資料第137−4号
JT-60改修計画検討委員会報告書
平成12年8月17日
科学技術庁原子力局
JT-60改修計画検討委員会
目 次
1.はじめに 2.JT-60改修計画の位置付け
3.目標設定並びに個別研究課題
3.1 目標設定
3.2 研究課題
4.設計・建設段階並びに実験段階における改修計画遂行の方策
5.大学等との合意形成の方策
6.JT-60改修計画の概要の広報
7.まとめ
- 1.はじめに
- JT-60改修計画検討委員会は科学技術庁原子力局長の求めに応じ、JT-60改修計画に対する位置付けや意義等を、本委員会で対象とできる範囲において学識経験者の立場から検討し、原子力局長に報告することを目的とする。安易にJT-60改修計画の推進あるいは非推進の結論を出すことが目的ではない。
任務は、以下に示す5項目について審議を行い、評価を行うことである。
(1)JT-60改修計画の位置付け
(2)目標設定並びに個別研究課題
(3)設計・建設段階並びに実験段階における改修計画遂行の方策
(4)大学等との合意形成の方策
(5)JT-60改修計画の概要の広報
- 評価が分かれる場合は無理に一つに集約することなく両論併記もあり得る。また、予算の妥当性並びに超伝導コイル線材選択の妥当性など特別の工学的専門知識を要する課題に関しては審議の対象外とした。
本報告書は、日本原子力研究所提案資料(参考資料2)に対してJT-60改修計画検討委員会において検討・評価を行った結果をとりまとめたものである。
なお、核融合会議座長から要請があれば、本件に関し核融合会議で報告する。
- 2.JT-60改修計画の位置付け
- ITERとの関連で、「補完」という位置付けをやめて、広い視野に立ち以下のように位置付けることで、委員の間で合意が得られた。
「第三段階核融合基本計画に定められた、実験炉以外のトカマクとして研究開発を行う。」(研究内容としては、先進的・基盤的課題に連携・協力によって取り組むものとする)
大学等と原研との相補性の確保と連携協力に基づく相乗効果によってこれまでにない新しい研究スタイルを創出し新展開が期待できる。
- 3.目標設定並びに個別研究課題
3.1 目標設定
- 1)装置規模の妥当性
[評価]
○ 核融合開発研究のステップとして臨界プラズマ条件を選び、電流分布拡散時間より長い定常高性能を目指す目標は概ね妥当と評価する意見が大勢を占めた。
- [異なった評価]
○ 開発上のステップ論で装置規模が決められることには賛同できない。本改修の目標となる課題を、臨界プラズマ(R〜3m)で実験しなければならない理由が明確でない。 ○ 開発上のステップ論で進むとすれば、時間方向へのステップについての記述が不十分である。まず、改修の目標が何であり、その目標達成のために必要な放電時間がいくらかの議論が欠落している。
- [コメント]
○ 臨界プラズマ条件を高い電子温度領域で実現することを検討してほしい。 ○ βN = 3, H-モードに対する閉じ込め改善度 = 1.5, 放電時間= 100 秒の同時実現性がはっきりしないが、JT-60改修検討委員会で詳細に検討されるべきである。高いβ 値での安定維持のため加熱、電流・回転駆動、制御パワーの増強が必要になる可能性がある。パワー増強についても引き続きJT-60改修検討委員会で検討する必要がある。 ○ 臨界プラズマに対して、長時間にわたる水素リサイクリング制御と不純物制御も主要な目標である。
- 2)他の計画との相補性と相乗効果 [評価]
○ 他のトカマク研究との相補性を活かして研究成果を挙げる努力が始められている。また、他の研究グループとの研究における相乗効果を目指す点も高く評価できるとする意見が多かった。 [コメント]
○ 最近のIT技術を最大限に活用し遠隔実験も視野に入れ、この点からIT技術の研究や開発モデルの研究に対して波及効果を持つと書くともっと良い。 ○ 連携協議の場を活用して協力を進めるべきである。
- 3.2 研究課題
- 1)炉心プラズマ
・高プラズマ圧力制御
・高性能・高自発電流プラズマ制御
・ダイバータによる熱・粒子制御
- 2)炉工学
- 本項目に関しては、以下のコメントがあった。
○ プラズマには多くの遷移現象があり、原型炉への外挿性に注意すべきことは良く知られている。高性能・長時間プラズマの研究は重要であり、広く研究の進展を評価分析し、研究計画を作るべきである。更に、計画段階で、より長い時定数を持つ質的に新しい現象が知られる可能性があり、その場合の研究可能性についても検討しておくべきであろう。 ○ 工学的観点から、特にQ=1以上の熱・粒子束の制御の確立、タイルの損耗と堆積のプロセスを解明し、炉に向けた研究開発が重要である。大型装置では、熱流束が急増する。ロングパルスでは損耗と再堆積が大きくなる。JT-60クラスでの実験はこれらの研究に役立つ。 ○ 境界プラズマの素過程はまだまだ予測性に乏しい状況である。ダイバータ・レッグを変えて放射プロセス、不純物のコアへの浸透のデータを蓄積し、原型炉に向けたダイバータ構造や対向材料の研究が必要である。 ○ 熱粒子制御の観点からは、現状のJT-60のダイバータはダイバータ・レッグが短い設計であり、非接触プラズマの物理等で遅れをとっていたが、これまで世界的に得られた知見を最大限に盛り込み、100秒という熱粒子制御の観点(水素リサイクリング、ダイバ−タ板の熱平衡、ダストの生成等)から魅力的である。
- 現在は、3.2に関して以上の様な部分的評価が得られている段階である。JT-60改修検討委員会(参考資料2)で引き続き検討されるべきである。
- 4.設計・建設段階並びに実験段階における改修計画遂行の方策
- 設計・建設段階においては参考資料2に記載されているJT-60改修技術諮問委員会を軸に進めるのが妥当と判断した。また、改修終了後の実験段階における共同研究体制としては、大学等が主体的に参加(例えば大学において開発した機器のJT-60への適用等)できる運用協議会方式を高く評価すべきであるという点で一致した。ただし運用協議会は連携協議の場を尊重する。
- 5.大学等との合意形成の方策
- 今までは不十分であったが、この委員会を通して、大学等と原研との間のJT-60改修計画についての合意形成作業が進展し、上記の課題において共通認識を得る事ができるようになった。本委員会としては、以下のようにして大学等との合意形成作業を行うことで一致した。すなわち、
原研の外に設置される委員会(参考資料2におけるJT-60改修検討委員会に相当)において、12月までに国内外における先進的研究を横断的に展望し、包括的に把握し、役割を評価できるように検討を進める。その間、学術審議会における議論が進んでいるのでそれを反映することができる。
- 6.JT-60改修計画の概要の広報
- 本委員会の考えを踏まえ、「JT-60改修計画について」の記事解説を、プラズマ・核融合学会誌に速やかに投稿し、日本国内のプラズマ・核融合に関わる研究者にその概要を紹介する。その他、学会報告や核融合ネットワーク等を通して広報することが望ましい。
- 7.まとめ
- 以上の審議並びに評価を総括すると以下の通りである。すなわち、
○ JT-60改修計画の位置付けに関しては、「ITERの補完という位置付けをやめて、第三段階核融合基本計画に定められた実験炉以外のトカマクとして、先進的・基盤的課題に対して、大学等との連携協力により取り組む」ということで、全会の一致を得た。 ○ 核融合開発研究のステップとして、臨界プラズマ条件を選び、電流分布拡散時間より長い定常・高性能を目指す目標、並びにそれを実現する装置規模は、概ね妥当であるとする意見が大勢を占めた。ただし一部に、開発上のステップ論で装置規模を決めることに異論があり、時間方向へのステップについても記述が不十分であるとする意見があった。 ○ 他のトカマク研究との相補性、並びに他の研究グループとの研究における相乗効果を目指す点は高く評価できる。この際、連携協議の場等を活用して、協力を進めるべきである。 ○ 具体的研究課題については、いくつかのコメントが出されたものの、詳細についてはJT-60改修検討委員会で引き続き十分検討されるべきである。 ○ 実験段階における共同研究体制としては、大学等が主体的に参加できることが重要である。運用協議会において、連携協力が具体的に実現されることが望まれる。 ○ 大学等との合意形成に関しては、本委員会において最も長く時間を費やし議論した課題であった。本委員会での議論を通して、上記課題について共通認識をもつことができるようになり、両者の合意形成作業が進展した。
今後の具体的合意形成作業としては、原研の外に設置されるJT-60改修検討委員会において、12月までに国内外における先進的装置を横断的に展望し、包括的に把握して、それぞれの役割を評価できるように検討を進める。その間、学術審議会における議論が進んでいるので、それを反映することができる。JT-60改修検討委員会の具体化に関しては、核融合会議で議論されることが望ましい。○ 本検討委員会においては、JT-60改修計画に関して踏み込んだ議論が行われ、方向が明らかになり、位置付けも変わり、大学等との連携協力の意味も明確になったので、提案を改めて核融合コミュニティーへ広報するべきである。
JT−60改修計画検討委員会について
平成12年6月14日
科学技術庁原子力局1.設置の目的
- 第三段階核融合開発基本計画における実験炉計画を進めるに当たっての今後のJT-60の位置付け、特にJT-60の改修がどのような意味を持つのか、などについて検討を行うことを目的とする。
- 2.審議事項
- (1)今後のJT-60の位置付け
(2)推進方策
(3)その他
- 3.構成
- 別紙の通りとする。
- 4.運営等
- (1)検討委員会は、科学技術庁原子力局に設置し、その事務局は同局核融合開発室が務める。
(2)検討委員会は、必要に応じ構成員以外の意見を聴くことができる。
(3)検討委員会の活動は、概ね開始より2ヶ月以内として検討の結果を取りまとめる。
(別紙)
JT−60改修計画検討委員会委員
主査 高村 秀一 名古屋大学大学院工学研究科教授 伊藤 公孝 核融合科学研究所理論・データ解析研究系主幹・教授 堀池 寛 大阪大学大学院工学研究科教授 高瀬 雄一 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 花田 和明 九州大学応用力学研究所炉心理工学研究センター助教授 日野 友明 北海道大学工学部教授 松田慎三郎 日本原子力研究所那珂研究所 所長
ITER/EDA技術部会委員若谷 誠宏 京都大学エネルギー科学研究科教授
ITER/EDA技術部会主査委員会の開催日
- 第1回 平成12年7月10日 13:30−17:20
第2回 平成12年7月18日 13:30−17:10
第3回 平成12年7月31日 13:30−17:30
第4回 平成12年8月 4日 11:00−18:30
第5回 平成12年8月17日 13:00−18:00