議事概要:
(1)第138回核融合会議議事要旨(案)について、承認された。
また、事務局より、議事要旨に関連しJT-60改修計画についての説明があり、JT-60改修計画の詳細については平成14年度の概算要求に反映できるよう検討することとし、改修に関して平成13年度要求で計上している経費、設計費、材料調達費、製作費、材料の受け入れ試験費等はゼロとし、平成13年度については、6サイクルの運転と老朽化に伴う修理のために必要な機器収納棟の設計と建設の費用を計上することで、現在折衝中であることが報告された。
(2)座長より、「ITER計画の推進について(案)」について、説明がなされた。質疑応答は以下のとおり。
- 大学の研究は人材育成や核融合の基盤づくりだけではなく実用炉を目指した研究も行っているが、この点が案に抜けている、との意見が出された。これに対し座長より、大学の研究については触れていないが、核融合エネルギー開発を視野に入れた研究を行っているという表現を入れた方が良ければ修文案を出して欲しい。またこの点を取り入れることに関して意見を聞きたい、との意見が出された。
- ITER計画懇談会が求めているのは、日本誘致についてコミュニティの合意があるのかどうかということなので、日本誘致に関して触れないでITER推進という回答をすることについて、どういう意味があるのか、との質問があった。これに対し、この案を回答することで十分である、との意見があった。
- 回答に期限があるのかとの質問があり、事務局より、ITER計画懇談会は12月中に開催予定なので、それに間に合うように議論をまとめることが重要である、との回答があった。これに関し、次回のITER計画懇談会は骨子について議論することになっているので、事務局から回答があったスケジュールで議論を進めていくことが妥当である、との意見があった。
- 国際的な枠組みの中で期限があるかもしれないが、現時点でどうなっているのかとの質問が出された。これに対し事務局より、今年4月から非公式政府間協議が始まり、12月7日と8日に第4回会合が行われ最終報告書がまとまっている。この報告書の中のスケジュールに関する記述は、「ITER誘致の関心を持っている極は、2001年の中頃までに各極一カ所のサイトを提案すべき」となっている。このスケジュールを守るべく最大限の努力をすることが必要であると考えている。おおよそ年の中頃ということで6、7、8月と想定しているが、もし我が国が誘致をするという結論に達するのであれば、サイトを1箇所に決めた提案をまとめてその時期までに提出する必要がある。サイト提案をする場合には、ITER計画懇談会や原子力委員会の審議が終了した後、サイトを1箇所に決め、その上で政府として誘致を決断するという段取りになることが考えられる。との説明がなされた。
- サイト立候補の時期は6、7、8月という説明があったが、スケジュールの上では数ヶ月の誤差があるので、少し余裕があるのではないか。また、フランスにしてもサイト提案することに100%の自信を持っていないと思うし、日本と相互に観測しあっているというところもある。核融合会議のこれまでの議論の積み重ねは重要である。科学技術庁サイドが結論を急いでいることについて危惧の念を抱いている、との意見が出された。これに対し座長より、スケジュールについてはITER計画懇談会から、12月中に回答を要求されているので、できることを回答するしかないと考えている。時間を掛ければ解決することもあるが、少なくとも早く回答しなければならないことは間違いないので、タイムスケジュールの議論は信用して欲しい、との回答がなされた。
- 核融合会議の議論はまだ続いているという回答を出すことも一つの回答ではないか。誘致についての議論は、ITER計画懇談会から要求があって始めたので、まだ今日が1回目ではないか、との意見があった。
- 前回の議事録ではいろいろな意見があると書かれており、このような回答をすることにどういう意味があるのかとの質問があった。これに対し、現状では全く余裕がないスケジュールであり、遅らせると国際的にはデメリットになる。議論した範囲で出来る限り意見をまとめ、ITER計画懇談会に回答すべきである。誘致については、ITER計画懇談会から宿題をもらって議論を始めたというのは全く間違いである。誘致を念頭に置いて安全規制やサイト条件の議論が何年も行われており、誘致するか否かの議論は別にして、誘致を前提にいろいろな検討が行われてきたことは間違いない、との意見があった。
- 前回からの混乱は、吉川座長の問いかけは何に関してかということが明確でないことによるものである。ITER計画懇談会に出席された方に意見を聞くと、ITERの推進に関して問われているという意見も聞くし、誘致に関して問われているという解釈もある。もしその両面があるならば、両面に触れる必要がある。資料前半に関してはこの文章で良いが、後半に関しては、「なお」の後に「誘致に関しては」という文章を入れた方がすっきりする、との意見が出された。
- 前回の議論の中で、核融合会議はコミュニティそのものではなく、コミュニティは何かを探る必要があるという話があった。このへんを飛ばして回答することはどういう考えか、との質問があった。これに対し座長より、先日のプラズマ核融合学会でITERの誘致に関しての議論を聞いたところでは、日本の核融合を推進するためにITERが重要であるという意見が多かったと受け取っている。その時のシンポジウムの意見は、だいたいこの案に反映している。「なお」以下にあるような誘致についての留意事項に関する意見もあったが、その時の議論は盛り上がったものにはならなかった、との説明がなされた。
- プラズマ・核融合学会の特別セッションに参加していたが、座長がいわれたのと全く同じような印象を受けた。これまでの核融合研究の会合におけるITERの議論では、核融合コミュニティが反対しているという証拠を探す方が難しいと思う、という意見があった。これに対し、発言者は20数名いるうち、コメンテーターと基調講演者以外の発言は一部の先生のみであった。ITERに反対している立場ではないという前提で聞いてもらいたいが、あらかじめ誰が何を話すか決めていて、拍手が出るのは前の方だけである。こういうことからコミュニティを代表しているとは申し上げ難い。核融合を何年もやって来ていて変な方向に持って行きたくない。このようなシンポジウムをやってこれが核融合の総意だといわれるのは心外である、との意見も出された。
- 核融合コミュニティの代表の仕方は色々ある。歴史的にも私たちの自覚としても、核融合会議は非常に大切な機関であることは間違いないので、この機関として意見がどうであるかを答えるのは核融合会議の義務である。それだけで十分かどうかは原子力委員会やITER計画懇談会、政府などで検討されるべきものであり、核融合会議としては核融合会議としても答えを出すべきだ、との意見があった。
- ITER計画懇談会からは専門家の意見の集約を求められているので、核融合会議だけで充分だという意見には同意できない。先日の学会では、日本誘致でまとまったわけではない。スケジュールについては、遅れると不利になるという意見もあったが、数ヶ月の誤差が有りえると思っている。非公式政府間協議での原研の活躍はたいへん立派で、日本でやろうが外国でやろうが十分やっていけると思っている。したがって、慌ててものを決めねばならない状況にはないと考えるべきである。1ヶ月が大事かどうかは他の先生方にも発言していただく必要がある、との意見があった。これに対し、何が問われているかをはっきりさせる必要がある。日本の核融合の研究者たちが本当にITERをサポートしているのかとの設問の答えと、核融合関係者の器量が問われている。核融合エネルギー開発に向けてITERをサポートして行くということを明確にすることが大事である、との意見があった。
- ITER計画懇談会の中間報告の「終わり」にというところには、ITERを日本に誘致することの意義を認めたと明言している。ITERを一体となって進めて行くということを、核融合会議としてITER計画懇談会に答えれば良いのではないか、との意見があった。これに対し、ITER計画懇談会は日本誘致に意義ありといっているのか、日本誘致にもメリットとデメリットがあるという中間的立場のどちらなのか、との意見があった。
- 座長より、議論の整理として、次の意見が出された。
吉川座長のチャージとは何かについて考えると3つあると思う。一つはITER計画懇談会においてヘリカル方式に関する意見があったので、核融合のコミュニティは一つと思っていたのだがという吉川座長の発言がある。次に、オールジャパン体制のこと、最後に、EU とカナダが名乗りを挙げた場合、日本誘致は相当腹をくくって準備する必要があり、それにはコミュニティが一丸となってやる必要があるということを指摘された。ITER推進については誘致とは関係なく推進するということを核融合会議で議論してきているので案の(3)までは合意事項である。誘致については案の下の方に配慮すべき点を指摘しているし、誘致によって大学が財源的な保証を受けないとか、オールジャパン体制で推進するときの仕組みに問題があったら誘致に賛成できないという意見があって、それを尚書きに書いている。
- 案について最後の段落を除いては今までに議論されてきたことの確認であり、最後の段落に議論を集中すれば良い。2年半前のITER計画懇談会の中間とりまとめで日本誘致の意義を認めるとしているが、最終判断については検討すべき6つの宿題が指摘され、2年あまり掛けて検討し、この数ヶ月でITER計画懇談会に報告があったと理解している。最後の段落は、一部の意見だけであって多数の方の意見が書かれていないので、それらの意見を書いた上で一部の意見を書くのが首尾一貫した論旨である。例えば、最後の段落の冒頭に「なお、核融合会議では、誘致について積極的な意見が多いが、」というような文を入れるべきである、との意見があった。
- 日本誘致については、一部と言われるが委員の中でも数名が懸念を示している。これは、一部で片付けられる問題ではないと思う。大学のレスポンスは、今の時期に決定する学問的な見通しについて慎重論が多いのが現実である、との意見があった。これに対し、今の問題は「核融合会議の中には」と書いているので、そこで一部かどうかという判断になると思う、との意見があった。
- この核融合会議は、日本誘致について議論する場でないという前提での話だと思うが、一方、国際的なリミット、ITER計画懇談会のリミットをいってここでまとめる必要があるというところが首尾一貫していないのではないか、という意見があった。
- 案の最後の段落以外は核融合計画の推進に係わることなので、核融合会議で意思を表明すべきだと思う。核融合会議は核融合の計画についての方向性、あるいは技術的な評価を行うところなので、財政的なことに関することを最後の段落には加えるべきでない。従って、この一部の意見は核融合会議として記載するような内容ではない、との意見があった。
- 問われているのはコミュニティはどうなのかであり、核融合会議はコミュニテイにふさわしいのかを充分に議論しないで何らかの回答を出そうとすると、あたかもコミュニティの意見であるかのように受け取られてしまう恐れがある。このような形で回答するのはどうかと思う、との意見があった。これに対し、コミュニティを代表しているかという議論があるが、核融合会議としてはこう考えるというように回答するので問題はない。日本の核融合研究を様々な意味でリードしてきた核融合会議が、見解を示すことが良いと思う、との意見があった。
- 最後の段落が大事な部分である。核融合の研究の具体的な方向が何であるかがここに書いてある。核燃焼の研究が大事であることは良いが、ITER計画懇談会自身がどういうタイムスケジュールで物事を考えるかがはっきりしない。今大事な議論を煮詰めないでそのまま進めるのは心配である。核融合会議がITER計画懇談会から何らかの回答を要求されているなら、回答することは良いが、こういう意見もあるということをきちっと書くことが大事である。一部とか少数とかに寄らず、議論の中枢に係わることを最後の段落に書くべきである、との意見があった。
これに対し、座長より、問題は最後の文章をどう取り扱うかであるが、本来、ITER計画懇談会で議論すべきことをここでコメントしているものである。様々な意見があったことから文書としているが、必ずしも一つの意見にまとまっていないということを表明していることになる。この文章をこのまま付けて回答することで良いか、との提案があった。これに対し、ITERそのものにはサイエンティフィックな立場から賛成であると皆さんは同意すると思う。意見が分かれるのは、ITERを誘致すれば自分の研究費が減ることを強烈に心配されているためで、これはITER計画懇談会に御配慮いただいて、ITERを推進するときにはそういうことにならないようにしてもらう、というように最後の段落の内容を変えて、ITER計画懇談会に報告するのが良い、との意見があった。
- 核融合エネルギー開発という意味では、ソサイエティーは一枚岩であるということに関して異論はないと思う。その方法論について一枚岩であるべしということはあり得ない。オールジャパンの体制ができないとITERは進めないとすると物事は進まないと思う。ITERが進むことによって慣性核融合が影響を受けるのであれば困るというのが正直な感想である。ヘリカルも全く同じことだと思う。従って、誘致に関しては単純に賛成反対というわけにはいかない。財政的な裏付けがあってからというのでは物事が進まないということはある。ただITERに一極集中したら核融合は自殺行為である。核融合はもっとバラエティーに進めるべきであるということを常に認識しておく必要がある、との意見があった。
- 意見が分かれるのは、ITERを誘致すれば自分の研究費が減ることを強烈に心配しているためで、ITER計画懇談会に配慮してもらい、ITERを推進するときはそのようなことが無いようにしてもらう、というようにITER計画懇談会に報告してもらうのが良いとの意見があった。これに対し、財源は一つのスケールであって、大学における学術研究の流動性が重要であり、財源という言葉にとらわれると議論がすり替えられてしまう恐れがある、との意見があった。
- 回答期日にリミットがあるのか、無理にまとめなければならないのか、そこに疑問がある。どうしてもまとめるなら、この場の議論をできる限りありのままにITER計画懇談会に伝えるのが一番良い。この案ではコミュニティの中で合意があるのかどうかが不明確で、いろいろな意見に分かれた、意見が一致しなかったという点が抜けているのはいかがなものか。正確にITER計画懇談会に伝える必要がある、との意見があった。また、コミュニティで十分議論がなされているかということは重要なことで、期限に迫られて拙速にまとめるのがどうなのか、という点に最も疑問があるが、仮にまとめるのであればいろんな意見があったということを率直に伝えるべきである、という意見もあった。これに対し、コミュニティの定義は難しく、人によって定義が違うコミュニティを持ち出してもあまりメッセージが伝わらないので、核融合会議はこう考えるということで充分である、という意見もあった。
これらの意見に対し座長より、コミュニティを定義することを避けたいと思う。核融合会議の委員の中には、自分達がコミュニティを代表しているということで引き受けている方も多いと思う。核融合会議の中でもコミュニティの意見が反映されて、案の最後の部分があるので、このままでコミュニティは一致していないというメッセージを伝えることになると思う、との意見が出された。
- 財源については核融合会議では議論できないので、そういう発言があったということを書くのが精一杯である。オールジャパンについても定義が十分になされてなく、そこまで拡げて議論しなくて良いということで合意ができている。従って、このままで良いと考える。尚書きの前の部分については確認されていることなので、基本的なことを伝えて欲しい。大学の若い研究者、学生と講義や講演会でITERについて話しているが、将来に対して日本主導で進めて欲しいという期待が若い人には強い、との意見があった。
- コミュニティについて、ここであった議論を文章にする必要は無いが、こういう意見があったということは説明してほしい、との意見があった。これに対し座長より、その件は座長に委託させていただいてよいか、との意見があり了承された。
- 一つの対案として、「なお、核融合会議の中には、誘致を積極的に進めることに関しては、次のような意見もあった。一旦我が国に」とあって最後に、「意見もあった。」、としたらどうかととの意見があった。これに対し、戦略検討分科会の報告書のトーンとはかなり違った印象を受けるのではないかということを懸念する。本筋は大きなメリットがあるということをいっているが、留意点もあるということだった。これは既に我々がアプルーブしている意見である。今の案では、ネガティブなものだけを取り出しているという印象を受ける。今はタイミングとして非常に重要な時期だと思う。ここ半年ほどの時機を逸したら、将来悔いを残す可能性が非常に大きいと思う。個人的な意見では、できるだけ積極的なトーンが感じられ、しかし注意すべきことはいっておくということにしたい、という意見もあった。
- 以上の議論を踏まえ、座長より、以下の文案でまとめる旨提案があり、了承された。
「なお、核融合会議の中には、誘致を積極的に進めることに関しては次のような意見もあった。一旦我が国に ITER が誘致されれば後戻りのできない状況が生じ、大学の核融合研究の継続に必要な財源が保証されないおそれがあることを指摘した上で、この問題がクリアされない限り ITER の国内誘致に賛成できない。ITERをオールジャパンで推進するための仕組み・あり方が事前に確立されない限り、 ITERの誘致を拙速に決めるべきでない。」 また、ITER計画懇談会では口頭で、コミュニティとはなにかについて意見があったことをはっきりさせたいということを伝える。