資料第130―1号

第129回核融合会議議事要旨(案)

1.日時平成10年10月29日(木)10:00-12:30

2.場所科学技術庁第1,2会議室

3.出席者
(原子力委員)
  藤家委員長代理、遠藤委員
(専門委員)
  井上座長、青江委員、阿部委員、飯吉委員、石野委員、伊藤委員、
  関口委員、玉野委員、苫米地委員、中井委員、藤原委員、宮委員、
  宮崎委員、森委員、吉川委員(15名)
(事務局)
  今村長官官房審議官(原子力局担当)、中村核融合開発室長

4.議題
(1)ITERに関する今後の進め方について
(2)その他

5.配付資料
  資料第129―1 号第128回核融合会議議事要旨(案)
  資料第129―2 号ITER工学設計活動に係る経緯について
  資料第129―3 号ITERに関する四極会合の結果について
  資料第129―4 号ITERProspectsforthethreeyearsEDAextension
  資料第129―5 号検討の進め方について(案)
  資料第129―6 号核融合科学における新たな協力に関する米国の説明
  資料第129―7 号ITER主催第17回核融合エネルギー会議の開催結果

6.概要
1)井上座長より、本日はITERに係わる議事を中心に議論すること、及び前回会議で積み残しとなっている増殖ブランケットと構造材料の報告書に係る議論は、本件が終了次第再開する旨の提案がなされた。また、本日説明者として参加しているITER-共同中央チームのロバート.エマール所長が紹介された。

2)本題の審議に先立ち、藤家、遠藤両原子力委員から発言があった。

 ○
核融合開発は日本にとって重要である。これはシステム開発として、ITERが中心的役割を果たすプロジェクトのひとつであることは、各界各層が理解している。また、現実の問題として、長い時間を要する開発計画にはときにチェック・アンド・レビュー(C&R)が必要で、今がその段階にある。米国が活動を維持できない状況になったこの段階において、核融合開発を大切にする、これを維持するとの観点からこのITERを今後どのようにみるかが重要である。IAEA主催の横浜会議で行われた4極会合では3極で活動維持することを当事者間で確認したが楽観はできないと認識している。今後の国際協力は自らの主体性を再確認した上で国際協力に望む姿勢を示す必要がある。米国が抜けただけで済むのか、これからEUがどう対応するのかも依然不明瞭である。覆水盆に返らず、一方で拙速に流れない、などの言葉が当てはまる状況にある。ここで、継続か修正かなどの選択をする必要がある。日本がどうすべきかを本会議で十分議論して欲しい。米国でも巨大開発計画の中断は、SSCの問題が過去にあり、今回に限って特別なことではない。日本でも原子力開発は公開されており、1つのことに巨額の費用を長時間費やすことが難しくなってきているのは事実である。ここで軍事利用のない、平和目的のための巨大科学の開発を今後日本がどう進めるのか、国民への意見発信をしていただきたい。

 ○
ITERをオールジャパンで支えられるかどうかが課題である。これから国際協力の負担が1/4から(1/3)+αとなるが、このαを大きなαで日本が主体的にやれるかどうかが問われている。EUとの協力には不明瞭な面があり、EUがEU全体として日本と長期間に渡り一緒にやれるかどうかを、政府の高いレベルでの意向を確かめておく必要がある。拙速でなく、何回かの議論を通して本会議としての意見を固めて欲しい。

3)事務局より、ITER工学設計活動に係わる経緯、及びITERに関する四極会合の結果について説明がなされた。

4)エマール所長より、ITER計画に係るこれまでの活動の経緯、R&Dの成果、低コストオプション設計及び今後のEDA延長期間での作業内容等について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。
 ○
最終設計報告(FDR)を6年間の成果として7月に確定し、一方で短時間で、低コストオプション(RCO)の検討がなされていることについてどう考えるかとの質問があり、EDA6年間の間に物理、技術において非常に大きな進捗があり、これが今後の設計活動の基盤となる、これまでの努力により核融合エネルギーの実現可能性を実証することが重要であり、RCOを進めて新たな支持をとりつけることが可能と考えているとの回答があった。
 ○
EDAの延長期間3年の必要性についての質問があり、これは技術的な理由でなく、他の活動に時間がかかるためであり、政策的な調整、合意、詳細な取り決めの作成、資源の調達のスペックを決定するための時間としてもこの程度は必要との回答があった。
 ○
IAEA主催の横浜会議で世界的なR&Dの状況を知り、ITERを実現するために日本だけでは到底達成しえないような幅広いR&Dが世界の知見を結集して行われていることを実感した。
 ○
RCOでは装置規模が小さくなることによって、これまでの大きな設計サイズで実施してきたR&Dの技術利用が困難になるのではないかとの質問があり、RCOサイズまでの縮小であれば、EDA6年間に得られた技術が新たな目標にも利用できるとの回答があった。
 ○
ITER設計において、米国のノウハウを今後のITER設計にどう取り入れるのかとの質問があり、これまでの成果は報告書になっていること、また、米国はトカマクには関心を持っており、今後設計やR&Dといった資金を伴う活動には参加しなくとも、物理、解析の分野において貢献が期待できるとの回答があった。
 ○
今後3年間の活動において、例えば建設サイトがまだ決まっていないこと等、作業を進めるための条件が十分でないように見える。有益な成果に繋がるような作業条件を各極に要求するとともに、それをベースにした作業内容を各極に提示することも所長の重要な仕事であり、その努力を期待する。
 ○
3年間の延長期間は技術的な理由でなく、各極間のコネクションなどに時間を要するためである。サイト提案も1ヶ所に絞らないと詳細な設計ができないし、サイト以外にも組織、調達、責任などの重要な決定すべき条件があり、今後の進捗は各極の状況と密接に係っている。実際の詳細設計には調達の仕様など明確に示さなければならない。これまでも各極に要請はして来ており、今後も引き続き、各極に要求していきたい。少なくとも2極間の非公式合意を経て、正式な合意に繋げて欲しいと考えている。

5)吉川委員より各極のITER設計活動への姿勢に関する現状説明があり、米国は今後エネルギー科学に重点をおき、EDAは1年間のみ参加するが、その後はITERを含む新たな協力を指向すること、欧、露はトカマク方式によるITER計画を中心に活動を進め、EDAは3極で3年間継続する意志があることなどが紹介された。

6)事務局より、検討の進め方について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。
 ○
事務局提案はITERが4極から3極に変わるだけという内容であり、従来の考え方とあまり変わらないものとなっている。これまでEDAを6年やってきたが、1極が抜けるという大きな変更に対してどこに問題があったかを考えて欲しい。本当に3極の均等貢献でうまくいくのかを検討すべき。日本がサイトに対して責任を持つだけの覚悟があるかどうかも含め議論するとともに、わが国の第三段階をベースに、実験炉開発が遅れた場合にわが国として問題がないかどうかを議論すべきである。
 ○
IAEA主催の横浜会議に出席し、日本の貢献度は高く、いよいよ日本の出番であると実感した。LHDでは運転開始後半年でよい成果を挙げた。サイトも含めて、日本が積極的に取り組んでいく姿勢を示さない限り、ITERは結局は実現しないだろうという意味の感想を述べる外国人研究者もかなり多いと感じた。
 ○
事務局提案の中にある「米国の撤退がITER計画に及ぼす影響の分析と対応」に研究面とは異なる「経営面」からの検討を入れるべきである。
 ○
事務局提案は、ITERの中からの検討であり、外からの検討の視点を取り入れるべきである。また、国際協力と核融合の実現の重要性を比較すれば、後者が重要であり、第三段階と照らし合わせて検討すべきである。ITERの技術は、現存の技術基盤で作ることにより、装置やコストを大きくしているが、ITER以降を見据え、低放射化材料の開発、超電導の線材開発など、先進技術の確立が必要である。
 ○
核融合会議以外に、今後関係するスケジュールについての質問があり、本会合の結果を踏まえ、11年度の予算について12月に決める必要があるとの回答があった。
 ○
3年間の活動は実施すべきだが、3年後に日本がサイト誘致に踏み出せるのかについては、核融合会議の議論だけではなく、原子力全般にわたる大きな流れを踏まえた検討が望ましい。現在の原子力に対する厳しい情勢を鑑みると、何らかの形で国民的な合意を得る必要があると思う。
 ○
日本にとっては、21世紀の科学技術立国としての核融合開発には大きな意義がある。ITERはこれまでの核融合会議における議論の結果進められているものであり、突然中止することにはならない。一方で、国際協力は常に変動的なものであり、これに留意しつつITERの意義を議論する必要がある。広く国民の理解と支援を得るための努力が重要である一方、世の中が求めているのは専門家としての強いリーダシップとアカウンタビリティである。必要あれば現在休眠中のITER計画懇談会を再開し、国民の理解が得られるような議論を行うことが重要。
 ○
3極で進める場合の法的な手続きについての質問があり、EDA協定が7月で終了していることから、これを復活させるために現在ある協定を活かす方向で外務省が検討している旨の回答があった。
 ○
背骨を明確にする必要があり、わが国の現存の基本計画に基づいて検討をすべきである。実験炉が必要であれば、将来に向けて計画がぐらつくものではない。
 ○
検討のまとめ方に関し、まず核融合エネルギー開発が将来に必要だということを最初にはっきり記述し、さらにその上で米国の状況への対応、基本計画との整合性の検討などを記述するようなまとめ方にすべきである。
 ○
FDRは余裕のある設計であったが、RCOについては第三段階との整合性を検討する必要がある。
 ○
RCOが期待される性能を満足するものとなるよう進めて欲しい。ITERは既存の材料を使用することになっている。一方で、既存の材料の照射効果に加えて低放射化材料の開発研究が進んでいる。特に、温度などの条件が変動すると定常照射とは異なる挙動をすることがわかってきているので、新しい知見を踏まえつつ、より魅力的なものにする必要がある。また、照射のための高エネルギー中性子源に関連して、低フルーエンス照射でもできるだけ早く試験装置として実験的知見を得ることが重要である。
 ○
ITERが第三段階の実験炉としてよいかどうかなど、スタートを明確にして議論すべきである。米国がITERを止めた原因としてRCOでは自己点火しないという理由があるので、これについてもITER/EDA技術部会で今後検討すべきであり、大学など専門家の意見も反映しておく必要がある。3年後にITERがなくなった場合も想定したわが国の考えに関する検討をしておくことも必要ではないかと思う。
 ○
現在の基本計画の妥当性を再確認し、本会議での議論を通して国内外に向けてメッセージを発信する必要がある。
 ○
先にでた意見のうち、経営面の反省とは具体的に何かとの質問があり、国際プロジェクトにはリスクがあり、交渉上のテクニックを必要とすることから、次回具体的検討の中で議論したい旨の回答があった。
 ○
予算以外の理由で12月中に議論をまとめる必要があるのかとの質問があり、7月の協定終了以降、ITER/JCTは最低限の活動を維持しつつも、実質的な活動は止まっていることから、12月までに結論を出すようにしたいとの回答があった。
 ○
EDAは建設を念頭においたものであるべきである。3極で進めるにはEU側の立場が重要であり、EUとの連携と充分な話し合いが必要である。国際協力の均等貢献は幻想であり、序列は必ずつくことを充分承知し、日本の腹をきめて今後の交渉を行わないと、うまくいかないことに留意しておく必要がある。そのような交渉を行うには、3年間は良い期間であり、EU、露と政治、実務レベルで充分協議する必要があると思う。
 ○
最後に座長より、次回事務局から具体的検討項目の進め方案を提示し、各委員より再度幅広い議論をしていただきたいとの説明があった。

7)事務局より、米国が提案している核融合科学における新たな協力について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。
 ○
米国はクレディビリティに欠けており、ITERに対する今の状況において、米国が核融合科学を提案しても、まともな議論ができるとは思えない。国際協力を進めるにあたり、それは日本側からしっかりとコメントすべきことである。また、資料中の「核融合プログラムの進捗状況をレビューすること」は言い過ぎであり、高いレベル(国際協力)でなく、下のレベルで実施すればよいと考える。
 ○
P2のタ核融合エネルギー科学の中の新たな枠組みとして挙げられている「慣性核融合」を「慣性核融合エネルギー」に訂正することとした。

次回会合は、11月13日(金)14:00からの開催を予定しており、ITERの今後の進め方について本日の議論をふまえ、具体的内容について審議する予定であるとの説明があった。