資料第124−4号



核融合会議・計画推進小委員会・
核融合炉構造材料検討ワーキンググループ活動報告


平成9年6月25日
核融合炉構造材料検討WG
主査 宮 健三



1.経緯
 核融合炉構造材料開発は、低放射化等の技術目標及び開発スケジュールの点において、将来の核融合炉の開発に必要不可欠な要素である。材料開発には、一般に20年以上の期間を要し、また、核融合炉の高エネルギー・高フルエンスの中性子照射環境に耐える材料であって、低放射化性の高い材料の開発が必要であり、長期的展望にたって、技術開発の展開に材料開発を進める必要がある。このため、第117回核融合会議において報告された「中期的展望に立った核融合炉構造材料の開発の進め方について(中間報告)」を踏まえて、構造材料開発のマスタープランについて議論していくための核融合<炉構造材料開発ワーキンググループ(WG、以下WGとする)が第16回核融合会議計画推進小委員会に設置された。

2.目標と検討項目

2. 1 目標

 WGにおいては、将来の実用炉開発を見通した核融合炉の構造材料のうち、第一壁構造材料開発を中心として研究開発方策の基本的考えをとりまとめる事を目標にする。

2.2 検討項目

(1) 想定される実用炉への採用を見通した第一壁構造材料等の特性
(2) 候補材料(フェライト鋼、バナジウム合金等)について研究開発の現状及び課題の把握
(3) 核融合実用炉開発に向けた第一壁構造材料開発の推進に関する基本的考え方
(4) 必要な研究施設と研究体制に関する基本的考え方

3.検討方法

3.1 メンバー構成
宮  健三 (東京大学工学部教授 主査)
阿部 勝憲 (東北大学大学院工学研究科 教授)
井口 哲夫 (名古屋大学大学院工学研究科 教授)
関村 直人 (東京大学大学院工学系研究科 助教授)
永川 城正 (金属材料技術研究所 第2研究グループ 第2サブグループリーダー)
中島  甫 (日本原子力研究所 材料研究部次長)
野田 健治 (日本原子力研究所 材料設計研究室長)
正村 克身 (日本鋼管 総合材料技術研究所 准主幹)
松井 秀樹 (東北大学 金属材料研究所 教授 兼 付属材料試験炉利用施設長)
室賀 健夫 (核融合科学研究所 大型ヘリカル研究部 教授)

3.2 方法

(1) 検討の期間は2年間を目途とし、成果を適宜、計画推進小委員会及び同委員会を通じて核融合会議に報告する。
(2) その他WGの検討に必要な事項については、主査が適宜諮って定める。

4.検討内容

4.1 第1回会合(平成9年4月15日)

4.1.1 検討課題
  (1) 実用炉要件からの材料開発へのアプローチ
 現在想定されている核融合実用炉要件を整理し、候補構造材料からアプローチを模索する。
    1) 日本における検討例
       SSTR   核融合出力     3GW
            平均中性子壁負荷  3MW/m2
            構造材       フェライト鋼
            冷却材       水(300℃、15MPa)
       DREAM   構造材       SiC/SiC(He)

    2) 米国における検討例
       ARIES  核融合出力      2.84〜2.87GW
            平均中性子壁負荷   2.1〜2.99MW/m2
            構造材        SiC又はV5Cr5Ti
            冷却材        He又は液体Li

    3) EUにおける検討例
       SEAFP  構造材        バナジウム合金(液体Li)あるいは
                       マルテンサイト鋼(水)

 (2) 現状の材料からのアプローチ
    現在開発が進んでいる構造材料を整理し、課題を抽出して材料開発の方向付けを決定する。
   ・ フェライト鋼
   ・ バナジウム合金(V-Cr-Ti)
   ・ SiC複合材料

   
以上の検討状況を踏まえて議論がなされ、材料開発の進展状況を明白に把握するため、「材料技術目標」を設定することを検討することにした。


4.1.2 今後の検討の進め方

  (1) 核融合実用炉の要件及び材料開発の現状

   1) 炉設計から構造材料への要求
   2) 構造材料開発の現状と課題
     ・ フェライト鋼、ODSフェライト鋼
     ・ バナジウム
     ・ セラミックス(SiC)

  (2) 材料開発の進め方

   1) 各構造材料の特徴の比較検討及び技術的なfeasibilityの検討
   2) 過去の原子力材料開発の経験の紹介
   3) 高速中性子が材料に与える影響
   4) 構造材料開発の優先順位等の検討

  (3) 開発体制

   1) 照射施設の検討
     ・ 必要性
     ・ 既存施設の利用
     ・ 今後の計画
   2) 材料開発体制の検討
     ・ 全体像
     ・ 役割分担
   3) 構造材料開発計画案の検討
   4) 構造材料開発計画案のとりまとめ

4.2 第2回会合(平成9年5月20日)

4. 2.1 核融合炉原型炉/実用炉における構造材料の検討状況

  (1) 低放射化フェライト鋼、軽水冷却方式核融合炉
    ・ 定常核融合炉(原型炉)SSTR、実用炉A-SSTR
       
 経済性成立の見通し及びブランケットの寿命(2年間、10MWa/m2)についても、定量的評価が加えられている。

  (2) SiC/SiC複合材・He冷却方式核融合炉
    ・ 定常核融合炉ARIES-I、DREAM炉

  (3) バナジウム合金・液体金属Li冷却方式核融合炉
    ・ 高ベータ定常運転炉(ARIES-RS)

4. 2.2 大学での核融合動力炉設計活動での検討状況

  (1) ヘリカル型核融合動力炉(FFHR)の検討状況
    ・ 第1候補材:低放射化フェライト鋼(JLF-1)
    ・ 第2候補材:バナジウム合金

  (2) FBC(東工大:ブランケットにPbLiを使用)

  (3) IDLT炉(東大:オーステナイト鋼を使用)

4. 2.3 その他

  (1) フェライト鋼を実際に生産する側から見た製作時の課題
    ・ 不純物元素の管理
    ・ 溶解炉からの汚染や炉の洗浄方法の確立
    ・ 検査項目の設定及び検査体制の確立

  
上記議論に基づいて、低放射化フェライト鋼、SiC/SiC複合材料、バナジウム合金について材料技術目標を具体的に示すこととした。


4.3 第3回会合(平成9年6月24日)

4. 3.1 低放射化フェライト鋼の現状と技術開発目標

  (1) 主要使用条件
    ・ 中性子フルエンス:10MWa/m2照射
    ・ 最大表面熱流束:1.5MW/m2
    ・ 荷重: 冷却水17MPa
          ディスラプション時の電磁力<100MPa

  (2) 低放射化フェライトの開発目標(10MWa/m2照射)

   1) 第一壁プラズマ側表面の厚さ1 mm程度の範囲をODS化により強化
   2) 組成や組織を最適化し靭性特性向上
   3) 材料強度評価を精密化して設計マージンを適正化し、使用可能範囲の拡大

4. 3.2 SiC/SiC複合材料の現状と技術開発目標

  (1) 原型炉における材料性能の目標値(10MWa/m2照射)
    ・ 引張り強度:200MPa(曲げ強度として350MPa)
    ・ 熱伝導率:15W/m/K
    ・ 低放射化特性(窒素不純物)

  (2) 実証炉での開発目標値
    ・ 引張り強度:300MPa(曲げ強度450MPa)
    ・ 熱伝導率:15W/m/K
    ・ 低放射化特性(窒素不純物)

4. 3.3 バナジウム合金の現状と開発課題

  (1) 非照射特性
    ・ 力学特性データベースの現状

  (2) 中性子照射による特性変化
    ・ 照射脆化
    ・ 核変換ヘリウムの効果(高温脆化など)
    ・ スエリング
    ・ 低放射化特性

    低放射化フェライト鋼については、材料技術目標が定量的に明示された。

    
SiC/SiC複合材料についても、材料技術目標が具体化されたが、製造性及び核変換ヘリウムによる寸法安定性変化については今後とも検討が必要となる。

    
バナジウム合金については、液体リシウム冷却方式のみでなく、Heあるいは水冷却方式における材料研究開発課題を広く検討する必要がある。

    
次回以降は、材料開発の進め方について審議することとされた。