資料 第1‐6号


高速増殖実証炉の開発について



日本原子力発電(株)



1.実証炉の概要

  1982年に決定された原子力委員会の「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(原子力開発利用長期計画)において、実証炉の建設・運転について、国の支援の下に電気事業者が積極的な役割を果たすことが示されたことを受けて、電力は、実証炉の開発に着手しました。

  1986年に、電気事業連合会(電事連)は、実証炉の開発を推進する立場から、実証炉1号の建設・運転について、日本原子力発電株式会社(原電)が実施主体となることを決定し、これを受けて、原電が実証炉の設計研究を進めてきました。

  原型炉から実証炉に向けての最大の課題であった経済性の向上に向けて、欧州で開発されたタンク型炉、及びループ型炉である「もんじゅ」を改良した炉型について比較評価を進めてきた結果、両炉型とも実証炉で目標としている経済性を達成できる見通しが得られました。

  この結果を受けて、1994年電事連において、実証炉は、原子炉容器、中間熱交換器及び一次主循環ポンプ容器を逆U字管で連結したトップエントリ方式ループ型炉とするなどの決定がなされました。(図−1

  実証炉が原型炉から実用炉への中間ステップであること踏まえ、原子炉容器、中間熱交換器、一次主循環ポンプが独立しており保修が容易であること、これらの機器をつなぐ配管が短く、全体が小型になり経済性が向上すること、我が国がこれまで開発してきた技術や経験が活用しやすいこと、さらに実用化に向けて、今後の新しい技術を取り入れ易いことなどが考慮されています。


2.高速増殖炉の経済性の見通し

  高速増殖炉の実用化にとって、安全性と信頼性を保ちつつ経済性の向上を図ることが重要です。このため、実用化時点において軽水炉並の経済性を達成することを最終目標として開発が進められています。(図−2

  高速増殖炉は、軽水炉に比べて、原子炉一次冷却材の温度が高いため効率が高いこと、冷却材の圧力が低いため機器が軽くできること、燃料物質が燃焼すると同時に、新たな燃料物質が生成されるので、長期間使用できる燃料が可能であることなど軽水炉に優る経済性を達成できる可能性があります。しかし、一方では、ナトリウムを冷却材に使用するため、二次ナトリウム系など軽水炉に無い設備があること、ステンレス系の高価な材料の使用が多いことなど軽水炉に比べて高くなる要因もあります。長所を積極的に活かし、不利な点を克服することで経済性が向上する見通しです。

  今後、プラントの大容量化、電磁ポンプによる熱交換器とポンプの一体化によって軽水炉並の経済性を達成される見通しであり、さらに、免震による機器の軽量化と設計の標準化、二次ナトリウム系の削除等により、さらなる経済性の向上が期待されており、その実現へ向けての研究が進められています。


3.実証炉の研究開発

  高速増殖炉の実用化への取り組みは、1994年に決定した原子力委員会<の原子力開発利用長期計画に沿って、電気事業者が進める実証炉の開発と、国を中心とした高速増殖炉の技術の研究開発を両輪として、官民連携の下に開発が進められています。>

  具体的には、高速増殖炉の研究開発に取り組んでいる動燃、原電(電力)、原研、電中研の国内関係機関は、1986年に設置した高速増殖炉研究開発運営委員会(運営委員会)を通じて、研究の運用及び関連する国際協力について、緊密な連携の基に円滑かつ効率的な推進を図っています。また、欧州の高速炉研究開発運営委員会と情報交換を行うとともに、米国とも原子力技術に関する情報交換を行っています。(図−3

  主要な研究開発としては、以下のものがありますが、すでに実施中か、解決の見通しが立っています。



     分  野               内  容
(1)プラントシステム設計      ・ナトリウム漏洩・火災に強いプラント
                   ・軽水炉の価格動向と連動した経済性向上
(2)安全              ・安全解析・評価技術の向上
                   ・安全評価・安全設計指針の確立
(3)炉心・燃料           ・安全性向上方策の効果の確認
                   ・燃料の被覆管、ペレットの開発と実証
(4)機器・設備           ・ナトリウム中の検査技術・映像化技術
                   ・経済性向上に寄与する大型電磁ポンプの開発
(5)構造・材料           ・新しい材料の基準化
   熱流動・耐震          ・ナトリウムを用いた設計の確証試験