資料第125−1号



第124回 核融合会議 議事要旨(案)


1.日 時  平成9年6月25日(水) 14:00〜16:30

2.場 所  科学技術庁第1、2会議室

3.出席者
  (原子力委員)
    田畑委員
  (専門委員)
    宮島委員(座長)、石野委員、井上委員、佐々木委員、鹿園委員、
    関口委員、玉野委員、苫米地委員、中井委員、宮委員、森委員(11名)
  (事務局)
    田中核融合開発室長

4.議 題
 (1)ITER/EDA詳細設計報告の国内評価について
 (2)核融合研究開発の現状と今後の進め方について
 (3)その他

5.配付資料
   資料第124-1号 第123回核融合会議議事要旨(案)
   資料第124-2号 ITER詳細設計報告の評価について(案)
   資料第124-3号 増殖ブランケットの研究開発の現状と開発の進め方
   資料第124-4号 核融合会議・計画推進小委員会・核融合炉構造材料検討
           ワーキンググループ活動報告
   資料第124-5号 原研におけるITER安全性研究の現状と今後の進め方

6.議事要旨

(1)前回議事要旨(案)の確認

 事務局より、資料第124-1号に基づき、前回議事要旨(案)の説明があり、一部字句修正(「ITER詳細設計報告の国内評価について」に関する意見等の概要部分の最初の項目において、「観測窓等の評価」の後に「及び制御系との整合性の検討等」を追加)の上、了承された。

(2)ITER/EDA詳細設計報告の国内評価について

 事務局より、前回の指摘等を踏まえてとりまとめられたITER/EDA詳細設計報告の国内評価に関する核融合会議の見解である「ITER詳細設計報告の評価について」(案)が提出され、検討の結果、若干の修正の上、了承された。本評価については、座長より原子力委員会に報告するとともに、科学技術庁からITER/EDA所長及びITER理事会に報告することとされた。

(3)核融合研究開発の現状と今後の進め方について

 1)日本原子力研究所(以下、原研)より、資料第124-3号に基づき、増殖ブランケットの研究開発における国内の現状、各極の現状及び今後の計画について以下のような説明があり、その後質疑応答がなされた。

 (説明概要)
○ 各極においては固体増殖方式と液体金属方式に重点を置いた研究開発が行われており、ブランケット試験計画作業グループ(TBWG)ではITERの工学試験計画に対する準備が進められている。

○ 原研においては、1)高い安全性、2)豊富なデータベースとモジュール試験への適用性、3)実用炉への見通し、の3つの点での優位性から固体増殖ブランケットに対する検討が行われており、これまでは主に材料を中心に開発が進展している。今後はITERの運転初期段階から計画されているモジュール試験に焦点を当て、引き続き固体増殖ブランケットを基軸に据えた研究開発を展開していく。

○ 大学においては、固体増殖材からのトリチウム放出・回収過程に関する広範な基礎研究が行われている。また、液体金属方式についても各種基礎研究が行われている。

(質疑応答)
○ ブランケットにおける海外でのITER関連研究の状況に関して質問があり、EUは予算も多く、積極的かつ長期的に行っていること、米国は構造材料の開発が中心であり、ITERのフレームワーク内で行っていること、露はブランケット試験計画作業グループの報告はしているものの予算規模等は不明であること等の説明があった。

○ IEAの耐放射性材料の標準として2種類のフェライト鋼があるとの説明に対して、我が国における開発の現状について質問があり、F82H及びJLF−1の2種類がIEAでの標準テストサンプルであること、F82Hは主に原研で、JLF−1は主に大学で開発を行っており、現時点では、各種試験等を実施中であるとの説明があった。

○ フェライト鋼の重照射データをどこまで採っていくのかについて質問があり、現在30dpaまで取得しているが、実証炉に向けては100dpaまで必要ではないかとの考えもあり、現在計画推進小委員会の下にある核融合炉構造材料検討ワーキンググループにて検討中との説明があった。

○ 液体リチウム方式では、除熱、トリチウム増殖などの個別の機能だけではなく、炉システムとしての性能を慎重に検討する必要があるとの意見が出された。

○ 冷却管からの漏水時の安全性評価について質問があり、ペブル(顆粒)状の増殖材と反応する際のデータ取得については今後検討していく旨の回答があった。

○ 炉心プラズマに続く当面の課題はブランケットであり、機能面においても、エネルギー変換、遮蔽、増殖等要求事項が多く、総合的なバランスを考慮することが必要。EUの開発がかなり進んでいるのに比して日本は平成9年度から原研において研究に着手したばかりであり、今後バランスのとれた計画を検討することが必要であり、更なる議論を期待するとの発言があった。

 2)計画推進小委員会核融合炉構造材料検討ワーキンググループ主査の宮委員より、資料第124-4号に基づき、これまで3回開催された同ワーキンググループにおける検討状況について説明があり、その後質疑応答がなされた。

 (説明概要)
○ 本ワーキンググループにおいては、核融合炉構造材料開発に20年以上の期間を要すること等の理由により、核融合炉の第一壁構造材料開発を中心として研究開発方策の基本的考え方をとりまとめることを目標として検討が行われている。

○ 材料開発の現状を正確に把握するため、これまでは、主に想定されうる核融合実用炉に要求される要件の整理とそれに対する材料からのアプローチ、開発が進んでいる構造材料の現状の整理とその課題の抽出等について検討が行われている。

○ 今後は、材料開発の進め方、具体的な開発体制等について検討を行う予定。

 (質疑応答)
○ フェライト鋼と水との共存性について質問があり、酸化皮膜層が形成されるため、ある一定量以上は酸化が進まないというデータがあるとの説明がなされた。

○ また、フェライト鋼の磁性体としての特性からトカマクに与える影響について質問があり、小規模装置での試験データでは影響が低い傾向を示す結果が得られているが、今後中型装置を用いた試験計画を含めて更なる検討が必要との見解が示された。

○ 将来を見通した核融合炉の構造材としてフェライト鋼を選定するに至った経緯についての質問があり、フェライトは鉄の他、主にクロム、タングステンから構成されており、これまでのデータの蓄積から組成の違いによる材料の性質に関してはある程度推定が出き、またバナジウムは1960〜1970年代の高速増殖炉開発におけるバックデータの蓄積により、基礎となる情報があることから、これらの知見を総合的に検討した結果である旨の説明がなされた。

○ 座長より、本件については同ワーキンググループで更に議論を進めてもらいたい旨発言があった。

 3)日本原子力研究所より、資料第124-5号に基づき、ITERの安全性研究について、ITERにおける現在の安全確保の具体的課題、今後実施する安全性確証試験等に関する説明があり、その後質疑応答がなされた。

 (説明概要)
○ 核融合における安全確保は、「閉じ込める」ことが重要であり、反応を止めたり、冷やすことは比較的容易である。そのため具体的には、1)閉じ込め隔壁の多重化とトリチウムの分割管理、2)堅固な隔壁の確保、3)異常事態を想定した機器の健全性確保とシステムの構築、等について検討が行われている。

○ 安全性研究は、ITERの工学設計活動において実施されてきたが、我が国への受容性を確かなものとするため、1)超伝導コイル安全性実証試験、2)免震装置安全性評価試験、3)真空二重壁健全性評価試験、4)真空容器内熱流動安全試験、5)トリチウム放出模擬試験、のような安全性確証試験が今後行われる。

 (質疑応答)
○ ITERでは軽水炉の場合における最大想定事故等にあたる解析をおこなっているのかと質問があり、ITERにおいては運転状態における異常のカテゴリーを5段階に分けて評価しており、この内最も厳しい条件においても問題ないと評価していること、また複数の事象の重ね合わせについても評価され問題がないことが共同中央チームより確認されている旨回答があった。

○ 核融合が核分裂と異なる点の一つに、燃料が各機器に分散して存在していることが挙げられると思うが、加熱系と真空容器が繋がっている部位等における閉じ込めの評価をどのように行っているのかとの質問に対し、真空容器に繋がる機器については、それらも含めバウンダリを確保しており、さらに2次バウンダリをとっているとの回答があった。

○ 安全性に関する説明として、一般の人への分かりやすさという点から工夫が必要ではないか。例えば、前提条件の説明なく事故評価の説明だけなされると、事故が起こるのだという誤解を与えることになるのではないかとの指摘があり、これらの評価の対象となる事例は、装置の寿命中にはまず起きることのないレベルのもの(10−4〜10ー6回/年)であり、そこまで解析してみても問題がないということを説明したいのであり、理解を得る必要がある旨の説明がなされた。

○ ITERでオプションとして検討されている免震システムについて他での実績等があるかとの質問があり、我が国では一般建造物(高層ビルディング等)では既に170程の実例があり、国外では軽水炉への導入例もあることが紹介された。また、既存の免震装置のデータから、ITERで検討している装置の面圧等の範囲自体は既に実績を有するものである旨説明がなされた。

(4)中井委員より、6月16、17日にウィーンで開催されたIAEAコンサルタントミーティングにおける慣性核融合の検討状況について、また関口委員より、6月16、17日にウィーンで開催されたIAEA国際核融合研究評議会(IFRC)会合の状況について報告があった。

(5)次回は、8月下旬頃に開催することとされた。