資料第131―1号

第130回核融合会議 議事要旨(案)

1. 日時 平成10年11月13日(金) 14:00 - 17:00

2. 場所 科学技術庁第1, 2会議室

3. 出席者
(原子力委員)
  遠藤委員
(専門委員)
  井上座長、阿部委員、飯吉委員、石野委員、伊藤委員、岸本委員、
  関口委員、玉野委員、苫米地委員、中井委員、藤原委員、宮委員、
  宮崎委員、宮本委員、森委員、吉川委員(16名)
(事務局)
  今村長官官房審議官(原子力局担当)、中村核融合開発室長

4. 議 題
(1)ITERに関する今後の進め方について
(2)その他

5. 配付資料
資料第130-1号  第129回核融合会議議事要旨(案)
資料第130-2号  具体的な検討項目について(修正案)
資料第130-3号  米国の政策変更に関する技術的要因に係わる考察
資料第130-4号  ITER 低コストオプションと第三段階核融合研究開発基本計画との整合性
資料第130-5号  米国不参加のITERへの技術的影響について
資料第130-6号  ITER/EDA実施計画について
資料第130-7号  ITER建設に向けたこれまでの国際的な議論について
資料第130-8号  メガサイエンスプロジェクトにおける運営について
資料第130-9号  国際核融合研究評議会(IFRC)について
参考資料1     第三段階核融合研究開発基本計画等
参考資料2     国際熱核融合実験炉(ITER)と第三段階核融合研究
          開発基本計画上の「実験炉」について

6. 概 要
1)
 井上座長より、ITERに関する今後の進め方について2回目の審議として、具体的な検討項目毎に議論を行っていくとの説明がなされた。

2)
 事務局より、具体的な検討項目についての修正案として、前回会議での議論をもとに整理した3つの検討項目(1.我が国がITER計画を推進する意義について、2.3極でEDAを継続し、完了させることについて、3.ITER実現のための課題)について説明があり、これをベースに議論が進められることになった。

3)
 岸本委員より、米国の政策変更に関する技術的要因に係る考察について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

 ○
米国のエネルギー開発指向路線が核融合科学へ変更された意味は何かとの質問があり、エネルギー開発には然るべき大きさを持つ装置と燃焼プラズマ(DT)実験が必要であり、これには必然的にITER級の装置が必要となるが、この路線を米国全体として進めるのは難しい状況にあることから、これをサイエンスとして小分けにした路線に変更したものではないかと予想されるとの回答があった。
 ○
ITERはコストがかかるので、サイエンスに戻ればより安く済むとの期待が米国にはあったようだが、結局開発にかかる費用は同程度になるため、他極は米国の主張に賛成していないこと、米国の目指している定常の先進トカマクにおいても、α粒子の燃焼プラズマで自発電流が十分に発生するシステムによる閉じ込めの良い実験を行う必要があり、論理的に矛盾しているという議論がITER/SWGでなされているとの回答があった。
 ○
米国の政策変更については、別の見方もある。米国は当初、ITERが実験炉としてこれだけ大きなものになるとは予想していなかったため、このことも変更の理由のひとつに挙げられる。これは、ITERが技術的なものを含めてアトラクティブな設計でないとの判断から、一度サイエンスに戻り、よりアトラクティブなものを探ることも必要と判断したとも考えられる。また、もうひとつの理由としては、米国がトカマクに集中しすぎたことが挙げられる。ITERがだめな時に何も残らないという危機的な意識を背景に、これを反省すべきとの考え方に基づき幅広い科学研究指向に方向転換したと思われる。
 ○
米国の物理研究者はコンパクト化や高β化、技術研究者は自発電流やトカマクのディスラプションの問題に関心があり、お互いの関心事項が異なる。
 ○
米国の物理学者の主張にある、高い自発電流による先進トカマク概念と高β化を指向した概念については既にRCOに取り入れられており、また、革新的な閉じ込めの代表例とされている球形トカマクについても英国ですでに研究がなされている。
 ○
一つの路線で走るべきではなく、リアクターに最も近く、実績の豊富なトカマク(ITER)がなぜ困難であるという意見が出ているのか見直すべきである。アトラクティブなものにも目を向けて検討すべきである。
 ○
米国の政策変更に関して興味深いデータがあり、米DOEの核融合予算の推移と世界の原油価格との間には強い相関が認められる。米国におけるエネルギー問題はNot Political Issueであることを裏付けていることをコメントしておきたい。
 ○
米国の科学指向路線への転換は長い歴史を有するものであり、常に科学を指向する一派と、プロジェクトを目指す一派との争いがあった。90年にDOEの予算が低下した時には、科学に係る研究費が下がり、その後、 DOEによる科学から技術への政策転換を経て、科学の予算はさらに低下した。今回の政策変更は、科学指向の一派の議会への働きかけがあったと聞いている。また、今回の件は慣性核融合も大きく関係しており、慣性閉じ込めについては国立点火施設NIFによりレーザーで点火を目指した計画が始まっている一方で、まだ具体的な提案が見えないような磁場閉じ込め核融合に対して批判もあったと聞いている。
 ○
米国の予算は、必ずInterest Party の提案が関係しており、正当性を欠くことがある。これが、米の活力になるとともに、アンバランスを生み出している点でもある。米国の政策を考える場合は、結果ばかりにとらわれすぎると本質を間違える可能性があるので注意すべきである。
 ○
米国は政策の転換を何度か行っており、5年後にはまた変わるかも知れない。国際協力は、相手国の動向をどの位のスパンで予測するかが重要な鍵となるので、必ずしも他国の動向にとらわれないようにすべき。
 ○
現在の米国の計画は、フレキシビリティがあり過ぎて心配である。
 ○
米国の事情で我が国が影響を受けることはないと考える。ITERは、もう少し知恵を絞ればより魅力的にできるのではないかと思う。ITERの進め方に競争過程を取り入れ、よりチャレンジングな要素を取り込むことにより、魅力を増すことが可能かと思う。
 ○
競争原理はトカマク以外の他の方式も含めたものかとの質問があり、 例えば3極で独立な設計を行い、これを競合させる等の特徴をもたせることが重要であるが、あくまでトカマクの中での競争原理であるとの回答があった。
 ○
競争原理については、現在のITERは各サイトがそれぞれ各コンポーネントを分担して作業を行っており、一番経済的かつ効率的な方法であると思う。予算がほとんどITERに向かったことが、米国内の科学指向研究者の反発を生んだ原因であり、米国がトカマクに対して危惧をもっている訳ではないと思う。 一方、日本では科技庁、文部省がそれぞれの特徴を持って両者が切磋琢磨しており、ITERが動き出しても先進的な研究開発が並行して行え、優れたアイデアを適切に取りこめる点で良いシステムだと思う。
 ○
これらをまとめれば良いレポートになると考える。
 ○
ITER計画は正常に成長していると思う。計画の合理化をはかるとともに、発展させるという視点が重要である。
 ○
マスコミ等の報道で誤解されていることも踏まえ、ITERが核融合開発にとって役立つものであるという認識を一度確認しておくべきである。
 ○
米国の政策変更について、米国はエネルギー問題を大きなものとしてとらえていないが、日本は大きな問題であるとの認識であり、米国とは大きく事情が異なる。我が国の認識としては基本計画に従って進め、その上でITERが必要と考えられ、どの程度の規模の装置をどのように作るかについて、今後議論が必要である。
 ○
座長より、第三段階研究開発基本計画を見直す必要はなく、今後も同基本計画に基づいて我が国の核融合研究開発を進めていくことでよろしいかとの発言があり、特に異論はないことから今後そのように進めていくこととした。

4)
 岸本委員より、 ITER 低コストオプションと第三段階核融合研究開発基本計画との整合性についての説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

 ○
RCOの炉工学技術に関する検討状況についての質問があり、 基本計画における炉工学技術の説明が漠然と表現されており、プラズマのように技術目標が明確化されていないこと、基本計画に「第四段階以降の研究開発に十分な見通しを得る」との記述があること等に鑑みれば、現状の検討は充分ではないものの、一応の要求は満たしているとの回答があった。
 ○
原型炉に照らした上での炉工学技術の目標について、コストを踏まえた具体的な検討をこの段階でしておくべきとの意見が出された。
 ○
材料開発、ブランケットについて若干の懸念があるとの意見があった。
 ○
炉工学目標については、SWGでのタスク#2において、将来の研究課題としてプラズマの高β化、材料をITERの後半で試験すること、稼働率・保守性を高めるための遠隔保守、安全性検討等について検討されているとの説明があった。
 ○
ITERの工学技術は、原型炉に到達できることの確証と経済性の観点をも含めた検討がなされることが望ましい。
 ○
自発電流に基づいてRCOが検討されていることは改善事項であり、日本の特徴がより明確になっている点でアトラクティブと考えられる。ただし、基本計画の炉工学技術においては、低誘導放射化材料の開発が最大の懸案であり、ITERと並行して開発を進めるべき。材料開発が進まないと、ITERは本当の意味で魅力的な計画とはならない。
 ○
材料開発が進まないと基本計画が終了しないという認識が必要である。
 ○
急にRCOの提案が出たことが核融合の信頼の低下を招いていると思う。この意味で、技術ガイドラインが現行基本計画の実験炉に合うというのも狂言にも聞こえる。その原因ともなっているRCOという名前は不適切であり、替えたほうが良いのではないかとの意見があった。
 ○
これに対し、今後適切な表現に見直したいとの回答があった。
 ○
RCOの技術的計算はすべてオープンかとの質問があり、現在提案されている中間装置案(IAM)は原研がサポートしている案であること、今後JCTより詳細なものが順次示されるとの回答があった。
 ○
宮島前核融合会議座長は、基本計画における自己点火と長時間運転1000秒は同時に達成する必要はなく、独立したものであるとの見解を示していた。
 ○
第三段階以降に繋げるという観点から、ITERにおいて、低放射化ブランケットの開発を計画の中にきちんと組み込んでいくことが重要だと思う。
 ○
材料のフルーエンスについては、dpa(はじき出し損傷)は材料によって異なるのでMWa/m2 (中性子フルーエンス負荷)で示すべきである。
 ○
ITERの運転の後半に行う工学試験が次の段階へ繋がることが重要であるが、RCOではどのようになっているのかとの質問があり、SWGのタスク#2において後半の段階で新しい材料開発の視点を盛り込んで検討していく予定であるが、今は予備的な検討段階であるため少し時間を要するとの回答があった。
 ○
長時間運転のとき、プラズマの平衡以外に工学的な機械的、熱的定常状態は考慮しているかとの質問があり、IAEA横浜会議で、壁とプラズマとの工学的平衡時間が数10秒との結果がTRIAM装置で示されており、これに比べれば十分長い設定であり、考慮されているとの回答があった。
 ○
RCOの提案は、それまでのFDRのベースが積み上がったものであることをきちんと示すべきである。
 ○
座長より、核融合会議としてRCOを第三段階核融合研究開発基本計画の実験炉として位置づけて進めて行くことでよろしいかとの提案があり、特に異論はないことから今後そのように進めていくこととした。

5)
 事務局より、EDAを完了することの意義についての再確認することについて説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

 ○
EDAを完了することの意義の再確認が、本会議の集中審議の目的ではなかったかとの質問があり、ここではRCOが基本計画の実験炉として位置づけられたことを受け、その設計活動を3極で継続、完了させることの意義について再確認するものであり、これを3極で実施したときの技術的な実現可能性については次の項目での議論となるとの回答があった。

6)
 常松ITER日本国内チームリーダーより、米国不参加のITERへの技術的影響、およびITER/EDA実施計画についての説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

 ○
米国の貢献が大きいペレット入射装置については、トリチウムシステムとの組み合わせが重要であり、いざ建設するときになって対応がとれないのではないかという不安がないかとの質問があり、これに対し、入射装置の部分については米国の技術が本質的に不可欠であり、建設の段階で米国への発注を考えているとの回答があった。
 ○
トリチウムについては、日米協力の枠でロスアラモス、TFTRの施設と共同実験をやっており、ペレットを含めてその協力下で米国に要求可能であるとの意見が示された。
 ○
日本の産業にはほとんどの製作技術があるが、大量のトリチウムを扱う技術だけが不足しているので、その時には特別な注意を払って進める必要があるものの、米国が抜けて困ることはないと思うとの意見があった。
 ○
技術的な議論の前に、3極で継続するときの方法論が問題であり、今後は実質的には日、EUの2極で推進することになるため、3年後にEUが抜けたときにどうするのかも含めて、今後我が国としてどう取り組むかについて検討すべきである。単なる延長なら、議論の必要はない。
 ○
EUが建設に入る保証はどこにもなく、そのような場合でも日本が中心的な役割を担うとの心づもりが必要であり、然るべき時期にEUの方針確認と話し合いが必要である。
 ○
特許など、法的な制約はないのかとの質問があり、ITER-EDA協定にあるように、EDAで発生した特許については参加極が無料で使用可能であるとの記述がある。今後米国に関しては検討の余地があるものの、少なくともこれまでの6年間の成果については一切問題ないとの回答があった。
 ○
座長より、本会議としてはトリチウム工学技術への配慮を前提とした上で、3極で実施したときに技術的にEDAの目的が達成できるとの判断でよろしいかとの提案があり、特に異論はないことから座長の提案が了承された。

7)
 事務局より、ITER実現のための課題に係る議論に資するものとして、 ITER建設に向けたこれまでの国際的な議論、およびメガサイエンスプロジェクトにおける運営について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

 ○
メガサイエンスの報告はITERのために分析した資料かとの質問があり、このOECD報告書はメガサイエンス全体の分析をしたもので、特にITERを念頭においたものではない。その主な対象は加速器、宇宙、深海であり、核融合が中心でないとの回答があった。
 ○
検討項目の内、1.「我が国がITER計画を推進する意義についての検証」、2. 「3極でEDAを継続し、完了させることについての検証」については本日の審議によりほぼ意見の集約が図られたが、残る検討項目3.「ITER実現のための課題」については、時間の都合から次回意見交換を行うこととなった。

8)
 関口委員より、本年10月18日に横浜で開催された国際核融合研究評議会(IFRC)についての報告があった。

 次回会合は、11月25日(水)14:30からの開催を予定。

以上