資料第128-1号

第127回核融合会議 議事要旨(案)

 

 

1.日 時  平成10年5月14日(木) 13:30~16:30

 

2.場 所  科学技術庁第1、2会議室

 

3.出席者

 (原子力委員)

   藤家委員長代理、遠藤委員

 (専門委員)

   井上座長、阿部委員、飯吉委員、伊藤委員、岸本委員、関口委員、

   苫米地委員、宮委員、宮崎委員、森委員、吉川委員(11名)

 (事務局)

   柴田核融合開発室長

 

4.議 題

 (1)最近の国際的な話し合いの状況等について

 (2)ITERの技術的要件について

 (3)ITER最終設計報告に関する国内評価について

 (4)その他

 

5.配布資料

   資料第127-1号 第126回核融合会議議事要旨(案)

   資料第127-2号 最近の国際的な話し合いの状況等について

   資料第127-3号 第1回特別作業グループ(SWG)会合の結果について

   資料第127-4号 ITERの技術的要件について

   資料第127-5号 ITER最終設計報告書に関する国内評価

   資料第127-6号 ITER最終設計報告の評価について(案)

   資料第127-7号 国立機関原子力試験研究(核融合分野)の研究評価に係る

             ヒアリングについて

   参考資料    「懇談会における論点の整理と今後の課題について」

   参考資料    大型ヘリカル実験装置(LHD)実験開始

 

6.概 要

1.事務局より宮島座長が当該会議座長を退任された旨紹介があり、互選により井上委員が新座長に選任された。また、新規構成委員として、阿部委員、伊藤委員、藤原委員、宮崎委員が紹介された。

 

2.岸本委員より、ITERのコスト低減に係る第一回SWG(特別作業グルー会合の結果について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

○ 原型炉への道筋について質問があり、将来のリアクターの姿にかなり依存するが、最近の研究開発の進捗により、将来のリアクターは、定常運転を行い、エネルギー増倍率(Q)としては30~50程度をめざすものであるとの大筋の合意が得られてきている。従って、これまでのようにITERでQを無限大にすることにこだわらなくてもよいのではないか、という考え方が大勢を占めるようになってきたとの回答があった。

○ ITERの設計変更による核融合炉開発路線に与えるインパクトについて意見があり、場合によってはタスク1の内容に影響を与えることにもなるので、よく議論する必要があるとともに、意見を適切に取り入れて調整を図らないとDEMO炉までの間にもう一つの装置が必要といった意見がでてくる可能性があるとのコメントがあった。

○ 日本の立場としてどの程度コストを下げればよいと考えているかとの質問があり、現時点では実験炉のミッションを維持しつつどこまで性能を落とすことが可能であるかについて議論を行っている段階である。

○ 現在は、いくらであれば建設にコミット出来ると言うことを議論しているのではなく、ITERの実現性を高める観点から、計画目標の範囲内でどこまでコスト低減を図れるのかという検討を行っているところである。具体的なコストは、特別作業グループでの具体的なパラメータを踏まえ、理事会での議論を経た上で共同中央チームにより推算されるものと理解しており、今は断定的な数字を申し上げる段階ではなく、あくまでコスト低減に向けて最大限の努力を行っている段階である。

 

3.岸本委員より、5月中旬に開催予定の第2回特別作業グループ(SWG)会合において日本から提案するITERの技術的要件について説明があり、これに関して以下のような発言等があった。

○ タスク2に関する提案の中に、新しい材料に関する検討が入っていることは評価できる。低誘導放射化材料の開発は重要であり、日本から中性子源の開発を入れるくらいの提案を積極的にしてもいいのではないか、そのような流れの方が説得力が出てくると思う。

○ ITERの設計当初の議論においては、次の実験炉はDEMOに向かう研究開発が可能なように物理、工学の面から壁負荷を1MW/m、フルエンスを1MWa/mcが妥当であるとの判断があったのではないか。この数字を低くすることは、装置の性格を物理に比重を置いたものとし、DEMOに向かうブランケットの開発は別な思想で行うものと考えられ、方針転換になるのではないか。

○ 壁負荷に対しては全体平均で0.5MW/m程度を想定しているが、局所的には0.8MW/m程度が見込まれ、ブランケット試験等を実施する領域では概ね所定の性能を満たすと思う。また、フルエンスについても、そもそも1MWa/mでは材料試験としては十分ではないが、従来はパルス運転を想定していたが、現在は準定常運転が見込めるようになったことにより、所期の要求をある程度満たせるものと考える。いずれにせよ、IFMIFのような中性子照射施設が必要になる。

○ DEMOにおいては実験炉よりはるかに高いフルエンスが必要となることから、ITERについては、フルエンスの議論をした上でバルキーなテストが必要であるとの認識になったものである。これらの数字を変えることは、次の装置の性格の方向を決めるものであり、工学系の人達の意見を取り入れて整理をしておく必要があると思う。

○ IFMIFは概念設計活動から評価の段階で止まっている。将来の計画を考えると、すぐにでも手を着けないと間に合わないため、コストの問題はあるものの日本から何らかの提案をする等の対応をすべきだと考える。現状のままでは、非常に危惧を感じる。

○ 材料研究開発の進め方については、計画推進小委員会で検討を行っており、原型炉の材料として最有力であるフェライト鋼のチェックを、IFMIF等の中性子照射施設で行う流れとなっている。ITERに関連して材料試験をすると言うことであれば、IFMIFを前倒ししてやると言うことになると思う。本日提案された技術目標は、実験炉に最低限必要な技術を記載しており、これだけでは十分ではないが、タスク2の議論で提案される3項目を追加することによりDEMOが要求する条件を含んだ包括的なものとなっていると思う。

○ DEMOに要求されるプラズマの条件はどうなっているのか。

○ DEMOに要求されるのは、エネルギーシステムとしての実現可能性を追求する上で、必要とされるプラズマ性能を向上することである。このために、主にITERを用いて、高い閉じ込めを目指したベータ値の向上や、高い自発電流を実現するといった課題に取り組み、将来のリアクターの要求する性能を満たすべく、研究上の余地をもたせることが重要であると思う。

○ 電流については少し楽になり、ヘリウム排気も楽になるものの、物理面が若干不確定要素であり、高β値の達成は、ある程度のリスクを持ちうるため、やはり従来と少し考え方が異なると思う。

○ 今回のコスト低減案が、従来に比べて、プラズマ等の性能にどのような変更があるのか、材料の問題をどのようにとりあげるのか、どのような点がリスキーとなっているのかということを明確化させるべきである。

○ TACで6年間議論をしてきたが、これは裕度を持ちすぎであり現実的ではないと言われかねないのではないか。

○ これらの動きは、最近Qを無限大にするという考え方が変わってきたことにより、従来不可能であると思われていたトカマクの定常運転が、出来る可能性が高くなってきたためであり、設計の裕度についてはそれ程変わっていない、せいぜい10%程度の変更であると認識している。

○ 今回の提案は、ミッションが変わったこと、言い換えると技術目標、特にQ値に対するウェートが変わったことと、最近の研究の進歩が取り込まれたことにより、再度検討をするということだと解釈できる。

○ ITERでは、材料について、バルキーな試験を行い、溶接、接合及び冷却剤との関連などを初めとした工学システムとしてのテストを行うものと認識しており、フルエンスを下げるのであれば、どの部分のテストができ、どの部分が出来ないのかをはっきりさせ、ITERでテストできないものについては他でやる必要がある。これに関連して、構造材料の開発はある程度プランニングが進んでいるので、中性子照射施設に関してもプラニングを早急に進めるべきである。

○ これまでは、材料、ブランケットに関しては問題を先送りされてきたが、今回提案の低放射化材料の導入によりDEMOへの見通しが明確になったと考えられるが、それが戦略として最適化されているかどうかの議論が必要だと思う。何が一番適切であるかを議論すべきである。

○ ITER計画懇談会においても、将来の核融合エネルギーの実現性、将来像に関して検討をすべきとの提言があることから、核融合開発戦略に関して検討を行う場を核融合会議に設置する提案を行う予定である。

○ 核融合開発の展開を図るためには、核融合全体の議論をすべきである。ITERについてはITERのことしか議論していないし、ITERの枠組みの中でIFMIF等材料開発の問題をどうするのか。

○ 本日示された提案については、日本から本日の資料に沿った提案をすることとする。材料については種々議論があったが、今回のSWGはタスク1における提案の議論であり、将来の材料の開発は別途タスク2で議論されると言うことであるから、これで了承することとする。ただ、IFMIFを含めて材料に関する取扱いについては議論し尽くされていないこともあり、今後付帯条件として十分議論していくことが重要であると思う。

 

4.ITER/EDA技術部会井上主査より、同部会においてとりまとめられたITER最終設計報告書に関する国内評価について、また、引き続き事務局より同報告に基づいて核融合会議としての報告案としてITER最終設計報告の評価に関する案について説明があり、これに関して以下のような質疑応答等があった。

○ EDA技術部会の報告案において、EDAの検討範囲ではないが、燃料であるトリチウムの輸送基準についても重要であることから、検討項目に入れられるかどうかについてEDA技術部会で検討することとなった。

○ 核融合会議の評価案において、4.のコストに関する表現について誤解されないようにするため、「各極の厳しい財政状況に・・・一つとなっている」を「最近の厳しい財政状況に・・・一つとなった」と修文することで了承された。

 

5.事務局より、国立機関原子力試験研究(核融合分野)の研究評価に係るヒアリングについて説明があり了承された。また、飯吉委員より平成10年3月31日にファーストプラズマの点火試験に成功した大型ヘリカル実験装置(LHD)の実験開始に関する報告があり、以下のとおり発言等があった。

○ ヘリカル型の装置としては世界最大であり、スケーリングはこれまでの WendelsteinⅦA-Sなどの成果の延長上にある。超伝導磁石を用いたヘリカル型装置は世界初であるが、超伝導が安定しており、実験が非常にやりやすい。

 

次回会合は、6月12日14:00からの開催を予定しており、第2回特別作業グループ(SWG)会合の報告、計画推進小委員会においてとりまとめられた材料、ブランケットに関する報告、核融合の開発戦略の検討の進め方について審議する予定であるとの説明があった。