は じ め に 第1章 クロスオーバー研究の位置付けについて 第2章 クロスオーバー研究の実施状況について 1.各技術領域における研究進捗状況 (1) 原子力用材料 (2) 原子力用人工知能 (3) 知的活動支援 (4) 原子力用レーザー (5) 放射線リスク評価・低減化 (6) 放射線ビーム利用先端計測・分析 (7) 原子力用計算科学 2.研究推進体制の現状 (1) 大学等及び民間研究機関との間のクロスオーバー研究 (2) 研究評価の実施 (3) 研究交流の推進 第3章 クロスオーバー研究の新たな展開について 1.第3期クロスオーバー研究の基本的考え方 2.クロスオーバー研究の効率化・活性化・高度化に係る推進方策 (1) 公募によるクロスオーバー研究の効率化・活性化 (2) 評価の充実によるクロスオーバー研究の効率化・活性化 (3) 研究交流の促進によるクロスオーバー研究の高度化・活性化 3.推進すべき研究テーマ (1) 放射線生物影響分野 (2) ビーム利用分野 (3) 原子力用材料技術分野 (4) 知能システム科学技術分野 (5) 計算科学技術分野 (参考1) 基盤技術推進専門部会における検討経緯、構成員等 (参考2) 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画 (平成6年6月24日原子力委員会)抜粋 |
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第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
第2期のクロスオーバー研究では突然変 異のミクロ/ナノレベルでの検出及びその 解析技術の開発を積極的に進めてきた。 第3期では、傷害修復・回復機構におい て重要な役割を担う生体機能因子の解明を 試み、放射線突然変異の検出・解析やその 変異誘発機構解明を行うための先端技術の 開発に役立てる。 このような視点に立 ち、損傷部位のナノレベルでの検出からそ の修復及び突然変異を誘発する一連の過程 の可視化を達成する。 |
(研究内容) 平成13年度まで放射線損傷機構の解析研究を進めることにより検出・解析技術を 開発し、可視化を達成する。平成14年度~15年度で修復機構の解明による回復促進 解析系への利用を図る。 (想定される研究課題例) ○ 放射線損傷修復機構の解析 ○ DNA損傷修復に働く分子複合体の構造と機能の解明 ○ 放射線感受性部位の高次構造の解析 ○ 放射線によるDNA2本鎖切断と突然変異誘発・抑制機構の研究 ○ 放射線損傷部位のナノレベルでのビジュアル化システムの開発 |
① 生物はある程度まで放射線に対す る抵抗性を持つとの報告もある。本 研究は、現在困難とされている障害 回復を促進させる方策の開発へ繋ぐ ことが期待される。 ② 細胞の損傷は放射線以外の環境変 異原によっても誘発される。修復機 構は放射線以外の環境因子にも共通 するものと考えられ、生物、基礎医 学分野の研究課題の1つである。 |
第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
第1・2期において、環境中での核種挙 動の解明、移行予測モデルの確立、そのパ ラメータ設定などの研究を推進してきた。 放射性核種の大気拡散モデル、大気-土壌 -植物系における水を介しての核種移行の メカニズム等で成果が得られた。 第3期では、第1・2期で得られた環境 中の核種挙動に関する知識・技術をもと に、動的解析モデルの開発及びその検証研 究を推進する。 |
(研究内容) 土壌生態系における放射性核種の移行・蓄積のメカニズムを究明し、動的モデル を開発する。さらに、後半の期間においては、大型人工気象実験施設を用いて、開 発されたモデルを検証する。 (想定される研究課題例) ○ 複合系における核種移行および動的解析モデルに関する研究 ○ 複合系における核種移行の検証 |
① 事故時における放射線被曝線量を 正確に推定すること、およびリスク の低減化に関する研究は、社会的に も非常にニーズの高いものである。 ② 得られた知識は、有害化学物質の 環境移行に関わる有機物や微生物の 役割等の解明に貢献できる。 |
第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
第2期で開発された低速(単色)陽電子 ビームの強度は最大で毎秒1億個以下であ る。今後、さらにビーム強度増強による問 題解決方策の検討と、高強度ビーム利用に 伴って必要となる基盤技術の開発を行う。 第3期では、ビーム利用技術の開発及び 利用そのもの(物性研究への応用)に取り 組む。利用研究においては、先端材料開発 等において従来手法では解決がついていな い問題を対象とするが、研究を進める中 で、実験室レベルのビームで解決可能なこ と不可能なことを明確にした上で、次世代 陽電子ビーム利用に繋がる具体的方策の検 討と基盤技術の開発を行う。 |
(研究内容) 平成11年度~13年度は、高品質陽電子ビームを用いた新しい陽電子分光技術の確 立を目指す。装置の開発・整備とビーム応用技術の開発を行い、高品質ビーム応用 の具体的方策を明らかにする。 平成14年度~15年度は、材料の物理に新しい知見を与えることを目指す。このた め、ハード面では対象となる材料作製・処理装置の整備やイオン注入装置等との結 合を進めるとともに、ソフト面では原子空孔・表面状態可視化技術を総合的に開発 し、原子炉材料機能劣化の初期過程を明らかにするとともに、機能材料における機 能発現機構の解明を目指す。 (想定される研究課題例) ○ 高速短パルス及び高輝度陽電子ビームによる材料極限物性の研究 ○ 偏極陽電子ビームによる材料の電子スピン構造の研究 ○ 超低速短パルス陽電子ビームによる物質最表層物性の研究 ○ 陽電子ビーム掃引法による分析・評価技術の開発 |
① 陽電子は、材料中の欠陥に非常に 敏感であり、極めて鋭敏な感度で、 半導体中の欠陥、あるいは最表面の 構造不整を検出することができるよ うになる。また、原子力材料におい ても、照射損傷等の研究において、 従来検出が困難であったボイド等が 生成する以前の段階の損傷を検出で きるようになる。 ② 近年、材料中の欠陥や表面の構造 ・状態についての第一原理からの計 算が行われており、これと比較すべ き実験的なデータが得る手段として 陽電子は極めて有望である。 |
第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
今まで、マルチトレーサーの製造及び利 用研究は、理化学研究所がリングサイクロ トロンを利用し進めてきた。 第3期では、マルチトレーサーの製造技 術を高度化することを第一目標とし、多元 素同時解析を非破壊的に生きた状態で経時 的測定が可能となるMT GEIの開発は、すで に可視像、X線像、ガンマ線像を重ね合わ せて撮影する装置とソフトウェアの基礎開 発を終えている。今後検出器部分の開発 と改良を行う。 | (研究内容) マルチトレーサーを安定的かつ迅速に生産する手段として、マルチトレーサー自 動化学分離装置の開発を行うとともに、さらに広範囲の核種を含むマルチトレーサ ー多様化技術を確立する。 マルチトレーサーを計測・分析装置へ適用した場合の基礎的知見を集積し、かつ 装置の有効性を実証するために、マルチトレーサーの優位性を生かした複数核種同 時ガンマ線イメージング装置(MT GEI)を製作し、新規の計測・分析手法 を創出す る。 (想定される研究課題例) ○ 自動化学分離装置の開発 ○ マルチトレーサーの製造技術の高度化 ○ 加速器を用いた高エネルギー重イオン核反応生成物に関する基盤研究 ○ モジュール型連続化学分離装置の設計、開発に関する研究 ○ 複数核種同時イメージング装置の開発と応用のための基礎的研究 |
① MT GEIは、単にガンマ線像のみの 撮影装置ではなく、同時に可視像と X線像を撮影し、コンピューター上 で画像処理することで、像の重ね合 わせが可能であり、診断や治療に有 用な装置である。また、臨床診断、 代謝生理学、さらには環境科学分野 における環境汚染物質の毒性研究や 代謝の研究、材料物性研究分野で革 新的装置となり得る。 |
第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 | 放射線照射による表面反応は、フェムト 秒からアト秒の過渡的励起状態を経て開始 される。また、原子炉の冷却水の放射線化 学反応はフェムト秒の時間領域で開始され るため、放射線との相互作用による様々な 量子現象の素過程の計測には、フェムト秒 からアト秒の時間分解を必要とする。 本研究は、原子力分野のみならず他分野 への波及効果も大きいアト秒領域のパルス 発生技術、計測技術、ならびに利用技術を 確立することを目的とする。 |
(研究内容) 平成11年度~13年度は、数10アト秒から100アト秒台のパルスの発生を実証を目 指す。特に計測技術を確立するため、観測系を構成する高精度干渉計及び受光部の 開発と並行してスーパーミラー等の高性能光学素子の開発を進める。 平成14年度~15年度は、アト秒パルスの波長域の拡張研究を展開し、可視・紫外 域レーザーの単一サイクル化によるパルス発生を狙うとともに、分子、クラスター の構造解析を通じてアト秒パルスの利用技術を確立する。 (想定される研究課題例) ○ 高強度フェムト秒レーザーの高出力化 ○ 高精度干渉計及び受光部の開発等のアト秒パルス計測法の確立 ○ スーパーミラーの開発等の特性評価法の確立 ○ 可視域レーザーパルスの単一サイクル化 ○ 分子・クラスターの構造、生成過程の解析 |
① アト秒レベルのパルスを用いて放 射線照射の劣化過程を解明すること により、耐放射線構造物設計への展 開が期待される。 ② アト秒パルスを用いた分子、クラ スター等の構造解析法の確立により 新素材生成のメカニズムの解明に資 する。 ③ アト秒パルスの発生そのものが画 期的であり学術的意義は大きい。こ れにより、アト秒という未踏領域に おいて新たな科学・技術の基礎とな る様々な現象の探索・解明が進展す ると考えられる。 |
第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
第2期研究では、原子力システム特有の 放射線作用と物理的化学的な侵食・腐食作 用を受ける極限的複合環境間のバリアーと して長期供用する圧力バウンダリー材料を 念頭にして「複合環境用マルチコンポジッ トマテリアル(MCM)の開発」を実施した。 第3期研究では、当該研究成果の集大成 として、第2期研究で開発した材料の複合 化技術と諸特性のモニタリング技術につい て、模擬環境下の諸特性評価試験を実施し て、実用化を念頭にした諸技術の最適化を 図る。また、高分解能の表面解析や状態分 析等の実験的手法と計算機シミュレーショ ン手法を用いて、開発手法の評価と原理的 解明を行い、複合環境用材料創製手法及び 環境適応性評価手法として整備する。 |
(研究内容) 平成11年度~13年度は、複合環境用MCMの最適化と環境適応性評価手法の高性 能化を行う。 平成13年度~15年度は、開発したMCM及びその場解析等のモニタリング手法に ついて、放射線、侵食、腐食作用等が重畳した模擬環境下で長時間試験を実施して 諸特性を調査し、実用環境適応性を共同で評価する。併せて、計算機シミュレーシ ョンにより、開発手法の環境適応性や経年変化のモデル化を図り、次世代材料技術 開発に反映出来る基盤知見として整備する。 (想定される研究課題例) ○ 複合環境における表面反応&欠陥成長過程の高分解能解析 ○ セラミックス系MCMの最適化と複合環境適応性評価 ○ 高分子系MCMの最適化と複合環境適応性の評価 ○ 金属系MCMの最適化と複合環境適応性の評価 ○ MCM等の実環境適応性の評価と研究成果の集約 |
① 高い複合環境材料技術の開発をホ ットの実環境試験を含めて実施する ので、原子力エネルギーシステムか らのニーズが高い。 |
第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 | 第2期までは、プラントの安全性の向上 に必要となる知的情報処理技術及びロボッ ト技術の要素技術を開発してきた。 第3期では、これまでの成果の具体的な 原子力プラントの保守、運転等へ適用を試 みるとともに、具体的適用を前提とした際 に新たに必要となる技術の開発や、既存の 原子力プラントのさらなる安全性の向上 高寿命化するための設計変更、新規プラン ト設計へのフィードバックに関する議論な ども行う予定である。さらには人的負担の 大幅な軽減、総合的な原子力プラントの安 全性の確保を図る。 |
(研究内容) 平成11年度~15年度に適用指向の基盤技術開発を行う。総合的適用性までも議論 し、人間と共存可能な原子力プラントへの道標を明らかにする。 (想定される研究課題例) ○ ロボット群による情報収集、保全作業のプラントへ適用 ○ 信頼性の高い自律点検・保全情報提示システムの研究開発 ○ 学習機能を伴う分散協調制御技術開発 ○ 保守性、異常時の制御性や安全性を評価できる情報処理技術の開発 ○ 人間共存型プラントにおける人間の認識と理解に適合した運転支援システム の開発 |
① 安全な人間共存型プラントの実現 によって、原子力電力生産技術に非 常に大きな波及効果が期待できる。 また、社会的にも原子力プラントの 安全性の向上は、パブリックアクセ プタンスを獲得する上で大きな効果 を期待できる。 ② 人工知能研究、ロボッティクス及 びメカトロニクスに関連する工学研 究において、人工システムの適応機 能を実現する新しいアプローチとし て大きなインパクトを与えることが 予想される。 |
第2期との関係及び第3期での目標 | 研究内容及び想定される研究課題例 | 波及効果等 |
第2期では、大規模な理学的、工学的な 乱流計算、分子動力学等のミクロ手法によ る物性予測、流体計算等及び並列計算、ネ ットワークコンピューティング手法の開発 を行うとともに、マクロからメソレベルで の構造解析、オブジェクト分散環境下で計 算する手法の開発を行なってきた。 第3期では、計算科学の手法による原子 力材料・構造・熱流動の基本的問題の研究 にフォーカスして、ミクロからメソ、マク ロの各レベルにおける手法を駆使した大規 模並列数値シミュレーションを実施すると ともに、ミクロ、メソ、マクロを統合した モデリング手法の開発を目指す。 |
(研究内容) ミクロスケールの物質挙動及びメソスケールの材料挙動の解析を行うとともに、 これらを統合して材料・熱・構造複合問題を解析する。 また、原子力用計算科学における高性能化並列計算技術の確立を目指す。 (想定される研究課題例) ○ 粒子法による結晶の熱的・機械的性質の物性予測 ○ 材料学的因子を考慮した高温破壊特性計算解析手法の構築 ○ 分散オブジェクト手法によるミクロ、メソ、マクロモデルの統合 ○ 構造材と熱流動の相互作用の数値シミュレーション ○ 分子動力学法のための並列計算手法開発 ○ 基本数値ライブラリの適応的高速化及び並列計算のためのプログラムインタ ーフェース開発 |
① 原子力用高温機器材料の寿命の高 精度の予測により、原子力機器の信 頼性、安全評価技術の高度化、機器 の長寿命化による経済性の向上等の 社会的ニーズに応える。 ② 材料科学の分野でも、ミクロから メソ、マクロの広い範囲のスケール の手法を統合。これを現在進展しつ つある並列計算技術との結合させて 数値材料シミュレーションのソフト ウェア体系を整備することにより、 基礎から実用レベルでの材料科学研 究の進展に寄与する。 |