2.4 まとめー開発戦略におけるITERの位置付け
 本章においては、ITERを基調とした核融合エネルギー実現への開発戦略について記述した。核融合エネルギー実現のためのアプローチとしては、第1章に述べた核融合エネルギーの特徴を生かす一方、実用炉として望まれる仕様を考慮することが大事である。
 核融合エネルギー実現にいたる過程を、「研究開発」が必要な段階と、その後の「実用化・利用」の段階に分けるとすると、研究開発段階においては、最初の発電プラントとしての原型炉による定常発電実証が大きな目標となる。これにいたる中間ステップとして、実験炉を建設し、DT核燃焼プラズマ制御と(発電ブランケット技術を除く)炉工学技術を統合することが必要である。現在設計が進められているITERは、第三段階計画に記載されている実験炉の要件を満たすものであり、自己点火(エネルギー増倍率が20程度以上)や定常運転を含む長時間燃焼が可能となる。
 ITERの延長線上に考えられるトカマク型核融合原型炉としては様々な検討例があるが、代表的な定常トカマク型核融合炉の設計例を考えると、ITERやその他の装置による原型炉に向けた研究を行うことによって、定常発電を行う原型炉への展望を開くことが可能と判断される。
 トカマク方式による核融合エネルギー開発は、現時点では最も進んだ閉じ込め方式として有力であり、核燃焼プラズマ制御の実証や大量の核融合エネルギーの生成が可能と判断できる。しかしながら、魅力的な核融合炉を実現するには、現在のITERが立脚している物理と炉工学技術をさらに向上させることが必要である。そこに、先進(代替)方式が将来有力になりうる余地があり、また、トカマク方式の改良を目指した先進・補完研究の意義がある。
 ITERは、我が国の第三段階計画における実験炉と位置付けられるものであるとともに、先進国のほとんどが関与し国際協力で実施する国際プロジェクトであり、その意義は高い。ITERを国内に誘致することには様々な得失があるが、しかし総体的に評価すると、わが国がホスト国としてITERを国内に建設し、核融合エネルギーの実現へ向けてその役割と国際的な貢献を果たしていく意義は大きいと考える。