資料第128-4号

 

 

増殖ブランケットの研究開発の進め方

 

 

 

 

 

 

平成10年6月10日

原子力委員会核融合会議計画推進小委員会


 

目  次

 

 

  1. はじめに

  1. 原型炉及び増殖ブランケットの要件

  1. 各種増殖ブランケットの方式と各極の開発動向

  1. 我が国が開発を進める増殖ブランケット方式

  1.  主要な研究開発課題と開発の現状

  1.  研究開発の進め方

  1.  開発のスケジュール

  1.  おわりに

 

(参考) 本報告書で使用している用語の解説


増殖ブランケットの研究開発の進め方

 

平成10年6月10日
核融合会議
計画推進小委員会

 

1.はじめに

 増殖ブランケットは、核融合炉の真空容器内部においてプラズマを取り囲むように設置され、主に、1)DT反応の燃料となるトリチウムの生成回収(増殖機能)、2)中性子の運動エネルギーを変換して、良質の熱エネルギーとして回収(除熱・発電機能)、3)放射線に対する周辺機器・生体の保護(遮蔽機能)の3つの重要な機能を果たし、核融合炉がエネルギー発生システムとなるための中核的な機器であり、原型炉や実用炉を目指した長期的な研究開発が必要である。

 

 我が国の「第3段階核融合研究開発基本計画」(平成4年6月、原子力委員会)においては、「核融合炉の実用化のために必須の炉工学技術であって、その実現までに長期間の研究開発を必要とするため早期に開始する必要のあるものについては、その研究開発を進める」とあり、増殖ブランケット技術に関する研究開発の必要性が記述されている。また、増殖ブランケットの研究開発はあくまで原型炉や実用炉を目指した長期的な視点に立って実施されるべきものであるが、「核融合研究開発の推進について」(平成4年5月、原子力委員会核融合会議、以下「推進について」)においても「ブランケット・モジュールを実験炉に導入し、熱変換・取り出し及びトリチウム増殖の機能試験を実施する」とある通り、その実用化に際してはモジュール試験等が必要不可欠である。この観点から、実験炉を照射ベッドとして増殖ブランケットのモジュール試験を実施することは、開発の重要なマイルストンと位置付けられる。

 

 上記背景から、我が国における増殖ブランケットの研究開発の進め方を明らかにするため、核融合会議計画推進小委員会においてこれまでに3回の審議を行ってきた。本報告は、そこでの審議を基に、我が国における増殖ブランケットの研究開発の進め方について現時点での見通しを示すものであり、以下に、原型炉及び増殖ブランケットの要件、各種増殖ブランケットの方式と各極の開発動向の概要を述べ、引き続き、我が国が開発を進める増殖ブランケット方式、主要な研究開発課題と開発の現状、及びこれらの研究開発の進め方と開発のスケジュールを記述する。

 

 

2.原型炉及び増殖ブランケットの要件

 実用エネルギー源として核融合エネルギーを利用するためには、経済性、信頼性、安全性を含む各種特性が、他の発電方式に比べて優位性を示しうること、もしくは競合できるレベルである必要があると考えられる。「推進について」においては、原型炉のミッションとして、「高いエネルギー増倍率の定常炉心プラズマを実現し、これから発生するエネルギーを取りだし、電気エネルギーに変換することが技術的に可能であることをプラント規模で実証する」と掲げており、核融合システムがプラントとして技術的、経済的成立性を有することを実証することが目的となっている。

 

 原型炉に向けた主要な炉工学課題は、十分なトリチウム増殖性能を有する発電ブランケットの実証と中性子照射に耐え得る材料の開発であり、これらの開発には長期間の研究開発を要するため、早期に着手する必要がある。また、原型炉の前段階である実験炉に増殖ブランケットのモジュール試験体を設置し、核融合環境下でトリチウム生成・回収機能等の試験を行うことが不可欠である。実験炉の研究開発や炉工学技術が順調に進展する場合、原型炉の運転開始は2020年代と見込まれている。

 

 原型炉の中核機器となる増殖ブランケットには、良好なトリチウム生成・回収特性、良好な除熱・発電特性及び十分な遮蔽特性が要求される他、使用環境下で健全性を保持すると共に、高い安全性や信頼性を有し、かつ環境適合性や経済性にも優れていることが必要である。即ち、

 

 1)トリチウム生成・回収特性:増殖ブランケットは、核融合反応の燃料となるトリチウムの自己供給が可能となるよう十分高いトリチウム増殖特性を有すると共に、生成・放出されるトリチウムが合理的な規模の系統で回収可能である必要がある。

 2)良好な除熱・発電特性:核融合反応で生成される中性子の運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、信頼性高く、かつ効率良く系外に取り出す必要がある。特に、高い発  電効率を達成するためには、高い冷却材の出口温度を達成する必要がある。

 3)十分な遮蔽特性:増殖ブランケットは、真空容器等と共に、超伝導コイルを始めとする周辺機器や生体に対する放射線防護の役割を担うため、十分な遮蔽性能を有することが必要である。

 4)健全性の保持:増殖ブランケットには、高い熱負荷や中性子負荷、強大な電磁力等の機械荷重が作用するため、それらに対して十分に耐え得ると共に、運転中に想定される高い中性子照射量や運転サイクル、及び化学的環境効果に対しても健全性を保持する必要がある。従って、増殖ブランケットは、信頼性高く、かつ豊富なデータに基づいて設計がなされると共に、その製造に関しては、一般工業技術レベルに基く産業基盤が存在することが不可欠である。

 5)高い安全性、信頼性及び環境適合性:増殖ブランケットは、非正常時においても事故の起因事象とならないように高い信頼性と設計裕度を持つと共に、内包する化学的エネルギーや放射性物質保持量を可能な限り低減することが望ましい。また、安全性や廃棄物の処理処分を軽減するために、誘導放射能を軽減することが望ましい。

 6)高い経済性:より経済的に魅力ある核融合炉を実現するため、増殖ブランケットによる発電効率を高めると共に、製作コストの低減や増殖材料等の再利用に関する見通しを得る必要がある。

 

3.各種増殖ブランケットの方式と各極の開発動向

 過去に提案された増殖ブランケット方式は多岐に渡るが、これまでに実施されてきた設計検討や研究開発の成果を反映して、大きく、固体増殖方式(水及びヘリウム冷却方式)と液体金属増殖方式(リチウム鉛増殖方式、液体リチウム自己冷却方式)に絞り込まれている。第1表は実験炉(ITER)を用いたモジュール試験としてITER参加4極(日本、EU、ロシア、米国)から提案されている方式と、それらの主要な構成と特徴をまとめたものであり、開発の主流は固体増殖方式になりつつある状況である。

 

第1表 各極が開発を行っている増殖ブランケット方式と主要な特徴

方式

固体増殖方式

液体金属増殖方式

 

材料

増殖材

固体増殖材

固体増殖材

リチウム鉛

リチウム

構造材

フェライト鋼

フェライト鋼

フェライト鋼

バナジウム合金

冷却材

加圧軽水

ヘリウム・ガス

加圧軽水

リチウム

 

 

主要な利点

高い安全性

豊富なデータベース

広い既存技術の 適用範囲

高い安全性

豊富なデータベース

高い発電効率

増殖材の放射線損傷軽微

増殖材が中性子増倍効果

簡単な構造増殖材の放射線損傷無

 

 

主要な課題

放射線損傷

やや複雑な構造

放射線損傷やや複雑な構造

遮蔽特性

トリチウム透過対策

増殖材の重量及び 駆動力大

安全性

乏しいデータベース

MHD圧力損失

トリチウム回収技術

安全性

乏しいデータベース

開発極

日本

日本、EU

ロシア、米国

EU

ロシア,米国

 

 従来の研究開発は、材料開発(照射試験含む)、増殖材からのトリチウム生成放出基礎過程の研究、増殖材・増倍材ペブルの製造技術開発等が主であったが、ITERでのモジュール試験に向けてより工学的な研究開発が必要な段階に至っており、各極とも研究開発を進めている。特に、EUでは98年までの5ヵ年計画では毎年約27億円の予算規模で開発を実施しており、引き続き2010年までの長期計画を提案している段階である。

 

4.我が国が開発を進める増殖ブランケット方式

 3.で述べられた各種候補概念の内、我が国では、高い安全性、豊富なデータベース、及び実用炉への見通しと高性能化の可能性に重点を置いて、開発を進めるための方式の選定を行うべきと考えられる。この視点に基き、我が国では、ITERでのモジュール試験への適用性や限られた開発期間を考慮して、高い固有の安全性を有し、比較的データベースが豊富である固体増殖ブランケット方式を主な開発目標として研究開発を進めることが妥当であると考えられる。本方式は、高い実用炉への見通しを有すると共に、一層の高性能化の可能性を有している。一方、液体増殖ブランケットは、一般的に増殖材の放射線損傷が軽微であり、かつシンプルな構造が採用できる可能性が高いことから魅力ある方式であり、平行して基礎研究を実施すると共に、国内外の研究開発の動向を適切に評価することにより、技術的な見通しを得るものとする。

 

 固体増殖ブランケットとして、日本原子力研究所が開発を進めるブランケットの主要緒元を第2表にまとめる。

 

第2表 我が国が開発を進める固体増殖ブランケット概念の主要緒元

項目

固体増殖/水冷却

固体増殖/ヘリウム冷却

構造材

低誘導放射化フェライト鋼 F82H

低誘導放射化フェライト鋼 F82H 

代替:SiC/SiC複合材、

TiAl金属間化合物

冷却材

加圧軽水

(~320℃、15 MPa

ヘリウム・ガス

>450℃、8 MPa

トリチウム増殖材

酸化リチウム・ペブル

酸化リチウム・ペブル

中性子増倍材

ベリリウム・ペブル

ベリリウム・ペブル

トリチウム回収

ヘリウム・パージガス

ヘリウム・パージガス

 

本方式は以下の特徴を有している。

 

 1)固体増殖方式の選択:基本的に使用される構成材料の化学的活性度が低く、系統内部のトリチウム保持量も低く抑えることが可能である。また、トリチウムの生成・放出特性や照射特性に関するデータベースが比較的豊富であると共に、トリチウム回収技  術の開発が最も進んでおり、基盤技術はほぼ確立されている。

 2)ペブル形状での増殖材・増倍材の使用:固体増殖方式で懸念される中性子照射損傷の緩和や耐熱応力性も良好であることが期待でき、世界の開発概念の主流となっている(EUも数年前にブロック方式からペブル方式に変更)。

 3)冷却材として加圧軽水が主案:軽水炉で豊富な実績があり、高い信頼性を有する基盤技術が確立している。

 4)構造材として低誘導放射化フェライト鋼の使用:フェライト鋼は、良好な耐照射特性と高温特性を有すると共に、広範な産業基盤を有する材料である。また、低誘導放射化特性を具備することにより、廃棄物処理処分のシナリオを軽減できる可能性を有している。

 5)高性能化の可能性:冷却材としてヘリウム・ガスを使用し、構造材料としても先進材料(SiC/SiC複合材、TiAl金属間化合物等)を用いることにより、より高い発電効率の達成が可能となると共に、固有の安全性をより高めることが可能となる。また、これらの先進構造材料を使用することにより、より魅力ある低誘導放射化特性を実現することが可能である。なお、これらの高性能化に関しては、基本的な炉形や開発項目の大幅な変更は不要である。

 

 液体増殖ブランケットとしては、第1表に示す通り、世界的には、液体リチウム自己冷却方式(構造材料:バナジウム合金)、リチウム鉛増殖方式(構造材料:フェライト鋼、加圧軽水冷却)の開発が進められてきている。これらの方式は、放射線損傷がない、もしくは軽微である(リチウム鉛の場合、照射核変換に伴う組成の変化、ポロニウムの生成等が課題)特徴を有する。また、基本的に増殖材の温度を制御する必要がないことから、ブランケット内部の構造が簡素化される可能性がある。一方、液体増殖ブランケットの一方式として検討が進められている溶融塩方式は、液体金属方式の利点の多くを共有すると共に、液体金属方式固有の課題である高いMHD圧力損失や化学的活性度による安全性の問題が大幅に軽減できる可能性を有している。

 

5.主要な研究開発課題と開発の現状

 増殖ブランケットの開発課題は、一般的に大きく、1)製作技術開発、2)トリチウム増殖・回収技術の開発、3)除熱技術の開発、4)照射特性を中心とする健全性保持に係る開発、及び5)安全性や環境適合性を高める開発に分類できる。以下に、先ず固体増殖方式に係る開発課題と開発の現状を記述し、次に液体増殖方式について課題と現状をまとめる。

 

 1)製作技術開発:開発課題は、さらに、構造材料の製造技術、それを用いたブランケット容器(第一壁を含む)の製造技術、及び増殖材、増倍材ペブルの製造技術に分類さ  れる。4.で述べた通り、フェライト鋼は広範な産業基盤を有すると共に、候補材料である低誘導放射化フェライト鋼F82Hに関しても、既に素材の化学成分の最適化は  ほぼ完了しており、5トンレベルの溶解インゴットの製作実績を有している。また、  F82Hを用いたブランケット容器の製造技術開発に関しても、拡散接合を適用した技  術開発が進められつつあり、既に接合条件の選定が終了し、第一壁パネルの製造に成  功している。一方、増殖材や増倍材ペブルの製造技術に関しても、これまでの材料開  発の成果として、転動造粒法やゾルゲル法(いづれも増殖材ペブル)、回転電極法(増  倍材ペブル)等の製造技術が開発されてきている。

 

 2)トリチウム増殖・回収技術の開発:固体増殖材から生成されるトリチウムをその場回収するためには、運転中の増殖材の温度を適正範囲に保持する必要があり、そのためにはペブル充填層の熱特性を正確に把握する必要がある。また、増殖材中で生成されるトリチウムを適切に放出させ、回収する技術を確立する必要がある。これまでに行われてきているペブル充填層の熱特性試験により、増殖材・増倍材ペブル充填層の熱特性データが蓄積されつつある。一方、トリチウムの生成・放出特性に関しては、IEAの下での国際協力として実施されたBEATRIX-II実験や生成放出機構に係る基礎研究等により、生成されたトリチウムを固体増殖材から有効に回収するためには回収ガス(ヘリウム)に水素を添加することが効果的であることが明らかにされると共に、5%リチウム燃焼度(原型炉条件:約10-15%)までの照射下でも良好な放出特性が保持されることが明らかにされている。また、回収技術に関しては、TPL(原研)やTSTA(米国ロスアラモス国立研究所)でのトリチウム燃料循環系統の運転経験から、基盤技術はほぼ確立している。

 

 3)除熱技術の開発:高磁場中でのMHD効果等の困難な課題を有する液体金属増殖方式と異なり、加圧軽水及びヘリウム冷却技術は、各々軽水炉及び高温ガス炉で培われた技術が基本的に転用でき、基盤技術はほぼ確立している。

 

 4)健全性保持に係る開発:想定される使用環境下において増殖ブランケットの健全性を保持するためには、材料の照射劣化、熱サイクルや長期高温運転による材料の劣化、高熱負荷に対する第一壁健全性、及び化学的環境効果(腐食、質量移行等)に対する健全性を十分に評価し、必要な対策を講じる必要がある。F82Hに関しては、HFIR炉等での照射試験により、既に約30dpa(原型炉条件:100dpa)までの照射によっても良好な引張り特性が保持されることが確認されると共に、低照射ながら破壊靭性試験からも良好な特性を示唆する結果が得られている。また、増殖材(酸化リチウム)に関しても、BEATRIX-II実験により5%リチウム燃焼度までの照射健全性が確認されると共に、アウトパイル熱サイクル試験により1万サイクルまでの耐久性が確認されている。

 

 5)安全性や環境適合性を高める開発:安全性や環境適合性を高める観点からの開発課題として、系統内でのトリチウム保持量の低減、非正常時や事故時の挙動評価、低誘導放射化特性を有する材料の開発、及び廃棄物量の低減と再利用技術の開発が上げられる。前述の通り、増殖材を適切な温度範囲に保持することにより増殖材中で生成されたトリチウムをその場回収することが可能であり、系統内での保持量は200グラム以下に抑え得る見通しが得られている。また、低誘導放射化フェライト鋼の開発も、前述の通り5トン溶解のインゴットの製造実績があり、ほぼ製造基盤は確立されている。 

 

 以上の通り、これまでに材料開発や照射研究を中心に、固体増殖ブランケット概念の成立性に見通しを与える多くの成果が得られてきている。一方、工学規模での開発研究や実証試験は立ち上がりつつある状況であり、それらを含めて、実験炉でのモジュール試験に向けた今後の主要な開発課題は以下の通りである。

 

 1)製作技術開発:大型ブランケット容器の製造技術の開発を行うと共に、増殖材・増倍材ペブル製造技術の低コスト化を図る。

 2)トリチウム増殖・回収技術の開発:固体増殖材からのトリチウム生成回収機構に係る現象の理解をさらに深めると共に、より高バーンアップ領域での増殖材からのトリチウム生成回収特性を評価し、原型炉条件への見通しを得る。また、ペブル充填層の温度制御に重要な充填層の熱機械特性評価を進め、その成果の基にインパイル機能試験を実施し、中性子照射下での温度制御性やトリチウム生成回収特性の実証を行う。

 3)健全性保持に係る開発:構成材料の重照射特性や化学的環境効果の評価を進めると共に、第一壁の高熱負荷試験を行い、使用環境下での構成要素の健全性の確保に見通しを得る。さらに、実規模レベルの試験体を用いたアウトパイル試験により総合性能を実証する。

 4)安全性や環境適合性を高める開発:中性子増倍材からのトリチウム放出特性や冷却材とブランケット材料との相互作用の評価を進め、安全性の評価につなげると共に、長期的には、先進構造材料の開発や構成材料の再利用技術の開発を進め、高性能化や環境適合性を高める開発に見通しを得る。

 

 一方、液体金属増殖方式に関しては、これまでに、先進構造材料としてのバナジウム合金の開発や評価、MHD圧力損失の評価(以上、リチウム自己冷却方式)、トリチウム透過防止用コーティング膜の開発、構造材と増殖材との共存性(以上、リチウム鉛増殖方式)等の基礎研究において進展を見ている。一方、これらの方式には、以下の技術的な課題があり、実験炉でのモジュール試験に向けて技術的な見通しを得るための研究開発を進める必要がある。

 

 1)リチウム自己冷却方式

 ・MHD圧力損失を軽減するための自己修復性のある電気絶縁コーティング膜の開発

 ・強磁場下での液体リチウムの伝熱流動特性の評価

 ・液体リチウムからのトリチウムの回収技術の開発

 ・液体リチウムと構造材との共存性評価

 ・液体リチウムの安全取扱技術の確立

 ・バナジウム合金素材の製造に係る産業基盤の育成と容器製造技術の開発

 ・バナジウム合金の重照射データの取得

 2)リチウム鉛方式

 ・トリチウム透過防止用コーティング膜の開発

 ・増殖材の構造材に対するコロージョンの評価

 ・増殖材と水との反応性の評価

 ・トリチウム回収技術の実証 

 

6.研究開発の進め方

 4.で述べた通り、我が国では、ITERでのモジュール試験への適用性や開発期間を考慮し、かつ、高い固有の安全性を有し、比較的データベースが豊富であることから、固体増殖ブランケット方式を主な開発目標として研究開発を進めることが妥当であると考えられる。また、放射線損傷が軽微であり、かつ高いトリチウム増殖特性を達成できる可能性がある魅力ある方式である液体増殖ブランケットに関しても、平行して基礎研究を実施すると共に、国内外の研究開発の動向を適切に評価することにより、技術的な見通しを得るものとする。

 

 増殖ブランケットは、実験炉の運転初期からモジュール試験体として炉内に挿入され、核融合環境下での総合的な特性試験が実施される計画である。実験炉でのモジュール試験は、原型炉を目指した増殖ブランケット開発の重要な中間段階のマイルストンであり、かつ不可欠な開発ステップである。一方、実験炉における限られた試験時間や試験空間を最大限に活用するためには、実験炉でのモジュール試験に先立ち、各種材料データや設計データの取得、製造技術の開発、及びインパイル・アウトパイルでの機能試験や総合性能試験を実施することが不可欠である。

 

 固体増殖方式に関しては、先ず、構造材料として、低誘導放射化フェライト鋼を基軸に据えた研究開発を進めると共に、より高性能化を目指した先進構造材料についても、長期的な観点から開発を実施する。トリチウム増殖材は、酸化リチウムを主案としつつ、3成分系セラミックス(リチウム・タイタネート等)を代替材と位置付けて、各種照射データを取得する。また、照射データが乏しい中性子増倍材についても照射データの取得を進める。これらの開発計画や照射試験は、別途検討を進めている核融合炉材料の研究開発計画と整合を取って実施する。また、照射試験は、高速増殖炉「常陽」を含めた国内の設備を最大限に活用すると共に、国際協力も有効に利用する。

 

 材料の開発や照射データの取得、増殖材からのトリチウム生成放出機構を中心とした増殖材・増倍材の基礎研究と平行して、製造技術の開発や設計の基本となる各種工学データの取得を進める。特に、ブランケット容器の製造技術開発と高熱負荷に対する健全性評価及びペブル充填層の熱機械特性や健全性評価を早急に進める。さらに、それらの成果を反映し、小規模な部分モジュールを用いたインパイル機能試験を実施することにより、中性子照射下での増殖材の温度制御性及びトリチウム生成回収特性に係る機能の検証を行う。インパイル試験は、日本原子力研究所の材料試験炉JMTR(試験体の設置空間:直径約10cm、長さ約1m)を中心的な試験設備として実施する。また、実験炉に装荷するモジュール試験体のプロトタイプに関してもアウトパイル総合性能試験を実施し、増殖ブランケットの伝熱流動特性、熱機械特性、疲労寿命及び安全性に係る総合特性を実証する。これらの炉工学技術の開発においては、IEA核融合炉工学協力協定を始めとする国際協力も有効に活用し、同様の開発を実施する極との協力、競合により、成果の信頼性を高めることも重要である。また、より魅力ある核融合炉を目指して、先進構造材料の開発や先進的な冷却方式の基礎研究等も継続して実施する。

 

 一方、液体金属増殖方式に関しても、自己修復性のある電気絶縁コーティング膜の開発、増殖材からのトリチウムの回収技術の開発、トリチウム透過防止用コーティング膜の開発等、技術的成立性を見通すために鍵となる技術に関して基礎研究を進める。さらに、今後の多様な研究開発の展開を念頭に置き、他の増殖ブランケット方式に関しても調査、基礎研究を継続して実施する。

 

 以上見た増殖ブランケットの開発に際しては、産・学・官の協力と計画的な推進が不可欠である。特に、密接に関連する核融合炉材料開発で得られる成果が増殖ブランケットの開発に適切に反映されるよう、効率的な開発を展開することが肝要である。固体増殖ブランケットに係る材料研究開発、炉工学技術の研究開発及び設計研究はこれまで日本原子力研究所を中心に展開されてきており、上述の固体増殖ブランケットに関しても、引き続き日本原子力研究所が中核的な機関として研究開発を推進する。ここでは、他の機関で実施する研究開発から得られる広範な知見が研究開発に適切に反映されるように留意する必要がある。

 

 一方、大学及び他の国立研究機関においては、従来から固体増殖方式及び液体増殖方式の両者に係る広範な材料開発や基礎研究が有機的に実施されてきており、引き続き、液体増殖方式の見通しを得るための基礎研究、及び固体・液体増殖の両方式に係る先進的な概念につながる応用研究や高度安全性研究を実施すると共に、人材育成への貢献が期待される。さらに、増殖ブランケットの製造技術開発や高性能機器の製作等は産業界のポテンシャルに負うところが大であり、今後の機器の大型化、高性能化に向けて、機器開発実施者と産業界とが密接な連携を保ち、効率的な開発を行う必要がある。

 

7.開発のスケジュール

 増殖ブランケットの開発においては、実験炉を用いたモジュール試験が重要なマイルストンである。この観点から、増殖ブランケットの開発は、実験炉でのモジュール試験を中間目標として進めることが適切である。2000年過ぎに想定される実験炉(ITER)のモジュール試験計画の策定に向けて、製作技術開発や各種材料データ及び設計基礎データの取得を進めると共に、インパイルでの機能試験を実施する。これらのデータに裏付けされた我が国の試験計画案を提示することで、国際協力の下で実施されるITERでのモジュール試験に主体的に参画することが可能となる。

 

 さらに、引き続き、2010年頃と想定されるITERの運転開始に向けて、プロトタイプの製作と総合性能試験を進め、実機モジュールの製作へと展開する。ITERでは、その運転の全期間を通して、中性子照射環境下における増殖ブランケットの機能・寿命試験が実施される予定であり、原型炉に向けた増殖ブランケットの各種特性データの取得と総合的な機能の実証が図られる。

 

 一方、これらと平行して、液体増殖方式の基礎研究を進めると共に、高性能化研究や他の方式に係る研究開発も推進する。2000年過ぎに想定されるITERモジュール試験計画の策定に向け、核融合会議の下の計画推進小委員会において、適切な段階においてチェック・アンド・レビューを実施する。チェック・アンド・レビューでは、それまでの増殖ブランケット開発で得られた各種増殖ブランケット方式の成果と以降の見通しに関して評価を行うと共に、我が国の核融合開発長期計画や核融合炉材料開発計画との整合性の視点からも評価を行い、モジュール試験計画に対する増殖ブランケット方式や以降の増殖ブランケット研究開発に対する方針を明らかにする。

 

8.おわりに

 「第3段階核融合研究開発基本計画」で示されている「核融合炉の実用化のために必須の炉工学技術であって、その実現までに長期間の研究開発を必要とするため早期に開始する必要のあるものについては、その研究開発を進める」ため、核融合計画推進小委員会を中心に、増殖ブランケットの研究開発の進め方に関する検討が行われてきた。本報告では、それらの審議結果を中心に、原型炉及び増殖ブランケットの要件、各種増殖ブランケットの方式と各極の開発動向、我が国が開発を進める増殖ブランケット方式、主要な研究開発課題と開発の現状、及びこれらの研究開発の進め方と開発のスケジュールをまとめた。

 

 我が国では、ITERでのモジュール試験への適用性や開発期間を考慮して、高い固有の安全性を有し、比較的データベースが豊富である固体増殖ブランケット方式を主な開発目標として研究開発を進めることが妥当であると考えられる。一方、液体増殖ブランケットは、電気絶縁コーティング膜の開発やトリチウム回収技術の開発等の技術課題はあるものの、本質的に増殖材の放射線損傷が軽微であり、かつ構造が簡素化できる可能性が高く、魅力ある方式であることから、平行して基礎研究を実施すると共に、国内外の研究開発の動向を適切に評価することにより、技術的な見通しを得るものとする。

 

 増殖ブランケットの開発は、これまでの材料研究から工学規模の開発へと展開しつつある段階にある。実験炉を照射ベッドとして用いる増殖ブランケットのモジュール試験は、原型炉以降を目指した増殖ブランケットの開発の中で最も重要なマイルストンである。これに向けて、設計工学データの取得や製造技術開発を含めた各種工学規模の研究開発を進めることにより、主体的に実験炉での工学試験に参画することが可能となるものと考えられる。

 

 また、これらの研究開発は、関連分野との協調が不可欠であり、とりわけ、大学や国立研究機関での基礎研究や材料研究、産業界での製造技術開発や機器の大型化、高性能化に向けた開発とは密接な連携を保って、効率的な開発を行う必要がある。また、別途、計画推進小委員会で検討されている「核融合炉用材料の開発計画」とも連携を保ち、そこでの成果が適切に反映されるよう留意する必要がある。


(参考)

 

 

本報告書で使用している用語の解説




 

 


SiC/SiC複合材
 高温まで極めて高い強度を示すSiC繊維で織物を作り、これにSiC(基材:マトリックス)を高密度に付着させた材料。
c 酸化リチウム・ペブル
 トリチウム増殖のためにブランケットの中に充填される酸化リチウム(Li2O)の微小球で、直径は0.1~1mm程度である。

3成分系セラミックス(リチウム・タイタネート等)
 固体増殖材のうちリチウムと酸素の他にもう1元素含むセラミックで、Li2TiO3、Li2ZrO3、Li4SiO4、LiAIO2 等が考えられている。

TiAl金属間化合物
 高温強度及び耐食性の高い金属間化合物で、照射による延性劣化がなく、逆に向上することが見い出されている。

バナジウム合金
 放射化のレベルが低く、減衰が比較的速いバナジウムを主成分にした低放射化材料である。液体金属との共存性に比較的優れ、CrやTiを4重量%程度含んだ合金が開発されている。

(低誘導放射化)フェライト鋼 F82H
 高温用構造鋼であるフェライト/マルテンサイト鋼のMo等をW等で置き換えることで、放射化のレベルが低く、減衰が比較的速くなるようにした構造用鋼。

ヘリウム・パージガス
 固体状のリチウム化合物(セラミックス)を充填した増殖ブランケットへ流すヘリウムガス。リチウム化合物が中性子との核反応により転換されて生成したトリチウムはこのガスによって取り出される。

ベリリウム・ペブル
 核融合反応で生じた中性子を増やし、トリチウム増殖性能を向上させるための中性子増倍材の微小球。ベリリウム(Be)は、中性子との核反応により2個の中性子を生じる((n,2n)反応)。

ポロニウム
 鉛(Pb)の中性子吸収によって生成する放射性元素(Po)。毒性が強く、放射線管理上は十分な注意を必要とする。

リチウム
 天然には極く微量しか存在しないトリチウムを核融合炉自身で生産するために用いる元素。6Liの(n,α)、7Liの(n,n'α)反応によってトリチウムを生産する。

リチウム鉛
 液体金属方式のトリチウム増殖材の候補材料(Li17Pb83)。鉛は中性子増倍材の役割も果たす。

BEATRIX-Ⅱ
 IEAの核融合材料の研究に関する協力協定による実験で、 米国の照射施設を用いて高速かつ大量の中性子を照射する試験が行われた。

HIFR
 米国オークリッジ国立研究所の原子炉。日米協力で核融合炉材料の共同照射研究を行っている。

TSTA
 Tritium Systems Test Assembly。米国ロスアラモス国立研究所に建設され、核融合炉燃料サイクルの確立を目指したトリチウム工学の研究を進めている。1982年より日米共同で研究が進められている。

TPL
 Tritium Process Laboratory(トリチウムプロセス研究棟)。日本原子力研究所のトリチウムプロセス研究施設で、1988年からトリチウム処理、及び安全取扱い技術の開発等のトリチウム工学の研究を進めている。

高速増殖炉「常陽」
 動力炉・核燃料開発事業団が大洗工学センターに建設した日本最初の高速増殖炉の実験炉。熱出力は100MW。

材料試験炉「JMTR」
 原研の軽水減速冷却タンク型で熱出力50MWの汎用型材料試験炉。ループ、キャプセル等の各種照射設備が設置されている。

アウトパイル熱サイクル試験
 中性子照射環境下に置かず、核融合炉の運転状況を模擬した熱源を使用して熱・機械特性を調べる試験。

インパイル機能試験
 原子炉内に試験体を置いて核融合炉内での中性子照射環境を模擬し、試験体の性能を調べる試験。

液体金属増殖方式(リチウム鉛増殖方式、液体リチウム自己冷却方式)
 トリチウム増殖材を液相の状態で使用する方式。Li、Li17Pb83などが候補材料である。また、液体リチウムでは冷却材の役割も同時に担う。

エネルギー増倍率
 核融合反応による出力とそのプラズマ状態を維持するのに必要な加熱入力(すなわちプラズマからの熱損失)の比Q=出力/入力。Q=1を臨界プラズマ(Energy Break Even)条件、Q=∞(無限大)を自己点火条件という。

MHD圧力損失
 磁場中において導体である液体金属が流れるとき、誘導起電力が発生することから液体金属の流れを抑える力が働くこと。

回転電極法
 金属の粉末を生成する技術の1種。粉化する金属を、固定電極、電子ビーム、アークプラズマなどと対向させ、回転させながら溶解することで、融液が遠心力によって飛散し、粉末が生成される。

拡散接合
 金属材料を密着させ、素材の融点以下の温度条件で、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法。

加圧軽水
 高圧力下(15MPa)の軽水(1H2O)のことで、高温でも沸騰しないため高い熱容量を維持し、熱媒体として用いられる。加圧水型原子炉において実用化されている。

(核融合)原型炉
 核融合炉及びそのプラントの実用化についての技術的性能の見通しならびに経済性に関する目安を得ること等を目的として作られる原子炉のことをいう。実験炉でプラズマおよびその周辺基盤の技術的見通しを得た後、原型炉で発電技術を実証し、実用炉へ進むという段階を経て開発が進められていくことになる。

バーンアップ
 燃焼度のこと。リチウム燃焼度の項を参照。

国際熱核融合実験炉(ITER)
International Thermonuclear Experimental Reactor。日、米、ロ、EU4極の共同設計による核融合実験炉。DT自己点火プラズマによる長時間核燃焼を設計目標とし、核融合炉の科学的及び工学的可能性の実証を目指している。

国際エネルギー機関(IEA)
 International Energy Agency(国際エネルギー機関)。石油資源需要問題などを契機に発足したOECD傘下の国際機関。供給構造を改善することを目的として1974年11月に設立。主要な任務の一つに代替エネルギー源を開発するための加盟国間の協力の推進がある。

IEA核融合炉工学協力協定
 経済協力開発機構(OECD)内の国際エネルギー機関(IEA)の下での他国間協力で、ブランケット工学、トリチウム工学に関する情報交換、共同実験等を行う。

固体増殖方式(水及びヘリウム冷却方式)
 固体のトリチウム増殖材を用いる方式。 Li2O、Li2TiO3、Li2ZrO3、Li4SiO4、LiAIO2 等のセラミックが候補材料である。この方式ではブランケットから熱を取り出すための冷却材として水もしくはヘリウムが考えられている。

コロージョン
腐食のことで、構造材の侵食などにより機械特性の劣化の原因となる。

照射損傷
 放射線損傷と同義。放射線損傷の項を参照。

照射ベッド
 照射試験においてその照射源となる施設。

増殖材・増倍材ペブル
 固体増殖方式において、増殖材及び増倍材が受ける中性子照射効果によって熱・機械特性が劣化しないように、増殖材及び増倍材を微小球にしたもの。

増殖ブランケット
 核融合炉で、燃料増殖、熱交換、遮へい等の機能をうけもつ部位。プラズマと真空容器との間に設置される。

ゾルゲル法
 コロイド法とも呼ばれる微粉末を生成する技術。材料を粉砕もしくは析出によって媒質に分散させてゾルをつくり、分散媒の除去などでゲル化した後、焼成することで微粉末を得る。

中性子
 質量数1、電荷0の粒子。核融合(DT)反応によって14MeVの運動エネルギーを持つ中性子が生成される。

定常炉心プラズマ
 定常的に核融合反応が起きるプラズマ状態のこと。

転動造粒法
 粒体を生成する技術の1種。10~100μmの粉体を高温で練り合わせることによって1mm程度の粒体を作ることができる。

電気絶縁コーティング
 液体金属ブランケットにおいて、MHD効果を低減させる方法の一つとして、ブランケット構造体と液体金属を電気的に絶縁することが考えられる。このための電気的な絶縁皮膜であって、ブランケット構造体の液体金属側表面に生成させる。使用中の損傷等に対して自己修復性を有することが要求されている。

伝熱流動特性
 流動性のある熱媒体における熱を伝搬する性能。

dpa
 中性子や荷電粒子などが、ある値以上の運動エネルギーをもって結晶中に入射すると、 結晶格子にある原子に運動量を与えることによって、この原子を格子点から弾き出す。構成原子1個あたりの平均はじき出し回数をdpa(Dis placement per Atom)という。

DT燃料
 DT核融合反応を起こすための燃料。すなわち重水素(D)と三重水素(T)。重水素は海水などから比較的容易に取り出すことができ、三重水素(トリチウム)は核融合反応によって発生する中性子と、リチウムの反応などを利用して作ることができる。

トリチウム透過防止用コーティング膜
 構造材がトリチウムを透過し漏洩するのを防ぐため、構造材表面に施すコーティング膜。

熱応力
 物体の温度変化による膨張あるいは収縮が拘束されることにより内部に発生する応力。

熱負荷、中性子負荷
 構造体が外部から受ける熱もしくは中性子の、単位面積もしくは単位体積あたりの量。

破壊靭性
 き裂を有する材料において、き裂が伝播して破壊する際に示す材料の抵抗性をいう。

引張り特性
 材料に引張り荷重を加えたときの荷重と伸びの関係。特に比例限度、弾性限度、降伏点、引張り強度などがあげられる。

フルエンス(例:1 MWa/m2
 単位面積を通過する中性子の数もしくはエネルギーの時間積分。1 MWa/m2とは、1 m2あたり1秒間に中性子から受けるエネルギーが1 MJのとき1年間に受ける中性子の量。

ペブル充填層
 ブランケット内の増殖材・増倍材ペブルを詰める層。

放射線損傷
 材料に放射線を照射すると、スエリング、延性低下などの材料損傷が発生する。これは構成原子が格子点からはじき出されるカスケード損傷や、(n, α)反応によって材料中にヘリウムが生成する核変換元素生成によって起こされる。核分裂炉に較べてヘリウムの生成がかなり大きいことが核融合炉の特色である。

モジュール試験
 ブランケットの機能を独自に満たす基本単位を用いてその性能を調べる試験。

誘導放射能
 核融合反応に伴って発生する中性子が、核融合炉の構造材料等を構成する原子核と核反応を起こす結果として生成する放射能。

溶解インゴット
 目的の組成にするために溶解した金属を、塑性加工をするために所定の形状、寸法に鋳造した金属塊。

溶融塩
 イオン結合している材料が溶融している状態。金属と違って自由電子がないために磁場中を流れるときのMHD効果が小さいと考えられ、トリチウム増殖における液体増殖材として検討されている。

リチウム燃焼度
 トリチウム増殖用にブランケットに装填したリチウムの量に対し、中性子と反応してトリチウムを生成した量の割合。