資料第128ー2号
平成10年6月12日
ITER/EDA技術部会
サイト特性(案)について
1.概要
延長期間中の共同技術活動の一つとして、将来の建設判断に向けてより精度の高い技術情報を取得することを目的とするサイト対応設計活動(サイト対応設計及びコスト評価)が予定されている。
我が国は、建設段階移行に向けての設計の具体化に資するとともに、将来における我が国への立地の是非を判断するに当たって必要となる技術的なデータ等判断材料を得るとの観点から、現行の標準設計条件*との関係において、我が国固有の設計仮定条件(サイト特性)を提示し、サイト対応設計活動に参加する予定である。
ITER/EDA技術部会で、中間報告書に記載されている「サイト要件及び設計仮定条件」の個々の条件について専門家の招聘を含めた検討を行ない、以下のとおり、我が国に特有のサイト特性(案)を作成した。具体的には、提案する項目は、地震・地盤、電力、プラント除熱系である。なお、提案した以外の条件については、サイトが具体的に確定した時点で考慮すれば十分であり、現時点では標準設計条件をそのまま使用できるものと判断した。
*現行の標準設計条件
建設サイトが決まるまでの設計条件として、中間設計報告書(平成7年)に「サイト要件及び設計仮定条件」が提示され、以降それに基づいて標準設計の作業を行っている。
「サイト要件」は、建設候補地が必ず満たしていなければならない条件であり、敷地面積、地質、用水・排水、環境放熱量、最大輸送物等に関する条件で、その整備はホスト国負担とされている要件である。
「設計仮定条件」は、候補地が決まるまでにITERの設計を進めるための条件で、主に、用地地形、水理、地震特性、気象、除熱方式、パルス電力容量、輸送路、外部災害要因等に依存する条件である。
2.サイト特性(案)
2.1 地震・地盤
(1)標準設計の条件
標準設計では、IAEAの考え方に準拠し、本体建屋等の重要施設に関しては、基準地震動を建屋基礎部で0.2Gと仮定して入力している。
(2)耐震設計の基本的な考え方
日本へのITERの立地に幅広い可能性を確保するために、炉本体、トカマク建家等の安全上重要と見なされるITER施設は、以下の考え方にしたがって耐震設計がなされるものとする。
1) 過去に発生した地震や、活動度の高い活断層による地震に対して、許容応力以下で設計を行う。
2) 地震学的観点からサイトに想定される最大の地震に対して、特に重要な安全機能が維持されることの確認を行う。
3) ITERの標準設計を上回る地震を考慮する場合には、プラントシステムの設計変更が極力小さくなるように、免震システム等の採用によってこれを補う設計を試み、技術的成立性およびコストの評価を行う。
4) 地震動の特性には、やや長周期成分を考慮する。
1)敷地・地盤
想定する敷地としては、平坦で、耐震上十分に安定とみなせ、S波速度が500m/s 程度を標準的な地盤であると仮定し、いわゆる開放基盤面をそれより相当深いところにあるとする地盤モデルを想定する(添付図1)。
なお、地盤構造の広がりを考慮して以下のようなオプションを用意し、感度解析を実施することとする。
(a) 地盤の地震波伝播特性
(b) 開放基盤面深さ
(c) その他
2)想定する入力地震
(1) 入力地震動は、開放基盤表面で定義し、開放基盤表面より入力する。また、必要に応じ、入力地震動を地震基盤で定義する。
(2) 地震動に与える特性は、免震システム採用の可能性を考慮し、免震システム採用を前提とした、長周期型スペクトルを地震動として参考に想定する(添付図2)。
(3) 鉛直方向の地震動は、水平方向の加速度スペクトルの1/2を目安として定める。
2.2 電力
(1)標準設計の条件
ITER標準設計におけるサイトの電力供給条件は、定常230MW、パルス電力650MWである。
(2)電力設計の基本的な考え方
大きなパルス電力を取り出す際の系統へのインパクトを小さくするため、以下の考え方で設計するものとする。
1) プラズマ生成と加熱電流駆動に必要な準定常電力(約400MW)についてはエネルギーが大きいため系統から供給されるものとする(注1)。
2) プラズマの制御を主とする約250MWの速い変動電力については比較的エネルギーが小さい(約4GJ)ためエネルギー蓄積機を設け補完するものとする。
3) 最大500MVarの無効電力についても、系統から直接供給されることは困難であり、負荷側において必要な無効電力補償装置による補完を行うものとする。
(3)想定する電力系統条件
想定する電力系統条件を別表のように仮定する。
2.3 プラント除熱系
(1)標準設計の条件
ITER標準設計では、プラント除熱系は、四極いずれにも建設可能であるという前提で内陸部への立地を想定し、冷却塔を最終除熱方法とする系統設計となっている。
(2)プラント除熱系設計の基本的な考え方
日本の場合、建設サイトの海岸立地あるいは海岸に近いという立地条件もありうることを考慮し、標準設計の他にプラント最終除熱方法として海水冷却を検討する必要がある。
(3) 海水冷却除熱系設計条件
海水冷却方式では以下の項目を条件として設計するものとする。
1) 海水冷却系へ一次冷却系冷却水が流入する可能性を回避するために、中間冷却系を設ける。
2) 各種商用炉の経験から、取水と温排水との最大温度差は7℃とする。
別表 電力系統条件
項 目 [ ]は日本提案での追加項目 |
標準設計条件 (サイト要件/設計仮定) |
日本サイト特性 |
|
定常電力 |
電力供給方法 |
230MW連続供給 |
230MW連続供給 |
建設用電力 |
35MW(ピーク)平均時5〜20MW |
35MW(ピーク)平均時5〜20MW |
|
運転中の電 |
単相故障 |
数十回/年 80%は1秒以下 |
十数回/年以下 80%は1秒以下 |
力信頼性 |
3相故障 |
数回/年 |
数回/年 |
パルス電力 |
最大有効電力 |
500〜650MW |
〜400MW |
最大無効電力 |
400〜500MVar |
〜100MVar |
|
負荷変動率 |
200MW/s |
〜200MW/s |
|
負荷変動(Step) |
60MW/step |
〜60MW/step |
|
総パルス長 |
2200秒(10000秒まで可能) |
2200秒(10000秒まで可能) |
|
[系統容量] |
: 85GVA以下(参考値) |
||
[短絡容量] |
: 10-25GVA |
: 5-15GVA (参考値) |
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[許容変動値] |
(参考値) |
||
周波数変動 |
:±0.05-0.3Hz |
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電圧変動 |
: 2-3% |
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高調波電圧歪 |
: 0.5%以下(各次),1%以下(総合) |
||