| 資料２－４ |
「もんじゅ」事故第５報報告書の概要
及び「常陽」の運転状況について
動力炉・核燃料開発事業団
１．「もんじゅ」事故第５報報告書の概要
１．１ 事故に係る原因究明調査
（1）破損温度計の特殊性に関する調査
- 当該温度計さや管は、ナトリウムの流動に伴う振動により、さや段付部において高サイクル疲労による破損が生じました。その原因は２次系温度計さや管の設計が不適切であったためと判明しています。
- また、他の２次系温度計さや管には異常が認められなかったことから、さや管の流力振動に影響を与える因子等について検討し、さや管に挿入されていた熱電対の曲がりが影響したと推定しました。
- 水流動試験の結果、さや管の中にある熱電対が段付部近傍で曲がっている場合には、熱電対による振動抑制効果が小さくなり、さや管に顕著な振動が発生し、熱電対の方にはさや管との摺動による小判状の擦り傷が残ることが分かりました。同様の擦り傷が、破損したさや管の熱電対に確認されたため、当該温度計さや管では熱電対が曲がった状態で挿入されていたことが個体差となって、流力振動が顕著に発生し高サイクル疲労破損に至ったものと判断しました。
（2）「もんじゅ」事故に伴うエアロゾル等の機器への影響調査
- 建物内に拡散したナトリウム化合物（エアロゾル）は、床、壁に付着しましたが、はけや真空掃除機を用いて清掃し、平成８年７月１日からは平常の服装で作業や見学が可能となっています。
- エアロゾルの付着した配管、機器、制御盤等については、全機器を対象に清掃を行うとともに、外観点検、電気点検を実施し、さらに、モータ、配管支持装置等の代表的機器は分解点検を含む詳細点検を実施しました。これらの点検結果と構造材料にエアロゾルを付着させて実施した健全性確認試験結果から、機器類へのナトリウム化合物の影響は生じておらず、構造・機能に問題はないことを確認しました。
（3）「もんじゅ」事故における漏えいナトリウム燃焼挙動及び床ライナ等への影響調査
- 「もんじゅ」における換気ダクト、グレーチングの欠損及び床ライナの肉厚減少の機構と推定された高温化学反応に関する試験及び大洗工学センターにおけるナトリウム漏えい燃焼実験結果との比較調査を行い、「もんじゅ」事故での材料の損傷は、ナトリウム・鉄（Na・Fe）複合酸化型腐食によるものと判断しました（1.2（1）参照）。
１．２ ナトリウム漏えい燃焼実験等を踏まえた安全性向上のための課題
（1）床ライナ等損傷機構の解明
- ナトリウム配管周辺機器を実寸大で模擬した実験を大洗工学センターで行い、漏えい燃焼挙動等を確認しました。その結果、燃焼実験IIでは床ライナが破損し、「もんじゅ」事故と異なる現象となりました。
- このため、堆積物の化学分析、床ライナ等の金属組織観察、元素分析、材料及び付着物のX線回析等を行い、「もんじゅ」事故と燃焼実験IIとの腐食環境や減肉機構の違いを評価しました。
- これらの結果、「もんじゅ」事故では、燃焼期間中において発生した湿分の量は少なく、床ライナ上の堆積物は殆どが酸化ナトリウム（Na2O）であり、水酸化ナトリウム（NaOH）は極めて少なかったことから、Na2Oと床ライナ鋼板（Fe）が高温で反応するNa・Fe複合酸化型腐食が生じ、一様な腐食形態となったことが判明しました。
- 一方、燃焼実験IIでは、実験を行った部屋の容積が小さかったこと等から燃焼に伴い部屋の温度が高温になり、コンクリート部から多量の水分が発生しました。このため、床ライナ上に堆積したナトリウム燃焼生成物として水酸化ナトリウム（NaOH）が生成され、これに溶け込んだ過酸化ナトリウム（Na2O2）からの過酸化物イオンにより腐食速度の大きい溶融塩型腐食が生じ、「もんじゅ」の場合と全く異なった腐食機構が支配的となったことが判明しました。
- さらに、実験によりNa・Fe複合酸化型腐食と溶融塩型腐食の腐食速度を求め、溶融塩型腐食では腐食速度が約５倍程度大きいことを確認しました。
（2）安全性向上のための課題
- ２次系ナトリウム漏えいに対する防止及び影響緩和対策設備の充実とプラント運用方法の具体化に際して、これら対策・対応等の有効性を確認するために、以下の課題に取り組んでいく考えです。
-
①ナトリウム漏えい燃焼挙動に関する課題
- 中小規模破損時のナトリウム漏えい燃焼挙動に関する検討
- ナトリウム燃焼生成物（エアロゾル、堆積物）の化学組成に注目した検討
- 中小漏えい時の局所的な床ライナ温度上昇に関する床ライナ健全性の検討
- 関連する材料データの整備
- ナトリウム燃焼生成物による腐食減肉に対する床ライナ等の健全性確保の判 断基準の整備
- ナトリウムの漏えい率、換気空調系の運転等を考慮し、床ライナ温度の上昇や腐食減肉挙動に着目して床ライナ等の健全性が確保できることの確認
②床ライナ等の健全性に関する課題
③安全評価に関する課題
１．３ まとめ
- これまでの調査により、ナトリウム漏えい原因や漏えいしたナトリウムの燃焼による影響調査等、今回の事故の直接的な原因や機器等への影響に関する原因究明は終了致しました。
- 今後は、今回の事故原因調査で明らかとなった反省点や課題を真摯に受け止め、「もんじゅ」の安全性を向上させるため安全総点検を確実に実施していくとともに、ナトリウム燃焼挙動の評価及びナトリウム漏えい対策を充実し、安全確保に万全を期していきます。
福井県及び敦賀市をはじめとする地元市町村等との安全協定に基づく
「異常時発生連絡書」の提出経緯
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第１報報告書（平成７年１２月１９日）
- 当該温度計さや管の細管部が喪失しているのを確認
- 漏えい部近傍の堆積物の成分は殆どが酸化ナトリウム、各部屋のナトリウム化合物成分は炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム
- 漏えい確認時点で即時原子炉手動停止、漏えいの早期検知、早期収束及び拡大防止のための設備改善、手順書の改訂、教育訓練の充実の必要性を認識
- 配管内を流れるナトリウムの流体力により、さや細管部に振動が発生し、さや段付部に高サイクル疲労が生じて破断に至ったと判断
- ナトリウムを内包する機器としての認識が不十分、温度計の設計、製作段階での管理ミス、流力振動に関する新知見の反映を怠ったことに問題
- 漏えい量は640±42kgと評価、うち約420kgを建物内で回収、建物外に排出されたナトリウム化合物による環境への影響は無いことを確認
- 炉心冷却能力の確保、崩壊熱除去機能維持のための系統分離の確保の観点からは問題ないことを確認
- 明らかとなった問題点、反省点を基に、設備、手順書、教育訓練についての点検実施と改善方策策定の方針
- 高速増殖炉の高性能燃料
- 材料を開発するための照射試験
- フランスのフェニックス炉との交換燃料照射
- 日本原子力研究所との共同研究による窒化物燃料等の新型燃料の照射
- 核融合炉材料などの材料開発を目的とした大学連合からの受託照射等
○事故の発生状況と通報連絡の実績、事故の影響調査、現場状況調査 ↓ 第２報報告書（平成８年１月２４日）
○温度計部のＸ線撮影
↓ 第３報報告書（平成８年３月２６日）
○漏えい時の運転操作等の評価
↓ 第４報報告書（平成８年９月２０日）
○ナトリウム漏えい原因の調査
２．高速実験炉「常陽」の運転状況について
- ○高速実験炉「常陽」は昭和５２年の初臨界以来、約２０年に亘って安全・安定に運転をしてきています。「常陽」は、平成７年５月より第１１回の定期検査を開始しました。
- ○同年１２月に発生した「もんじゅ」２次主冷却系ナトリウム漏えい事故の教訓を踏まえた安全性の再点検と向上方策の検討を目的として、設備・マニュアル類の点検や定期検査項目の追加、並びに漏えい対策設備の改善等の対応を行いました。
- ○このために、定期検査の日程を当初予定より８カ月間延長し、慎重に検査を実施してまいりました。
- ○平成９年３月２４日に定期検査の最終検査を受検し、同日より第３０サイクル運転に入っております。なお、運転再開に先だって、東海事業所のアスファルト固化処理施設の火災・爆発事故を踏まえ、設備やマニュアル、通報連絡体制等について再度入念な点検と確認を実施致しました。
- ○「常陽」では、
- ○高速中性子照射が行える原子炉は世界的に見ても数少ないことを踏まえ、今後とも、国内外の研究機関との連携を一層緊密にし、透明性・公開性に意識しつつ研究開発の用に供していくことと致します。
- ○このため、内外の機関からの多種多様な照射要求に的確に応えるべく、「常陽」の照射炉としての能力を高めるための炉心性能の高度化計画（MK-Ⅲ炉心計画）を進めてまいります。
- ○「常陽」の運転工程としては、平成９年度中に４サイクルの運転を実施し、平成１０年度に第１２回の定期検査と２サイクルの運転を行う予定としています。
- ○その後、第１３回定期検査中に冷却系設備の改造等を行った後、MK-Ⅲ炉心を臨界に至らしめる予定でおります。
「もんじゅ」の換気ダクト等の欠損や床ライナの肉厚減少は、ナトリウム・鉄複合酸化型腐食によるもの
事故に伴うナトリウム化合物（エアロゾル）の機器類への影響は無いことを確認
| 温度計さや管の中の熱電対が、さや段付部で曲がって挿入されていたことにより 当該温度計のみが破損したと判断 |