(参考)

 

 

本報告書で使用している用語の解説

 

 


アウトパイル熱サイクル試験
 中性子照射環境下に置かず、核融合炉の運転状況を模擬した熱源を使用して熱・機械特性を調べる試験。

インパイル機能試験
 原子炉内に試験体を置いて核融合炉内での中性子照射環境を模擬し、試験体の性能を調べる試験。

液体金属増殖方式(リチウム鉛増殖方式、液体リチウム増殖方式)
 トリチウム増殖材を液相の状態で使用する方式。Li、Li17Pb83などが候補材料である。また、液体リチウムでは冷却材の役割も同時に担う。

エネルギー増倍率
 核融合反応による出力とそのプラズマ状態を維持するのに必要な加熱入力(すなわちプラズマからの熱損失)の比Q=出力/入力。Q=1を臨界プラズマ(Energy Break Even)条件、Q>~20を自己点火条件という。

加圧軽水
 高圧力下(15MPa)の軽水(H2O)のことで、高温でも沸騰しないため高い熱容量を維持し、熱媒体として用いられる。加圧水型原子炉において実用化されている。

回転電極法
 金属の粉末を生成する技術の1種。粉化する金属を、固定電極、電子ビーム、アークプラズマなどと対向させ、回転させながら溶解することで、融液が遠心力によって飛散し、粉末が生成される。

拡散接合
 金属材料を密着させ、素材の融点以下の温度条件で、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法。

(核融合)原型炉
 核融合炉及びそのプラントの実用化についての技術的性能の見通しならびに経済性に関する目安を得ること等を目的として作られる炉のことをいう。実験炉でプラズマおよびその周辺基盤の技術的見通しを得た後、原型炉で発電技術を実証し、実用炉へ進むという段階を経て開発が進められていくことになる。

国際エネルギー機関(IEA)
 International Energy Agency(国際エネルギー機関)。石油資源需要問題などを契機に発足したOECD傘下の国際機関。供給構造を改善することを目的として1974年11月に設立。主要な任務の一つに代替エネルギー源を開発するための加盟国間の協力の推進がある。

国際熱核融合実験炉(ITER)
International Thermonuclear Experimental Reactor。1998年までは日、米、ロ、EUの4極、その後は日、ロ、EUの3極の共同設計による核融合実験炉。DT自己点火プラズマによる長時間核燃焼を設計目標とし、核融合炉の科学的及び工学的可能性の実証を目指している。

固体増殖方式
 固体のトリチウム増殖材を用いる方式。 Li2O、Li2TiO3、Li2ZrO3、Li4SiO4、LiAIO2 等のセラミックが候補材料である。この方式ではブランケットから熱を取り出すための冷却材として水もしくはヘリウムが考えられている。

コロージョン
 腐食のことで、構造材の侵食などにより機械特性の劣化の原因となる。

酸化リチウム・ペブル
 トリチウム増殖のためにブランケットの中に充填される酸化リチウム(Li2O)の微小球で、直径は0.1~1mm程度である。

照射損傷
 放射線損傷と同義。放射線損傷の項を参照。

照射ベッド
 照射試験においてその照射源となる施設。

常陽
 核燃料サイクル機構が大洗工学センターに建設した日本最初の高速炉の実験炉。現在の出力は100MW。

増殖材・増倍材ペブル
 固体増殖方式において、増殖材及び増倍材が受ける中性子照射効果によって熱・機械特性が劣化しないように、増殖材及び増倍材を微小球にしたもの。

ゾルゲル法
 コロイド法とも呼ばれる微粉末を生成する技術。材料を粉砕もしくは析出によって媒質に分散させてゾルをつくり、分散媒の除去などでゲル化した後、焼成することで微粉末を得る。

中性子
 質量数1、電荷0の粒子。核融合(DT)反応によって14MeVの運動エネルギーを持つ中性子が生成される。

超臨界圧水
 水を22.1MPa以上に加圧すると、温度を上げても液相から気相に不連続的に変化することがなくなる。もっとも、温度が374℃以上で急激に密度が変化するが、このような圧力、温度条件下の水を超臨界圧水という。

定常炉心プラズマ
 定常的に核融合反応が起きるプラズマ状態のこと。

転動造粒法
 粒体を生成する技術の1種。10~100μmの粉体を高温で練り合わせることによって1mm程度の粒体を作ることができる。

電気絶縁コーティング
 液体金属ブランケットにおいて、MHD効果を低減させる方法の一つとして、ブランケット構造体と液体金属を電気的に絶縁することが考えられる。このための電気的な絶縁皮膜であって、ブランケット構造体の液体金属側表面に生成させる。使用中の損傷等に対して自己修復性を有することが要求されている。

伝熱流動特性
 流動性のある熱媒体における熱を伝搬する性能。

トリチウム透過防止用コーティング膜
 構造材がトリチウムを透過し漏洩するのを防ぐため、構造材表面に施すコーティング膜。

熱応力
 物体の温度変化による膨張あるいは収縮が拘束されることにより内部に発生する応力。

熱負荷、中性子負荷
 構造体が外部から受ける熱もしくは中性子の、単位面積もしくは単位体積あたりの量。

破壊靭性
 き裂を有する材料において、き裂が伝播して破壊する際に示す材料の抵抗性をいう。

バナジウム合金
 放射化のレベルが低く、減衰が比較的速いバナジウムを主成分にした低放射化材料である。クロム(Cr)やチタン(Ti)を4重量%程度含んだ合金が開発されている。バナジウム(V)合金は液体金属との共存性に比較的優れるため、液体金属ブランケットの構造材料としても有望視されている。

バーンアップ
 燃焼度のこと。リチウム燃焼度の項を参照。

引張り特性
 材料に引張り荷重を加えたときの荷重と伸びの関係。特に比例限度、弾性限度、降伏点、引張り強度などがあげられる。

フルエンス(例:1 MWa/m2
 単位面積を通過する中性子の数もしくはエネルギーの時間積分。1 MWa/m2とは、1 m2あたり1秒間に中性子から受けるエネルギーが1 MJのとき1年間に受ける中性子の量。

低放射化フェライト鋼
 高温用構造鋼であるフェライト/マルテンサイト鋼のモリブデン(Mo)等をタングステン(W)等で置き換えることで、放射化のレベルが低く、減衰が比較的速くなるようにした構造用鋼。

ペブル充填層
 ブランケット内の増殖材・増倍材ペブルを詰める層。

ヘリウム・パージガス
 固体状のリチウム化合物(セラミックス)を充填したブランケットへ流すヘリウムガス。リチウム化合物が中性子との核反応により転換されて生成したトリチウムはこのガスによって取り出される。

ベリリウム・ペブル
 核融合反応で生じた中性子を増やし、トリチウム増殖性能を向上させるための中性子増倍材の微小球。ベリリウム(Be)は、中性子との核反応により2個の中性子を生じる((n,2n)反応)。

放射線損傷
 材料に放射線を照射すると、スエリング、延性低下などの材料損傷が発生する。これは構成原子が格子点からはじき出されるカスケード損傷や、(n, α)反応によって材料中にヘリウムが生成する核変換元素生成によって起こされる。核分裂炉に較べてヘリウムの生成がかなり大きいことが核融合炉の特色である。

ポロニウム
 鉛(Pb)の中性子吸収によって生成する放射性元素(Po)。毒性が強く、放射線管理上は十分な注意を必要とする。

モジュール試験
 ブランケットの機能を独自に満たす基本単位を用いてその性能を調べる試験。

誘導放射能
 核融合反応に伴って発生する中性子が、核融合炉の構造材料等を構成する原子核と核反応を起こす結果として生成する放射能。

溶解インゴット
 目的の組成にするために溶解した金属を、塑性加工をするために所定の形状、寸法に鋳造した金属塊。

溶融塩
 イオン結合している材料が溶融している状態。金属と違って自由電子がないために磁場中を流れるときのMHD効果が小さいと考えられ、トリチウム増殖における液体増殖材として検討されている。

リチウム
 天然には極く微量しか存在しないトリチウムを核融合炉自身で生産するために用いる元素。6Liの(n,α)、7Liの(n,n'α)反応によってトリチウムを生産する。

リチウム鉛
 液体金属方式のトリチウム増殖材の候補材料(Li17Pb83)。鉛は中性子増倍材の役割も果たす。

リチウム燃焼度
 トリチウム増殖用にブランケットに装填したリチウムの量に対し、中性子と反応してトリチウムを生成した量の割合。

3成分系セラミックス(リチウム・タイタネート等)
 固体増殖材のうちリチウムと酸素の他にもう1元素含むセラミックで、Li2TiO3、Li2ZrO3、Li4SiO4、LiAIO2 等が考えられている。

BEATRIX-Ⅱ
 IEAの核融合材料の研究に関する協力協定による実験で、 米国の照射施設を用いて高速かつ大量の中性子を照射する試験が行われた。

dpa
 中性子や荷電粒子などが、ある値以上の運動エネルギーをもって結晶中に入射すると、 結晶格子にある原子に運動量を与えることによって、この原子を格子点から弾き出す。構成原子1個あたりの平均はじき出し回数をdpa(Displacement per Atom)という。

DT燃料
 DT核融合反応を起こすための燃料。すなわち重水素(D)と三重水素(T)。重水素は水などから比較的容易に取り出すことができ、三重水素(トリチウム)は核融合反応によって発生する中性子と、リチウムの反応などを利用して作ることができる。

F82H鋼
 日本原子力研究所と日本鋼管(株)が共同開発した代表的な低放射化フェライト鋼。

IEA核融合炉工学協力協定
 経済協力開発機構(OECD)内の国際エネルギー機関(IEA)の下での他国間協力で、ブランケット工学、トリチウム工学に関する情報交換、共同実験等を行う。

HFIR
 High Flux Isotope Reactorの略。米国オークリッジ国立研究所の高中性子束の原子炉。日米協力で核融合炉材料の共同照射研究を行っている。

JLF-1
 大学が開発した代表的な低放射化フェライト鋼。

JMTR
 Japan Materials Testing Reactorの略。原研の軽水減速冷却タンク型で熱出力50MWの汎用型材料試験炉。ループ、キャプセル等の各種照射設備が設置されている。

MHD圧力損失
 磁場中において導体である液体金属が流れるとき、誘導起電力が発生することから液体金属の流れを抑える力が働くこと。

ODS鋼
 母相である鋼中に微細な酸化物を均一に分散させることにより強化した合金。特に高温における強度、クリープ特性に優れている。

SiC(シリコンカーバイド)/SiC複合材
 高温まで極めて高い強度を示すSiC繊維で織物を作り、これにSiC(基材:マトリックス)を高密度に付着させた材料。放射化のレベルが低く、減衰が速く、高温ヘリウムガスとの共存性に優れる。

TPL
 Tritium Process Laboratory(トリチウムプロセス研究棟)の略。日本原子力研究所のトリチウムプロセス研究施設で、1988年からトリチウム処理、及び安全取扱い技術の開発等のトリチウム工学の研究を進めている。

TSTA
 Tritium Systems Test Assemblyの略。米国ロスアラモス国立研究所に建設され、核融合炉燃料サイクルの確立を目指したトリチウム工学の研究を進めている。1982年より日米共同で研究が進められている。