資料第129-2号

ITER工学設計活動に係る経緯について

平成10年10月29日
核融合開発室

1.米国の署名が行われなかった経緯

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国際熱核融合実験炉(ITER)については、1988年から2年間の概念 設計活動を経て、1992年7月21日に工学設計活動(EDA)協定が署名され、本年7月20日までの6年間の予定でEDAが行われてきたが、各極の厳しい財政状況を背景として、建設段階への移行が困難となったため、現行のEDAを3年間延長することとし、参加各極間でEDA協定を延長する改正に合意。

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延長期間中の活動としては、現在のITERの建設コストが高いことを踏ま え、建設コストを約50%に低減化したオプションについての設計作業等を中心に進めていくこととしている。

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延長取極署名については、ロシアは6月16日に、EUは6月30日に、我 が国は7月14日に完了。

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米国は、議会における99年度予算審議において、上院(承認)と下院(否 認)とで、ITER/EDA経費についての賛否が分かれたため、米政府は議会と調整を図った上で署名を行うとの方針の下、議会との調整を図ってきたが、EDA取極の有効期間内に調整が終了せず、署名できなかったため、EDA延長取極は不成立となった。

2.センセンブレナー委員長の来日

 センセンブレナー米国下院科学委員会委員長が8月中旬に来日し、ITERについて竹山科学技術庁長官等の核融合関係者と会談を行うとともに、日本原子力研究所那珂研究所(JT-60等)を視察した。
 来日の目的は、米議会の状況を伝えるとともに、我が国の考え方やITERへの取り組み状況を把握するため。

(1)センセンブレナー委員長のITERに関連する発言の骨子
 以下の3つの懸念が議会にあり、これを払拭する必要がある。
  ① ここ数年、設計についての合意やサイト選定に関する進展がない。
  ② 科学者間で、トカマク方式が適切かどうかについて議論がある。
  ③ 低コストITERは自己点火条件を達成できない。

(2)我が方関係者の発言の骨子
 以下の3つの観点より、EDA継続の重要性を指摘し、米国の署名を要請。
  ① 核融合における国際協力の重要性とITERの進展に対する高い評価。
  ② 建設コストの低減の見通しがあり、将来の建設の実現可能性が高まる。
  ③ トカマク方式の有望性の評価と、低コストITERの自己点火条件の達成。

3.米国署名へ向けた働きかけ

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我が国からは、竹山科学技術庁長官より、リチャードソン・米エネルギー省長官、レーン大統領補佐官(科学技術担当)等に対して、書簡を発出するとともに、在米日本大使館より国務省、エネルギー省等に申し入れを行い、ITER延長取極への署名に対する米国政府の一層の努力を要請。

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また、ロシアからは米ロ首脳会談(9月1、2日、露)の際に、アダモフ露 原子力省大臣からリチャードソン長官に対し、米国の署名を要請。
4.米国の状況

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竹山科学技術庁長官は、9月21日リチャードソン長官とウィーンで会談し、ITER協力への米国の参加の継続のための努力を強く要請したところ、翌22日リチャードソン長官は、ウィーンにて、米国がITER活動に1年間参加を継続するとともに、その後は核融合の国際協力に関する新しい合意に向けた交渉を希望する旨を内容とする米国単独の文書(別紙1)を作成し、プレスへ発表。

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上院と下院の調整を行う両院協議会が9月24日に開催され、1999予算年度のITER予算には、研究開発の予算とITERを収束させるための予算として、1,220万ドルを計上するとの報告書(別紙2)が議会に提出されている。(その後、歳出法案として成立)

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米国政府は、10月7日付けのクレブス・エネルギー省エネルギー研究局長の書簡(別紙3)をもって、主要研究開発を1999予算年度までに完了するとともに、数週間以内に共同中央チームへの米国派遣者を召還するなど、米国としてはITERへの貢献を大幅に減らした上で1年間は活動に参加するが、それ以降の参加を継続することは困難である旨の見解を公式に示した。