資料第125−4号



ITER計画に係る最近の国際的な話し合いの状況等について



 ITER第4回建設等準備協議及び第12回理事会が、平成9年7月23、24日、タンペレ(フィンランド国)で開催された。

1.今次会合において表明された各極の状況等
(1) 日本
 財政構造改革を背景とした3年間のITER誘致の凍結、ITER計画懇談会の検討状況を紹介しつつ、状況は厳しいが政府としてはこれらを踏まえつつ積極的にITER計画を推進していく旨説明。

(2) 米国
 98年度ITER関係予算の議会(特に下院歳出委員会)での厳しかった審議状況が紹介されたが、最終的には工学設計活動(EDA)の延長に向けて努力することとなった。実質的な延長期間の予算となる99年度予算は、本年11月頃に政府内でとりまとめられ、来年2月に大統領から議会に送られることとなるとのこと。

(3) EU
 第5次フレームワークプログラム(1999〜2003年)は、本年11月の理事会で決まる見通し。EDA延長への貢献もここでオーソライズできる。伊と加のサンプルサイトの提案は、今年秋ないし年内にも可能との見通し。

(4) ロシア
 EDA延長については、既に首相の了解を得ている。ロシアの場合、他極と異なり、延長のための文書に署名がされないと予算がつかないので、できるだけ早く署名したいとの要望が表明された。

2.第4回建設等準備協議の結果について
(1) 延長の了解
 工学設計活動(EDA)協定の期限(1998年7月21日)を約1年後に控え、米国、ロシアを始めとする他の3極は、将来のITERの建設の実現に向けた具体的なアクションを必要とするとの立場をとり、延長期間の3年間を現行のEDAから建設への移行期間(transition period)と位置づける立場をとった。一方、我が国は、財政構造改革の集中改革期間である3年間は、建設への移行は困難な立場にあり、これらの背景を踏まえて議論された結果、4極が将来の建設の可能性に向けての進展への関心を共有していることを認識し(with a general intent to enable an efficient start of possible, future ITER construction)、現行協定を3年間延長すべきことが了解された。

(2) 延長期間の活動
 本年4月の第3回建設等準備協議でまとめられた報告書ドラフト#1及びエマール所長の提案を踏まえ、延長期間の技術的な作業としては、以下を主たる内容として合意した。
1) サイト対応設計検討及びコスト評価
2) 安全解析及び許認可取得の準備のための技術支援
3) 原型試験
4) 上記1)、2)の結果をも反映した調達のための文書の準備

(3) 延長の方法
 延長の形式としては、協定期間の単純延長とした(現行6年間を9年間に変更)。延長文書の他、延長期間の活動等についての各極の了解に関する文書の作成を行うこととした。

(4) 今後の予定
 ・第5回建設等準備協議(11月)
     :延長に必要な一連の文書のドラフトをとりまとめる。

3.第12回理事会の結果について
(1) 詳細設計報告書(DDR)
 昨年12月の前回理事会に提出されたDDRについて、各極から基本的にDDRの内容を支持する旨のそれぞれの国内レビューの結果が報告された(参考2)。我が国からは、「ITER詳細設計報告の評価について(平成9年6月25日 核融合会議)」及び「ITER詳細設計報告に関する国内評価(平成9年6月2日 核融合会議ITER/EDA技術部会)」を報告した。
 技術的なコメントについては、これを踏まえて、98年2月にとりまとめられる予定の最終設計報告(FDR)に向けた作業を進めることとされた。

(2) EDA延長関係
 第4回建設等準備協議での延長に関連する各極の了解の報告を確認した。



(参考1)

ITER第4回建設等準備協議及び第12回理事会出席者


     (日本)  興  直孝 *科学技術庁長官官房審議官
           吉川 允二  日本原子力研究所理事長

     (米国)  デッカー   エネルギー省エネルギー研究局次長
           デービス   エネルギー省エネルギー研究局核融合エネルギー科学部長

     (EU)  ラオッティ  欧州委員会第12総局長
           メゾニエ   欧州委員会特別顧問

     (ロシア) ベリホフ   科学アカデミー副総裁
           ソコロフ   原子力省原子力科学局長

     (JCT) エマール   所長

                                      他


              (注) * :今村長官官房審議官(原子力担当)にかわり臨時出席


(参考2)

各極におけるITER詳細設計報告書レビュー

 

項目

日本

EU

ロシア

米国

  1. レビュー

委員会

核融合会議・ITER/EDA技術部会(物理,炉工学,安全性の3WG)

インターネットで意見公募

核融合計画諮問委員会

(CCFP)

 

  • 原子力省の科学技術委員会(STC)

 

 

  • 核融合エネルギー科学諮問委員会(FESAC、DOE)
  • 9つのサブパネルを設置

 

2.全体評価

  • 中間設計段階に比べ設計全体の整合性が改善
  • 物理R&Dの進展によるデータベースが格段に充実
  • 今後、さらに設計を進展させる必要があるが、現時点としては概ね妥当

 

  • 中間設計(IDR)に比べ物理で明瞭な進展

・工学R&Dが進展

  • 安全性解析もIDRから進展
  • 最終設計報告書を目指して残りの事項について作業するための満足できるベースである

 

 

  • IDRに比べ大きな進展
  • 炉の主要システムのプロジェクトが進展し、炉の殆どの要素は事実上、最終設計に移行する準備が整っている

 

  • 目標としての燃焼プラズマ物理研究、定常運転、工学試験の重要性を確認
  • DDRは今後の進展のための健全なベースである
  • ITERの目標が達成されることにより、核融合の安全性、経済性、将来の本質的エネルギー源としての主たるマイルストーンとなる