平成11年度の国立機関原子力試験研究

(核融合分野)の研究評価結果について

 

平成10年6月12日

原子力委員会核融合会議

計画推進小委員会

 

 平成10年6月10日に開催された計画推進小委員会において2件の研究課題についてヒアリングを実施した。これらの研究課題はいずれも各研究機関で事前に外部評価が行われていることから、当小委員会は再度詳細な評価を行わず、原子力委員会の核融合計画の基本方針との整合性、他の研究課題との調整等の観点に重点をおいて、ヒアリングを実施した。以下にその結果概要を示す。

 

出席委員は、宮主査、本島委員、菊池委員、西委員である。

なお、ヒアリングにあたり関村専門家(東大)、松井専門家(東北大)、安藤専門家(原研)に御参加頂き、御意見、御助言を頂いた。

 

○事前評価研究課題「核融合炉の超強磁場化のための要素技術の開発」

金属材料技術研究所

研究期間:平成11年~15年

研究内容:原型炉に向けた超電導コイルの高性能化(強磁場化、小型化)のため、従来のNb3Sn超電導線材に匹敵する高い臨界電流密度と、ジェリーロール法Nb3Alに匹敵する耐歪み特性を兼ね備える可能性を有する急熱急冷・変態法Nb3Al超電導線材の開発を行う。

 

ヒアリング結果

・本研究による成果は、超電導コイルの高性能化を進め、核融合炉の小型化とコスト低減に有効であると考えられる。

・本研究は、原子力委員会の「第三段階核融合研究開発基本計画等」の「核融合研究開発の推進について、第Ⅳ章 2. 炉工学技術に関する研究開発 (3)超電導コイル」の開発目標の達成に資するものであると判断できる。

・超電導コイルに応用するためには、既存の超電導線材の持つ安定性を実現させ大型コイルへの応用実績を得ていくことが重要であり、技術的な観点から本研究を進めていく必要があると判断できる。

・本研究の重要性を考慮して、原型炉に向けた超電導コイルの高性能化の観点から、今後我が国として核融合研究開発基本計画等に沿った核融合炉の高性能化のための炉工学技術の研究計画を具体的に実施して行く必要がある。

 

 

○中間評価研究課題「低放射化核融合炉構造材料における核変換元素の影響」

金属材料技術研究所

研究期間:平成8年~12年

研究内容:原型炉に向けた低放射化材料の開発のため、候補材料であるフェライト鋼やバナジウム合金に核変換元素(水素、ヘリウム)を照射して力学的特性への影響を調べる。また材料組織を観察し、材料の特性変化の機構の解明を目指し、将来の耐ヘリウム脆化合金設計に有益な指針を得る。

研究進捗状況:フェライト鋼の核変換元素の照射後サンプルにおいて、クリープ試験を行い、応力、核変換元素の照射量や温度との関係を調べた。また、ミクロ的観察として破断面の核変換元素の気泡サイズ分布の測定をおこない、定量的な組織データとした。

 

ヒアリング結果

・原型炉に向けて、低放射化材料の開発は最も重要な研究項目であり、現在候補材料であるフェライト鋼やバナジウム合金の、力学的特性の核変換元素による影響を調べることは、原型炉の高性能化の観点からも重要である。

・本研究は、原子力委員会の「第三段階核融合研究開発基本計画等」の「核融合研究開発の推進について、第Ⅳ章 2. 炉工学技術に関する研究開発 (6)構造材料」の開発目標の達成に資するものであると判断できる。

・本研究においては、脆化機構の原因解明の研究がなされている点で重要であり、積極的に推進すべきである。

・本研究の重要性を考慮すると、適切な人員体制の整備が望まれる。

・古典的なやり方ではなく、核融合炉構造材開発のための金材研独自のモデル開発という観点も必要である。

 

以上