参考資料


『いっしょに考えよう「FBR」のこと』(科学技術庁)
『あなたの疑問にお答えしますーFBRに関する国の考え方ー』(科学技術庁)
に関する吉岡委員のコメントへの回答






(その1)


             ○高速増殖炉開発の意義
              ・将来のエネルギー需給における位置付け
              ・環境影響
              ・経済性の見通し



科学技術庁




いっしょに考えよう「FBR」のこと
(5ページ)確認可採埋蔵量というのは、本質的に経営的な概念であり(在庫などと同じく)、これを基礎にして、いわゆる「資源制約」について論ずるのはナンセンスだというのが、エネルギー資源に関する議論の常識であると思われる。例えば、松井賢一「新・エネルギーデータの読み方使い方」(電力新報社、1994)には、次のような指摘がある。「石炭、オイルシェール、タールサンド、ウランについては資源の制約を考える必要はないというのが一般的な見方であり、問題となるのは石油と天然ガスで」ある、「R/Pレシオはすぐれて経済的・経営的概念で、(中略)60年分も100年分も保有していたら、経営センスを疑われるだろう」。にもかかわらず、全ての化石燃料(石油、天然ガス、石炭)について「いずれ資源制約が表面化すると考えられます」というのはいかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)石油・天然ガス・石炭・ウランが「いずれ枯渇することは明らかです」というのはどのような客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説になっているのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「化石燃料の需給が逼迫する恐れがある」とあるが、石炭・オイルシェール・タールサンドにそのような可能性があるのか。この主張はどのような客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「資源需給の逼迫、枯渇に備えて」というのは、いかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。



【回 答】

○確かにIIASA(国際応用システム分析研究所)/WEC(世界エネルギー会議)等の報告を基にすると、地下に存在すると期待される化石資源の絶対量は膨大であり、例えば、石油については、オイルシェール、タールサンド等の非在来型資源まで含めた資源量は5.9兆バーレル、天然ガスの資源量は6.3兆バーレル(石油換算)、石炭は24.5兆バーレル(石油換算)といわれています。

○しかしながら、消費が続く限り、いつかは有限な天然資源である化石燃料が枯渇することは自明です。

○また、化石資源をエネルギー資源として利用する場合、「資源の絶対量」という視点においての枯渇以外に、経済性や地球環境問題といった「利用の制約」を考えなければなりません。

○例えば、石油に関してみると、現在の技術で経済的に見合ったコストで回収できる良質で安価な石油は、未確認資源も含めて2.2兆バーレルで、現在までに、この内の0.7兆バーレルは採掘・消費済であり、残りの1.5兆バーレルのうち、0.5兆バーレルは未発見のものと言われています。

○また、石油はエネルギー源としての利用の他に、身の回りの化学繊維、プラスチックなどの原料としても貴重であり、他のエネルギーで代替することにより、そのような用途のために石油をできる限り残しておくことも重要です。

○さらに地球環境問題の観点から、地球温暖化の原因と言われる二酸化炭素の排出量が多い石炭等をどれだけ使って良いかも考慮する必要があります。

○なお、オイルシェール、タールサンドについては、経済性、品位などの点で問題があり、現在あまり利用されていません。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(6ページ)「新たなウラン鉱山が発見できなければ、ウラン資源は化石燃料資源と同様21世紀中に枯渇する可能性を有しています」とあるが、新たなウラン鉱山を発見できないという可能性があるのか。誰がどのような客観的・学問的根拠によって、そのような主張をしているのか。またそれはどこの学界の定説なのか。



【回 答】

○ 1980年以降、ウラン価格が低迷し、世界の探査資金も減少し続けています。また、最近の探査対象は地下100から500mに存在する潜頭鉱床をターゲットとするようになっていますので、これまでのように放射能測定により簡単に発見できた状況と異なってきました。

○このような状況を反映して、最近10年間で発見されたウラン鉱床はカナダのマッカーサーリバー等3件にすぎません。確かに適切な探査努力を行えば、新たな鉱床が発見されるかも知れませんが、今後とも増加すると予想される世界の原子力需要に応えるだけのウラン量を供給できる新たなウラン鉱山が引き続き発見できるという保証は必ずしもありません。また、生産コストが上昇する可能性があります。

○いずれにしても、将来にわたるエネルギーの安定供給を確保していくためには、楽観視は禁物であり、現実を見据えて厳しく評価し、現時点で可能性のある様々なエネルギーの選択肢の幅を着実に広げておく努力が必要です。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(9ページ)FBRにより「天然ウランの60%程度が利用できることになる」とあるが、これはいかなる根拠による算定なのか。また、無限回の再処理によるウランとプルトニウムの同位体組成の変化を、どう評価するのか。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「天然ウランの利用効率を軽水炉に比べて数十倍に高めることができます」とあるが、これはいかなる根拠による算定なのか。そのさい無限回の再処理によるウランとプルトニウムの同位体組成の変化を、どう評価するのか。



【回 答】

○燃料集合体を燃やす度合い(燃焼度)の平均をB万MWD/T※1とすると、ウラン全体の約B%(=B/100)が核分裂した事になります(0.96万MWD/T=1%核分裂)。

○その後、再処理・燃料加工(燃料サイクルにおけるロスをL%とする)した後、再度原子炉で燃焼すると、最初のウランのうち(1−B/100)×(1−L/100)×(B/100)が核分裂します。

○この繰り返しで、ウラン利用効率は、
     (B/100)×{1+(1-B/100)(1-L/100)
     +(1-B/100)2(1-L/100)2+ (1-B/100)3(1-L/100)3+‥‥‥}
     ≒B/(B+L)となります。

○仮にB=5(万MWD/T)、L=3(%)とすると、FBRのウラン利用効率は約63%となります。つまり、天然ウランの利用効率を軽水炉に比べて数十倍に高めることができます。
(参考)軽水炉での1回限りの利用では、天然ウランの利用効率は約0.5%、プルサーマルでの複数回の利用では天然ウランの利用効率は約1%

○なお、
 ・FBRでは中性子が高速なので、炉の中で生じる燃えにくいプルトニウム240,242やマイナーアクチニド等も効率良く燃やすことが可能
 ・熱を出す役目の炉心燃料の周りに配置されプルトニウムを増殖する役目のブランケット燃料を再処理して取り出されたプルトニウムは、プルトニウム239の割合が大きいこと
 ・炉心燃料とブランケット燃料を混合して用いること
 ・これらのプルトニウムの同位体組成は、高速中性子の特性によって決まってしまうこと
等のため、FBRではプルトニウムの同位体組成は変化しません。

*1MWd/t(メガ・ワット・デイ/トン):
燃焼度の単位で、1トンの燃料が1メガワット(1000kw)の熱を出しながら原子炉の中で1日(デイ)燃えることを示します。

(参考文献)
「Fast Breeder Reactors」 Alan.E.Waltar.P244


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(9ページ)「軽水炉だけではウラン資源が数十年で枯渇するおそれがある」という主張(6ページよりも強い主張)は、いかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。



【回 答】

○現在、権威ある調査報告書として国際的に認知されている、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)、国際原子力機関(IAEA)の共同報告(レッドブック,1995)によると、試錐等の直接的な証拠により、ある程度の確度で存在が認められているウラン資源量(確認資源+推定追加資源・)は約450万トンUです。

○現在の消費レベルのままと仮定しても73年間でこの量を消費し尽くしてしまいます。しかし、世界の原子力発電は今後とも増加し、ウラン消費量が増加していくことが予想されるため、73年よりも早くこの資源量が枯渇する可能性があります。

○前述のとおり、適切な探査努力を行えば、新たな鉱床が発見されるかも知れませんが、ウラン価格が高騰する可能性があり、資源に乏しい我が国としては、ウラン資源の利用効率を数十倍に高める可能性を有する高速増殖炉をはじめ、エネルギー供給源の多様化を考えてバランスのとれた対応をとってゆく必要があります。
(「いっしょに考えようFBRのこと」6頁参照)


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(10ページ)物質収支の図で、1年につき1.6トンのプルトニウムから、1.9トンのプルトニウムが回収されるとなっているが、工程上のロスを考えれば、これは過大な見積もりではないのか。工程上のロスをどのように評価しているのか。それはいかなる客観的・学問的根拠によるのか。またそれは原子力学界の定説なのか。



【回 答】

○図は、プルトニウム増殖の原理を示したもので、燃料製造や再処理工程上のロスは考慮に入れていません。しかし、プルトニウムの工程上のロスは、再処理において2%程度、燃料製造において1%程度より少ないと評価されており(1)、増殖性にほとんど影響しません。

参考文献
(1)The Economics of the Nuclear Fuel Cycle (OECD/NEA '94)


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(11ページ)ウランの最終可採埋蔵量の推定値1500万トンの根拠はなにか。客観的・学問的裏付けがあるのか。またそれはどこの学界の定説なのか。



【回 答】

○経済開発協力機構/原子力機関(OECD/NEA)、国際原子力機関(IAEA)の共同報告(レッドブック,1995)によると、試錐等の直接的な証拠により、ある程度の確度で存在が認められているウラン資源量の他に、地質学的な推定から存在が期待されるが未発見の資源(各国からの報告による)までを含めると約1500万トンUとなるとされています。
(「いっしょに考えようFBRのこと」6頁参照)


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(11ページ)国際原子力学会協議会の原子力発電規模予測(2100年に、1次エネルギーの28%)はいかなる客観的・学問的裏付けがあるのか。それは現在の原子力学界の定説なのか。非常に高い予測ではないのか。



【回 答】

○国際原子力学会協議会における原子力発電規模の予測は、世界エネルギー会議が1993年に発表したエネルギー需要予測(1)より引用しています。世界エネルギー会議では、エネルギー需要の伸びとして3種類のケース(A〜C)を想定していますが、国際原子力学会協議会における評価では、最も現実的なケースとして位置づけられているケースBを採用しています。参考にケースA〜Cの2100年時点の一次エネルギー需要と原子力発電の占める割合を次表に示します。

 


参考文献
(1)Energy for Tomorrow's World (World Energy Council '93)


いっしょに考えよう「FBR」のこと」
(12ページ)マイナー・アクチニドのMOX燃料へのブレンドは、果たして現実的なアイディアなのか。それとも将来の実用化に関する希望的観測なのか。また、軽水炉でマイナー・アクチニド燃焼を行うこととの優劣につき、定量的比較を行うべきである。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)マイナー・アクチニドのMOX燃料へのブレンドは、果たして現実的なアイディアなのか。それとも将来の実用化に関する希望的観測なのか。また、軽水炉でマイナー・アクチニド燃焼を行うこととの優劣につき、定量的比較を行うべきである。



【回 答】

○MOX燃料にマイナーアクチニド(MA)を添加して燃焼させることは、既にフランスの高速炉フェニックス炉でネプツニウム(Np)やアメリシウム(Am)を入れたMOX燃料を照射した実績があり、燃料としての挙動や燃焼の効率が燃料単体レベルで確認されています。また、ネプツニウム(Np)を入れた燃料集合体をフランスの高速炉スーパーフェニックス炉で照射することが、今年度に予定されています(文献(1))。従って、MA燃料は現時点で炉心規模での燃焼という意味では実用化されているわけではありませんが、実績に基づいた現実性のある技術であると判断しています。

○また、軽水炉と高速炉でのMA燃焼に関する比較としては、例えば文献(2)に定量的な比較が示されています。これは、欧州で検討されている高速炉(EFR、出力150万kWe)と代表的な軽水炉(出力130万kWe)を対象に、ネプツニウムやアメリシウムを燃焼させた場合の特性を計算により比較したものです。この文献によれば、高速炉はMAの消滅率が大きいという点とMAの高次化(燃えにくいMAに変化すること)が起きにくいという2つの点で、MA燃焼に関して軽水炉より優位にあることが明らかであります。

参考文献
(1)C.Prunier,他、"The CEA SPIN Programme: Minor Actinide Fuel and Target Aspects", International Conference on Evaluation of Emerging Nuclear Fuel Cycle Systems, pp506〜515, Sep.11-14,1995 ,Global '95
(2)H.Kusters,他、"The Nuclear Fuel Cycle for Transmutation:A Critical Review",International Conference on Evaluation of Emerging Nuclear Fuel Cycle Systems, pp1076〜1081,Sep.11-14,1995 ,Global '95


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(14ページ)FBR開発への公金支出及び民間負担金に関する、各年度ごとの詳細なデータを示して欲しい。なお、民間負担金に関しては、もんじゅ運転に関する民間負担金のデータも示して欲しい。また、なぜ運転費が1989年から計上されているのか理由と、その支出の詳細を示して欲しい。



【回 答】

○動燃は、昭和42年に設立されて以降、我が国におけるエネルギーの安定確保のため、国の方針に基づき高速増殖炉の実用化に向け研究開発を実施してきており、その年度別経費を別紙に示します。

○民間負担金については、「もんじゅ」の建設費のみに拠出され、運転費に対する拠出はありません。

○「もんじゅ」の運転費として平成元年から計上されているのは、平成元年度から試験計画策定、運転・保守の予備評価を行うとともに、運転員訓練用装置の製作等を行うための経費です。

○平成3年度の本格的な試験開始に伴い、運転費としては、プラント設備の安全を維持・確保する上で不可欠な設備の点検・検査・保守等に係る経費、電力や窒素ガス等の購入費、燃料製造経費、試運転等の実施に係る経費、環境放射線測定などの環境対策に係る経費などを計上しています。

○なお、ナトリウム漏えい事故発生後は、万全の安全確保の観点からプラント設備の維持管理のために必要な最小限の経費として設備の点検・検査・保守に係る経費等を計上しているほか、事故対応に係る経費を計上しています。


 


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(19ページ)1956年長期計画で、FBRを本格的に開発することが決定されたというが、間違いである。最終目標として増殖炉の国産化をめざすことを決定したに過ぎない。



あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)「2030年頃を実用化の目標時期として、それまでに技術体系を確立しておくことを目指して」というのは、何を意味するのか。2030年頃に、技術体系の確立と実用化という2つの課題を、同時に達成すると言うことか。(論理的にはありえないことだが)



【回 答】 ○1956年長期計画の「5 計画の内容」の中の「(2)原子炉の建設計画」の「(イ)基本的な考え方」において、「最終的に国産を目標とする動力炉は、原子燃料資源の有効利用ひいてはエネルギーコストの低下への期待という見地から、増殖動力炉とする。」とされました。

○また、「(2)原子炉の建設計画」の「(ロ)計画の内容」では、この方針に沿って、まず増殖実験炉1基を建設すること、ついで天然ウラン重水型原子炉等の運転成果を利用し増殖実験炉の建設を基礎として、増殖動力炉の設計に着手すること等が決定され、日本原子力研究所において増殖実験炉等の設計研究を実施することが定められました。こうした計画の内容を、FBRを本格的に開発すると表現したものです。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(20ページ)2030年頃までに、何をするのが目標なのか不明である。実用化なのか、それとも技術体系の確立なのか。どちらであるかを明確にすべきである。また、技術体系の確立とは何か。なにをもって技術体系の確立とみなせるのか。



【回 答】

○現在緩和基調にあるウラン需給も来世紀半ば頃には逼迫するとの見込みもあり、その相当前からFBRを原子力発電体系の中に導入する必要があることなどから、2030年頃までには実用化が可能となるようFBRの技術体系の確立を目指していくことにより、その後のFBRの本格的な導入に備えることができるものと考えています。

○なお、電気事業者が進める実証炉の開発と国を中心とした固有の技術の研究開発を両輪として、安全性、信頼性、経済性の更なる向上を図っていくとともに、FBR使用済燃料再処理、MOX燃料加工等の燃料リサイクル技術と整合性のとれた開発を進め、炉と燃料サイクルのトータルシステムとしての総合的な核燃料リサイクル技術体系の確立を目指していきます。

○このようなトータルシステムとしての技術体系が2030年頃までに確立されていれば、2030年頃以降はいつでもFBRの本格的な導入、すなわち実用炉の建設が可能となることを意味しています。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)「新たな燃料物質が生成されるので、長期間使用できる燃料が可能」なので、「軽水炉に優る経済性を達成できる可能性がある」とは、一体何のことか。2〜3年間くらい連続運転が可能となるという意味か。またその程度のことで、「軽水炉に優る経済性を達成できる可能性がある」と言えるのはなぜか(何%程度のコストダウン効果があるのか)。



【回 答】

○軽水炉では、燃焼によって燃料中の核燃料物質が減少していくため、発生できる熱量は、燃料1トン当たり約5千万kW・日となります。

○一方、高速増殖炉では、核燃料物質を消費しながら新たな核燃料物質が生成されていくため、同じ量の燃料を長期間使用でき、結果として、燃料1トン当たり約1億5千万kW・日の熱量を発生できる見込みです。

○従って、燃料だけを比較すると同じ量の燃料から、高速増殖炉では軽水炉の約3倍のエネルギーを取り出せることになり、経済性に貢献します。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)高速増殖炉では、原子炉の寿命が短くなること(一説では軽水炉の半分程度の寿命しかない)も、「軽水炉に比べ高くなる要因」に含めるべきである。



【回 答】 ○高速増殖炉では、高速中性子による材料の損傷劣化により、炉の寿命が短くなるのではないかと懸念があるようですが、これについては、構造材料の十分な照射試験によってその健全性を確認しており、また中性子遮へい体を炉心廻りに配置することによって、原子炉容器などを保護し、炉の寿命は軽水炉と同様に40年以上となるよう設計しています。

○なお、少なくとも、高速増殖実験炉「常陽」は20年近く安定して運転され、海外においても米国などで30年近く運転された実績などがあります


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)「FBR実用化に向けた経済性向上の見通し」の図は、(植草委員の表現にならっていえば)幼稚園的レベルである。「100万キロワット換算」「130万キロワット換算」などという姑息な細工を止めるべきである。その上で、厳密な定量的評価を示すべきである。



【回 答】

○一般の工業製品は、大量生産によってコストが下がりますが、発電所の場合は大出力化や標準化(同じものを複数基建設)などによって発電コストが下がります。このため、軽水炉は100〜130万キロワットの出力規模となっています。

○高速増殖炉も実用化されれば大出力化されることになるので、100〜130万キロワットのプラントでいくらになるか、という評価をしています。

○現時点では、実際にプラントをつくっていない段階であり、厳密な定量的評価はできませんが、現状のプラント設計研究の目標と、その実現性の判断のため、経済性の見通しを立てています。

いっしょに考えよう「FBR」のこと


(32ページ)「二次ナトリウム系削除」というのは、安全性の面から妥当ではないと思われる。そのリスク評価を示した上で、削除の妥当性を論証しなければならない。



【回 答】

○二次ナトリウム系削除については、十分なリスク評価と、安全性の確証を経てはじめて実現できるものと考えています。あくまでも安全確保を大前提として、経済性向上に向けた種々の可能性と技術的な課題の克服を目指した研究開発に長期的に取組んでいます。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(32ページ)建設コストについては、高速増殖炉と軽水炉の寿命の違いを、明確に計算式に取り入れるべきである。また建設コストだけでなく、燃料コストについても、現在の実績に関する生データ(再処理コストを中心とする)と、客観的根拠にもとづいた将来の見通しを示すべきである。(英仏への再処理委託価格と、六ヶ所村再処理工場の再処理コストに関する客観的な見積もりが、公開されていないのはよくない)。



【回 答】

○炉の開発は原型炉、FBR使用済燃料の再処理技術そのものは開発途上にある段階であるが、FBRは、核燃料リサイクルを行うことによってその真価が発揮されるものであり、炉と燃料サイクルをトータルシステムとして開発を進め、一層の経済性を図って行くことが重要である。なお、第3回懇談会で資料を提出し議論する予定です。


いっしょに考えよう「FBR」のこと
(35ページ)なぜプルトニウムのリサイクルを核燃料リサイクルと呼び、ウランリサイクルを外すのか。ウランの無限リサイクルによってはじめて、資源利用効率が大幅に高まることを考えれば、これはおかしい。



【回 答】

○このパンフレットはFBRを中心に説明しており、FBRの大きな特徴はプルトニウムを利用することなので、プルトニウムの流れに着目して説明文を作成しました。

○なお、FBRの核燃料リサイクルでは、プルトニウムとウラン(天然ウラン、劣化ウラン(ウラン濃縮の工程で副産物として生じる、燃えるウランの割合が天然ウランより低くなったウラン)、使用済燃料から再処理によって回収されたウラン)をリサイクルすることを前提としているので、プルトニウムのリサイクルと言えばウランも同時にリサイクルされる事を意味しており、燃料リサイクルの説明図にもそのように表現しています。

あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)「資源問題を抜本的に解決することが出来る」における「資源問題」とは、「エネルギー資源問題」を指すのか、それとも「ウラン資源問題」を指すのか。前者の場合、その根拠はなにか。



【回 答】

○FBRの開発により、可採年数73年と言われる天然ウランの利用効率を数十倍に高めることができることから、直接的には「ウラン資源問題」を解決することが期待されます。また、これは、可採年数が最も長い石炭の231年をはるかに上回る資源量に相当することから、「エネルギー資源問題」への解決策の一つとなることが期待されます。

○いずれにしても、資源に乏しい我が国としては、FBRをはじめ、エネルギー供給源の多様化を考えてバランスのとれた対応をとっていく必要があります。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(1ページ)ここでいう「可採年数」は経営学的概念である。それを資源の絶対量と取り違えるのは、幼稚園的知性のなせる技である。



【回 答】

○確かに、「可採年数」というのは、現在既にかなりの確度で存在が確認され、現在の技術で経済的に見合ったコストで回収できる資源量を、現在の消費量で割って計算した値であり、「資源の絶対量」を述べたものではありません。

○たとえば石油に関しては、現在までに既にかなりの確度で確認され、残っている確認埋蔵量は約1兆バレルであり、この値から可採年数45年が算出されています。また、この他に、未発見だが、同様なコストで回収できることが期待される未発見埋蔵量は、約0.5兆バレルあると言われていますが、未発見であるため不確定要素がつきまといます。

○したがって、現時点で相当な確実性をもって安心して期待できる資源量の目安として、可採年数を参考に示しているものです。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(3ページ)「倍増時間に大きな意味をもつとは考えられません」とあるが、それを立証する責任は、科学技術庁にある。つまり、どのようなFBR導入シナリオを採用するかを定量的に示すことによって初めて、倍増時間の制約が現実的意味を持つか否かを評価することが出来る。ここでは定量的シナリオを示して、自説の正当性を論証すべきであると思われる。



【回 答】

○ここで説明したかったのは、「倍増時間」というのは、外部からのプルトニウムの供給がなく、プルトニウムの在庫もない状態で、FBRを新設しようとする場合の、その新設ペースにしか関係しないということです。

○つまり、FBRを新設しないのであれば、再処理、燃料加工などでのプルトニウムの損失分程度を増殖することによって、自らの炉の運転に必要なプルトニウムは確保でき、ウラン238さえ定常的に供給できれば、FBRをずっと運転することができます。

○また、現在の計画では、相当期間、FBRと軽水炉を併用する予定なので、FBRの新設に必要な新たなプルトニウムは、軽水炉から生じるプルトニウムで十分に賄うことができます。また、軽水炉の数が減るまでに十分な基数のFBRを建設しておけば、その後、軽水炉からのプルトニウムが供給されなくなっても、複数基のFBRから増殖されるプルトニウムで、新設するFBR用の燃料が得られることになるので、そのような状況になれば、新設ペースにも倍増時間はあまり影響しなくなります。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(8ページ)「プルトニウムをよく燃焼(消費)させる」という表現は誤解を招く。「僅かに減らす」が正解。



【回 答】

○プルトニウムの燃焼率(消費率)については、炉心の組み方と強い関連があり、ウラン238をプルトニウムに変換させるためのブランケットの削除、炉心高さの低減、中性子の吸収材の添加などの工夫を行うことによって、燃焼率(消費率)を大きくすることができます(文献(1))。

○ここでの表現は「炉心の組み方を工夫すればプルトニウムをよく燃焼(消費)させる」とあるように、炉心構成の工夫やプルトニウムの装荷割合を替えることによって、プルトニウムを消費しやすくした場合を念頭において記述したものです。

参考文献
(1)竹田 敏一、若林 利男、「我が国におけるプルトニウム利用−各炉型における利用特性−」、日本原子力学会誌、pp561〜583、Vol.37,No.7c


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(13ページ)高速炉の実用化目標時期としては、1956年の長計に、1970年頃の実用化が、目標として掲げられたことが最初である。(61年長計ではない)。



【回 答】 ○1956年の長計では、増殖動力炉の実用化目標時期に関する記述はありません。

○1961年の長計には、「計画期間を1961年に始まり1980年に終わる20年間を対象とする。対象計画期間のうち前期約10年間を開発段階、後期約10年間を発展段階とする。」とし、さらに原子炉の研究開発プログラムとして「後期10年間には、プルトニウムを使用する高速増殖炉の実用化が期待されるので、1960年代末までに、実験炉を建設することを目標として研究開発を進める。」と記されています。

あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(13ページ)「実用化目標時期が徐々に先送りされた理由」として挙げられている各長計の引用文には、それぞれ特定の年数だけ先送りさせる理由についての明確な説明が含まれていない。これは的外れである。



【回 答】

○長期計画は、原子力開発利用に関して、長期的観点に基づき、基本的かつ総合的な指針と基本的施策の推進方策を明らかにするためのものであり、また、各分野の具体的な施策については、進展及び諸情勢の変化に適切に対応していくこととするなど、弾力的な対応を図ってきています。

○そのため、長期計画では、改訂時期における情勢に合わせて計画が変更されてきており、FBRの実用化目標についても定量的な説明は困難ですが、エネルギー需給動向の変化、技術的な課題の見通し、我が国独自の研究開発の必要性、研究開発の進捗状況等から、総合的に判断し、見直してきているものです。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(15ページ)「もんじゅ」の建設費は、同規模の軽水炉の約3倍とあるが、何かの間違いではないのか。電気出力28万キロワットの軽水炉の建設費が、2000億円もかかるのか。どこの国でいつ作られたどの原子炉のデータなのか。



【回 答】

○説明が不十分でしたが、この文章は、『「もんじゅ」の建設費を、100万kWe級のプラント建設費に換算して比較した場合、同規模の軽水炉の約3倍 』という趣旨です。

○「もんじゅ」を100万kWe級のプラントに仮定した場合の建設費は大まかに8千億円となり、同規模の軽水炉の建設費約3千億円の約3倍となります。


あなたの疑問にお答えします−FBRに関する国の考え方−
(28ページ)核種分離・消滅処理技術については、今まで長期にわたって基礎研究が進められながら、今も基礎研究段階にとどまっている。なぜ研究が進まないかを、きちんと歴史的に評価する必要がある。



【回 答】

○核種分離・消滅処理に関する研究では、
(1)熱中性子を用いる方法
(2)加速器によって物理的に原子核を破砕する際に発生する中性子を用いる方法
(3)核融合炉で発生する中性子を用いる方法
(4)高速炉を用いる方法
などがあります。

○上記(1)については、1958年にまとめられた米国ブルックヘブン国立研究所の報告が最も古く、セシウム137、ストロンチウム90等の蓄積を低減する可能性を調べています。

○その後、上記(2),(3)の検討に続き、1970年代後半には「(4)高速炉を用いる方法」の検討が進み、ネプチニウム237などのマイナーアクチニド元素を燃料としてとらえ、これらの消滅処理を原子力発電体系へ組み込む場合の評価が始められました。

○しかし、IAEA(国際原子力機関)から核種分離・消滅処理に否定的な報告書が出されたことなどから、1980年代初めから研究は一時沈滞化しました。

○しかしながら1990年前後から、高レベル放射性廃棄物の処分に対する関心が高まり、また、我が国において核種分離・消滅処理技術研究開発長期計画(通称オメガ計画)が1988年からスタートしたことなどから、現在、日本、フランス、ロシア、米国で研究が活発に行われています。

○これまで、多くの研究がなされ、成果も蓄積されていますが、核種分離・消滅処理の実現に向けての費用対効果について、様々な考え方等によって意見が分かれており、まだ実用化を判断する段階には至っていません。

○しかし、核種分離・消滅処理は、放射性廃棄物を低減できる技術として、その可能性を追求する意義は大きく、国際協力のもと長期的観点に立って研究を進めていく必要があります。