資料第123-5号

 

ITER計画に関する国内外の状況について

 

1.建設等準備協議(Exploration)について

①目的
○ITER建設のための枠組みに関する「建設協議(Negotiation)」が合理的な時期
までに合意に達することを可能とする十分な共通の理解を構築する(平成8年7月に開
始を合意)

②経緯
○これまで3回(第1回ロシア・サンクトペテルブルグ、第2回東京、第3回パリ)開催
○主な検討事項   ・ITER計画に関する各極の状況
          ・98年7月以降のITER計画の進め方
          ・建設等に向けての検討課題
○第3回会合において、これまでの検討状況等に関する報告書(ドラフト)を作成

 

2.ITER計画に関する他極の状況

EU

①昨年12月の各界有識者による核融合研究評価報告書に基づき、核融合を将来エネルギー
 源の選択肢として実現することが重要であり、ITERについてもEU域内に立地すべく
 諸方策を検討中

②第5次研究開発フレームワーク(1998年から2002年までの方針を規定)を作成中
○同フレームワークの下策定される個別分野計画である核融合計画は来年策定
○正式提案によると、期間中における核融合及び核分裂への資金配分は現計画とほぼ
 同レベル全体の7%であり、核融合についても大凡同レベル(年間約500MECU)
 の見込み

③5月15日開催の研究相理事会におけるエネルギーに関する議論
○持続可能エネルギー源によるエネルギー生産は今後とも増加
○化石エネルギーは、長期的には石炭
○原子力エネルギーは、採掘可能ウラン量、放射性廃棄物処理が課題
○核融合エネルギーは、資源量は豊富であるが、技術開発の複雑さが課題

 

④同会議における核融合研究開発に関する議論
○核融合に関して第5次フレームワーク期間中における可能性ある幾つかのシナリオを検討
○本年10月までに、同シナリオをより詳細に検討し、11月の理事会において議論

⑤現在のところ、EU域内でのITER立地可能国は伊のみとのことであり、具体的候補地に
 関する技術調査を開始予定。なお、伊への立地の可能性の判断のためには、低開発地域への
 開発援助基金「構造基金」をITER計画に充当できるか否かが重要であり、EU域内での
 検討に時間を要する模様。

⑥現時点では、直ちに長期の財政的コミットを伴うような建設の判断は困難であるが、第5次
 フレームワークの後期部分(大凡2001年以降)であれば立地の判断は可能との意向

⑦ITERのサイト状況を加味した調整設計検討に関しては、カナダに対しても実施を検討中
 

米国

①現在ITERに関する技術的評価を実施中
エネルギー省核融合エネルギー科学諮問委員会(一般からの意見も聴取)
米国科学アカデミーに対してITERの科学技術的意義等を照会

②本年10月を目途に大統領科学技術諮問委員会にて核分裂・核融合をも含む次期エネルギー
 開発戦略に関する報告書を策定の予定

③98年予算案においては、前年度と同規模の核融合予算を計上($225M)。現在下院に
 おいて審議中。科学委員会としては、$15Mの増額を決議(総額$240Mが限度)

④98年度予算との関連もあり、明年2月までに、エネルギー省から議会に対して、建設段階
 におけるITER計画への米国の取り組み方に関する方針を報告
○現時点では、建設段階においても制限された貢献が現実的との意向(現在米国のI
 TER計画予算は年間約60億円)

 

①ITER計画は宇宙ステ-ション計画と並び連邦研究開発資源を集中してきた連邦計画

②ITERについては早急に建設に向けての具体的動きにすることが国内支持を維持していく
 ために重要

 

3.平成10年7月(現行EDA協定期間)以降の計画の進め方についての検討状況

   ○平成10年7月以降の協力の枠組みに関し以下の選択肢を検討


 Ⅰ EDAの延長
   ①終了期限のみ延長
   ②終了期限を延長の上、サイト対応調整設計検討等を規定する議定書を締結    


 Ⅱ EDAを終了し建設までの準備活動を行う暫定取り決めを締結

    ITER工学設計活動と建設活動をつなぐ暫定協定(新規)を締結の上、    
    建設準備(サイト対応設計等)活動を実施


 Ⅲ EDAを終了し、建設、運転等を見通した取り決めを締結
   ①30年程度を見通したITERの建設、運転等を規定した包括的国際協定を締結 
   ②ITER建設、運転等への取り組み全体を包含する傘協定を締結し、その後の具 
    体的活動については漸次議定書により具体的協力を実施


 Ⅳ ITER協力活動の終了                           

  ○ITER設計活動の進捗状況、現時点における各極の状況、協議期間の制約等から検討を
   行い、選択肢Ⅰ(延長)については98年7月までに実現されうる選択肢として調整中
   (なお、選択肢Ⅲは、現時点における不確実さにより、実現が困難。選択肢Ⅱは、広範な
    交渉が必要。)

 

4.98年7月以降の主な協力活動の案

 ○サイト対応設計(site(s)-specific design adaptations)及びコスト解析
 ○安全解析を含む安全規制上手続きの準備
 ○製作及び運転上の裕度に関するデータの取得等を目指した試験
 ○各極の技術的評価等を踏まえた研究開発
 ○産業能力を考慮した設計仕様

 

5.その他の事項の検討状況

  ①ITER事業主体の設立方法
  ②他国及び国際機関の参加
  ③今後の検討事項の例  ・98年7月以降の協力活動に関する法的基礎 及び必要な資源
              ・ITER協力活動体制
              ・建設等に向けての検討事項(費用の分担等)

 

6.今後のスケジュール

 ○7月末、11月に再度準備協議を実施。
 ○来年2月の協定レベルでの協議開始に向け、極内検討を集約

 

 


ITER計画懇談会における検討状況

 

1 開催状況(これまで4回開催)

    第1回 2月10日   ○核融合計画の概要
                ○ITER計画の概要
                ○今後の検討の視点について

    第2回 4月9日    ○核融合開発の意義
                ○ITERの技術的見通し
                ○ITER計画に関する主な論点

    第3回 5月9日    ○ITER建設等準備協議の状況等
                ○将来のエネルギー供給見通し
                ○ITER計画と産業界の取り組み

    第4回 5月26日   ○将来のエネルギー資源
                ○ITERの技術目標についての考え方
                ○ITERへのステップ論

2 技術的側面についてこれまでに指摘があった例

    ○経験式による外挿性に基づきITERの実現性を議論するに当たっては、その際に
     如何なる障害を想定することが適当か。また、その障害を克服するに当たっては、
     如何なる対応策(基礎研究、工学的研究)が想定されるのか。克服できない場合の
     代替案はあるのか。

    ○各要素をシステムとして組み立てた際の技術的課題はないか。

    ○ITERは、JT-60といった現在の技術段階からの幅が大きすぎないか。

    ○現在進められている研究の成果を設計に反映することも必要ではないか。

    ○実験炉としての性格から、よりチャレンジングな技術内容とするべきではないか

    ○トカマク以外の方式との関係、大学における研究との関係をどう考えるのか。

    ○核融合研究の次の装置としては、ITERが唯一の計画であるのか。

    ○実用化までの核融合開発全体のシナリオとの関連でITER開発のスケジュールを
     考えるべきではないか。

    ○安全性に関しては、どのような緊急事態あるいは故障が予想され、それに対してど
     の様な対応がなされるのか明確にするべきではないか。

3 このほか、エネルギー源からの検討、国際的観点からの検討、科学技術資源配分の観点等から
 の議論が進められている。(全体の概要は別添)

別添資料