参考資料





『いっしょに考えよう「FBR」のこと』(科学技術庁)
『あなたの疑問にお答えしますーFBRに関する国の考え方ー』(科学技術庁)
に関する吉岡委員のコメントへの回答(その2)






科学技術庁





いっしょに考えよう「FBR」のこと
(5ページ)確認可採埋蔵量というのは、本質的に経営的な概念であり(在庫などと同じく)、これを基礎にして、いわゆる「資源制約」について論ずるのはナンセンスだというのが、エネルギー資源に関する議論の常識であると思われる。例えば、松井賢一「新・エネルギーデータの読み方使い方」(電力新報社、1994)には、次のような指摘がある。「石炭、オイルシェール、タールサンド、ウランについては資源の制約を考える必要はないというのが一般的な見方であり、問題となるのは石油と天然ガスで」ある、「R/Pレシオはすぐれて経済的・経営的概念で、(中略)60年分も100年分も保有していたら、経営センスを疑われるだろう」。にもかかわらず、全ての化石燃料(石油、天然ガス、石炭)について「いずれ資源制約が表面化すると考えられます」というのはいかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)石油・天然ガス・石炭・ウランが「いずれ枯渇することは明らかです」というのはどのような客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説になっているのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「化石燃料の需給が逼迫する恐れがある」とあるが、石炭・オイルシェール・タールサンドにそのような可能性があるのか。この主張はどのような客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「資源需給の逼迫、枯渇に備えて」というのは、いかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


【回 答】

○確かにIIASA(国際応用システム分析研究所)/WEC(世界エネルギー会議)等の報告を基にすると、地下に存在すると期待される化石資源の絶対量は膨大であり、例えば、石油については、オイルシェール、タールサンド等の非在来型資源まで含めた資源量は5.9兆バーレル、天然ガスの資源量は6.3兆バーレル(石油換算)、石炭は24.5兆バーレル(石油換算)といわれています。

○しかし、膨大にあるといわれている資源は、すべてが実際に確認されているわけでなく、また採掘できる保証もありません。私たちは、良質な資源から消費しており、採掘が難しく、かつ環境汚染物質が多く含まれる質の悪い資源を子孫に先送りしています。

○今後も消費が続く限り、いつかは有限な天然資源である化石燃料が枯渇することは自明です。

○また、化石資源をエネルギー資源として利用する場合、「資源の絶対量」という視点においての枯渇以外に、経済性や地球環境問題といった「利用の制約」を考えなければなりません。

○例えば、石油に関してみると、現在の技術で経済的に見合ったコストで回収できる良質で安価な石油の究極可採埋蔵量(累積生産量+残存可採埋蔵量)は、過去50年間、2兆バーレル前後で推移してきており、あまり大きな変化はありません。現在の究極可採埋蔵量は、未確認資源も含めて2.2兆バーレルで、現在までに、この内の0.7兆バーレルは採掘・消費済であり、残りの1.5兆バーレルのうち、0.5兆バーレルは未発見のものと言われています。

○また、石油はエネルギー源としての利用の他に、身の回りの化学繊維、プラスチックなどの原料としても貴重であり、他のエネルギーで代替することにより、そのような用途のために石油をできる限り残しておくことも重要です。

○さらに地球環境問題の観点から、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素の排出量が多い石炭等をどれだけ使って良いかも考慮する必要があります。

○なお、オイルシェール、タールサンドについては、経済性、品位などの点で問題があり、現在あまり利用されていません。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(6ページ)「新たなウラン鉱山が発見できなければ、ウラン資源は化石燃料資源と同様21世紀中に枯渇する可能性を有しています」とあるが、新たなウラン鉱山を発見できないという可能性があるのか。誰がどのような客観的・学問的根拠によって、そのような主張をしているのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


【回 答】

○ 1980年以降、ウラン価格が低迷し、世界の探査資金も減少し続けています。また、最近の探査対象は地下100から500mに存在する潜頭鉱床をターゲットとするようになっていますので、これまでのように放射能測定により簡単に発見できた状況と異なってきました。

○このような状況を反映して、最近10年間で発見されたウラン鉱床はカナダのマッカーサーリバー等3件にすぎません。確かに適切な探査努力を行えば、新たな鉱床が発見されるかも知れませんが、今後とも増加すると予想される世界の原子力需要に応えるだけのウラン量を供給できる新たなウラン鉱山が引き続き発見できるという保証は必ずしもありません。また、生産コストが上昇する可能性があります。

○いずれにしても、将来にわたるエネルギーの安定供給を確保していくためには、楽観視は禁物であり、現実を見据えて厳しく評価し、現時点で可能性のある様々なエネルギーの選択肢の幅を着実に広げておく努力が必要です。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(7ページ)プルトニウムが「口から入った場合には、短期間でそのほとんどが体外に排泄されるのであまり影響はありませんが」とあるが、これは学問的な表現ではない。具体的に何に対して相対的に小さいのか(吸い込んだ場合に比べて小さいというのは自明である)。定量的なリスク評価を示すべきである。


(7ページ)プルトニウムの「化学的毒性は相対的に小さい」とあるが、これは学問的な表現ではない。具体的に何に対して相対的に小さいのか(放射線の毒性に比べて小さいというのは自明である)。定量的なリスク評価を示すべきである。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(6ページ)プルトニウムの「化学的毒性は相対的に小さい」とあるが、何に対して相対的に小さいのか意味不明である。絶対的リスクを示すべきである。


(6ページ)プルトニウムを飲み込んだ場合の影響は「相対的に小さい」とあるが、何に対して相対的に小さいのか意味不明である。絶対的リスクを示すべきである。


【回 答】

○プルトニウムの毒性を考えるとき、化学的な毒性と、放射線毒性の2つの毒性を考慮する必要があります。

○指摘されている記載は、それぞれ、「口から飲み込んで消化器に入った場合には、吸い込んで肺などに入った場合に比べてあまり影響はない」、「化学的毒性は放射線毒性に比べて相対的に小さい」という趣旨で書いたものです。

○具体的にはプルトニウムが口から体内に入った場合、消化器から血液中への吸収率(消化管吸収率)は0.001%〜0.1%程度といわれており、プルトニウムの化学的形態で異なります。また、環境中に放出されたプルトニウムに対して通常用いられる消化管吸収率0.05%(国際放射線防護委員会:ICRPによる Publication No.67)は、数多くの動物実験等に基づいて安全側(線量を過大評価する側)に決められた値です。この消化管吸収率が低いことは、プルトニウムを誤って飲み込んだとしても、そのほとんどが体外に排泄されることを示しています。

○また、プルトニウム(239Pu)を飲み込んだ場合と吸い込んだ場合の放射線毒性については、ICRP Publication No.72(1996年勧告)によると、成人が飲み込んだ場合の線量係数(単位摂取量に対する実効線量)は2.5×10-7 Sv/Bq となり、成人が吸い込んだ場合の線量係数5.0×10-5 Sv/Bq に比べ200分の1と大幅に小さいといえます。なお、実効線量(Sv)は放射線被ばくのリスクを示す単位であり、ICRP Publication No.60(1990年勧告)では1 Sv の致死がん誘発のリスク係数を5.0×10-2 Sv-1 としています。

○プルトニウムの化学的毒性については正確な情報はありませんが、プルトニウムとウランの化学的類似性から、ウランと同様に腎臓に対する障害が予想されております。そして、単位重量当たりの毒性はウランよりも強いと考えられています。

○前述のとおり、プルトニウムのリスクを評価する場合には、放射線毒性と化学的毒性の両面からみていく必要がありますが、プルトニウムはウランやトリウムなどの核燃料物質や他の放射性物質と比較して比放射能(単位重量当たりの放射能の強さ)がはるかに大きいため、その化学的毒性よりも放射線毒性の方を優先させています。

○また、学問的な表現ではないとのご指摘ですが、本小冊子は幅広い方々に読んでいただくことを想定して作成しており、難しい学術的な表現をできるだけ使わないよう心がけたことをご理解下さい。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(9ページ)FBRにより「天然ウランの60%程度が利用できることになる」とあるが、これはいかなる根拠による算定なのか。また、無限回の再処理によるウランとプルトニウムの同位体組成の変化を、どう評価するのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「天然ウランの利用効率を軽水炉に比べて数十倍に高めることができます」とあるが、これはいかなる根拠による算定なのか。そのさい無限回の再処理によるウランとプルトニウムの同位体組成の変化を、どう評価するのか。


【回 答】

○燃料集合体を燃やす度合い(燃焼度)の平均をB万MWD/T※1とすると、ウラン全体の約B%(=B/100)が核分裂した事になります(0.96万MWD/T=1%核分裂)。

○その後、再処理・燃料加工(燃料サイクルにおけるロスをL%とする)した後、再度原子炉で燃焼すると、最初のウランのうち(1−B/100)×(1−L/100)×(B/100)が核分裂します。

○この繰り返しで、ウラン利用効率は、
(B/100)×{1+(1-B/100)(1-L/100)
+(1-B/100)2(1-L/100)2+ (1-B/100)3(1-L/100)3+‥‥‥}
≒B/(B+L)となります。

○仮にB=5(万MWD/T)、L=3(%)とすると、FBRのウラン利用効率は約63%となります。つまり、天然ウランの利用効率を軽水炉に比べて数十倍に高めることができます。
(参考)軽水炉での1回限りの利用では、天然ウランの利用効率は約0.5%、プルサーマルでの複数回の利用では天然ウランの利用効率は約1%

○なお、
・FBRでは中性子が高速なので、炉の中で生じる燃えにくいプルトニウム240,242やマイナーアクチニド等も効率良く燃やすことが可能
・熱を出す役目の炉心燃料の周りに配置されプルトニウムを増殖する役目のブランケット燃料を再処理して取り出されたプルトニウムは、プルトニウム239の割合が大きいこと
・炉心燃料とブランケット燃料を混合して用いること
・これらのプルトニウムの同位体組成は、高速中性子の特性によって決まってしまうこと
等のため、FBRではプルトニウムの同位体組成は変化しません。

※1 MWd/t(メガ・ワット・デイ/トン):
燃焼度の単位で、1トンの燃料が1メガワット(1000 kw)の熱を出しながら原子炉の中で1日(デイ)燃えることを示します。

(参考文献)
 「 Fast Breeder Reactors 」 Alan. E . Waltar . P244



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(9ページ)「軽水炉だけではウラン資源が数十年で枯渇するおそれがある」という主張(6ページよりも強い主張)は、いかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


【回 答】

○現在、権威ある調査報告書として国際的に認知されている、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)、国際原子力機関(IAEA)の共同報告(レッドブック,1995)によると、試錐等の直接的な証拠により、ある程度の確度で存在が認められているウラン資源量(確認資源+推定追加資源I)は約450万トンUです。

○450万トンのウラン資源を、現在の軽水炉で消費したときの可採年数を求めてみました。計算を簡単にするため、世界の原子力発電所(1994年現在:3.56億kW)をすべて加圧型軽水炉(ウラン燃料の年間平衡装荷量25.4トン、濃度3.2%)と仮定して可採年数を計算すると73年程度になります。

○現在の消費レベルのままと仮定しても73年間でこの量を消費し尽くしてしまいます。しかし、世界の原子力発電は今後とも増加し、ウラン消費量が増加していくことが予想されるため、73年よりも早くこの資源量が枯渇する可能性があります。

○前述のとおり、適切な探査努力を行えば、新たな鉱床が発見されるかも知れませんが、ウラン価格が高騰する可能性があり、資源に乏しい我が国としては、ウラン資源の利用効率を数十倍に高める可能性を有する高速増殖炉をはじめ、エネルギー供給源の多様化を考えてバランスのとれた対応をとってゆく必要があります。
(「いっしょに考えようFBRのこと」6頁参照)



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(10ページ)物質収支の図で、1年につき1.6トンのプルトニウムから、1.9トンのプルトニウムが回収されるとなっているが、工程上のロスを考えれば、これは過大な見積もりではないのか。工程上のロスをどのように評価しているのか。それはいかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれは原子力学界の定説なのか。


【回 答】

○図は、プルトニウム増殖の原理を示したもので、燃料製造や再処理工程上のロスは考慮に入れていません。しかし、プルトニウムの工程上のロスは、再処理において2%程度、燃料製造において1%程度より少ないと評価されており(1)、増殖性にほとんど影響しません。

参考文献
(1) The Economics of the Nuclear Fuel Cycle (OECD/NEA '94)



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(11ページ)ウランの最終可採埋蔵量の推定値1500万トンの根拠はなにか。客観的・学問的裏付けがあるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


【回 答】

○経済開発協力機構/原子力機関(OECD/NEA)、国際原子力機関(IAEA)の共同報告(レッドブック,1995)によると、試錐等の直接的な証拠により、ある程度の確度で存在が認められているウラン資源量の他に、地質学的な推定から存在が期待されるが未発見の資源(各国からの報告による)までを含めると約1500万トンUとなるとされています。
(「いっしょに考えようFBRのこと」6頁参照)



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(11ページ)国際原子力学会協議会の原子力発電規模予測(2100年に、1次エネルギーの28%)はいかなる客観的・学問的裏付けがあるのか。それは現在の原子力学界の定説なのか。非常に高い予測ではないのか。


【回 答】

○国際原子力学会協議会における原子力発電規模の予測は、世界エネルギー会議が1993年に発表したエネルギー需要予測(1)より引用しています。世界エネルギー会議では、エネルギー需要の伸びとして3種類のケース(A〜C)を想定していますが、国際原子力学会協議会における評価では、最も現実的なケースとして位置づけられているケースBを採用しています。参考にケースA〜Cの2100年時点の一次エネルギー需要と原子力発電の占める割合を次表に示します。



参考文献
(1) Energy for Tomorrow's World (World Energy Council '93)



「いっしょに考えよう「FBR」のこと」
(12ページ)マイナー・アクチニドのMOX燃料へのブレンドは、果たして現実的なアイディアなのか。それとも将来の実用化に関する希望的観測なのか。また、軽水炉でマイナー・アクチニド燃焼を行うこととの優劣につき、定量的比較を行うべきである。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)マイナー・アクチニドのMOX燃料へのブレンドは、果たして現実的なアイディアなのか。それとも将来の実用化に関する希望的観測なのか。また、軽水炉でマイナー・アクチニド燃焼を行うこととの優劣につき、定量的比較を行うべきである。


【回 答】

○MOX燃料にマイナーアクチニド(MA)を添加して燃焼させることは、既にフランスの高速炉フェニックス炉でネプツニウム(Np)やアメリシウム(Am)を入れたMOX燃料を照射した実績があり、燃料としての挙動や燃焼の効率が燃料単体レベルで確認されています。また、ネプツニウム(Np)を入れた燃料集合体をフランスの高速炉スーパーフェニックス炉で照射することが、今年度に予定されています(文献(1))。従って、MA燃料は現時点で炉心規模での燃焼という意味では実用化されているわけではありませんが、実績に基づいた現実性のある技術であると判断しています。

○また、軽水炉と高速炉でのMA燃焼に関する比較としては、例えば文献(2)に定量的な比較が示されています。これは、欧州で検討されている高速炉(EFR、出力150万kWe)と代表的な軽水炉(出力130万kWe)を対象に、ネプツニウムやアメリシウムを燃焼させた場合の特性を計算により比較したものです。この文献によれば、高速炉はMAの消滅率が大きいという点とMAの高次化(燃えにくいMAに変化すること)が起きにくいという2つの点で、MA燃焼に関して軽水炉より優位にあることが明らかであります。

参考文献
(1) C.Prunier,他、"The CEA SPIN Programme: Minor Actinide Fuel and Target Aspects", International Conference on Evaluation of Emerging Nuclear Fuel Cycle Systems, pp506〜515, Sep.11-14,1995 ,Global '95

(2) H.Kusters, 他, "The Nuclear Fuel Cycle for Transmutation: A Critical Review", International Conference on Evaluation of Emerging Nuclear Fuel Cycle Systems, pp1076〜1081, Sep.11-14,1995 ,Global '95



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(14ページ)FBR開発への公金支出及び民間負担金に関する、各年度ごとの詳細なデータを示して欲しい。なお、民間負担金に関しては、もんじゅ運転に関する民間負担金のデータも示して欲しい。また、なぜ運転費が1989年から計上されているのか理由と、その支出の詳細を示して欲しい。


【回 答】

○動燃は、昭和42年に設立されて以降、我が国におけるエネルギーの安定確保のため、国の方針に基づき高速増殖炉の実用化に向け研究開発を実施してきており、その年度別経費を別紙に示します。

○民間負担金については、「もんじゅ」の建設費のみに拠出され、運転費に対する拠出はありません。

○「もんじゅ」の運転費として平成元年から計上されているのは、平成元年度から試験計画策定、運転・保守の予備評価を行うとともに、運転員訓練用装置の製作等を行うための経費です。

○平成3年度の本格的な試験開始に伴い、運転費としては、プラント設備の安全を維持・確保する上で不可欠な設備の点検・検査・保守等に係る経費、電力や窒素ガス等の購入費、燃料製造経費、試運転等の実施に係る経費、環境放射線測定などの環境対策に係る経費などを計上しています。

○なお、ナトリウム漏えい事故発生後は、万全の安全確保の観点からプラント設備の維持管理のために必要な最小限の経費として設備の点検・検査・保守に係る経費等を計上しているほか、事故対応に係る経費を計上しています。





いっしょに考えよう「FBR」のこと
(19ページ)1956年長期計画で、FBRを本格的に開発することが決定されたというが、間違いである。最終目標として増殖炉の国産化をめざすことを決定したに過ぎない。


【回 答】

○1956年長期計画の「5 計画の内容」の中の「(2)原子炉の建設計画」の「(イ)基本的な考え方」において、「最終的に国産を目標とする動力炉は、原子燃料資源の有効利用ひいてはエネルギーコストの低下への期待という見地から、増殖動力炉とする。」とされました。

○また、「(2)原子炉の建設計画」の「(ロ)計画の内容」では、この方針に沿って、まず増殖実験炉1基を建設すること、ついで天然ウラン重水型原子炉等の運転成果を利用し増殖実験炉の建設を基礎として、増殖動力炉の設計に着手すること等が決定され、日本原子力研究所において増殖実験炉等の設計研究を実施することが定められました。こうした計画の内容を、FBRを本格的に開発すると表現したものです。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(20ページ)なぜ実証炉を2基も作るのか。これは実証炉の本来の概念(実用炉の試作炉)の乱用である。


【回 答】

○FBRの開発は、国を中心とした原型炉「もんじゅ」までの開発成果に基づいて電気事業者がこれに続く実証炉を建設し、発電プラント技術の習熟、性能の向上、経済性の確立を図っていく段階に入りつつあります。

○現在の長計では、「実用化までに2基の実証炉を建設し、革新的技術、大出力化に必要な技術などを実証することにより軽水炉並みの建設費を達成していくこととします。また、革新的技術の開発状況はもとより、円滑な技術の継承等も勘案しつつ、適切な間隔で実証炉1号炉、これに続く実証炉2号炉の建設を進め、燃料サイクル技術の開発と整合をとりつつ2030年頃までには実用化が可能となるようFBRの技術体系の確立を目指していきます。」とされています。

○これは、革新技術等必要な研究開発を計画的かつ着実に積み重ね、技術の継承の重要性、メーカの技術力の維持・向上等を勘案して、適切な間隔で実証炉を2基建設するという開発ステップを踏むことにより、革新技術を段階的に取り入れて実証し、実用に供しうる技術の蓄積を図り、実用化の技術基盤が確立するものと考えたからです。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(20ページ)2030年頃までに、何をするのが目標なのか不明である。実用化なのか、それとも技術体系の確立なのか。どちらであるかを明確にすべきである。また、技術体系の確立とは何か。なにをもって技術体系の確立とみなせるのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)「2030年頃を実用化の目標時期として、それまでに技術体系を確立しておくことを目指して」というのは、何を意味するのか。2030年頃に、技術体系の確立と実用化という2つの課題を、同時に達成すると言うことか。(論理的にはありえないことだが)。


【回 答】

○現在緩和基調にあるウラン需給も来世紀半ば頃には逼迫するとの見込みもあり、その相当前からFBRを原子力発電体系の中に導入する必要があることなどから、2030年頃までには実用化が可能となるようFBRの技術体系の確立を目指していくことにより、その後のFBRの本格的な導入に備えることができるものと考えています。

○なお、電気事業者が進める実証炉の開発と国を中心とした固有の技術の研究開発を両輪として、安全性、信頼性、経済性の更なる向上を図っていくとともに、FBR使用済燃料再処理、MOX燃料加工等の燃料リサイクル技術と整合性のとれた開発を進め、炉と燃料サイクルのトータルシステムとしての総合的な核燃料リサイクル技術体系の確立を目指していきます。

○このようなトータルシステムとしての技術体系が2030年頃までに確立されていれば、2030年頃以降はいつでもFBRの本格的な導入、すなわち実用炉の建設が可能となることを意味しています。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(20ページ)「FBR開発に当たっては、その成果が国際公共財的な役割を発揮できるよう国際的に協調して進めることが透明性の向上のためにも重要であり、欧米諸国の研究者の参画を求めつつ、開かれた体制の下、「常陽」「もんじゅ」等の積極的活用を図っていきます」とあるが、国際公共財としての価値と、核不拡散の必要性との兼ね合いをどうするか。また国際公共財ならば将来は欧米のみならず、全世界に実地研修を含む情報提供をしていく予定なのか。


【回 答】

○「常陽」「もんじゅ」を国際公共財として積極的活用を図っていくことは、
・少資源国かつエネルギー多消費国である我が国が率先して、地球環境との調和を図りつつ、将来の人類のエネルギー供給源の選択肢を広げるために、貢献していくこと
・欧米諸国に蓄積された経験や知見を効果的に活用すべく、積極的な国際協力を推進していくこと 等の観点から、重要なことと考えます。

○また、一方で、プルトニウム等を利用することによる核拡散の懸念もあることは事実であり、原子力平和利用と核不拡散を両立させるための枢要な国際的枠組みである「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」体制の維持、強化が不可欠です。

○そのため、我が国が核不拡散の観点から十分な対応をとるとともに、人材交流を通じて経験等を移転し、相手国における保障措置、核物質防護体制の整備、強化に対しても協力していき、相互に核不拡散に関する意識の向上を図る努力をしていくことが重要です。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(25ページ)もんじゅは、「プルトニウム利用技術体系の確認」「プラント性能実証」「運転・保守技術の確立」「安全性・信頼性の実証」を行うとされているが、何をもってそれぞれの項目を成功と見なすのか。具体的な評価基準を示すべきである。また今回の事故により、どの項目が失敗したことが確認されたのかを、明確にすべきである。


【回 答】

原型炉「もんじゅ」において目指しているのは、次の通りです。
○「プルトニウム利用技術体系の確認」は、核物質防護管理、保障措置技術を含めたプルトニウム燃料の高速増殖炉への利用技術、燃料製造、再処理及び輸送等の一連のサイクルを形成することが目標です。

○「プラント性能実証」は、試運転・運転を通して得られる燃料・炉心特性、遮へい性能、プラント構成機器をはじめシステムの機能及び運転特性等に関して、設計通りの性能が得られているかどうかを評価します。また、性能データと設計を照らし合わせて、それらの設計手法ならびに製造技術の普遍化、評価手法の高度化をはかり、将来炉に反映できるエンジニアリング資料にまとめることも、原型炉の重要な役割です。

○「運転・保守技術の確立」は、「もんじゅ」の運転・保守経験を通じて、わが国におけるFBRの運転・保守法の雛型を完成させ、技術移転を円滑に進めるための技術者の育成、エンジニアリング資料化を図ることです。運転・保守法の雛型としては、周辺環境および従事者への被ばく、プラント稼働率、運転・保守費が軽水炉並みとなる見通しを得ることを目標としています。

○「安全性・信頼性の実証」は、平常運転時の放出放射性物質が低減されること、異常発生時には多重防護設計によって放射性物質の異常放出による周辺公衆への影響を防止されることを評価します。さらに信頼性の観点より、計画外停止頻度やトラブルの発生頻度を軽水炉並みに低くできることを目標としています。

○なお、今回の「もんじゅ」事故では、放射性物質の異常放出という観点からの原子炉施設の安全性が損なわれたものではありませんでしたが、施設設備は高い信頼性を確保すべきものとしていたにもかかわらず、現実にナトリウム漏えいが発生したこと、漏えい初期の段階でナトリウム火災の拡大に至らないように適切に対処できなかったことなどから、ナトリウム漏えいに備えて運転上及び設備上十分な対策がとれていなかったことが、貴重な反省・教訓であったと考えています。このようなトラブル経験も反映して、「もんじゅ」の原型炉としての役割を果たすことを目指します。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)「新たな燃料物質が生成されるので、長期間使用できる燃料が可能」なので、「軽水炉に優る経済性を達成できる可能性がある」とは、一体何のことか。2〜3年間くらい連続運転が可能となるという意味か。またその程度のことで、「軽水炉に優る経済性を達成できる可能性がある」と言えるのはなぜか(何%程度のコストダウン効果があるのか)。


【回 答】

○軽水炉では、燃焼によって燃料中の核燃料物質が減少していくため、発生できる熱量は、燃料1トン当たり約5千万kW・日となります。

○一方、高速増殖炉では、核燃料物質を消費しながら新たな核燃料物質が生成されていくため、同じ量の燃料を長期間使用でき、結果として、燃料1トン当たり約1億5千万kW・日の熱量を発生できる見込みです。

○従って、燃料だけを比較すると同じ量の燃料から、高速増殖炉では軽水炉の約3倍のエネルギーを取り出せることになり、核燃料サイクル負担の軽減から経済性に貢献できる可能性があります。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)高速増殖炉では、原子炉の寿命が短くなること(一説では軽水炉の半分程度の寿命しかない)も、「軽水炉に比べ高くなる要因」に含めるべきである。


【回 答】

○高速増殖炉では、高速中性子による材料の損傷劣化により、炉の寿命が短くなるのではないかと懸念があるようですが、これについては、構造材料の十分な照射試験によってその健全性を確認しており、また中性子遮へい体を炉心廻りに配置することによって、原子炉容器などを保護し、炉の寿命は40年以上となるよう設計しています。

○なお、少なくとも、高速増殖実験炉「常陽」は20年近く安定して運転され、海外においても米国などで30年近く運転された実績などがあります。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)「FBR実用化に向けた経済性向上の見通し」の図は、(植草委員の表現にならっていえば)幼稚園的レベルである。「100万キロワット換算」「130万キロワット換算」などという姑息な細工を止めるべきである。その上で、厳密な定量的評価を示すべきである。


【回 答】

○一般の工業製品は、大量生産によってコストが下がりますが、発電所の場合は大出力化や標準化(同じものを複数基建設)などによって発電コストが下がります。このため、軽水炉は100〜130万キロワットの出力規模となっています。

○高速増殖炉も実用化されれば大出力化されることになるので、100〜130万キロワットのプラントでいくらになるか、という評価をしています。

○現時点では、実際にプラントをつくっていない段階であり、厳密な定量的評価はできませんが、現状のプラント設計研究の目標と、その実現性の判断のため、経済性の見通しを立てています。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)「二次ナトリウム系削除」というのは、安全性の面から妥当ではないと思われる。そのリスク評価を示した上で、削除の妥当性を論証しなければならない。


【回 答】

○二次ナトリウム系削除については、十分なリスク評価と、安全性の確証を経てはじめて実現できるものと考えています。あくまでも安全確保を大前提として、経済性向上に向けた種々の可能性と技術的な課題の克服を目指した研究開発に長期的に取組んでいます。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)建設コストについては、高速増殖炉と軽水炉の寿命の違いを、明確に計算式に取り入れるべきである。また建設コストだけでなく、燃料コストについても、現在の実績に関する生データ(再処理コストを中心とする)と、客観的根拠にもとづいた将来の見通しを示すべきである。(英仏への再処理委託価格と、六ヶ所村再処理工場の再処理コストに関する客観的な見積もりが、公開されていないのはよくない)。


【回 答】

○現行の発電コスト試算法では、建設費を法定耐用年数(通常15年か16年)で償却するとして発電コストを算出しています。

○また、炉の開発は原型炉、FBR使用済燃料の再処理技術そのものは開発途上にある段階であるが、FBRは、核燃料リサイクルを行うことによってその真価が発揮されるものであり、炉と燃料サイクルをトータルシステムとして開発を進め、一層の経済性を図って行くことが重要です。なお、第3回懇談会においてFBRの経済性の現状と見通しについての資料を提出しました。



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(33ページ)欧州では「欧州統合高速炉EFRの開発を進めています」とあるが、具体的にどのような開発段階なのか。概念設計中なのか。それとも設計以前の構想だけなのか。


【回 答】

○1988年からの概念設計に続き、その概念設計に対する安全性と経済性の検証を1993年に終了しました。当初は、この後、速やかに建設準備段階へ移行する計画でした。

○しかしながら、
・ウラン市場の高騰が起こっていないため、増殖炉建設の緊急性が低くなったこと
・余剰プルトニウムの適切な消費などへの関心が高まっていること
 などから、建設準備段階への移行が延期され、建設の必要性が生じた時に円滑に対応できるよう備えることとし、現在、
・プルトニウムの増殖・燃焼の2つのモードを持った設計
・マイナーアクチニド燃焼を含む革新的技術を採用した設計
・規格・基準、計算コードの研究開発
 などが実施されています。

参考文献
(1) 第29回IAEA/IWGFR年会資料、"Fast Reactor Development Programme in France during 1995"



いっしょに考えよう「FBR」のこと
(35ページ)なぜプルトニウムのリサイクルを核燃料リサイクルと呼び、ウランリサイクルを外すのか。ウランの無限リサイクルによってはじめて、資源利用効率が大幅に高まることを考えれば、これはおかしい。


【回 答】

○このパンフレットはFBRを中心に説明しており、FBRの大きな特徴はプルトニウムを利用することなので、プルトニウムの流れに着目して説明文を作成しました。

○なお、FBRの核燃料リサイクルでは、プルトニウムとウラン(天然ウラン、劣化ウラン(ウラン濃縮の工程で副産物として生じる、燃えるウランの割合が天然ウランより低くなったウラン)、使用済燃料から再処理によって回収されたウラン)をリサイクルすることを前提としているので、プルトニウムのリサイクルと言えばウランも同時にリサイクルされる事を意味しており、燃料リサイクルの説明図にもそのように表現しています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「資源問題を抜本的に解決することが出来る」における「資源問題」とは、「エネルギー資源問題」を指すのか、それとも「ウラン資源問題」を指すのか。前者の場合、その根拠はなにか。


【回 答】

○FBRの開発により、可採年数73年と言われる天然ウランの利用効率を数十倍に高めることができることから、直接的には「ウラン資源問題」を解決することが期待されます。また、これは、可採年数が最も長い石炭の231年をはるかに上回る資源量に相当することから、「エネルギー資源問題」への解決策の一つとなることが期待されます。

○いずれにしても、資源に乏しい我が国としては、FBRをはじめ、エネルギー供給源の多様化を考えてバランスのとれた対応をとっていく必要があります。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)ここでいう「可採年数」は経営学的概念である。それを資源の絶対量と取り違えるのは、幼稚園的知性のなせる技である。


【回 答】

○確かに、「可採年数」というのは、現在既にかなりの確度で存在が確認され、現在の技術で経済的に見合ったコストで回収できる資源量を、現在の消費量で割って計算した値であり、「資源の絶対量」を述べたものではありません。

○たとえば石油に関しては、現在までに既にかなりの確度で確認され、残っている確認埋蔵量は約1兆バレルであり、この値から可採年数45年が算出されています。また、この他に、未発見だが、同様なコストで回収できることが期待される未発見埋蔵量は、約0.5兆バレルあると言われていますが、未発見であるため不確定要素がつきまといます。

○したがって、現時点で相当な確実性をもって安心して期待できる資源量の目安として、可採年数を参考に示しているものです。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(3ページ)「倍増時間に大きな意味をもつとは考えられません」とあるが、それを立証する責任は、科学技術庁にある。つまり、どのようなFBR導入シナリオを採用するかを定量的に示すことによって初めて、倍増時間の制約が現実的意味を持つか否かを評価することが出来る。ここでは定量的シナリオを示して、自説の正当性を論証すべきであると思われる。


【回 答】

○ここで説明したかったのは、「倍増時間」というのは、外部からのプルトニウムの供給がなく、プルトニウムの在庫もない状態で、FBRを新設しようとする場合の、その新設ペースにしか関係しないということです。

○つまり、FBRを新設しないのであれば、再処理、燃料加工などでのプルトニウムの損失分程度を増殖することによって、自らの炉の運転に必要なプルトニウムは確保でき、ウラン238さえ定常的に供給できれば、FBRをずっと運転することができます。

○また、現在の計画では、相当期間、FBRと軽水炉を併用する予定なので、FBRの新設に必要な新たなプルトニウムは、軽水炉から生じるプルトニウムで十分に賄うことができます。また、軽水炉の数が減るまでに十分な基数のFBRを建設しておけば、その後、軽水炉からのプルトニウムが供給されなくなっても、複数基のFBRから増殖されるプルトニウムで、新設するFBR用の燃料が得られることになるので、そのような状況になれば、新設ペースにも倍増時間はあまり影響しなくなります。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(5ページ)FBRで生産されるのは単なるプルトニウムではなく、核兵器級プルトニウムであることを明記しておく必要がある。(ここで総括的に述べておくと、2つのパンフレットには、高速増殖炉が核拡散の観点から見て、軽水炉よりも格段に危険が大きいことの指摘が、全く存在しない。これはそれ自体として、日本の核武装への意思に関する疑惑を招くものであり、日本国民および諸外国国民の説得には逆効果である)。


【回 答】

○確かにFBRのブランケット燃料には、高純度のプルトニウムが生成されますが、再処理において回収されるこのプルトニウムに、炉心燃料を再処理して回収される一般的なプルトニウムを混合するなどの処理が施されることにより、一般的な原子炉級プルトニウムの組成と大差ないものとなります。

○また、日本においては、再処理されたプルトニウム溶液を酸化物に転換する際にウランと混合し、混合酸化物(MOX)粉末に転換するため、プルトニウムが単体で回収されることはありません。なお、日本がプルトニウム等を利用することによる核拡散の懸念があることは事実であり、この「混合転換法」は、東海再処理工場の運転開始時の核不拡散対策に係わる日米交渉において、日本が苦心を重ねて創出した方法であり、核不拡散上重要な技術であることが米国からも評価されています。

○さらに、原子力平和利用と核不拡散を両立させるための枢要な国際的枠組みである「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」上の義務を尊重し、これらのプルトニウムを国及びIAEAの保障措置の下に置き、厳格な計量管理を実施することによって、核兵器に転用されないことが常に確認されることとなります。

○また、核物質防護のための防護措置も取られ、盗取されたりすることを未然に防ぎます。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(5ページ)一国的観点と同時に、地球的観点からも、核拡散の可能性について評価しておく必要がある。


【回 答】

○プルトニウム等を利用することによる核拡散の懸念もあることは事実であり、原子力平和利用と核不拡散を両立させるための枢要な国際的枠組みである「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」体制の維持、強化が不可欠です。

○さらに、イラク、北朝鮮問題を契機に、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の強化・合理化策の検討がなされ、一部については既に実施されています。

○また、プルトニウムの平和利用計画や米国・ロシアの核兵器解体に起因する余剰Puの発生の懸念に対し、国際的なプルトニウム管理方策の検討が行われているなど、核不拡散体制の維持・強化やプルトニウム利用の透明性向上に向け、国際的な努力が払われており、我が国としてもこうした動きに積極的に支援・協力しているところです。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(7ページ)ここにあるプルトニウムの種類と性質の表は、欠陥品である。このパンフレットはFBRに関するものだから、軽水炉ではなくFBR(炉心、ブランケット)からの回収プルトニウムの同位体組成を示すべきである。


【回 答】

○小冊子当該部での説明は、一般的なプルトニウムの取扱いに関して述べたものであり、炉型によるプルトニウムの相違を示したものではありません。また、FBRの炉心燃料とブランケット燃料を再処理して得られるプルトニウムについては、両者を混合する等の処理が施されることにより、得られるプルトニウムの同位体組成は「プルトニウムの種類と性質」の表と大差なく、プルトニウム自体の取扱いに関して特段の違いは生じません。

○なお、ご指摘は、核不拡散への影響を懸念したものと思われますが、FBRで生産されるものを含めプルトニウムについては、核物質が平和目的以外に使用されたり、盗取されることがないように厳重な計量管理を実施するとともに、国およびIAEAの保障措置の下に置かれるばかりでなく、核物質防護のための防護措置が取られています。

○また、日本においては、再処理されたプルトニウム溶液を酸化物に転換する際にウランと混合し、混合酸化物(MOX)粉末に転換するため、プルトニウムが単体で回収されることはありません。この「混合転換法」は、東海再処理工場の運転開始時の核不拡散対策に係わる日米交渉において、日本が苦心を重ねて創出した方法であり、核不拡散上重要な技術であることが米国からも評価されています。

あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)「プルトニウムをよく燃焼(消費)させる」という表現は誤解を招く。「僅かに減らす」が正解。


【回 答】

○プルトニウムの燃焼率(消費率)については、炉心の組み方と強い関連があり、ウラン238をプルトニウムに変換させるためのブランケットの削除、炉心高さの低減、中性子の吸収材の添加などの工夫を行うことによって、燃焼率(消費率)を大きくすることができます(文献(1))。

○ここでの表現は「炉心の組み方を工夫すればプルトニウムをよく燃焼(消費)させる」とあるように、炉心構成の工夫やプルトニウムの装荷割合を替えることによって、プルトニウムを消費しやすくした場合を念頭において記述したものです。

参考文献
(1) 竹田 敏一、若林 利男、「我が国におけるプルトニウム利用−各炉型における利用特性−」、日本原子力学会誌、pp561〜583、Vol.37,No.7(1995)



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(9ページ)短所の項目に、核拡散のリスクの高さに関する記述がない。これは致命的欠陥である。


【回 答】

○プルトニウム等の利用に伴って核拡散の懸念が生じることは事実です。そのリスクは原子炉の種類だけで決まるものではなく、保障措置体制などを含めて総合的に議論すべきものと考えます。我が国では、原子力基本法に基づき、原子力の利用は平和目的のみに徹していくことを基本方針としています。また、余剰のプルトニウムを持たないとの原則のもとに厳重な計量管理を実施するとともに、国および国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受けて核物質を厳格に管理しています(「あなたの疑問にお答えします」 p5 Q5参照)。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(13ページ)高速炉の実用化目標時期としては、1956年の長計に、1970年頃の実用化が、目標として掲げられたことが最初である。(61年長計ではない)。


【回 答】

○1956年の長計では、増殖動力炉の実用化目標時期に関する記述はありません。

○1961年の長計には、「計画期間を1961年に始まり1980年に終わる20年間を対象とする。対象計画期間のうち前期約10年間を開発段階、後期約10年間を発展段階とする。」とし、さらに原子炉の研究開発プログラムとして「後期10年間には、プルトニウムを使用する高速増殖炉の実用化が期待されるので、1960年代末までに、実験炉を建設することを目標として研究開発を進める。」と記されています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(13ページ)「実用化目標時期が徐々に先送りされた理由」として挙げられている各長計の引用文には、それぞれ特定の年数だけ先送りさせる理由についての明確な説明が含まれていない。これは的外れである。


【回 答】

○長期計画は、原子力開発利用に関して、長期的観点に基づき、基本的かつ総合的な指針と基本的施策の推進方策を明らかにするためのものであり、また、各分野の具体的な施策については、進展及び諸情勢の変化に適切に対応していくこととするなど、弾力的な対応を図ってきています。

○そのため、長期計画では、改訂時期における情勢に合わせて計画が変更されてきており、FBRの実用化目標についても定量的な説明は困難ですが、エネルギー需給動向の変化、技術的な課題の見通し、我が国独自の研究開発の必要性、研究開発の進捗状況等から、総合的に判断し、見直してきているものです。

あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(15ページ)「もんじゅ」の建設費は、同規模の軽水炉の約3倍とあるが、何かの間違いではないのか。電気出力28万キロワットの軽水炉の建設費が、2000億円もかかるのか。どこの国でいつ作られたどの原子炉のデータなのか。


【回 答】

○説明が不十分でしたが、この文章は、『「もんじゅ」の建設費を、100万kWe級のプラント建設費に換算して比較した場合、同規模の軽水炉の約3倍 』という趣旨です。

○「もんじゅ」を100万kWe級のプラントに仮定した場合の建設費は大まかに8千億円となり、同規模の軽水炉の建設費約3千億円の約3倍となります。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(18ページ)「全ての運転範囲で反応度出力係数が負」とあるが、反応度ボイド係数は炉心の内側で正である。また周辺部(単独では負)を含めた炉心全体についても不明である(これに関する情報公開が必要である)。従って単発又は連続的な気泡通過事故のリスクがある。


【回 答】

○気泡が炉心部を通過することに起因する事故(気泡通過事故)については、構造上考えうる最大量の気泡(20リットル)が一斉に炉心を通過する場合を最も厳しい事故想定として事故解析を実施しています。

○設置許可申請書の添付書類十に、その説明が記述されていますが、
・気泡が炉心部を通過するのに要する時間は十分に短く、
・かつ、この現象による原子炉出力の上昇は、炉の出力の上昇を押さえようとする効果(ドップラー効果)が作用することによって抑制され、
・さらに安全保護系の動作により原子炉が自動停止し、
 事故は安全に終息します。

○事故解析の結果では、ナトリウムの最高温度は約670℃であり、沸点(約900℃)には達せず、炉心燃料に新たな破損を生じることはありません。したがって、有意なリスクとはなり得ません。

○なお、このような事故の発生を防止し、万一、発生した場合でもその影響を限定するための対策として、ナトリウムの液面を覆うアルゴンガスのナトリウム中への巻き込みの防止やガス抜き穴による大きな気泡の形成の防止の対策がとられています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(19ページ)「事故時においても炉心部で冷却材が沸騰してボイド化することはありません」とあるが、なぜいかなる事態においてもナトリウム沸騰が起こり得ないと考えるのか。その根拠となる事故解析(事故想定を含む)の客観性に対しては、批判が出されているが(例えば、小林圭二『高速増殖炉もんじゅ』、245〜266ページ)、これにどう学問的に反論するか。1997年3月11日の動燃東海再処理工場の火災・爆発事故で明らかになったように、事故想定の客観性は疑わしいものである。それを確固たるものとすることが、事故解析の客観性の確保にとって最重要の作業である。そのためには、多くのシナリオを事故想定として立てて、各々の起こりやすさを客観的に評価し、その中から非現実的なものを、明確な理由を付けて一つ一つ落としていくという手続きが有効だと思われる。そうした事故想定の客観性を確保する手続きは、きちんと実施されているのか。もしされているならばその情報を公開せよ。また過去において、事故解析の結果として設計変更がなされた例があれば、示すべきである。それとともに事故解析が安全審査によって否定された例があれば、示すべきである。


【回 答】

○「もんじゅ」の安全評価においては、原子力委員会の「高速増殖炉の安全性の評価の考え方について」に基づき、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する指針について」、及び海外の高速増殖炉の評価例を参考とし、さらに「もんじゅ」で予想される種々の異常の要因ならびに異常が生じた後の事象推移を分析して、各種の代表的事象を選定して評価が行われています。

○事象選定の方法については、設置許可申請書の添付書類十追補に「安全評価における事象選定の方法について」として、基本的な考え方が示されています。また、より詳細には、動燃事業団資料の「もんじゅの安全評価項目について」PNC N243 81-09 (1981)が公開されています。

○これらの事象想定に基づいた安全解析においては、各種の実験データ等を参考にして解析条件が決められており、不確実さが大きなデータ等については、結果が厳しくなるように解析条件を設定して評価が行われていることが、安全審査段階で確認されています。

○小林圭二氏は著書『高速増殖炉もんじゅ』の中で、例えば、安全審査で「技術的には起こるとは考えられない」としている事象について、米国のフェルミ炉やEBR-I炉での事故を引き合いに「起こりうる」ものだと主張していますが、これらの炉は1940〜1960年代に建設されたFBR開発の初期の炉であり、以後の高速増殖炉はこれらの事故の経験を踏まえて、例えば集合体のナトリウム流入口を多方向に開ける等の工夫や燃料ピン束を剛性の高いラッパ管に入れることで事故の原因となった湾曲を抑制するなどの対策を採っています。このような対策により、これらの事故を十分に防止し得る設計となっていることは、その後の設計になる「常陽」や海外のFBRの良好な運転実績によって確認されています。

○設計基準事故は設計の妥当性を確認するために想定しておくべき事象であります。事故解析は通常、設計作業と同時並行的に実施され、事故解析結果を十分踏まえた設計であることが確認できた段階で、初めて設置許可申請が行われます。すなわち、事故解析の結果は、事前の設計検討の中で十分に反映されていることになり、安全審査において、その妥当性を確認します。

○なお、設置許可申請後に事故解析の見直しを行った事例としては、高速実験炉「常陽」において、昭和48年6月に、事故時のエアロゾルの挙動、捕集についての模擬実験結果が取りまとめられた内容を受けて、プレフィルタの設置とプルトニウム被ばく線量評価条件の一部変更(エアロゾルの等価半減期)に伴う安全審査を受けたことがあります。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(20ページ)イギリスのPFRの事故は、蒸気発生器細管の破断が、きわめて多数(合計40本)の細管の破断の引き金となることを明らかにした。もんじゅの事故解析(4本の破断を仮定)を、やりなおすべきである。また、一点でも事故解析の客観性が疑われることは、事故解析にもとづく安全審査全体の客観性を揺るがす事件である。これを機会に安全審査全体のアセスメントを行うべきである。


【回 答】

○イギリスの原型炉PFRで1987年に発生した事故は、原因究明の結果、Q-20 の説明文にある通り、過熱器に幾つかの設計上の問題があったためと判明し、事故後、改善策がとられました。その後、6年以上の間PFRは安全に運転が継続できた実績を有しています。

○「もんじゅ」については、現在、動燃において安全総点検が進められており、科技庁としても動燃の報告を受けながら独自に安全性の総点検を実施しているところです。この中で蒸気発生器の事故解析における想定の妥当性についても検討が行われています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(21ページ)長大で曲がりくねった配管構造とその支持装置は、直観的に見ても地震に対する脆弱性を疑わせるものである。その耐震性の確認は、どのような手続きによって行ったのか。


【回 答】

○先ず、原子炉設置許可段階で、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針について(原子力安全委員会、昭和56年7月)」の基本的考えを参考にして、原子炉施設の耐震重要度分類、地震力の算定等に関する基本設計について、行政庁である科学技術庁が審査を行いました。

○その結果を原子力安全委員会がダブルチェックした上で、内閣総理大臣から原子炉の設置の許可が出されました。

○原子炉の設置が許可された後、実際に工事に着手する前に行政庁による「設計及び工事の方法の認可」を受けることになります。この段階では、設置許可段階で審査を受けた地震力等を基に、「耐震設計審査指針」の荷重の組み合わせ方法、許容限界の規定に沿って建物、構築物及び機器・配管系の耐震解析を行い、原子炉施設の耐震性評価結果を審査しました。

○この認可が出てはじめて実際の工事にかかることになります。そして原子炉施設を使用する前には、工事及びその性能について内閣総理大臣(科学技術庁)の検査を段階的に受け、検査に合格して運転を開始することになります。

○地震力の算定等は以下の手順で行いました。安全上重要な施設 ( Aクラス ) に対しては、過去の被害地震および近い将来敷地に影響を与えるおそれのある活動度の高い活断層による地震の中から、敷地に最も大きな影響を与える地震を設計用最強地震としました。安全上特に重要な施設 ( Asクラス ) に対しては、敷地周辺の活動度の低い活断層から想定される地震や直下地震などを考慮して、敷地に最も大きい影響を与える地震を設計用限界地震としました。

○これらの基準地震動を用いて、原子炉建屋等の振動解析を行い、発生する応力や変形量に建屋等が十分耐えられることを確認しました。さらに、建屋等の振動解析から得られた加速度応答スペクトルを入力条件として、原子炉施設の機器の応力を算定しました。一方で、機器の重さによる応力、圧力による応力、熱膨張による応力、熱衝撃による応力等を計算しました。これらの応力を組み合わせ、機器が耐えられる応力の範囲であることや、過大な変形等が生じないことを確認しました。

あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(21ページ)原子炉容器や配管の薄さは、それだけで地震(力学的な作用)に対する脆弱性を意味する。にもかかわらず「FBRが軽水炉に比べて地震に弱いということはありません」とは、何を根拠としての主張なのか。


【回 答】

○FBRも軽水炉と同様に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針について(原子力安全委員会、昭和56年7月)」に準拠し、原子炉容器や配管の耐震性を確保していることを安全審査において確認しているということが、軽水炉と同様に、必要とする耐震強度を有しているという根拠です。

○すなわち、地震力の算定、荷重の組み合わせ方法、許容限界の考え方等は、FBRも軽水炉も基本的に同じです。FBRは軽水炉に比べて原子炉容器や配管の板厚は薄いですが、耐震性の評価の仕方や判断基準の考え方に変わりがあるわけではなく、軽水炉と同等に必要な安全余裕を持った設計となっています。

○具体的には、原子炉建屋の振動解析から得られた加速度応答スペクトルを入力条件として、原子炉容器や配管の応力が算定されます。一方で、機器の重さによる応力、圧力による応力、熱膨張による応力、熱衝撃による応力等が計算されます。これらの応力を組み合わせ、原子炉容器や配管が耐えられる応力(許容応力)の範囲であることや、過大な変形等が生じ機能に影響をおよぼすことが無いことを確認します。

○FBRに適用される許容応力や変形の判断基準は、軽水炉の許容応力や変形の判断基準と同等の安全裕度を持つように定めらています。許容応力は、材料の特性から決まり、機器の形状や板厚には関係しません。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(22ページ)イギリス・ドイツが安全上の問題からFBRの開発を中断したのではないとあるが、果たしてそうか。イギリスのFBR開発中断にとって、PFR事故が無関係だったと断定する根拠は何か。またドイツの中断は、安全上の懸念等によるノルトライン・ヴェストファーレン州政府の反対による。


【回 答】

イギリス

○中断に至る経緯
・1988年7月に、イギリスにおいては少なくとも30〜40年間はFBRを必要としないとして、研究開発への政府出資を1990/91年から減額するとともに、原型炉PFRへの予算を1994年以降停止するとの発表が、エネルギー大臣から行われました。(文献 1)
・1992年には、欧州統合高速炉(EFR)の研究開発のために、PFRを1997年まで運転する必要があり、このための費用を、産業界が負担するとの提案がなされましたが、1992年8月に、産業界の提案は受け入れられず、PFRは当初決定どおり1994年3月で運転停止するとの発表を、政府は行いました。(文献 2)
・さらに、政府は長期に亘る研究開発の費用は産業界が負担すべきとの見解を表明しましたが、産業界はこれを受け入れられないと決定しました。(文献 2)
・1992年11月には、研究開発への政府出資は1993年3月で停止するとの発表が行われました。(文献 2)
・1997年5月8日の第3回高速増殖炉懇談会での英国原子力公社プーリ総裁の講演においても、英国では、原型炉PFRまでに高速増殖炉は産業規模で実証されたので、今後発電のオプションとして採用するか否かは電力会社が決定すべきであるというのが政府の見解ですが、北海の豊富な天然ガス、現在の安価なウラン価格等から考えて、近い将来高速増殖炉は選択されないだろうということが紹介されています。

○PFR事故との関連
・PFRの事故(SGの大規模水漏えい)は、1987年に発生しましたが、PFRは改良工事の後に1994年3月まで6年以上に亘って安全に運転されています。
・1988年7月の発表の後に、下院エネルギー特別委員会でFBRの開発について議論されていますが、この中でもPFR事故との関連で開発を止めるべきとの議論は行われておらず、当面必要としないFBRの開発に投資を続けることは経済的でないという理由で中止が勧告されています。(文献 1)
・1992年11月の発表については、FBRの技術は成熟し、それ以上の政府出資は適切でないと政府が判断したためと、1995年のIAEA/IWGFR(高速炉に関する国際ワーキンググループ)年会で報告されています。(文献 2)
・イギリスの産業界は、現在もEFR開発計画に参画し、出資を行っています。(文献 3)

○ドイツ
・SNR-300の計画中止について、1991年のIAEA/IWGFR年会では、「定められた期間内に、最終の建設許可と運転許可が得られると考えられない。許認可手続きに進展が無いのは、プロジェクトの基本的安全性に欠陥があるのではなく、手続きがノルトライン・ヴェストファーレン州政府によって実施されるためである。特に、1986年のチェルノブイリ事故以来、ノルトライン・ヴェストファーレン州で多数を占める社会民主党の反原子力政策が許認可の手続きに大きな影響を与えていると結論するに至った。」と報告されています。
・1992年の研究開発終了の表明について、1993年のIAEA/IWGFR年会では、
a. ドイツ統一に伴う財政事情の逼迫
b. ドイツ国内における原子力の社会的受容性に関する問題
c. 連邦政府による研究開発プロジェクトの優先順位の変更
が、要因としてあげられています。
・また、1997年5月8日の第3回高速増殖炉懇談会における独国原子炉安全委員会ケスラー委員の講演においても、原子炉安全委員会はSNR-300の設計は妥当であるとの結論を出したが、州政府による許可が下りず、経済上の理由からそれ以上の投資が断念された旨が紹介されています。

参考文献
(1) House of Commons, Energy Committee Fifth Report, "The Fast Breeder Reactor", Volume I
(2) "Progress in liquid metal fast reactor technology", Proceedings of the 28th meeting of IAEA/IWGFR, Viena, 9-11 May 1995, IAEA-TECDOC-876
(3) 29th Annual Meeting of IAEA/IWGFR資料、1996年5月
(4) "Status of National Programmes on Fast Breeder Reactors", 24th Annual Meeting, Tsuruga, Japan, April 1991, IAEA/83
(5) IAEA/IWGFR 26回年会資料



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(25 ページ)FBR の核燃料サイクルの特徴については、軽水炉との同位体組成の違いにも言及しておく必要がある。


【回 答】

○使用済燃料の プルトニウム(Pu) の同位体組成(239Pu,240Pu,241Pu,242Puの割合)は、燃焼条件等による変動幅が大きいことから、ここでは燃焼条件等による変動幅が比較的小さく、Pu の同位体組成の違いを客観的に評価しやすい一般的な評価手法として、Pu フィッサイル率を用いることにします。Puフィッサイル率とは、核分裂を起こしやすい同位体 239Pu と 241Pu のPu全量に対する割合((239Pu + 241Pu) 量/Pu 全量 )のことです。

○添付の表に、軽水炉 と FBR の使用済燃料中の Puフィッサイル率の評価例を示します。軽水炉の場合、Puフィッサイル率は約 50 〜 70 %程度です。軽水炉用の燃料としては、このPuフィッサイル率が高いほどPuが良く燃えますが、炉の中で良く燃焼させた使用済燃料ほどこのPuフィッサイル率が低くなるので、それを再処理して回収されたPuは徐々に燃えにくくなってきます。

○FBR の場合、 Pu フィッサイル率は、炉心燃料部分では約 60 数%程度であり、軽水炉と同程度ですが、ブランケット燃料部分では約 90 数%程度と、軽水炉に比べ高い割合となっています。このブランケット燃料中の239Puの割合が非常に高いことから、核兵器への転用を懸念する声がありますが、FBR 燃料の再処理の結果得られた、ブランケット燃料部分の Pu と炉心燃料部分の Pu は燃料の製造過程で混合してから燃料に加工されるため、両者を合わせるとPuフィッサイル率は約70%となり、Pu 燃料としては、軽水炉の Pu 製品と同程度の ものが得られることになります。

○また、FBRで生産されるものを含めプルトニウムについては厳重な計量管理を実施するとともに、国及びIAEAの保障措置の下に置かれるばかりでなく、核物質防護のための防護措置が取られるので、核物質が平和の目的以外に使用されたり、盗取されたりすることはありません。

○さらに、日本においては、再処理されたプルトニウム溶液を酸化物に転換する際にウランと混合し混合酸化物(MOX)粉末に転換するため、プルトニウムが単体で回収されることはありません。この「混合転換法」は、東海再処理工場の運転開始時の核不拡散対策に係わる日米交渉において、日本が苦心を重ね創出した方法であり、核不拡散上重要な技術であることが米国からも評価されています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(26 ページ)FBR、FBR 燃料製造、FBR 再処理技術等について、整合性のある開発を進めることが重要だとあるが、もんじゅが事実上の凍結状態にある以上、RETF についても凍結するのが妥当と思われる。


【回 答】

○リサイクル機器試験施設(RETF) は、「もんじゅ」、「常陽」の使用済燃料を用いてFBR 燃料再処理技術の工学実証/改良/高度化を図ることを主な目的とした研究開発施設です。
FBR は、核燃料をリサイクルして初めてその真価を発揮することから、核燃料リサイクルを構成するFBR、FBR 燃料製造、FBR 燃料再処理等のそれぞれについて、整合性の取れた開発を進め、総合的な核燃料リサイクル技術体系を確立することが重要です。

○しかし、FBRやFBR 燃料製造技術が「もんじゅ」、「プルトニウム燃料第 3 開発室」といった技術実証段階の開発を進めているのに対し、FBR 燃料再処理技術開発に関しては、未だ基礎試験レベルの段階であり、着実に技術実証段階の開発に移行することが重要です。整合性の取れた総合的な核燃料リサイクル技術体系の確立を目指す上では、それぞれの技術レベルを同一にして進めることが重要であることから、RETF の早期運転及び技術実証、改良、高度化を着実に進めることが重要となります。

○また、再処理施設は実用化時代においても頻繁に建設ができる施設ではないため、産業レベルでの高度化、合理化が困難な施設となります。従って、RETF のような試験施設を整備し、より高度な技術の蓄積を図ることが、高性能な商業プラントを実現するために重要となります。

○RETF 計画については、「もんじゅ」が停止状態にあるものの、FBR、FBR燃料製造技術の開発とともに整合性を持ってFBR燃料再処理の開発を着実に進めていくことが重要であると考えています。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(26 ページ)「高純度のプルトニウム」という表現は多義的であり、適切でない。「スーパー兵器級のプルトニウム」に改めるべきだ。(2 つのパンフレットには、高速増殖炉が核拡散の観点から見て、軽水炉よりも格段に危険が大きいことの指摘が、全く存在しない。これはそれ自体として、日本の核武装への意思に関する疑惑を招くものであり、日本国民および諸外国国民の説得には逆効果であると思われる)。


【回 答】

○添付の表にプルトニウムの等級と同位体組成について、米国エネルギー省(DOE)の定義する分類を示します。この表を基にすると、「高純度のプルトニウム」という表現については、ご指摘の通り、多義的でありますので、今後、「高純度(高 フィッサイル 率)のプルトニウム」という表現に改めたいと思います。なお、フィッサイル率とは核分裂を起こしやすい239Puと241Puのプルトニウム全量に対する割合を示します。

○しかし、別の質問の回答にも述べている通り、FBR使用済燃料の再処理の結果得られ炉心燃料部分のプルトニウムとブランケット燃料部分のプルトニウムは、混合して処理することによって、プルトニウム・フィッサイル率としても軽水炉と同等の プルトニウム燃料が得られます。従って、得られたプルトニウム燃料は、兵器級とはなりません。

○また、FBRで生産されるものを含めプルトニウムについては、核物質が平和の目的以外に使用されたり、盗取されたりすることがないよう、厳重な計量管理を実施するとともに、国及びIAEAの保障措置の下に置かれるばかりでなく、核物質防護のための防護措置をとっています。

○さらに、日本においては、再処理されたプルトニウム溶液を酸化物に転換する際にウランと混合し混合酸化物(MOX)粉末に転換するため、プルトニウムが単体で回収されることはありません。この「混合転換法」は、東海再処理工場の運転開始時の核不拡散対策に係わる日米交渉において、日本が苦心を重ね創出した方法であり、核不拡散上重要な技術であることが米国からも評価されています。





あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(28ページ)核種分離・消滅処理技術については、今まで長期にわたって基礎研究が進められながら、今も基礎研究段階にとどまっている。なぜ研究が進まないかを、きちんと歴史的に評価する必要がある。


【回 答】

○核種分離・消滅処理に関する研究では、
(1)熱中性子を用いる方法
(2)加速器によって物理的に原子核を破砕する際に発生する中性子を用いる方法
(3)核融合炉で発生する中性子を用いる方法
(4)高速炉を用いる方法
 などがあります。

○上記(1)については、1958年にまとめられた米国ブルックヘブン国立研究所の報告が最も古く、セシウム137、ストロンチウム90等の蓄積を低減する可能性を調べています。

○その後、上記(2),(3)の検討に続き、1970年代後半には「(4)高速炉を用いる方法」の検討が進み、ネプチニウム237などのマイナーアクチニド元素を燃料としてとらえ、これらの消滅処理を原子力発電体系へ組み込む場合の評価が始められました。

○しかし、IAEA(国際原子力機関)から核種分離・消滅処理に否定的な報告書が出されたことなどから、1980年代初めから研究は一時沈滞化しました。

○しかしながら1990年前後から、高レベル放射性廃棄物の処分に対する関心が高まり、また、我が国において核種分離・消滅処理技術研究開発長期計画(通称オメガ計画)が1988年からスタートしたことなどから、現在、日本、フランス、ロシア、米国で研究が活発に行われています。

○これまで、多くの研究がなされ、成果も蓄積されていますが、核種分離・消滅処理の実現に向けての費用対効果について、様々な考え方等によって意見が分かれており、まだ実用化を判断する段階には至っていません。

○しかし、核種分離・消滅処理は、放射性廃棄物を低減できる技術として、その可能性を追求する意義は大きく、国際協力のもと長期的観点に立って研究を進めていく必要があります。