資料 第3−4号


FBR燃料サイクルの経済性について



平成9年4月15日
動力炉・核燃料開発事業団



 ○動燃事業団が取り組んでおります燃料製造及び再処理を中心としたFBR燃料サイクルについて、その経済性の見通しについて以下に述べます。


1.実用化目標

 ○FBRの実用化時期を2030年と想定し、同時期の軽水炉の発電コストと競合可能とするという経済性の目標を設定しました。FBRの建設費は軽水炉並を目標に開発が進められており、上記目標を達成するため、燃料サイクル費を軽水炉と同等以下にすることを目標にしています

 ○このためには、(1)燃焼度を上げることで燃料の消費量を減らし、燃料製造および使用済燃料再処理などの作業量を削減すると共に、(2)含まれるプルトニウム量が多いこと等により割高となっている単位重量当りの燃料サイクル単価(燃料製造単価、再処理単価)を削減することが必要です。

1)燃焼度の目標


(注)MWd/t:燃料1トン当たりの発熱量(千kW×日)

2)燃料サイクル単価の目標


(注)湯浅、エネルギー経済、第17巻第12号


 
2.現状技術レベルの経済性

 ○将来の経済性達成見通しの算定に先だち、現在までのプラント実績と経験を基に、2000年に運開するプラントを想定し、燃料サイクル単価を試算することによって、今後さらにどれだけの経済性向上のための努力が必要かを検討するため、現状技術レベルの経済性の把握を行いました。


(注)RETF:動燃東海に建設中のリサイクル機器試験施設
   CPF:動燃東海にあるFBR再処理技術実験施設
   TVF:動燃東海にある高レベル廃棄物ガラス固化施設

 ○試算の結果、現状技術レベルにおいてFBRの核燃料リサイクルを実現したと仮定すると、燃料製造単価は軽水炉の約5倍、再処理単価は軽水炉の約4倍と算定されました


3.研究開発課題とコストダウン見通し

 ○前述のとおり、燃料の燃焼度を上げることで、燃料サイクル費の低減が期待できます。試算によると、燃焼度を実用炉レベルの15万MWd/tに向上させることで、燃料サイクル費は約4割削減可能になります。この燃料の高燃焼度化のため、高性能燃料や長寿命炉心材料の開発を進めています。(図2)

 ○燃料サイクル単価(製造単価と再処理単価)の目標を達成するための 研究開発としては、図3に示す各項目が挙げられます。

 
 ○2010年頃を目途に、機器・設備の高度化・合理化、検査や保守の方法の合理化や運転自動化等のための研究開発を実施することで、施設建設費・操業費・部材費の削減等を目指します




4.実用化展望

 ○図8に示すように、図3に示す研究開発課題(2010年頃を目途にした課題)を解決することにより燃料サイクル単価を目標値までに低減できる見通しをこれまでに得ており、燃料サイクル費を軽水炉サイクル並まで低減できると考えています

 ○さらに2030年頃を目指して、粒状燃料を利用した簡易な集合体構造をもつ革新型燃料集合体の開発導入等により、図8に示すようにさらなる経済性向上をねらうことが可能です。これにより図9に示すように燃料サイクル費において軽水炉サイクルに十分競合しうるFBR燃料リサイクルを構築できると考えています

 ○この他、先進的核燃料リサイクル技術として、乾式再処理や新型燃料の開発を進めており、思い切ったプロセスの簡素化、再処理と燃料製造施設の一体化等により、さらに燃料サイクル費の大幅な削減を目指しています。

 ○一方、原子炉の建設コストにおいても軽水炉並みという見通しが得られており、以上述べたような燃料サイクルの経済性見通しと併せて、将来のFBR発電コストは軽水炉発電コストと競合可能と考えています


5.FBR燃料サイクルに関する研究開発費
(主要施設の建設費、操業費を除く)

 ○FBR燃料サイクルに関するこれまでの研究開発費は、燃料製造関係で総額約300億円、再処理関係で総額約350億円です。

 ○今後、2010年頃までを目途とした研究開発費は、燃料製造関係で約570億円、再処理関係で約500億円を予定しています。

                                        以 上