高速増殖炉開発に対する主な批判的意見
1. 高速増殖炉開発の位置付け
○エネルギー供給における位置付け
- ウランは余っており、当面プルトニウム利用の必要性はない。
- 高速増殖炉は将来日本の一次エネルギー需要の5%程度しか賄えない。
- 現実的に増殖が可能なのか不明。
- 増殖によって燃料が倍になる倍増時間が90年と長く、将来のエネルギー供給に役に立たない。
- プルトニウムリサイクルは数回位で、有効利用はせいぜい10〜20%増。
- 高速増殖炉技術の困難性により、実現可能性が不透明。(長期計画における実用化目標が先送りされている)
- 各国は高速増殖炉開発から撤退している。
- エネルギーセキュリティーの観点から、政治的・社会的に不安定なエネルギー。
- 新エネルギー開発等に力を入れるべき。
○環境に対する影響
- 原子力も、建設、燃料製造、輸送等で大量のCO2を排出する。
- プルトニウムはきわめて毒性が高く、大事故が起こったら影響は大きい。
- 高レベル廃棄物は処分方法が確立しておらず、後世代への大きな負荷になる。
- マイナーアクチニド消滅による廃棄物の環境負荷低減は疑問。
○経済性
- 原子炉コストは、軽水炉より高い。
- 莫大な研究開発費がかかる。
- 燃料サイクルコストも軽水炉より高く、発電原価は軽水炉より高い。
2.安全性
○炉心における事故に対する安全評価・対策が不充分。
- 炉心の内側で正のボイド反応度を持っており、核暴走しやすい。
- 炉心溶融事故が起こる可能性がある。
○ナトリウムは水と激しく反応し危険であり、ナトリウム取扱い技術は困難。
- 英国の原型炉PFRでの蒸気発生器伝熱管破断事故。
- ナトリウム火災に対する評価、対策が不十分。
○薄肉の構造なので耐震性が問題
○高速中性子による原子炉の劣化は早い。
3.核不拡散
- 原子炉級のプルトニウムでも核爆弾が作れ、高速増殖炉からは、さらに高純度のプルトニウムが作れる。
- 現在の保障措置では核兵器への転用を防ぐことはできない。
- 核物質防護を口実に、市民の自由が奪われる。
4.開発政策、開発体制、安全審査体制等
- 高速増殖炉の将来の導入計画(時期、容量等)が明確になっていない。
- 電力会社、大企業の利益を守るためだけの開発体制(護送船団方式)になっている。
- プロジェクトの厳しいチェック・アンド・レビューを行うべき。
- 安全性、経済性等に関する十分な情報が公開されていない。
- 政策決定における閉鎖性。
- 行政庁と原子力安全委員会の独立性。充実したスタッフ陣を持つべき。
5.高速増殖原型炉「もんじゅ」
- 開発の責任体制が不明確。
- 開発を動燃に任せてよいのか(体質)。
- 実験炉「常陽」の成果が原型炉「もんじゅ」に生かされていない。
- 安全審査が不充分(想定事象の抜け落ち)。
- 性能試験を白紙に戻し、安全性が確保されるまで、運転を凍結すべき。
- 危険が高く、しかも経済性が無い原発である「もんじゅ」は廃炉にすべき。
- もし、「もんじゅ」の運転再開を目指すのであれば、どの程度の追加資金が必要となるか明確にすべき。
6.実証炉以降
- 原型炉の技術的達成に関する厳格なチェック・アンド・レビューが行われる前に、実証炉の開発計画を進めるのは、フライング。
- 実証炉には原型炉までと異なる新しい炉型が採用されるのだから、いきなり実証炉ではなく、実験炉、原型炉を造り直すべき。
- 経済性達成のために2次ナトリウム系を削除するなど危険。
7.その他