高速増殖炉懇談会（第２回）議事要旨

資料第３－１号

高速増殖炉懇談会（第２回）議事要旨

１．日　時：平成９年３月２７日（木）１４：００～１７：００

２．場　所：科学技術庁第１、２会議室

３．出席者：

（原子力委員）

藤家委員、依田委員、田畑委員

（専門委員）

西澤座長、植草委員、内山委員、岡本委員、木村委員、河野委員、

小林委員、近藤委員、鷲見委員、住田委員、竹内委員、中野委員、

松浦委員、吉岡委員

（招へい者）

栗田幸雄福井県知事

（科学技術庁）

加藤原子力局長、木村動力炉開発課長

（通商産業省）

谷口資源エネルギー庁審議官、中富新型炉開発企画官

（動力炉・核燃料開発事業団）

須田副理事長、相澤動力炉開発推進本部副本部長

４．議　題

（１）各界からの意見聴取及び議論

（２）その他

５．配布資料

資料第２－１号　高速増殖炉懇談会（第１回）議事要旨

資料第２－２号　これまでの高速増殖炉開発政策の変遷とその際の主な議論
　　　　　　　　　　　［村田浩（社）日本原子力産業会議副会長］

資料第２－３号　アスファルト固化処理施設火災爆発事故の概要
　　　　　　　　　　　［動力炉・核燃料開発事業団］

資料第２－４号　「もんじゅ」事故第５報報告書の概要及び「常陽」の運転状況について
　　　　　　　　　　　［動力炉・核燃料開発事業団］

資料第２－５号　今後の高速増殖炉懇談会の進め方（案）

委員等配布資料
[藤家原子力委員]
○原子力～総合科学技術への道～
[小林委員]
○１９９７年２－３月の福井地元の動き
［吉岡委員］
○ 高速増殖炉政策のデシジョンツリー（改訂版）
○ 高速増殖炉懇談会の検討項目チェックリスト
○ 科学技術庁のＦＢＲパンフレットに関するコメント
○ 「日本の原子力発電政策の合理化へ向けて－４つの路線の合理性の総合評価の試み－」、（吉岡斉『比較社会文化』第３（１９９７年）、１～１０ページ）

６．概　要

（１）: 西澤座長より開会宣言が行われた後、事務局より配布資料の確認が行われた。
（２）: 西澤座長より、委員から配布希望の資料が届いている旨の紹介があり、座長判断により配布することになった。また、今後は座長に資料配布の判断を任せてもらいたい旨の提案があり、了承された。
（３）: 動力炉・核燃料開発事業団（以下、「動燃」）東海事業所で起きた「アスファルト固化処理施設火災爆発事故」に関して、動燃須田副理事長より陳謝があり、今後、原因究明と再発防止に最善の努力をしたい旨の発言があった。
（４）: 議題（１）について、栗田福井県知事より、地元自治体首長としての意見、要望等についての発言があった。主な発言内容と質疑等は以下の通り。

＜主な発言内容＞

昨年１月に３県知事提言をし、国は提言を真摯に受け止め、「情報公開の推進および政策決定過程への国民参加の方針」の決定、円卓会議の精力的開催、ＦＢＲ懇談会の発足をして頂き、敬意を表する。
福井県には１５基の原子力発電所が立地し、我が国の原子力発電量の約３割、関西電力の発電量の約５割を占め、エネルギー政策、原子力政策に先駆的に協力してきた。
「もんじゅ」の立地に際しては、国が安全性の確保に責任を持つことなどを前提に同意した経緯がある。
「もんじゅ」でのナトリウム漏洩事故の発生及び情報公開などの不適切な対応等から、地元及び国民全体に原子力政策に対する不安感と不信感を与えたことは極めて遺憾。
核燃料再処理施設での放射能放出や被ばくを伴う事故の発生及びその後の不適切な対応は、「もんじゅ」事故の教訓が生かされておらず誠に腹立たしい。得られる様々な教訓を今後の核燃料サイクル政策に確実に反映させる努力が必要である。
プルサーマル計画をはじめとする核燃料サイクルの推進には、国民、県民に安全性等に不安があり、今回の事故で事業者に対する不信感が増幅された。従って、国が前面に立って、国民全般にわたる合意形成に向けて、より一層の取組みが必要。
「もんじゅ」事故については、原因を徹底的に究明し、設計思想や安全審査の在り方まで溯って、総点検し、改めて「もんじゅ」全体の安全性を確認する必要がある。
高速増殖炉の在り方については、現行の長期計画の視点や位置付けにこだわることなく、いろいろな観点からの幅広い議論を行い、その在り方を国民に明確に示してもらう必要がある。
その検討に際しては、技術的安全性の観点はもとより、（１）その意義と必要性、（２）プルトニウムを巡る国際環境及び海外の状況、（３）その経済性や開発体制のあり方、（４）軽水炉の高度化やプルサーマル計画との関係、（５）安全審査や評価システムのあり方、（６）実証炉が中止となった新型転換炉「ふげん」の取扱い、など総合的に検討、判断される必要がある。
「もんじゅ」立地県として、高速増殖炉開発の是非や「もんじゅ」の位置付けが事業者と地元との矮小化された関係では困る。懇談会の結論をまとめる際は、その内容を情報公開し、消費地も含めた幅広い国民の意見を的確に反映させるとともに、国民合意形成に努める必要がある。
昨日、「もんじゅ」再開反対署名、１６万５千人分が提出された。事実も良く認識してほしい。
当懇談会では、大局的かつ幅広い議論をしてもらい、国民が納得する方向をとりまとめてほしい。また、国民の声を幅広く聞く様な機会を設けることも検討してほしい。

＜質疑等＞

今年１月３１日の原子力委員会決定及び閣議了解では、将来的な全体像が明確でないままプルサーマルを始めことになっており、三県知事提言に答えていないのではないか。また、民間事業を含めた原子力開発全体について、国が事実上の責任者というのは世界的にも希である。軽水炉発電についても国としての方針に基づいて進めるべきであると考えるのか。（吉岡委員）
議会にも説明を受けたが十分ではないため、今後さらにプルサーマルについての国の説明を聞き、また、提言との関係を明確にしてもらう必要がある。軽水炉についても原子力政策の一環であるので、国に合意形成を求めたい。（栗田知事）
国民的な合意形成とはどういうものをイメージしているのか、また、当懇談会の結論はそれにどのように関わるのか。（住田委員）
尺度を示すことは難しい。国会で十分な論議がされ、懇談会等で国民の意見を集約して原子力政策が打ち立てられ、県議会や地元自治体で議論することと考えるが、国民や県民が納得できる政策を打ち出してほしい。また、当懇談会で、方向付けされた場合には、説明あるいは情報公開を通じて国民に理解を求める努力をしてほしい。（栗田知事）

（５）: 第１回会合に欠席された木村委員と住田委員より、抱負や本懇談会に対する期待等について述べて頂いた。

＜木村委員＞

原子力は海外の技術導入ではだめで、トライ・アンド・エラーで進めてきた。
原子力は驚き、幸せ、喜びを与えるものではなく、代替エネルギーとしてやむなく開発したもの。
原子力に関して絶対過ちがないとは言えず、我が国としてやらざるを得ない。不安があることをビルトインし、同じ不安を分かち合う必要がある。
動燃は、不安を抱えながらそれが実感できる芸術的、文化的な分野の人を入れるべき。科技庁もしかり。
互いに不安を抱えながら、少しでも安心できる結論を導き出したい。

＜住田委員＞

人間が係わる限り、ある程度の事故は起こり得る。人間の英知をつのり、それを防止するための方策をつくすことで、事故の生じる危険性を減少させることができると思う。
ＦＢＲが人知の及ぶことができないのか、解決できるのか見極めていきたい。

（６）: 議題（１）について、村田浩（社）日本原子力産業会議副会長より、「これまでの高速増殖炉開発政策の変遷とその際の主な議論」についての講演が行われる予定であったが、病気のため延期とすることとし、藤家原子力委員より、高速増殖炉も含めた原子力開発について講演があった。主な講演内容、質疑等は以下の通り。

＜主な講演内容＞

原子力は総合科学技術であり、利用から調和への転換が必要。
原子力エネルギー開発に当たって、「エネルギーの汎用性と高効率利用」、「長期に亘る資源の確保」、「放射性物質の消滅・処理」、「安全の確保」の４つの項目の同時達成が究極の目標であり、このための優秀な人材を保持していく必要があり。柔軟性のある対応を当面図っていくべき。
長期計画は、この究極の目標と当面の課題の中間に在るべきもの。
また、村田副会長が準備した資料を一部説明。

＜質疑等＞

広義の原子力とのとらえ方については賛成できず、核分裂に限定して議論した方がよい。（吉岡委員）
物理的なイメージとして説明。「総合科学技術」を述べた。１９世紀末以来のラザフォード、フェルミ、ボーア等が切拓いた分野を総体として見るべき。（藤家原子力委員）
消滅処理が出来れば、高速増殖炉推進路線として大きなメリットである。フィージビリティーの厳格な評価が必要だ。しかし、絵に書いた餅に終わるかもしれない。現在も基礎実験に止まっているのは何故か。（吉岡委員）
消滅処理に関し、科学的解は有るが、工学的アプローチを目指す時代である。どの核種をターゲットにすべきか絞り込みは出来ている。（藤家原子力委員）
村田副会長のメモでは、原子力のメリットのみを列挙しているが、デメリットも含めて総合判断すべき。こうした論理構造はよくない。（吉岡委員）
開発初期の人々の気運の高揚の様子を聞きたかった。「国際貢献」については、固有の問題を抱えている日本では、各国がどうあろうと我が道を行くべき。本音で必要性をうたった方が良い。もっとプリミティブな議論をすべき。（河野委員）
「国際貢献」は別の観点から危険。１００万ｋＷｅのＦＢＲ１基で年に数１００kgの兵器用プルトニウムを生産できる。本当に国際公共財として良いのか、危険なこと。米国は核不拡散の観点からＦＢＲをやめた。（吉岡委員）
経過期間を考慮した上で議論すべき。科学的、技術的、社会的フィージビリティを考慮すべき。まず、科学的にフィージブルであることが大事であり、ＦＢＲについては既に証明されている。今、ＦＢＲについては、技術的可能性を確立する時代。今、科学的成立性から、技術的成立性に向けて、どういう段階にあり、何が欠けているのか、社会的成立性に向けて何を必要としていくのかを、ここで議論すべき。国民の選択として、我が国だけでなく、人類への貢献も大事。（近藤委員）
「国際貢献」について、原研は多くの国々から協力要請の事実がある。「消滅処理」に関しては、原研としてもやっているので、いつか説明したい。（松浦委員）
立地地域住民の了解が極めて大事。結論として、長計の見直しをすべき。それなくして、知事も地元の了解は得られないという気持ちだと思う。常に立地地域の立場を考えてほしい。（小林委員）
研究は国際貢献は当然。これを強調しなければならないことが日本の科学の問題だと思う。今回の事故もローテクの所で生じている。ハイテクに付随するローテクの問題。メンタルな面で問題にすべき。（西澤座長）

（７）: 資料第２－３号に基づき、動燃の須田副理事長より、東海事業所で起きた「アスファルト固化処理施設火災爆発事故」の概要について説明があった。また、資料第２－４号に基づき、相澤動力炉開発推進本部副本部長より、「もんじゅ」事故第５報報告書の概要及び「常陽」の運転状況について説明があった。主な質疑等は以下の通り。

＜アスファルト固化処理施設火災爆発事故の概要について＞

動燃の出向、下請け等の人員構成について知りたい。社員同士がうまく連絡を取り合っていないのではないか。出向体制が巧く行くと思えない。そういう意味から判断したいので、正確な数値を是非公表して欲しい。（中野委員）
「もんじゅ」事故の反省の下で連絡通報体制、広報体制、情報の公開の体制の改善に努力してきた。今回の東海での事故時の対応についても、十分でなかったことと思い反省している。現地に情報が集中しすぎたことが問題で、もっと総合的に把握し、報告すべきであった。迅速性と正確性と整合性において反省すべき点が多々ある。（須田副理事長）
若い人は組織が判っていない。勝手にやって報告しない。危惧していた。今までどのくらいアスファルト固化体処理して事故がなかったかを補足説明すべき。（西澤座長）
昭和６０年から１０数年間でドラム缶３万本を処理した。３本／日の処理までが可能。（須田副理事長）
廃棄物の分野は日本のウイークポイントではないか。ハイテクと関係なく人手が必要な分野。なぜ今のような情報化の時代に秒単位で中央に情報が入らないのか不思議。そういうところにお金を掛けることも重要。組織の問題、メンタルな問題も極めて重要。責任体制を明確にすべき。今後の対応が①、②で終わっているのは疑問。極めて早期に設備、組織の問題等の改善をしてほしい。（竹内委員）
「第１報の遅れ」は指摘の通り。現場で判明したら在りのまま情報を出すという方策を考えている。動燃は、約２８００人の職員に対し、約３１００人の外部からの協力を得ている。定常業務については専門の会社に委託するなりの形をとっている。研究開発の方に、重点的に職員を投資するのが動燃の宿命と思う。（須田副理事長）
原子力の安全性というより、事故が起こった際の国の関与はどうなっているのか。責任は動燃ばかりでなく、科技庁、原子力委員会も。経営のやり方、対応の仕方、体系、責任がどうなっているか、監理体制はどうなっているか示してほしい。対策をやっていると言うが、管理における問題をどう見直すかは論じられていない。（植草委員）
研究者は技術的課題の中心に目が向く。その周辺は関心が薄くなるが、そういうところから事故が起こりやすいものである。電力業界のように供給義務があると全システムをチェックする機能がある。そういうところを参考に、安全に対する管理体制を全体に亘って確立してほしい。（内山委員）
情報公開の不手際を反省するより、こんな爆発事故まで拡大させない体制をどうするか、それを直ちにやってほしい。（河野委員）
摂取量について線量限度と比べての割合を書くのでなく、絶対値を出してほしい。（吉岡委員）

＜「もんじゅ」事故第５報報告書の概要及び「常陽」の運転状況について＞

熱電対の曲がりがなぜチェックされなかったか。事後に曲がりをチェックできるのか。また、異なる２つの腐食機構があったと推定されているが、それだから何なのか、結論がない。（吉岡委員）
曲がりのチェックは技術的には不可能ではないが、難しい技術と考える。反省点は曲がりのチェックと考えてはおらず、設計ミスと考えており、新しい設計に全数交換する。腐食機構の話は、対策として溶融塩型腐食を防止することが大事と考えている。これを防げることを安全総点検の中でチェックしていき、必要な対策をとる。（相澤副本部長）
高温溶融塩型腐食こそ国際貢献のために発表してほしい。（西澤座長）
事故の際は、国もそれぞれの立場から責任を有している。別の機会に説明したい。（事務局）

（８）: 資料第２－５号に基づき、事務局より、今後の高速増殖炉懇談会の進め方（案）及び議事録の取扱いについて説明が行われた。主な質疑等は以下の通り。

＜進め方について＞

幅広い意見を聴取するのを数回続けるのは賛成である。その上で改めて、審議にどういうアイテムを議論をするかを決めたい。その際におさえておくべきチェックリスト２０項目を提案したい。また、報告書作成に関して、報告書の原案は各委員が書き、この場で内容を詰めていくことが必要。また、前回配布の科学技術庁パンフレットに対する意見をまとめたので読んでほしい。（吉岡委員）
資料第２－５はたたき台。日程を決めることは賛成せず消してもらった。情勢を見ながら判断するということ。（西澤委員）
「もんじゅ」の在り方を検討する参考とするために、「常陽」の開発の経緯およびＡＴＲ中止のいきさつを説明してほしい。（中野委員）
科技庁に要求しておく。（西澤委員）
当懇談会の３時間は長すぎ、もう少し効率化して欲しい。きちんとテーマを決めて根本的なことを議論するようにしないと長続きしない。（植草委員）
趣旨に沿うようにしたい。場外での議論も是非活用してほしい。（西澤座長）
中野委員の要求に応ずる資料と吉岡委員のパンフへの質問への回答は早期に用意したい。吉岡委員提案のチェックリストは事務局案で概ね包らくされていると考えられる。あとは、どれだけ深くやるかである。（事務局）
フェーズ２にもんじゅ総点検の状況聴取があるが、中間かファイナルか。（小林委員）
今年度末に中間、６、７月を目標に報告書という努力目標を動燃がもっている。適宜状況を聞くということ。（事務局）

＜議事録について＞

逐語的議事録は、発言したことを文章にするとニュアンスが変るという意見や、記録として残すのは要旨で十分、報告書作成の際にも要旨の方が役立つ、等の意見、また、委員は、国民に対して責任があるとの意見があり、議事録の取扱いとしては、記名で要旨のみ配布することとし、テープは希望のあった人に聞かせるということになった。

（９）: 次回を４月１５日（火）の１４時、第４回を５月８日（木）の１４時、第５回を５月２６日（月）の１０時に開催することとし、閉会した。
（10）: 内山委員より、次回資料を提出したい旨の発言があり、了承された。

高速増殖炉懇談会構成員

秋元　勇巳　　　三菱マテリアル（株）取締役社長

植草　　益　　　東京大学経済学部教授

内山　洋司　　　（財）電力中央研究所経済社会研究所上席研究員

大宅　映子　　　ジャーナリスト

岡本　行夫　　　外交評論家

木村尚三郎　　　東京大学名誉教授

河野　光雄　　　内外情報研究会会長

小林　　巌　　　フリージャーナリスト

近藤　駿介　　　東京大学工学部教授

住田　裕子　　　弁護士

鷲見　禎彦　　　関西電力（株）取締役副社長

竹内佐和子　　　長銀総合研究所主任研究員

中野不二男　　　ノンフィクション作家

西澤　潤一　　　東北大学名誉教授（前総長）

松浦祥次郎　　　日本原子力研究所副理事長

吉岡　　斉　　　九州大学大学院比較社会文化研究科教授

（平成９年３月時点）