第3部 まとめ

 

 

第5章 まとめ
 国際熱核融合実験炉(ITER)計画懇談会(座長:吉川弘之 日本学術会議会長)が取りまとめた「懇談会の論点の整理と今後の課題」(平成10年3月)では、我が国がITERの設置国になることに名乗りを挙げるか挙げないかを決断するために必要となる、以下の6つの検討課題を指摘している。
 ① エネルギーの長期に亘る需給調査
 ② 代替エネルギーのフィージビリティースタディー
 ③ 核融合エネルギーの技術的実現性
 ④ 計画の拡がりあるいは裾野としての基礎研究
 ⑤ 研究の資源配分
 ⑥ 国際関係
核融合会議開発戦略検討分科会では、核融合会議の決定(平成10年6月12日)に基づき、これらのうち③④について検討を行った。
 本報告書においては、ITERと同じ方式である重水素とトリチウム(三重水素)を燃料とするトカマク方式の核融合炉を例にとり、エネルギー源としての核融合の意義は何か、核融合開発がどこまできたか、核融合発電を実現するには何をなすべきか、核融合発電実現の時期はいつか、などの問題に関して広く調査・研究した。本章は報告書の最終章であり、得られた結論について要約する。

第一部 核融合エネルギーの技術的実現性
 核融合エネルギーの技術的実現性について考察するにあたり、はじめに実現を目指す核融合炉について明確にしておく必要がある。このため、エネルギー問題における核融合炉の位置づけと核融合炉が果たし得る役割について述べる。次に、核融合開発への取り組み方と実現までの見通し、そして核融合エネルギー実現のために今なすべきことを明らかにする。

5.1 21世紀のエネルギー問題と核融合発電の位置づけ
エネルギー需要予測
 21世紀の社会におけるエネルギー需要を正確に予測することは難しい。なぜならば、21世紀には先進国における省エネルギー技術の格段の進歩により、エネルギー需要が抑制される可能性がある一方で、発展途上国を中心に人口の増加が見込まれ、これらの人々が豊かな暮らしを求めるためにエネルギー需要が大きく増加する可能性も高いからである。しかるに20世紀の終幕を迎えた現在、なおエネルギー需要に見られる急速な伸びを考えれば、来世紀においてもやはり大量の需要を満たし得るエネルギー源が必要であると予想される。

選択基準
 エネルギー経済の観点からは、現在では発電プラント単体での経済性が重視されている。しかしながら、昨今見られるような環境保全の重要性が高まりつつあることなどに鑑みれば、21世紀中庸には社会的意識の変革等により、資源量とその偏在性、安全性、環境への影響、供給の安定性、一国のみならず国際的立場から展望したエネルギーセキュリティー、核不拡散問題などを俯瞰した、持続的発展を重んじる観点からのエネルギー源の選択が行われる可能性がある。これらはいずれも経済性にも大きく影響する要因であり、将来はエネルギー源の選択基準は現在とは異なる総合的判断に基づいたものとなると考えられる。21世紀における核融合エネルギー参入の真義はそこにある。

5.2 核融合エネルギーの特徴
燃料資源
 核融合エネルギーの燃料資源は海水に潤沢に含まれる重水素とトリチウムを生成するためのリチウムであり、無尽蔵かつ地域的偏在もほとんどなく、安定的供給が可能である。この特徴は、エネルギー資源を巡る国際緊張を緩和し、燃料等の輸送に伴う事故や危機管理の軽減を可能にする。資源小国である我が国にとっては、核融合エネルギーは近代国家として発展の途について以来渇望してきた、事実上の国産エネルギーとなる。

特殊材料
 核融合炉で使用する特殊材料の資源量が枯渇に瀕するようでは、核融合の利点はたちまち相殺される。そこで、重水素とトリチウムを燃料とする核融合炉で現在の世界の全電力需要を供給することを想定して所要資源量を算出してみれば、世界における採掘可能な資源の賦存量は十分であり、核融合エネルギーは数世紀(埋蔵量ベース)から数万年(総鉱物資源量)に上る人類のエネルギー需要を賄うことができるほど大きな供給能力があると考えられる。

役割
 核融合エネルギーは核分裂と同じく集中型エネルギー源であり、安定した基幹エネルギー源としての役割をになう。特に電力ネットワークが発達した我が国では、必要に応じて集中型エネルギー源から国の隅々まで即座にエネルギーを届けることができる。将来、分散型エネルギー源の重要性が増す可能性も指摘されているが、その場合でも、産業化された社会ではベースロードとして安定供給のできる集中型エネルギー源は常に必要である。また核融合は、水素燃料をはじめとする二次エネルギー燃料の生産を通して、燃料電池などの分散型エネルギーシステムにも適合できるであろう。

安全性
 核分裂炉の安全確保に際しては、核的暴走事故の抑止が最重要課題である。一方、核融合炉は、出力の制御が不能となる核的暴走が原理的にあり得ないことや、炉内に存在する可動性放射性物質1の潜在的放射線リスク指数2が、現在安全に運転されている核分裂炉に比べても約1/1,000以下であるという優れた特長を持っている。
 これらの特長を生かしつつ、敷地内での生起し難い重大な事故の発生を仮想しても、敷地周辺の放射線レベルが法規制のレベルに比べて十分に低くなるような設計が可能である。この特長から国民的支持が得られて都市近郊に核融合発電所が設置できれば、送電の費用を軽減できるばかりでなく、核融合炉で生じる熱エネルギーが地域暖房や産業などに有効活用できることになる。これは省エネルギーや環境保全の上でも望まれることである。
 安全性の観点では、放射性物質であるトリチウムや放射化ダストなどの取り扱い、管理についての特段の配慮が必要である。トリチウムの取り扱い処理については、多重閉じこめによる安全の確保や、燃料サイクルを敷地内で完結させる設計が可能である。また、核融合炉を運転すれば第一壁などの放射化物質が発生するが、高レベルの廃棄物は発生しないので数100年間程度浅地中に埋設・管理すれば潜在的放射線リスクを大幅に下げることができ、一部を除いて再利用に供することもできる。放射性物質の処理や管理をすべて敷地内で行うことができれば、それらの輸送に伴う諸問題は回避できる。


1 事故に際して炉外へ放出されて、空気の対流や拡散等により広がる可能性のある放射性物質。核融合炉ではトリチウム、核分裂炉ではよう素131が代表的である。
2 仮に炉内の全放射性物質が気体の状態で放出されるとしたとき、その放射能が許容レベルに下げるまで薄めるのに必要な空気の体積として表されるリスク指数

核分裂炉との比較
 核融合炉と核分裂炉は、ともに製造段階、運転段階を通しての地球温暖化ガス排出量が小さいエネルギー源である。核融合炉は、大型超伝導磁石技術等多くの高度技術を伴うことから、核分裂炉に比べて相対的にコスト高となる可能性が高い。しかしながら核融合炉は核反応制御不能に起因する重大事故のおそれが原理的にないことや、炉内に存在する可動性放射性物質の潜在的放射線リスクが核分裂炉に比べて約1/1,000以下であること、しかも高レベルの放射性廃棄物が生じないなど、優れた特長を有している。近郊立地可能性、核不拡散問題に制約されないこと等の利点も考えられる。将来の基幹エネルギー源の選択に臨んでは、こうした核融合炉の卓越した長所を勘案した総合的判断が下される必要がある。

5.3 核融合エネルギー実現へ向けての段階的開発計画
燃料資源
 我が国では、原子力委員会の策定する基本計画に基づき、核融合開発を段階的に推進している。段階的開発戦略は、各段階において明確な目標を定めつつ進むものであり、一つの段階から次の段階へは、まず次の段階の目標が適切か否かについて吟味し、改めて設定した目標の達成に必要な科学技術的見通しが十分に得られていることを確認してはじめて進もうとするものである。段階的開発戦略は、核融合炉のようなコストがかかる大規模システムの開発を着実に進め、かつリスクを最小化する目的で適用される。

第二段階
 第二段階の主な目標は、核融合出力が外部からの加熱入力に等しくなるようなプラズマの発生・閉じこめ技術を確立することであった。この目標は、第二段階の中核装置として建設された日本原子力研究所のトカマク型装置JT-60により達成された。

第三段階
 我が国の核融合開発計画は第三段階にある。第三段階の主な目標は、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術を確立すること、および核融合発電を行う原型炉の開発に必要な炉工学技術の基礎を形成することである。この課題を解決するために研究開発の中核を担う装置を実験炉と名付けている。高温プラズマ閉じ込め制御については様々な方式が研究開発されているが、第三段階の中核装置としては、第二段階に引き続きトカマク方式磁気閉じこめ装置が選ばれている。また我が国は、この中核装置として国際熱核融合実験炉ITERを採用している。ITERでは原型炉へワンステップで進むために必要な技術の確立をめざす。第三段階計画では、実験炉による核燃焼プラズマ研究に加えて、トカマク方式による先進・補完研究、トカマク型以外の先進プラズマ閉じ込め方式の研究開発、炉工学技術・炉材料研究、安全性研究、核融合炉設計を並行して実施することとしている。

 トカマク装置による先進・補完研究では、実験炉の運転に必要な炉心プラズマ技術や原型炉のための高性能プラズマ閉じ込め技術を開発する。その主要課題としては、定常運転技術の確立、ディスラプション抑止、低温ダイバータプラズマの実現、プラズマ閉じ込めの高性能化などが挙げられる。
 一方、トカマク方式以外の先進方式と目されるものは、現状ではヘリカル、逆磁場ピンチ、コンパクトトーラス、ミラー、球状トーラス等の磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式である。これらの研究開発は、トカマク方式にない利点を具備する、より魅力的な核融合炉の可能性を探求するものである。先進方式をITERと並行して研究することは、原型炉以降の閉じ込め方式の選定に幅を持たせると同時に、核融合開発計画のリスクを最小限にとどめる観点からも重要である。
 炉工学技術に関しては、実験炉の開発に必要な工学技術の多くがITER計画を通して解決される。しかしながら、定常運転を行う原型炉で使用するブランケット構造材の試験に必要な中性子照射量は、ITERでは得られない。このため、ITERと並行してエネルギー14MeVの強力中性子源を建設して、耐熱・低放射化構造材料の開発試験を実施する必要がある。

原型炉段階
 第三段階の次の段階は、核融合発電の工学的実証を目標とする原型炉段階である。核融合発電は、この段階ではじめて本格的なプラント規模で実現する。第三段階計画から原型炉段階へ進むにあたっては、トカマク型を基調として原型炉の検討を進めるが、他の方式で得られる成果との比較によって、原型炉段階計画の閉じ込め方式を最終的に決定する。

実用化段階
 原型炉段階の次の段階は、核融合炉の実用化段階である。この段階で経済性が実証されれば、核融合発電はエネルギー市場へ参入する資格を得る。核融合開発を国が主導するのは原型炉段階までであり、実用化段階は民間主導のもとに進められることになろう。そのためには、原型炉で核融合炉の実用化に十分な見通しを得る必要がある。

5.4 ITERで取り組む燃焼プラズマ制御と工学技術
燃焼プラズマ制御
 核融合開発は半世紀を越える長い年月をかけて進められてきたが、そのほとんどが炉心プラズマの理解に費やされた。磁場に閉じこめられたプラズマは自律解放系であり、外界とエネルギーをやりとりしながら、自分のとる物理的状態を自分で決めてしまう特性をもつ。この性質のために、高温プラズマの制御は著しく困難であった。しかし長期にわたる研究の結果、炉心プラズマ制御技術はほぼ確立され、これに必要な知識基盤も充実した。しかるにこれらの知識基盤は核融合燃焼を伴わないプラズマの研究を通して集積されてきたものであるから、果たしてそれが核融合燃焼を伴う炉心プラズマの制御に適用できるかどうか、不確定である。
 これまでは、プラズマがエネルギーのやりとりを行う相手は専ら外部加熱パワーであったが、今度はこれに核融合加熱パワーが加わる。核融合加熱は外部加熱では模擬できないことから、現在の知識基盤をもとに燃焼プラズマの振る舞いを正確に予測することはできない。この問題の解決を見なければ、核融合エネルギーの技術的実現性について明確な結論を出すことは不可能である。逆に解決されれば、あとは既存の技術の革新により核融合開発を進めることができる。燃焼プラズマの挙動を解明して制御することは、核融合開発における最後の高いハードルであると言える。
 プラズマは磁場で制御する。燃焼プラズマが制御できることを証明するには、外から加えた制御磁場がプラズマ全体に行きわたって、制御の効果が現れるまでにかかる時間よりも十分長い時間にわたり、プラズマを安定に維持できることを示す必要がある。ITERでは、その時間は300秒から500秒である。これらの要件を満たす実験装置の規模や磁場の強さなどは、燃焼していないプラズマを用いて得られたデータベースをもとに決められる。このデータベースが燃焼プラズマに適用できるかどうかは、実験炉それ自身を使って確かめるしかない。一旦適用できることが確認されれば、このデータベースを用いて原型炉以降の装置を設計することができる。

工学技術

 燃焼プラズマの発生と制御を実験目標とするITERでは、これまでになかった技術や設備が必要になる。すなわち、強い磁場を定常的に発生するための大型超伝導コイル、大規模プラズマを1億度近くまで熱する加熱装置、自然界にごく微量しか存在しないトリチウム燃料を自己増殖するブランケット技術、放射性物質であるトリチウムを安全に取り扱い処理する技術、核融合反応で生じる高エネルギー中性子照射環境下で作動する機器・材料および放射線を遮蔽する技術、発生した放射化物質の処理技術、強い放射線環境下で大型構造物を高い精度で分解・組み立てできる遠隔保守技術、大きな熱負荷に曝されるプラズマ対向材料の冷却技術、高温プラズマから排出される粒子や熱エネルギーの処理技術等がこれにあたる。さらには、これらの技術や設備を統合して、システムとして機能させる技術、高度の安全性、信頼性を確保するための技術が不可欠である。ここに挙げた技術のいずれが欠けても原型炉は成立しないが、これらの技術開発の大部分はITERの建設によって大きな山を越えることになる。さらに、これらの技術はトカマク方式のみならず、トカマク以外の方式にも必須の重要な技術である。

原型炉を見通して新たに開発すべき技術
 ITERでは、原型炉へワンステップで移行するために、ITERと並行して進められる研究開発の成果を可能な限り取り入れ、原型炉に必要な技術を開発・実証する。以下にそのような課題について記述する。
(i)定常運転技術の確立
 トカマク方式の定常運転技術は、国内外での研究によりその原理実証が行われているので、既存のトカマク装置を活用して鋭意研究を進め、成果をITERの運転に適用することが肝要である。特にITERでは、燃焼プラズマにこれまでの研究成果が応用できることを確認しなければならない。それと同時に、定常運転を阻むプラズマディスラプションを回避する運転手法を確立することも重要である。

(ii)高温ブランケットテストモジュールの開発
 ブランケットには炉心からの中性子を遮蔽する役割がある。さらにトリチウム燃料を自己増殖するためには、炉心からの中性子で炉心を取り囲むブランケットを照射する。また核融合発電を行うには、ブランケットから取り出した高温の熱エネルギーを蒸気タービンに導き、電気エネルギーに変換する。ブランケットは遮蔽とこのような燃料の自己増殖と熱エネルギーの回収という三つの機能を果たす必要がある。この役割を担うのが高温ブランケットであり、ITERではその技術開発を行うことにより原型炉に備える。

(iii)中性子照射試験
 核融合炉の安全性や経済性の向上には、大量の高エネルギー中性子線の照射と高温に耐える低放射化材料の開発が必要である。原型炉以降で使用する材料については、有力な候補とされる材料があるものの、その特性データベースは十分でなく、中性子照射試験等により性能を確認する必要がある。ITERで発生する中性子は、低フルエンス領域での照射試験に利用でき、また機器コンポーネントの開発にも応用できる。
 これらのうち(ii)と(iii)および前項の工学技術は、トカマク以外の方式にも共通する課題である。

5.5 ITER計画の経緯と現状
経緯
 ITERは、1988年以来日本、米国、欧州、ソビエト連邦(後のロシア)の4極の国際協力によって工学設計活動が実施され、建設が検討されてきた。1998年に出された最終設計報告書で提案されたITER(以下ITER-FDR)は高い建設コスト(約1兆円)のため、計画実現が困難とされ、コストがITER-FDRのおよそ半分となるITERの設計が開始された。建設着手の遅延や高建設コストなどを理由として米国が撤退するという情勢の変化はあるものの、日欧露の3極による設計が継続されている。

米国の方針変更に対する検討状況
 原型炉へのアプローチとして、多角的開発計画に戻るとする米国の核融合開発における方針転換の是非に関しては、米国国内を始めとして、国際的に専門家による検討が加えられた。ITER特別作業部会(1998年)での検討によれば、米国の方策を採れば、総開発資金の増大と開発期間の遅延を招くとの結論を得ている。米国内においても核燃焼研究の重要性が再認識され、米国エネルギー省長官諮問委員会(SEAB:Secretary of Energy Advisory Board)ではITER計画がスタートすれば部分的にせよ再参加を検討すべきであるとしている。

ITER計画の現状
 ITERの設計にあたっては、ITER-FDRに比べて核融合出力や運転時間等の性能は1/3~1/2に落としたが、実用核融合炉で経済性の観点から要求される定常運転技術の開発に重点を移すなどの設計の進展があった。現在設計が行われているITERは、第三段階計画における実験炉の要件を満たすものであり、重水素とトリチウムによる核燃焼プラズマの閉じ込めとその長時間制御に関する研究開発及び、発電技術を除く核融合炉に必要となる炉工学技術の統合を可能とするものである。

5.6 ITER計画への取り組み
国際協力としての理念
 エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っている我が国にとっては、環境と調和がとれた将来のエネルギー源の確保は重要な課題であり、特に安定した確保は欧州やロシア以上に重要である。これまでの研究開発の積み重ねによって、核融合分野において我が国は先進国であり世界をリードできる立場にある。また我が国には高度な技術とそれを生み出し活用できる層の厚い人材、並びに産業界が存在する。このことから、我が国はITERを受け入れるに十分な基盤を備えている。
 上記の理由からITER計画に我が国は大きく貢献できるとともに、それを期待されていると判断できる。また、エネルギー開発という国益に関わる研究開発を、国際競争としてではなく国際協力で実施する理由は、資金的な負担の大きさの低減だけではない。国際社会の「対立」から「協同」への転換のシンボル的事業としての政治的意義、米欧が行っている国際宇宙ステーション計画や大型加速器計画(LHC)と同じく、人類共通の財産となるITERによる核燃焼プラズマの科学的知見の開拓に主体的に貢献する学術的意義、核融合が先導して生み出す先端科学技術開発の推進という技術的意義、協同作業を通じた人的交流による社会・文化面での意義、等に高い価値を見出し得るからである。

我が国にとってのメリット
 また国内にITERが建設されることは我が国にとって大きなメリットがある。まず、ITERの国内誘致は、我が国が核融合開発において、世界をリードする立場を今後とも維持するにあたり有利である。次に、我が国の企業による多様な高度技術の創出が見込まれる。ITERの国内誘致はまた、我が国の国際貢献の姿勢を世界に示すことになろうし、さらには、ITERは原型炉で使用できるインフラストラクチャーを国内に残すこととなり、我が国の段階的核融合開発の推進にとり大きな資産となる。

我が国にとってのディメリットと留意事項
 ITER を国内に受け入れる場合、海外にITERを建設するよりも、より多くの資金が必要となる。そのため、ITERの国内誘致にあたっては、我が国における他の科学技術の発展に影響を与えるのではないか、あるいは、核融合研究開発費のITER への集中が進めば多様な実験研究が困難となり、創造性のある研究を阻害するのではないか、等の指摘があり、これらについて十分配慮の上で決断される必要がある。

国内誘致にあたっての基本的考えと留意事項
 ITER 計画の国内誘致にあたっては、建設予定地域をはじめ、広く国民の理解を得つつ、我が国の意志を明確化する必要があろう。我が国がITERを誘致したにもかかわらず、諸般の事情によりITER計画の遂行に支障がでるようなことがあれば、他極に対して信頼を失うだけでなく、損害を与えることとなる。日本がホスト国として名乗りを挙げる場合には、プロジェクトの円滑な遂行に責任のある態度で望み、他極から参加する海外の人に対して、十分配慮する役割が求められることを念頭におく必要がある。
 また、外国からトリチウム燃料を搬入する必要があること、計画終了後も一定期間にわたり残された放射性物質の管理を継続しなければならないことなどについては、地域住民の理解を得ることが肝要である。

5.7 先進炉方式及び炉工学の研究
トカマク以外の方式(先進方式)への取り組みと研究開発の意義
 トカマク方式以外の先進プラズマ閉じ込め方式の開発研究が行われる意義は、核融合装置としてトカマク方式にない利点を具備するか、あるはトカマク方式で解決されていない問題点を原理的に回避できるためである。例えば、トカマク方式ではまだ十分に確立していない運転の定常化や、プラズマ電流が突然切れるディスラプション現象については、プラズマ電流を流さないヘリカル型では問題とならない。先行するトカマク型と並行してこれらの研究開発を推進することは、トカマク型よりも優れた方式が出現する可能性を重視することでもある。

先進炉方式の研究のITERへの寄与
 先進方式の研究で開発されるプラズマ加熱・電流駆動、プラズマ計測、燃料入射などの先端技術はITER計画にも有用である。また大学の中小型の装置を用いての研究は、プラズマ閉じ込めに関する先駆的知見の発掘や原理実証に有用であるとともに、核融合のための人材養成に貢献するところ著しいものがあり、ITER計画推進にとっても極めて重要である。

核融合炉工学の重要課題
 核融合炉を構成するコンポーネントに関する技術課題の多くは、ITER計画を通して解決される。中でもプラズマを取り囲むブランケットは、強い高エネルギー中性子の照射を受ける厳しい環境の中で、トリチウム燃料の増殖や中性子遮蔽などの重要な機能を果たす高温のコンポーネントである。ITERでは核融合反応で生じる中性子を利用してブランケットのモジュール試験を行い、原型炉に備える。しかしながら、定常的に発電を行う原型炉で使用するブランケット構造材の試験に必要な中性子照射量は、ITERでは得られない。このため、ITERと並行してエネルギー14MeVの強力中性子源を建設して耐高温・低放射化構造材料の開発試験を実施する必要がある。耐高温・低放射化材料の開発は核融合炉の安全性の確保に必要であるばかりでなく、経済性の確保にも重要である。すなわち、こうした材料が実現すれば、核融合炉の小型化を可能にするとともに、使用済み放射化材料の保管期間を短くできる。長期間にわたり使用できる材料の実現は、構造材の交換頻度の低減に寄与し、炉の寿命を延ばす。使用温度の向上による高熱効率化等も、経済性の改善に大きく寄与する。低コスト核融合炉の実現を早めるためには、強磁場コイルの開発を推進しなければならない。

5.8 ITERから核融合発電実用化まで
早期実現可能性
 ITERで長時間核燃焼が達成された暁には、ITERの技術によって数時間から10時間程度の間続く発電を繰り返す核融合炉を技術的には実現できる。現在の見通しでは、こうした核融合炉は大型化する傾向があり、経済的には不利になると考えられている。

ITERの延長上に考えられる核融合炉
 ITERで原型炉の準備として開発すべき技術(定常運転技術、高温ブランケット技術等)が開発され、並行して実施される材料の中性子照射試験が完了すれば、定常運転を基調とするトカマク型核融合原型炉の建設が可能となり、その建設・運転によって核融合エネルギーの技術的実現性が実証されることになる。この原型炉は実用核融合炉の「原型」であり、研究開発段階を完結させる装置でもある。一方、第三段階計画では、原型炉方式については、トカマク型を検討の基調としつつ、トカマク型以外の先進方式の成果を踏まえて判断することとしている。先進方式のいずれかが選択された場合でも、ITERによる核燃焼プラズマや炉工学の知見はそのまま通用する。

コスト改善
 将来核融合発電が市場に参入して活用されるためには、発電コストが他の電源と競合可能であることが要求される。そのためには炉の小型化、保守・点検・交換期間の短縮、炉の定常運転、炉心プラズマの高性能化が有効である。

小型化
 炉の小型化にはプラズマ閉じこめ性能の向上とともに、低放射化材料開発、強磁場コイルの実用化が有効である。低放射化材料の候補は既にいくつかがあげられ、今後14MeV中性子による照射試験等を行っていく必要がある。
 ITERの磁場コイルよりも強い磁場が発生できるコイルの可能性についてもすでに大きな見通しが得られており、工学的実証が待たれる。

保守・点検・交換
 核融合炉の構造材は炉心からの高エネルギー中性子照射により劣化するので、寿命がくる前に定期的に交換する必要がある。発電コストを下げるためには、材料の寿命を延ばして装着から交換までの期間を長くすることと、交換時間を短縮することが有効である。前者は高性能材料の開発に、また後者は遠隔保守技術の向上により達成される。

定常運転
 経済的で実用に供し得る核融合発電を行うには、発電所の定常運用が必要であることから、核融合炉の定常運転技術を確立する必要がある。実験炉の燃焼プラズマでこの技術が確立されれば、その成果は経済性の向上に貢献する。

炉心改善
 磁気核融合方式では、できるだけ高い圧力のプラズマを閉じこめる、いわゆる高性能プラズマの閉じこめを実現することが発電コストの低減にきわめて有効である。高性能プラズマ閉じこめを追求するための炉の改良研究は、核融合発電実現後も継続すべきであり、その成果は経済性の向上に貢献する。

核融合発電実現の時期
 核融合発電実現の時期について予測をすれば、ITERによる研究成果が原型炉に反映されて、原型炉での発電が実現するのは、現在提案されている計画が着実に進展すれば、技術的にはおよそ2040年頃と考えられる。原型炉の成果をもとに、核融合発電が経済性を含めて実用化段階に入るには、さらに少なくとも10年以上を要すると考えられるが、その頃の技術革新の様相、各種エネルギー源の経済性や社会的状況にもよるため、正しい予測は困難である。

5.9 第一部の結論
 核融合エネルギーの技術的実現性は、実験炉ITERで核融合燃焼プラズマの制御技術と、統合された核融合装置としての技術的成立性を確立し、安全性、信頼性を実証することにより確定的なものとなる。また、定常運転技術を確立すれば、より高性能の核融合炉が実現する。原型炉以降の装置では、主要技術のほとんどがITER技術の延長上で解決できるものである。このことから、原型炉以降の核融合開発の見通しは、予測しがたいプラズマ中の物理現象を解明しようとする実験炉段階に比べて、格段に立てやすくなる。原型炉の建設費は材料の進歩をはじめとする技術革新やプラズマ物理の進歩により、ITERより低コストとなる可能性がある。同じことは原型炉以降の実用核融合炉にもあてはまるものと考えられる。

第二部 計画の拡がりあるいは裾野としての基礎研究
 ここでは、核融合研究が関わる広範な学術分野、核融合開発がもたらした学術、技術における波及効果、核融合開発を推進している組織体制や人材育成の状況について調査・検討し、核融合エネルギーの実現に向けた、計画の拡がりあるいは裾野としての基礎研究の位置付けや意義を明確化する。

5.10 大学等における核融合研究の意義
 我が国の大学等における核融合炉心プラズマの研究分野では、核融合エネルギーの研究開発としてトカマク先進・補完研究やトカマク型以外の先進方式の研究を行うと同時に、学術研究として高温プラズマ挙動の制御に必要な知識基盤の体系化と強化を目指して、幅広く研究開発に取り組んでいる。こうして得られる体系化された知識基盤は、核融合炉心開発を推進、加速し、炉心の小型化・高効率化の指針を見出すために不可欠である。プラズマに関する新しい知識基盤は他の学術分野との交流を促進し、新領域を創出する。さらには核融合の実験的研究に伴い開発されたプラズマ生成技術、各種プラズマ加熱技術、燃料入射技術、プラズマ計測技術、大電力制御技術等、新技術の多くは広範な産業分野で応用されており、波及効果が大きい。
 また、核融合炉工学は、炉内材料工学、構造材料工学、ブランケット工学、トリチウム理工学、超伝導マグネット工学、電磁構造工学、トリチウム生物影響学、熱構造工学、炉設計工学、システム安全性工学、中性子工学、慣性核融合の炉工学などの多岐にわたる分野から構成されている。
 大学等においては、ネットワークが整備され、研究課題の設定や共通試料の作成、あるいはデータベースの構築がなされ、核融合の総合的な基礎研究が各大学や研究所の特徴を生かして展開されつつある。
 これらの研究活動は、ITER計画の炉工学の基礎を支えるとともに、長期的な核融合炉開発の課題の解決や広範囲な分野にわたる継続的人材育成に寄与するものである。

5.11 核融合研究開発組織の拡がりと人材養成
研究組織
 我が国では、核融合の研究開発に携わる研究者は全国の大学、各研究機関、産業界等に広く分布している。これらの研究者は国内ではプラズマ・核融合学会、日本原子力学会、日本物理学会、電気学会、応用物理学会、日本機械学会、日本金属学会、低温工学協会、レーザー学会、溶接学会、日本真空協会、日本放射線影響学会、エネルギー・資源学会等に所属して活動している。その数は数千人にのぼり、年齢構成も広い。

人材養成
 調査によれば、核融合をめざした研究に携わっている大学院生の数は着実に増えてきているが,一方では核融合界全体の研究者数は漸増傾向であるものの,やや鈍化している。これは大学や企業の核融合研究者が核融合以外の分野に新たに研究を転換・発展させ活躍しているためであると思われる。このことは核融合開発が広い分野と関わることの一面を表わすと同時に、核融合分野の基礎能力を有する人材が産業界等に多数潜在することを意味する。こうした核融合人材育成の成果は、核融合開発の重要性が社会において理解され、幅広い層の支援を得ていくことにも寄与することになる。ただし現在のように大学・企業における核融合研究者が他分野へ流出している傾向が長期化すると,大学における研究の継続・発展や企業における技術の継承・開拓などの観点において支障をきたす恐れがある.
 ITER建設時に必要な人材は、現在の割合で育成され,多くの分野に分散している潜在的核融合研究者を加味すれば、満たされるであろう。しかし、その先に続くITERの実験段階に備え、引き続き若い人材のさらなる育成と,研究者としての資質を維持し向上することに努めるべきである。それには全国の大学の基礎研究を活性化し、若い研究者を引きつけることが極めて有効である。
 ITER計画は建設開始から30年にもわたる長期計画であることから、持続的な人材確保と養成が不可欠である。我が国としても、優秀な人材を多数育成する体制を構築する必要がある。それには、大学の核融合関連研究組織や企業の核融合技術開発組織のさらなる充実が重要である。大学の多彩な研究は、若手研究者の核融合分野への参入を促す。

推進体制
 ITERやそれ以降の核融合研究開発計画は長期にわたるので、大学、各研究機関、産業界等の研究者の実質的協力が可能な制度的システムの構築が必要となり、その検討が始まろうとしているところである。

5.12 核融合開発の学術的側面
プラズマと核融合
 プラズマは固体、液体、気体に次ぐ物質の第四の状態であり、原子核と電子がばらばらになった状態である。プラズマは、はじめは宇宙物理学や電子工学における研究対象であった。核融合開発が始まると、プラズマの研究は急速に進み、プラズマ物理学やプラズマ理工学なる学術の広い領域に関わる分野が生まれた。プラズマ物理学では、力学、電磁気学、流体力学、統計力学、熱力学、相対論等の古典物理学を基礎として、主としてプラズマの多体問題や非線形問題が研究対象とされている。プラズマ中で起こる複雑な原子分子素過程の研究も進んだ。プラズマ理工学はプラズマ物理学をカバーした上で、核融合をも含むプラズマの多面的応用を主題とする分野である。この分野は電気・電子工学、原子力工学、材料科学、宇宙物理学、地球物理学など、広い分野との交流が深い。核融合研究はエネルギー開発であると同時に、特に大学の研究において見られるように学術の前線拡大においても大きな役割を果たしつつある。炉心プラズマ制御技術の確立には電場や磁場と相互作用するプラズマの挙動について、十分理解する必要がある。プラズマは複雑、多様、かつ非線形的に振る舞う活性な媒体である。高温プラズマを磁場で静かに閉じこめるために、次々に発見される様々な不安定性の一つ一つを解明し、解決するためには、実験と理論、あるいは計算機シミュレーションが相互に連携しながら新しい知識基盤を構築する必要があった。それには、長い時間を要した。国内、国外の研究者間の協力、あるいは交流による情報交換が問題の解決に著しく寄与したことは言うまでもない。こうして、未知なる媒体プラズマの挙動の多くが解き明かされ、ようやく燃焼プラズマの究明に取り組むことが可能な段階まで到達したところである。
 純粋プラズマ物理学では、例えばプラズマ中で起こる孤立波の伝播、乱流やカオスの発生、自己組織化などの非線形現象や非平衡輸送現象は重要な研究対象であり、これらは現代物理学の最先端課題である。完全に電離した重元素イオンの発生は原子物理学や加速器科学に寄与している。

5.13 核融合技術の波及効果
技術波及の駆動力
 核融合開発は広範な先端技術を必要とするため、技術のシーズとしても重要な成果を上げつつある。すなわち、核融合装置は物理学、機械工学、電気・電子工学、材料工学、熱力学、伝熱流動・熱工学、核工学、低温工学、電磁力学、化学工学、制御工学、計測工学など、極めて広い学問分野に基礎をおき、それらの先端技術の集積により構成されている。このため、要素機器の開発に伴い個々の技術分野が進歩するだけでなく、分野間での相互刺激が科学技術全体のポテンシャルを高めることにも寄与している。その結果がもたらす波及効果は、半導体産業、大型・精密機械加工などの一般民生用技術ばかりでなく、加速器技術、超伝導技術、計測診断技術、プラズマ応用技術、耐熱耐重照射材料技術、不純物除去技術、計算機シミュレーション技術など、物理、宇宙、材料、医学、通信、環境など、他の分野の先端技術開発や基礎科学研究の発展に多大の貢献を果たしている。

波及の例
 たとえば、ITER用超伝導大型コイルの開発により、強磁場のニオブ・スズ超伝導線材のコストが4分の1になり、医療用強磁場MRI普及などの道を拓いた。それとともに、超伝導体としては13テスラという強磁場でもその交流損失を従来の5分の1に抑えることができたため、現在5~6テスラで設計されている超伝導電力貯蔵システムの蓄積エネルギーを5~7倍に上げる可能性を拓いた。さらに、4K以下で作動する熱効率の高い冷凍機用ポンプ開発の成果は、米国のフェルミ研究所や欧州のCERNで採用されるなど、先端科学にも大いに貢献している。
 核融合プラズマの加熱の目的で開発された大電流正イオンビーム発生技術は、すでに半導体産業で広く用いられ、身近な国民生活に深く浸透している。またITERを目的として開発された大電流負イオンビーム技術は、材料創生など全く新しい研究分野を開発するものとして期待されている。加えてエネルギーの揃った負イオンビームは、半導体材料の微細加工にも適しており、太陽電池用単結晶シリコン薄膜の低コスト大量製造への道を拓いた。さらに、プラズマ加熱用大出力電磁波源は、高機能セラミックの製造に応用されているほか、環境問題の解決や宇宙空間で使用するレーダーへの応用が検討されている。
 核融合炉の要素機器の統合化は、システム工学や制御工学、安全工学など、統合技術の体系的発展をもたらしている。このほか、核融合炉そのものを強力中性子源として利用することによる、放射性廃棄物処分の検討なども行われており、今後の発展が待たれる。

5.14 核融合研究開発における国際協力
 核融合研究における国際協力は、1970年代終わり頃から積極的に展開された。その動機は、分担による開発資金の軽減を意図するものではなく、むしろ国際競争の中で他国の状況をいち早く知ることによって、自国の研究開発を刺激し、フロントに立ち続けたいとする競争意識に基づくものであった。核融合研究における国際協力は、このような情報交換を目的とする国際協力に始まり、二国間・多国間の協力による協調的、かつ競争的な共同研究を経て、現在ではITER計画のような多国間での共同建設を目指せる熟成した段階に至った。
 研究開発の規模の拡大に伴う人材や資金の増大に対応して、開発リスクを最小限度に抑えつつ効果的・効率的な研究開発を進めるために、国際協力は極めて有効である。例えば、国際協力は我が国で実施しなかったトリチウム放出実験やDT燃焼実験等の研究を可能とし、国際的に通用する多数の人材を養成してきた。一方、科学者のみならず、その家族が日常生活において文化活動などを通じて相互理解を深めることは、国際親善に寄与する。総合的に判断すれば、国際協力によって得られた成果は費やした資金や労力を遙かに上回る。核融合研究開発の進歩のためには、国際協力を今後も推進していくことが重要である。
 科学技術は、個々の研究者らが創り出すアイデアを源泉として進歩する。アイデアの創出は、研究者間の競争によって促進されるものであることから、国際協力の実施にあたっては、たとえITERのような大型プロジェクトであっても個人、研究機関、国の間で競争関係を保持することが活力を維持し、ひいては計画を強固にする。これまでの例でも、物理R&Dや工学R&Dにおける国際的な競争が、ITER工学設計活動の成果を確実なものにした。今後、ITER計画が建設段階に入る際にも、装置の製作過程の最適化等に関して産業界の競争や、国家間の競争体制を堅持することが重要である。

5.15 第二部の結論
 核融合開発はプラズマ理工学や核融合炉工学を通して、極めて広い学術分野と関わり、各々の領域の拡張や深化に貢献している。我が国には核融合開発を強力に推進する学界、産業界の堅固な組織基盤と大きな裾野の拡がりがある。超長期にわたる核融合開発を支える優秀な人材を養成し、ITERをも含めて学術研究として核融合研究の基盤を充実発展させて行くためには、大学の核融合研究と企業の核融合技術開発の絶え間なき活性化が重要である。ITER計画に大学、国立研究機関、産業界等が協力して取り組むための連携・協力のありかたについても、検討が始まろうとしているところである。
 我が国は、人類究極のエネルギー源実現のための国際貢献を果たすにあたり、計画の拡がりが顕著であるとともに、裾野としての基礎研究や技術開発は盛壮にして百般である。