資料第7−3号


燃料サイクルの比較
− エネルギー、廃棄物および経済性の観点から −



○ 以下の3つのサイクルについて、エネルギー発生量、廃棄物の毒性および経済性の観点から比較を行いました。(表1にまとめ)
・ 軽水炉ワンススルー
・ プルサーマル(リサイクル回数:1回)
・ FBR(リサイクル回数:3回)

1.電気エネルギー発生量

○ 軽水炉ワンススルーの場合、天然ウラン1トンから約154kgの軽水炉装荷用の濃縮ウラン燃料(U−235濃縮度3.2%)を作り出すことができます。炉内ではこのうち、U−235約3.7kgとU−238から変換したPu−239約1.5kgの合計約5.2kgが燃焼し、約1.7GWd注)の電気エネルギーを取り出すことができます。(図1)
  注)GWdはエネルギーを表す単位で、1GWd=24×10kWhである。

○ プルサーマルの場合、天然ウラン1トンから、1回目の軽水炉サイクルではワンススルーと同様約1.7GWdの電気エネルギーを、2回目のプルサーマルサイクルからは約0.8GWdの電気エネルギーを取り出すことができます。これは、U−235、炉内でU−238から変換したPu−239、およびMOX燃料中のPu−239の合わせて約8kgが燃焼した結果で、合計約2.5GWdになります。(図2)

○ FBRで3回リサイクルを行った場合、約32GWdの電気エネルギーを取り出すことができます。これはU、Pu計約84kgが燃焼した結果です。(図3)

○ 天然ウラン1トンからの電気エネルギー発生量は、以下の順となります。

       FBR>プルサーマル>軽水炉ワンススルー

○ 参考として、FBRで無限回リサイクルを行った場合の電気エネルギー発生量を図4に示します。 FBRで無限回リサイクルを行った場合には、約190GWdの電気エネルギー発生量となります。


2.廃棄物の毒性

2.1 軽水炉ワンススルー

○ 軽水炉ワンススルーの場合、使用済燃料とテイルウラン注)を含むウラン系廃棄物の2種類の廃棄物が発生します。廃棄物の大部分を占めるのは放射能の低いテイルウラン(約846kg)ですが、放射能の高い使用済燃料が約154kg発生します。(図1)ウラン系廃棄物には、テイルウランの他、転換やUO加工工場でロスとして発生する廃棄物が含まれます。
  注)テイルウランとは濃縮の際に発生する廃品ウランと呼ばれるもので、一般にU−235の濃度が0.25%程度と天然ウランのそれに比べ低くなっている。

○ 使用済燃料中には、ウランの他にストロンチウムやセシウムなどのように放射能が高く半減期が数十年と比較的短い核分裂生成物(FP)、ネプツニウムやプルトニウムなどのように放射能はFPに比べ低いものの半減期が数万年から数百万年単位である超ウラン元素(TRU)の2種類が存在します。

○ 使用済燃料とウラン系廃棄物の単位電気エネルギー当りの合計の毒性注)は、取り出し後数百年までは主にFPが、その後は超ウラン元素が支配的となります。(参考1)
  注)各放射性同位体の放射性濃度を、飲料水に対する最大許容濃度で割った値で、各放射性同位体を最大許容濃度まで希釈するのに何立法メートルの水を必要とするかということを意味する。

2.2 プルサーマル

○ プルサーマルの場合、1回目の軽水炉サイクルから、主にFPとウラン系の廃棄物の2種類の廃棄物が発生します。このうちFPがガラス固化体の中に閉じ込められます。2回目のプルサーマルサイクルからは、主にFP(ガラス固化体中)とU、Pu系廃棄物が発生します。U、Pu系廃棄物は、MOX加工や再処理工場で主にロスとして発生する廃棄物です。ガラス固化体中の放射性物質(ガラス固化体中の代表的な放射性核種の組成を表2に示す)の量は約9kgとなります。(図2−1、図2−2)

○ ガラス固化体とU、Pu系廃棄物とウラン系廃棄物の合計の毒性は、軽水炉ワンススルーの場合と同様、取り出し後数百年までは主にFPが、その後は超ウラン元素が支配的となります。(参考2)

○ プルサーマル燃料を再処理して回収したPuは、Pu組成の劣化(高次化)が問題となり、プルサーマルで多重リサイクルが難しくなるため、FBRでの利用が得策と考えられます。

2.3 FBR

○ FBRで3回リサイクルを行った場合、主にガラス固化体と、MOX加工と再処理の両工程において取り出されるU、Pu系廃棄物の2種類の廃棄物が発生します。ガラス固化体中の放射性核種の量は約98kgとなります。(図3)

○ ガラス固化体とU、Pu系廃棄物の合計の毒性は、軽水炉ワンススルーやプルサーマルの場合と同様、取り出し後数百年までは主にFPが、その後は超ウラン元素が支配的となります。(参考3)

○ FBRでは組成が劣化(高次化)したPuを効率良く燃やすことができます。さらに、炉心燃料とブランケット燃料を混合して利用する場合、この組成劣化も進まなくなります。

2.4 毒性の比較

○ 単位電気エネルギー当りの毒性は、以下の順となります。(図5)

      軽水炉ワンススルー>プルサーマル>FBR

○ 参考として、FBRで無限回リサイクルを行った場合の廃棄物発生量を図4に、廃棄物の毒性の内訳を参考4に示します。


3.将来の経済性

○ 原子炉の建設費については、軽水炉の建設費は今後も下がると想定されていますが、FBRの実用化にあたっては、2次ナトリウム系の削除、中間熱交換器のコンパクト化、免震などの技術開発を行うことにより、軽水炉並みのコスト達成を目標としています。(表1)

○ サイクルコストについては、高燃焼度化、再処理やMOX加工プロセスの高度化、免震工法などを取り入れたFBRサイクルが約0.9円/kWhで最も安くなると期待され注)、続いて軽水炉ワンススルーの約1.0円/kWh、プルサーマルの約1.1円/kWhの順となります。(表1)
  注)第3回FBR懇談会資料(第3−4号)を参照のこと。

○ トータルの発電コストでは、このサイクルコストの差が現れますが、その差は各々僅かに1〜2%程度で、有意な差はありません。(表1)

以 上