(1)第15回議事要旨(案)について
5ページの上から4つ目の○の「核融合研究は、より優れた核燃焼の研究」を「核融合研究は、核燃焼の研究」と修正の上、了承された。
(2)ITER計画懇談会報告書(案)について
資料第16-2号「ITER計画懇談会報告書(案)」及び参考資料1「ITER計画懇談会報告書(案)へのコメント」について、事務局より説明があり、以下の通りの質疑応答及び意見があった。なお、以下の議論を踏まえ、報告書案を原子力委員会に報告した後、1ヶ月間パブリックコメントを募集し、それを反映させたものを次回審議することになった。
- 2ページの下から8行目に「設置国になることの意義が大きいことを理解した」とあるが、これまでの議論では、ITERの誘致に意義があるということなので、もっと、明確にITERを誘致することは意義があると結論づけるべきではないか、との意見があった。
- 「意義が大きいことを理解した」では、長い期間議論を重ねてきた関係者の努力に対して、やや自虐的な印象を受ける。これまでの議論は総体的に、もう少し誘致に対して積極的ではなかったか、との意見があった。
- これらに対し事務局より、前回のITER計画懇談会報告書骨子(案)の6.結言に中間とりまとめにおいて、当懇談会は、我が国がITER計画における実験炉の設置国になることの意義が非常に大きいことを理解した。と記載したが、これを基に記述していて、御議論頂きたいと考えている、との説明があった。
- 報告書の結論は、当懇談会の主張をはっきりした表現でわかりやすく書いてほしい、との意見があった。
- 2ページの下から7行目に「①科学者による科学技術的な助言、②有識者による幅広い観点からの提言、③科学技術におけるプライオリティの判断、④我が国の活動というより広い視野による判断」とあるが、そもそも、当懇談会の主旨や機能は何か、との質問があった。
- これに対し座長より、次のような意見があった。
当懇談会は何かを決める権限はなく、決定するためにはどういうことをクリアにするかを考え、判断はせずに提言しようということで議論してきた。提言をするための前提としての判断はあるが、③の「判断」はむしろ非常に強い政策決定としての意味での判断である。④の「判断」は、実際の行動を伴う最終的な判断であり、国民の代表である国会が予算をつけるという判断に関わるものである。このように、「判断」という言葉は様々な使い方をしている。
本来は科学者の声が一つにならなければ、このような報告書はできないということが大前提であったが、科学者をはじめ物理学者等様々な人を含めて理解して幅広い議論を重ねて、まとめたものである。
ここでの結論は社会に対して、こうするということを決定して述べるものではなく、他の科学技術もある中でプライオリティを決めてくれということである。我々は、ITやバイオに比べてITERの方が重要であるという議論は一切しなかった。プライオリティ議論は託すべきであり、意志決定は階層的な構造で議論していくことが必要と考える。
「理解した」でも「判断した」でも個人的には同じと思うが、「理解した」という表現は個人としての言葉であり、懇談会としての言葉としては適切ではないのではないか。いろいろな意見が集約されて一つの結論になったということにする必要があると考えている。
- 本報告書のターゲットは国内世論か国際世論か。日本は倫理面や国際緊張の面で、国際的に優れているとはいえず、ロシアや米国よりも中立であるが、フランスやカナダと比べると中立ではないので、報告書を英語に直すとすれば報告書の内容に問題があるのではないか。日本は資源のない可哀想な国であり、技術面でキャッチアップすべきとか、もう少し謙遜な態度をとれば、国際世論も納得するのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
日本の科学技術政策のプライオリティを決定するところに、国内の一つの結論をぶつけるということであり、報告書を英語に直すことも問題はないのではないか。国際的な世論の中で議論されるべき対象というよりは、国際的な政策決定の場面に対して材料を提供するものであり、その時何故日本が提供しているのかを理解させる必要がある。国際的な政策決定においては、日本が完全に経済的な目的だけで行うものではなく、憲法9条の理念もあることは意味のあるものと考えている。
- 本報告書は最終的に総合科学技術会議でどう扱われるのか。総合科学技術会議はバイオとか、ナノテクとか、個別のプロジェクトを予算化するところまでやるのか、との質問があった。
- これに対し事務局より、原子力委員会で議論をした後、総合科学技術会議において科学技術分野全体の中で議論される予定である、との説明があった。
- これに関連し座長より次のような意見があった。
総合科学技術会議では、細かい個別のプロジェクトを予算化することまではせず、各省庁の中での積み上げになると思う。予算を積み上げる能力は総合科学技術会議には無い。しかし、選択は行おうと考えている。従来の意志決定はボトムアップで、調整するというやり方であったが、今後は、戦略的な政策決定に変化すると思う。
エネルギー分野も科学技術基本計画に位置付けられており、総合科学技術会議はその中のプライオリティを議論する。
- これに対し藤家原子力委員長より、次のような意見があった。
以前から原子力委員会と科学技術会議はバランスのとれた関係であって、省庁再編後も原子力委員会の基本的な機能や与えられた役割は従来と変わっていないと考えている。今は原子力の世界でもボトムアップで全てを決める手法をとらないようにしており、昨年末にまとめた長期計画のフォローアップをどうするかについて議論をしているところである。
本報告書は140回を越える核融合会議で議論を重ねた結果であり、社会的に広い観点から意見を求めた当懇談会での決定について、原子力委員会は最大限尊重していきたいと考えている。これまで、同様な懇談会に原子力委員はほとんど出席し、改めて特別な議論をしなくても、議論してきた結果を最大限尊重し、委員会決定につなげてきている。原子力委員会としては、開かれた場で意志決定をしたいので、懇談会としては、どうするのかの結論が曖昧なままではなく、明確な提言をしてほしい。
- 原子力委員会が内閣総理大臣をはじめ関係大臣に意見を申し出る立場であるとの前提であれば、30ページの「本懇談会は、・・」のパラグラフの後半の「特に、本年1月に・・を期待する。」は、原子力委員会自身が考えることであり、懇談会の報告書としては書きすぎではないか、もし、言及するのであれば、原子力委員会の下に設置された当懇談会の位置付けを踏まえて「本懇談会の検討を尊重して頂く」といった表現が望ましいのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より、確かに書きすぎかもしれないので、そのようにしたい、との意見があった。
- 2ページの下から6行目の「②有識者による幅広い観点からの提言」が当懇談会の果たすべき役割だと思う。前回の骨子案でも「理解する」という表現であったが、提言になっていないので、わかりやすい表現に修文してほしい、との意見があった。
- 間接表現が多く、全体的に日本的な文章である印象を受けるが、直接表現にすべきではないか。例えば2ページの下から9行目に「当懇談会は、我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいことを理解した。」とある一方で、1ページの要旨(エネルギーと核融合)の最後の行に「ITER計画に主体的に参加していくことを期待する。」とあり、ここではITERの設置は含まれていないという認識でよいか。
また、日本はサイトが決まっていないハンディキャップもあるが、ITERを日本に設置することが国際的に見ていかに魅力があるかについて、記述すべきである。国際貢献等という表面だけの言葉ではなく、他国と競争して、もぎ取ってまでも日本に設置するという論理構成を構築する必要があるのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
「ITER計画に主体的に参加していくことを期待する。」には、ITERの設置は含まれていないと思う。まず、人類にとってITERの研究を行うこと自体がよいということであり、その後に日本に誘致するのはどうか、という2段構造になっているように思う。日本に誘致しなくても全面的に参加する理解である。
- 原子力委員会の結論的なことを書く必要はなく、第3者的に物事を判断した方がいいと思うので、直接表現よりも間接表現の方がいいのではないか、との意見があった。
- 座長より次のような意見があった。
当懇談会は、客観的で科学的判断をすべきである。欧米の関係者は、表向きにはITERは「もぎ取ってくる」ものではなく、人類にとって必要なもので、サイトはどこでも良いと紳士的なことを言うのを忘れてはいけない。
- 報告書は全体的にはよく理解できるが、もう少し時間軸を書くべきではないか。例えば、サイトを一つ決めるにも相当な時間がかかるので、政府間協議までに詰めるべき点を記述する必要があるのではないか、との意見があった。
- 事務局より、5ページの「その後、ITER計画については、・・」のパラグラフに今後の見通しについての記述があり、30ページの「ITERを我が国に誘致することは、・・」のパラグラフに、今後詰めるべき点が記述されている、との説明があった。
- 中を読まないと政府間協議までに詰めるべき点がわからないのでは困るので、せめて報告書の最後の結言に記述すべきではないか、との意見があった。
- 座長より、当懇談会としては、原子力委員会にインプットし、総合科学技術会議でプライオリティ付けを期待するものである、との意見があった。
- 原子力委員会と総合科学技術会議との関係について議論があると思うが、原子力委員会はこの結果を内閣総理大臣なり、閣議に回すこととなるであろう。ここで、総合科学技術会議の議長が総理であるので、そこで議論されるであろうと考えているため、原子力委員会が意志決定をするための判断ができるようなはっきりとしたものにしてほしい、との意見があった。
- 2ページの下から8行目の「設置国になることの意義が大きいことを理解をした」という表現では、これまでの議論とギャップがあるのではないか。従って、「設置国になることの意義が大きいことを理解をした」という表現ではなく、要旨と結言のところで、「設置国になることを懇談会として提言する」旨をはっきりと記載すべきではないか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
「理解した」という弱い表現、「設置を提言する」という強い表現、それらの中間に「意義があると結論した」という表現がある。「誘致国になることを提言する」となると問題があるのか。
- 「設置国になることの意義が大きいことを理解をした」と「設置国になることを提言する」では相当なギャップがあると思う。そもそも最初に原子力委員会から当懇談会に与えられた役割は何か、との質問があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
当懇談会の役割は原子力委員会が判断できるようにするために、必要な情報を提供することである。原子力委員会の諮問に基づくものであり、世の中に対して当懇談会が提言するわけではない。「理解した」では何もいっておらず、「誘致を提言する」では原子力委員会の決定を先取りしていることになってしまうので、「誘致に意義ありと結論した」とすれば、原子力委員会としてはやりやすいと考える。
- 中間報告において、「結論した」とされた時の議論はどうだったのか、との質問があった。
- これに対し事務局より次のような説明があった。
中間報告では、「懇談会は、我が国がITER計画における実験炉の設置国になることに、意義が非常に大きいことを理解した。それは、いずれ人類を襲うであろうエネルギー問題を前提とし、現在生きている世代は、これから生まれてくる世代の歩む道に対する制限を最小化する義務を負っているという理念の下で、技術社会等の考察を通して、我が国が設置国になることの意義の大きいことを結論した。」となっている。
- 中間報告では「理解した」となっており、その後、核融合会議の議論においても総体的には誘致することに意義があるといっているので、最終報告書がかなりのプロセスを経て出てきているにも関わらず、「理解した」という表現のままでは、何も進歩がないのではないか。一方で、「誘致すべきである」ということまでは核融合会議でもいろいろな意見があり、「意義が大きいと結論した」という表現が良いのではないか、との意見があった。
- 中間報告は提言にはなっていないのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
中間報告の段階では、意義があることはわかったが、結論を出すには不明な点が多かったため、「意義が大きいことを理解した」という表現に落ち着いた。最終報告書をまとめる段階で、物理学者の声が一つではなかったという問題もあり、関係者の努力によりここまで来たので、最終報告書では「理解した」から一歩進んで、「結論した」ということでいいと考える。
- 技術的、社会的、国家的な倫理性の観点からも、ITERの意義が書かれている。従って、懇談会の意志をはっきりさせる意味でも、提言という強い表現でもいいのではないか。提言は決定ではなく、その提言を受けて、原子力委員会は高い立場から判断し、総合科学技術会議も同様であると理解して良いか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
それでよいと思う。まとめると、「理解した」では弱く、「提言」とするのは強すぎるので、「意義があることを結論した」というのがよいと考える。
- これに対し事務局より、2ページの下から8行目の「・・、設置国になることの意義が大きいことを理解した。」を「・・、設置国になることの意義が大きいと結論した。」と修正したい、との説明があった。
- 要旨と結言は「結論した」という表現にしてほしい。29ページの6.結言の2行目の「理解した」も同様に修正してほしい、との意見があった。
- これに対し事務局より、30ページの「本懇談会は、・・」のパラグラフの2行目の「理解した」も同様に「結論した」と修正したい、との意見があった。
- 座長より、我々の理解として、原子力委員会、総合科学技術会議、内閣総理大臣、国会という四つの意志決定の階層があるということは認識しておく必要があるが、「総合科学技術会議」の件は記述する必要はないと考える、との意見があった。
- 文部科学省としては、総合科学技術会議に諮り決めていく問題であると考えている。この報告書の中でどう扱うかというのは、別の問題である、との意見があった。
- これに対し事務局より、33ページの下から5行目の「総合科学技術会議や政策評価体系・・」を「政策評価体系・・」に修正し、「総合科学技術会議」を削除したい、との説明があった。
- 座長より、33ページの下から5行目の「政策評価体系」とは何か、との質問があった。
- これに対し事務局より、それぞれのプログラムに対して、それぞれの府省庁が行う法律で定められた評価のことである、との回答があった。
- 「誘致することは意義が大きいと結論した」とするとのことであるが、もし仮にITERが日本に誘致できた場合、日本の規制が世界標準になる可能性があるので、できればその点についても記述してほしい、との意見があった。
- 座長より、近年、標準問題はどの分野でもクローズアップされており、コストベネフィットの大きい問題である、との意見があった。
- そこまで記載すると、少し主観的にすぎるような気がする、との意見があった。
- 30ページの「ITERを我が国に誘致することは、・・」のパラグラフで、「相当な時間がかかる」とあるが、今年の夏までにいろいろと決めないといけない状況であり、原子力関係者が相当という時には2~3年かかるので、「完全な相互理解に至る必要がある」としてはどうか、との意見があった。
- 立地には国民や自治体や住民の理解が必要であるため、「相当な時間がかかる」を「大変な努力が必要である」と修文してはどうか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
原子力関係者が相当という時には、50年かかる。時間を問題とする必要はないと思うので、「大変な努力が必要である」ということで良いと考える。
- これに関連し事務局より、「このため、国内の立地候補地の選定に際しては、完全な相互理解が必要条件である」と修文してはどうか、との説明があった。
- 「設置する国の政府のみならず、誘致する自治体にとっても重要な意味を持つ」とあるが、相互理解と言った場合、よその国と自治体との相互理解と文章上は読めるがそれでよいか。今の議論は、自治体がOKすれば良いという話ではなく、いろいろな人の相互理解が必要であると言うことであったと思う。最近は政府が決めたことを国民が決めたことと言うことや、地方自治体が決めたことを地方の住民が決めたこととは言い切れないので、地元の理解を相互理解と修文すると国と自治体に限定されてしまうのではないか、との意見があった。
- 31ページの下の方に「国民の十分な理解を得られなければその推進は困難であり」という表現が、ここばかりではなく、他にも文脈としてでているので、理解されるのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より、地元の理解は、中央が地元を説得するということであり、設置は国が決め、実際に受け取る自治体(地元)のような現場で影響を受ける人々との相互理解であるため、国と自治体の相互理解で問題はないのではないか、との意見があった。
- ここは、自治体と地元を使い分けているのではないか。「国内の立地候補地の選定・・」の意味するところは、「候補地の選定には格段な努力が必要である」ということを意味しているのではないか、との意見があった。
- これに対し座長より、国と自治体が同意することに加えて、地元の理解が必要であるため、「このため、国内の立地候補地の選定に際しては地元の理解が特に重要であり、相当な時間がかかることが予想される。」を「また、国内の立地候補地の選定に際しては地元の理解が特に重要であり、このため、格段の努力が必要となる。」と修文したい、との意見があった。
- これに関連し事務局より、「また、国内の立地候補地の選定に際しては地元の理解が特に重要であり、このため、格段の努力が必要となる。」と修文したい、との説明があった。
- 核融合の開発は、プラズマ研究、高性能化、プラズマ材料炉の3本柱が大切である。従って、1ページの「核融合の実用化に向けて、・・」のパラグラフにこの点を記載していただきたい。例えば、「・・世界各国において、多様かつ多くの研究開発が進められている。今後取り組むべき重要課題は、核燃焼プラズマの研究、高性能プラズマの開発、材料等の工学の研究である。そして、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術を確立するために、・・」と修文してはどうか、との意見があった。
- これに対し座長より次のような意見があった。
「・・世界各国において多様かつ多くの研究開発が進められている。その結果、今後取り組むべき重要課題は、・・」を「・・世界各国において、プラズマ研究、高性能化、プラズマ材料炉等多様かつ多くの研究開発が進められている。その中で、今後取り組むべき重要課題として、・・」と修文してはどうか。
- そのような修文はしない方がいい。核融合において重要なのはプラズマを制御する技術とエネルギーを取り出す技術であり、その中に材料の問題は含まれる。核融合全体のことを考えると、材料は下位に来ると思うので、材料だけ取り出して例示するのは細かすぎるのではないか。ITERの技術目標の中にも、「プラズマの開発」と「技術の開発」の2つがあげられており、別の表現では「統合化技術」すなわち「エネルギーの取り出し」である、との意見があった。
- これに対し事務局より、「・・世界各国において、多様かつ多くの研究開発が進められている。その中で、今後取り組むべき重要課題として、核融合反応により燃焼するプラズマを制御する技術を確立することにあり、・・」と修文したい、との説明があった。
- 9ページの「このような課題の解決に取り組む上で、・・」というパラグラフの4行目で「短期的な優先順位の議論では、情報技術や生命科学・技術に対抗することはできない」という表現があるが、「対抗することはできない」では納得できないため、「同一視することができない」というような修文をしてほしい、との意見があった。
- これに対し座長より、「対抗することはできないが」とあると、プライオリティを最初から諦めているように受け取られる恐れがあるため、「に比べ軽視されがちであるが」に修文したい、との意見があった。
(5)その他
次回会合について、5月中に開催することとし、具体的な日時については、改めて案内することになった。