資料第127−6号

ITER最終設計報告の評価について(案)

平成10年5月14日
核融合会議

 ITERは、核融合エネルギーの科学的・工学的な実現可能性を実証するという核融合炉開発における重要なステップであるばかりではなく、我が国第三段階核融合研究開発基本計画上の「実験炉」の条件に合致するものとして、国内核融合開発の最重要プロジェクトの一つに位置付けられており、これまで積極的に推進してきているところである。

 ITER工学設計活動(EDA)においては、1992年7月から6年間の予定で実施されてきてた設計活動及び工学R&Dが概ね期待どおりに進展し、成果をあげてきている。この間、段階的に中間設計報告及び詳細設計報告がなされ、その都度各極のレビューを受けつつ、受理されてきたところである。先般、これまでのEDAの集大成ともいえる最終設計報告書案がITER理事会に提出され、各極のレビューに供された。

 核融合会議において最終設計報告書をレビューするにあたり、最終設計報告書案のとりまとめに貢献したITER共同中央チームをはじめとする多くの関係者の尽力に謝意を表す。当該報告書に関する具体的な検討に当たっては、当会議の下に設置されているITER/EDA技術部会において、技術的観点を中心として集中的な審議が行われた。この程、最終設計報告書の評価について、当該技術部会から別添のとおり報告を受けた。審議の結果、当会議としては、同技術部会からの報告内容は妥当なものであると判断するが、併せて、当会議の見解を以下のとおりまとめた。

 1.
工学及び物理分野に関しては、詳細設計報告の評価の際に指摘した事項に関し、詳細設計報告以降における物理R&Dの進捗によりデータベースが充実し、各種予測の確度向上が図られるなど、設計が一層進展していることを評価する。また、詳細設計報告において設計方針が確定されていなかった事項について適切にオプションの選択がなされるとともに、主要な工学要素機器の設計について保守性、組立性などシステム統合の観点から適切な設計変更がなされたことを評価する。なお、今後のEDAの延長期間中に更なるデータベースの充実、各種解析・評価が行われることを期待する。

 2.
安全性分野に関しては、詳細かつ包括的な安全解析に基づく評価がなされる など、詳細設計報告時点から進展したことを評価する。なお、今後更に安全性 評価に用いられるデータベースや解析コードの信頼性向上等に資するためのR &Dが進められることを期待する。

 3.
当会議としては、上述のとおり、更なる進展を期待する点はあるものの、設 計は現行の技術目標の達成の見通しを確信をもって判断でき得る程度に至って おり、サイトに依存しない標準要件に対する設計報告書としては適切なもので あると判断する。

 4.
なお、設計活動の進捗の結果として、これまでより高い確度で計画全体のコ スト評価が示されたことは歓迎するが、各極の厳しい財政事情に鑑みれば、依 然としてコストは大きな懸案事項の一つとなっている。ITER建設の効率的 な開始の可能性を高めるためには、現行の計画目標の範囲において大幅なコス ト低減を図ることが不可欠であると考える。

 5.
また、延長される工学設計活動期間において実施される予定である建設判断 を的確に行うためのサイト対応設計活動及び上述したコスト低減にかかる検討 の進捗を踏まえ、より実現性の高い仕様となることを期待する。

以 上