資料第123−4号

 

ITER詳細設計報告書の評価について
(座長提案)

 

平成9年6月 日
核融合会議

 

 

 1、ITERは、「定常状態を究極の目標とする重水素−三重水素プラズマの制御された点火
 及び長時間燃焼を実証し、統合されたシステムにおいて核融合炉に不可欠の技術を実証(ED
 A協定)」するための実験炉として、国際的共同設計作業が進められてきており、平成8年12
 月に、同活動の三番目のマイルストーンとしてITER/EDA所長から詳細設計報告が各締
 約極に対して提出された。

 2、当会議としては、平成8年8月「国際熱核融合実験炉(ITER)と第三段階核融合研究開
 発基本計画上の「実験炉」について」をまとめ、ITER計画の工学設計活動及び試験研究の進
 捗状況についてもこれまで適宜把握してきたところである。詳細設計報告は、現段階までのIT
 ER計画の活動の集大成であり、また、今後のITER計画の成否に関する見通しを与える重要
 な基礎資料であることから、当会議ITER/EDA技術部会において、外部専門家の参加をも
 得、かつ、できる限りの資料の公開等を通して幅広い観点から技術的評価を進めてきたところ、
 この程、別添の通り報告があった。

 3、検討の結果、同報告の内容は妥当なものと判断され、詳細設計報告は、中間設計(平成7年
 12月確定)段階に比し、各極からの評価内容が考慮され、全体としての設計の整合性が十分改
 善されているものと考える。また、これまでの各種データベースの充実により自己点火と長時間
 燃焼というITERの技術目標が達成できる見通しが得られつつあること、今回の評価内容が適
 切に反映され工学設計活動が順調に進展する上で大きな障害になる事項が想定されず、次段階の
 工学設計活動の成果が提出されるまでには十分なデータが得られる見込みであることなどから、
 当会議としては、ITERの技術目標が達成されることに十分な確信を有する。

 4、個別の事項に関しては、必ずしも具体的あるいは定量的な記述が充分でない箇所もあり、設
 計上の選択肢が残されている箇所もある。これらについては、工学設計活動の目的である「一つ
 の詳細かつ完全な、統合された工学設計(EDA協定)」を目指し、早急な対応が必要である。
 また、個々の系を全体として統合していくシステム面からの検討についても、今後、一層の進展
 が望まれる。

 5、安全性に関しては、安全性及び環境適合性の包括的な解析について進展が認められ、最終設
 計に向けた現時点での設計活動内容としては妥当なものと認められる。ITERの設計は、最終
 的には立地国の安全規制の考え方に適応することが必要であるが、現時点においては、既存の原
 子力施設に適用されている国際的基準等を満足するよう設計がなされており、十分な安全確保が
 図られるものと考えられる。但し、高性能運転段階(後半の運転期間)を含めた計画全体を通し
 た安全評価については、次段階の活動の成果を待つ必要がある。

 6、コストに関して、全体としての記述は、次段階の活動の成果を待つ必要があるが、中間設計
 段階と同レベルにある旨の記述は評価できるものである。他方、現時点におけるITER計画の
 課題の一つはコストの大きさであり、今後一層コストを意識した設計が進められコスト低減が図
 られることが必要である。

 7、なお、安全解析、コスト解析等にも配慮した、建設(製作)及び運転段階における設計裕度
 の適切化等に関しては、建設に向けての取り組みの進展に従い、より詳細かつ具体的な記述が望
 まれる。

 8、以上により、詳細設計報告は、具体的な立地地点の条件を考慮して設計の修正が行われるこ
 とにより、ITERがいずれの締約国においても安全に立地され得ることを示しており、工学設
 計活動の次の段階に進む適切なレベルに到達していると考える。なお、当会議としては、ITE
 R計画の健全な進展を確保するために、来年2月に予定される工学設計の次段階の成果について
 も、改めて評価を行うことが重要であると考える。