資料132-8号
国立機関原子力試験研究(核融合分野)の研究評価結果について
平成11年6月30日
原子力委員会核融合会議
計画推進小委員会
平成11年6月8日に開催された計画推進小委員会において2件の研究課題について、ヒアリングを実施した。これらの研究課題はいずれも各研究機関で事前に外部評価が行われていることから、当小委員会は再度詳細な評価は行わず、原子力委員会の核融合計画の基本方針との整合性、他の研究課題との調整等の観点に重点をおいてヒアリングを実施した。以下にその結果概要を示す。
出席委員は、宮主査、三間委員、本島委員、菊池委員、西委員である。
なお、ヒアリングにあたり専門家として遠山先生(前東大)、吉田先生(東大)、香山先生(京大)、井口先生(名大)に御参加いただき、御意見、御助言を頂いた。
○事前評価研究課題「高効率磁場核融合に関する研究」
(電子技術総合研究所、平成12年度~平成18年度)
研究内容: | 中規模逆磁場ピンチ実験装置TRE-RXにおいて能動的プラズマ制御法、炉プラズマ技術基盤のための小型装置TPE-2Mにおいて高熱流プラズマ容器壁相互作用制御法等を開発し、高効率プラズマ閉じ込めを実証する。 |
- ヒアリング結果:
- 本研究は、原子力委員会の「第三段階核融合開発基本計画等」の逆磁場ピンチ型装置(第Ⅳ章1.2節(3))の開発目標の達成に資するものであると判断できる。
- TPE-RXは、逆磁場ピンチの将来性を判断する重要な任務をもつものであり、米国のMSTや伊のRFXと相補的かつ競争的実験を行ってきており、その成果は世界的に期待されている。
- TPE-RX計画は、MHD(電磁流体)を中心とした学術研究としての価値は高いものの、高効率核融合炉としての可能性については、将来像をしっかりと見定める必要がある。次のスッテプに進む段階においては、その将来像に立脚しながら是非を判断する評価基準を明確にした後、再び評価を行う必要がある。
- 限られた予算と人員で目標を達成するためには、TPE-RXの位置付け、役割をより明確にし、的を絞った研究テーマを設定し、その上で国内外との人的交流や協力体制を確立していくことが必要である。
- 研究実績、他分野への波及効果等についても適当であると判断できる。
- 新しい研究フェーズへ入ることへの妥当性、研究予算規模の妥当性については概ね適当であると判断できる。今後、理論シュミレーションを担当する人員体制の整備が望まれる。
- 以上要約すれば、本研究は構造が簡単で分解、再組立てが容易な簡略型核融合炉の実現に資するため、逆磁場ピンチ方式によるプラズマ閉じ込め性能と安定性の向上を図るものであり、研究を進めていくことは十分に意義があると認められる。
- ○中間評価研究課題「速中性子による固体中軽元素の動的挙動の測定技術に関する研究」
(名古屋工業技術研究所、平成9年度~平成13年度)
研究内容: | 速中性子を用いた中性子弾性反跳粒子検出(NERD)法により、材料表面の軽元素の分布を非破壊で測定する技術の確立を目指す。 |
- ヒアリング結果:
- 本研究をより有効なものとする上では、検出器システムの高性能化を図るとともに、中性子源仕様の最適化についても、さらに検討することが望まれる。
- これまでに得た基礎的な成果を踏まえて、今後核融合材料開発への具体的貢献に重点をおいて研究開発を進めていくべきである。特に、適用対象を明確に設定し、分析性能(検出限界や深さ分解能など)を定量的に評価することが必要である。
- 本研究の重要性を考慮すると、より適切な人員体制の整備が望まれる。
- 研究成果について、国際会議及び学会等国内外を問わずより積極的に発表の機会を持つことが必要である。
- 以上要約すれば、本手法は従来に比べて深いところまでの軽元素の分布を非破壊的に分析することができること、また、これまでの研究成果は十分評価できるので、今後もこの研究を進めていくことは意義がある。