資料 第1‐7号


「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の概要



動力炉・核燃料開発事業団


1. 事故の原因究明等

(1) 事故の概要
  試運転中の高速増殖原型炉もんじゅで、1995年12月8日19時47分、2次冷却系配管(Cループ中間熱交換器出口配管)からナトリウムが漏えいする事故が発生しました。

  「もんじゅ」は、1994年4月初臨界達成後、原子炉の特性を確認し、1995年2月より 原子炉出力を段階的に上げる試運転を進めました。ナトリウム漏えい事故は、原子炉出力約45%での試験のために、原子炉出力を徐々に上昇させる操作を行っている時に発生しました。
  この操作を行っていた8日19時47分、中央制御室に「中間熱交換器C2次側出口ナトリウム温度高」という警報、また、同時に火災検知器(煙感知器)も発報しました。さらに1分後、「C2次主冷却系ナトリウム漏えい」という警報が出ました。これは、2次主冷却系Cループの配管室でナトリウムが漏れたことを示しています。
  このため、直ちに中央制御室に居た運転員が駆けつけCループ配管室の扉を開け、煙が発生していることを確めました。これによりナトリウム漏えいが起きていることを確認しましたが、漏えい量を確かめる<指示計に、すぐに判るような変化がなかったので小規模な漏えいと判断し、20時に原子炉を手動で通常の手順で停止する操作に入りました。この操作を行っている20時50分頃火災検知器の発報した部屋の数が急に多くなったことに気付いたので、運転員が再度配管室の扉を少し開け内部を確認したところ白煙の増加が認められました。このため21時20分に原子炉を手動で緊急停止しました。原子炉停止後、22時55分より配管内のナトリウムの抜き取り操作を行い、24時15分に抜き取りを完了しました。換気系の運転は23時13分に停止しました。>

  現場調査により、ナトリウム漏えいは2次主冷却系Cループ中間熱交換器出口配管に取り付けられている温度計から漏れ出たもので、漏えい箇所の下に配置された換気ダクト、鉄製足場に穴があいていました。漏れ出たナトリウムは、床鉄板の上にナトリウムの化合物として堆積するとともに、空気中で燃える際にできる煙となって、2次冷却系Cループの各部屋に拡がりこれらの部屋の床や壁に付着していました。また、この煙の一部は、換気系から屋外へ放出されました。

(2) 原因究明
   大別すると次の3つの調査を実施し、終了しました。その結果は次の通りです。

1)ナトリウム漏えい発生原因の調査

2)漏えい時の運転操作に関する調査
  漏えいが発生した時の運転操作は、漏えいの確認、原子炉停止、ナトリウムの抜き取り、換気系の停止などの手順を定めた運転手順書に従って行われましたが、その際の運転操作や関連する装置について、漏えい量を少なくし、発生した煙の拡散を抑える観点より次の点で不適切であることが分かりました。


3)漏えいナトリウムの影響調査
 一方、技術的な観点の他、事故時の対外対応の体制が不十分であり、現場の状況が正しく外部の機関に提供されず、速やかな公表もされなかったという問題点がありました。
 この点については、動燃において情報の流通を円滑にし、事故時の通報連絡体制の強化を進めています。また「開かれた動燃」をめざし、分かり易い情報の提供をより速やかに、より適切に行っていきます。


2. 安全総点検について

(1) 安全総点検の考え方
 ナトリウムが漏れた原因やナトリウムが漏れたことによる影響の調査などの結果、問題点や教訓が明らかになりました。安全総点検は、これらを踏まえ、「もんじゅ」の安全性、信頼性のより一層の向上を図るために行うものです。
 具体的には、次の五つの項目を定め点検を行い、それぞれの点検で摘出された改善点については、改善方法についても検討することとしています。
1)今回の事故では温度計からナトリウムの漏えいが起きましたが、それ以外の配管や機器からのナトリウムの漏えい防止対策、さらに漏えい時の早期検出や拡大を防止し影響を小さくする対策に見落としがないか点検します。(ナトリウム漏えい関連設備を中心とした点検)

2)もんじゅ設備全体について設計当初の基本的考え方に基づいて、その後の詳細設計、製作、試験・検査が一貫性をもって実施されているか、また、ナトリウムに係わる技術については設計の考え方まで遡って点検を行います。
 さらに、運転性や保守性の面で、これまで行ってきた試運転の経験が反映されているか点検します。(設備の設計から運用に至るまでの点検)

3)保安規定や運転手順書類が事故の防止、早期収束の観点から運転員にとって分かり易く適切なものとなっているかを点検します。
 また教育訓練についても、「もんじゅ」の特徴を踏まえてその内容が適切であるかを点検します。(運転手順書等の点検)

4)高速増殖炉の研究開発の成果、常陽を含む国内外の原子力プラントの運転経験などが適切に反映されているか、また、最新の技術基準などに照らして適合しているか点検します。(研究開発成果、技術情報の反映の点検)

5)設計、製作・据付、試験・検査及び試運転に係る品質保証体系、活動が適切であるか点検します。(品質保証体系・活動の点検)

(2) 総点検の実施状況
 総点検を具体的に進めるための実施計画を科学技術庁原子力安全局に設置された安全性総点検チームや地元自治体などの意見を取り入れて取りまとめました。これに基づき1996年12月に総点検作業を開始しました。総点検は、計画や内容についてこれまで同チームの6回のレビューを受け、主に、流れによる振動で壊れるものはないか、2次系ナトリウム配管が健全であるかなどの事例を基に内容を確認しながら進めています。