を使う従来型エネルギーの新利用が52.2%あり、これでは化石エネルギーからの脱却にはならない。
○ 新エネルギーのポテンシャルは1次エネルギーベースで見て16%で、残り84%は海外に依存。それは、化石燃料と原子力しかない。
○ FBRの技術が確立できれば化石燃料よりもはるかに多くの資源が確保できる。
○ 国民は、新エネルギーと原子力の研究開発費の差をアンバランスと受け止める。我が国では利用が難しくても国際的観点から新エネルギーの研究開発投資を増やすことがあっても良いのではないか。
○ 新エネルギーについては、マスコミを通じて安全でクリーンな良いイメージしか喧伝されていなかった。新エネルギーには一定の限界があることを、はっきりと数字等を示して説明して頂いて理解できた。
○ 広報で必要性、安全性のみが強調され、原発の位置付け、新エネルギーの現状や見通しについて説明する機会が少なかった。
○ 新エネルギーにも力を入れていることを示して、初めて原子力発電との関係でバランスの取れた国策となることを国民が納得できる。
Q:新エネルギーの論議は、原発あるいはFBR必要論に直結する恐れがある。電力のピークも余裕があるのではないか。
A:電力会社はピークを供給するのに苦慮。余剰電力は時間的判断が必要。ピーク時なら高くても買いたいが、余剰電力は夜に来る。
○原子力発電を抑制するか否かの結論は総需要抑制論。そのため、新エネに優先的に予算配分するのも一つの考え方。広報は必要。

10.高速増殖炉(FBR)の安全性(斎藤伸三日本原子力研究所理事)


主な講演(説明)内容
○ 原子炉の安全確保の考え方とは、「適切な立地条件」、「多重防護の設計」、「平常時の放射性物質放出量の低減」等。
○ 高速炉の安全上の特長は、崩壊熱を自然循環で除去可能。また、配管破断が起きても冷却材流出が緩やかで、炉心はナトリウム中に保たれるよう設計対応で可能なため軽水炉の非常用炉心冷却系のような系統は不要。さらに、反応度事故を考慮する必要がない。
○ FBRの設計・安全評価上考慮すべき主なものは、「原子炉の制御性」、「ナトリウム漏えい、燃焼及び蒸気発生器でのナトリウムと水との反応」、「正のボイド反応度」、「耐震性」、「高温構造設計」、「臨界量以上の燃料量」、「プルトニウム毒性」の7項目。
○ 高速炉の安全評価は、「高速増殖炉の安全性の評価の考え方」の他、軽水炉で使っている指針等を準用。設計の妥当性を評価するため、種々の異常過渡評価或いは事故解析、「事故」よりさらに発生頻度は低いが結果が重大であると想定される事象の解析、仮想事故解析を行なっている。
○ FBRは、ナトリウムを冷却材として使用する、プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料を使用する、高速中性子による反応を主体とする、などの軽水炉にない特徴がある。しかし、安全性確保の考え方は、基本的には軽水炉と同じであり、特徴に対応した設計を行うことにより、軽水炉と同等の安全性が確保されている。

主な質疑等
Q:ECCSが不要と断定できるか、反応度事故を否定するような表現は違うのではないか。また、確率論的安全評価を実施しないのか。
A:FBRでは軽水炉の蓄圧注入系、高低圧注入系といった系統の代わりにガードベッセル、2次系補助冷却系等で対応。 FBRは異常過渡・事故の範疇では反応度事故を考える必要がない。確率論的評価については、事故、事象の想定をする際に評価を実施。
○非常用炉心冷却系の要不要は、炉心を冷やす能力がどの位の想定事象に対して担保されるかが大切で、特定の機器があるないということは科学的には意味がない。
Q:ガードベッセル1つで大丈夫か。多層防護をどこまですべきか。また、FBRでは制御棒以外の制御法がなくても大丈夫か。
A:軽水炉とFBRで安全設備の厚さは同じ。
A:事象の想定に際して確率論的安全評価が背景にある。確率論的安全評価で地震の寄与が大きくなるのは確か。地震の寄与しかない程リスクが小さくなったとも言える。
Q:耐震に関して、どのような試験を実施したか。
A:耐震の実証は、機器毎にセミスケールで振動実験を実施。
Q:「事故」と「事象」の言葉の使い分けが整理されていない。
A:安全審査中では総称で「事象」と呼び、。事故も事象に含まれる。「事故より更に発生頻度は低いが結果が重大であると想定される事象」で1つの定義。「事故」と「事象」を切り離しても意味がない。
Q:炉心損傷事故の評価では、どのような実験を行ったのか。
A:炉心損傷事故の話は、「もんじゅ」炉容器の1/15スケールで火薬を詰めて爆発させ、その結果と解析が合うことを評価。
Q:仮想事故の想定で、セシウム等他の元素による被ばく線量評価はどうか。フィルターでのトラップが良く効くという根拠は何か。
A:被ばく評価の対象核種に関しては、指針に基づき評価。エアロゾルは、最大量を想定して目詰まりしないという性能を確認。

11.高速増殖炉(FBR)の技術的見通し- ナトリウム技術 -


主な講演(説明)内容等
○ 大型の試験装置を大洗工学センターに設置して試験を実施。これまで、累積20数万時間、30年間の運転を経験し、78年からは「常陽」が20年間運転を続け15万時間の累積時間の蓄積がある。
○ ナトリウムは、中性子を減速させない、無駄な吸収がないという特徴がある。また、98~880℃まで広い範囲で液体(単層)状態が維持でき、構造材料とも共存性が良い。熱伝導率は水の100倍。
○ 注意しなければいけないのは、活性に対する対処、熱応力、熱衝撃に対する対処、事故の対処が必要。
○ 共存性の問題、熱的・流動的な問題等を考慮し、機器を開発。
○ 動燃事業団の中で5年以上ナトリウム取り扱い経験のある人間は約180名いる。その内、60名を「もんじゅ」、90名を大洗、残りを本社に配置。
○ 「常陽」や大洗の各種施設より非常に多くの経験を蓄積。海外と比べても十分に高いレベルにある。

主な質疑等
Q:「常陽」の場合、実規模のモックアップで確かめた。「もんじゅ」に関しては、突起物をナトリウムの流れの中に置くことに対して、どのようにリスクを想定して試験を行ったのか。
A:「もんじゅ」の温度計のさや管の試験は実施していない。汎用的な技術であると考えていた。詳細にチェックすれば試験を実施しなくても設計できた。2次系の温度計は、全て交換する予定であり、交換する温度計に関しては試験で確認する手順をとる。
○メーカの技術水準に問題があったのではないか。2次系のメーカが安易な設計を行ったのではないか。これまで、メーカの責任は出てきていない。メーカの技術的な力量を問題にすべきと考える。
○技術レベルではなく、技術管理の問題。企業に対して注意の喚起は行われていると思う。技術管理をやらないと、優秀な人がいても見逃すことが起こる。教育の中で実務経験が乏しくなってきている。紙で勉強するので実務不足であり、これからの教育問題にフィードバックしなければならない。