(1)第14回議事要旨(案)について
第14回議事要旨(案)が原案通り了承された。
(2)これまでの議論の経過について
資料第15-2号「ITER計画検討会まとめ」について文部科学省今村研究開発局長より説明があり、特段のコメントはなかった。
(3)ITER理事会の結果報告について
資料第15-3号「ITER理事会の結果について」について文部科学省素川大臣官房審議官より説明があり、以下の通りの質疑応答及び意見があった。
- カナダの積極的な対応に比し、我が国の誘致に向けての対応は見えてこない。ITER理事会において日本としてどのような発言や主張をし、どのくらい効果があったのか。また、日本でITER理事会が開催されたことはあるのか、との質問があった。
これに対し文部科学省より、ITER理事会では、日本側からは、ITER計画懇談会でITER誘致について議論しており、その結果を踏まえ政府のスタンスを決定することを説明した。今回の理事会は、次回が最後の理事会ということもあり、各極からの活動報告が中心であった。カナダでは、非営利会社「ITERカナダ」が誘致活動をし、カナダ政府は静観していたきらいがあったが、今回初めてカナダ政府からの出席があった。EUは仏への誘致に向けて加盟国内で調整を行っている状況である。
また、ITER理事会は、EU、日本、ロシアの3極で持ち回りで開催されており、前回の我が国での開催は、2000年冬(注:正しくは、2000年1月)であった、との回答があった。
- カナダは、今回のITER理事会開催の機会を、ITERのカナダ誘致に積極的に活用している。日本は国内で開催されたITER理事会をなぜ利用できなかったのかとの質問があった。
これに対し文部科学省より、今回行われたサイトツアー等はカナダ政府によるものではなく、ITER誘致を推進している「ITERカナダ」の活動ととらえるべきである。日本は、サイト候補地が1ヶ所に決まっていない状況であり、サイト候補地の方々が、それぞれに、様々な機会を捉えて理解を求める活動を行っている状況である。例えば、茨城の場合には海外の研究者が住んでいるし、北海道や青森の場合にはカナダの人に視察をしていただいている。今後とも、できる限り多くの方にサイト候補地を見ていただけるようにしたいとの回答があった。
- 国際化、グローバルスタンダードが重要な時代であるのに、資料にある外国人の氏名がカタカナ表記となっている。英語又は日本語と英語の併記を行うべきではないか。カタカナ表記ではデータベースとして活用できず無意味であるとの意見があった。
これに対し文部科学省より、氏名については、ロシア語やフランス語もあるため、一般の方々にわかりやすいよう日本語表記にした。グローバルスタンダードに近づくよう対処したいとの回答があった。
- カナダはEUの候補地として参加するのか。その場合、カナダは資金面において応分な負担を行う覚悟ができているのか。カナダが立候補する時、EUはどう対応するのかとの質問があった。
これに対し文部科学省より、カナダは核融合研究についてEUと協力協定を結んでおり、現在はEUの一員の立場でITER工学設計活動に参加している。カナダが誘致する場合のカナダの負担は、非公式な情報では、誘致国として50%負担するのではなく、25%程度を検討していると聞いている。いずれにしても、詳細は正式なサイト提案が出された後に明らかになる。
また、EUは、1月に開催された15ヶ国の研究大臣会合において、ITERをEU域内もしくは域外に建設することで合意を得たと聞いている。誘致を検討しているフランスについては、担当大臣がITER誘致を表明しているが、政府としてITER誘致を決めてはいないと聞いている、との回答があった。
続いて、資料第15-4号「ITER最終設計報告書案の概要」及び参考資料4「DRAFT Summary ITER Final Design Report(July2001)」について、文部科学省中村核融合開発室長より説明があり、以下の通り質疑応答及び意見があった。
- ITERの最終設計報告書案をまとめた主体はどこかとの質問があり、ITERの設計活動は、国際的な共同中央チーム(JCT)により、フランス人のエマール所長の下、世界の2カ所のサイトで行われている。本報告書は、JCTの成果である、との回答があった。
- 最終設計報告書案に対し、現時点で、どのようなコメントが出されているのかとの質問があった。
これに対し、現在、日本では核融合会議ITER/EDA技術部会で審議されており、最終的な評価はまとまっていない段階である。現時点で報告できるものは二つである。一つは、ITER理事会に報告することを目的として、ITER技術諮問委員会(TAC)と呼ばれる国際的な技術評価委員会が評価を行っており、基本的には問題ないとの結論が得られている。なお、TAC議長は、本懇談会の委員でもある藤原核融合科学研究所所長である。もう一つは、ITER/EDA技術部会であり、先日の会合では、真空容器の設計見直しや物理データの充実に関するコメントがあったが、ITERの技術目標が達成できる設計であるとのコンセンサスはできているようである、との回答があった。
- どこまでホスト国がコストを担わなければならないのか。プロジェクトの評価はどのようになされるのか。また、日本はJCTに何名参加しているのか、との質問があった。
これに対し、コストに関しては、非公式政府間協議においては、社会的なサポートや土地代などはホスト国が負担する、ITER事業体の運営費については建設費と同様に各極で分担する方向で議論されている。
評価に関しては、ITERの実施主体の中に技術面と運営面について外部評価グループを作るべきという議論があった。さらに、実施主体が評価グループを設置するだけでなく、最高の意志決定機関である理事会で毎年チェックすべきという議論もあった。今後、公式政府間協議においてプロジェクトの進め方を議論していくことが考えられる。
JCTについては、総数約120名であり、うち茨城県那珂町に約60名、ドイツのガルヒンクに約60名となっている。構成はロシア、日本、EUの3極がほぼ均等に人を出している、との回答があった。
- JCTには私大関係者や女性研究者は何人参加しているのかとの質問があり、女性の数はロシアから2人、カナダから1人、日本からはゼロである。大学からの参加者は国立も含めゼロである。なお、短期の参加者には大学関係者が多数いるとの回答があった。
(4)ITER計画懇談会報告書骨子(案)について
事務局より資料第15-5号「ITER計画懇談会報告書骨子(案)」について説明があり、各委員から以下のような意見があった。
- 核融合研究の計画の拡がりについて、十分書かれていない。省庁再編による新しい体制において、基礎研究の充実や研究機関間の連携がうまく進められるよう提言してはどうか。安全性について、もう少し説明を加えるべきではないか。低レベル放射性廃棄物について、その処理処分が必要であると結ぶのではなく、低誘導放射化材料の実用化のための取り組みについて言及し、明るく安心感が得られるような内容とすべき、との意見があった。
- 6ページの一番最後の「・」はサイトの問題なので、「結言」の中のサイトの記述の部分にまとめて記述すべき。研究資源の配分については、これまでに懸念が出されていることを踏まえ、新しい研究資源が必要とはっきり書くべきとの意見があった。
- 我が国がITER計画に参加することについては、コンセンサスがあると思うが、ITERの我が国への誘致については、なぜ日本に誘致したいのかその必要性が骨子案では明確でないので、改善すべき。また、原型炉の建設が2030年頃と記載されているが、はっきり記述してかまわないのか。外国人のための生活環境整備などは、例えば地方公共団体による努力も必要ではないか。女性登用の件はここに取り上げるのが適切か、との意見があった。
- 研究開発が開発途上にあった過去の時代においては、計画を立てスケジュールを遵守することが、効率的に研究開発を進めていく上で重要であった。今回の原子力開発利用長期計画の見直しに当たっては、現在の我が国の技術的ポテンシャルを踏まえ、計画の基本的なまとめかたとして、理念先行型、課題解決型に方向転換した。このため、数値目標の記述は極力避けている。核融合会議やITER計画懇談会において、実験炉としてトカマク型を選択することは明確にされているが、原型炉の具体的計画については他の方式の進展を待つこととしており、2030年という数字が一人歩きすることが心配である。
資源配分については、ITER計画懇談会において検討すべき内容としては重要でない。ITERはトータルなシステムを統合するという意味で重要であり、基礎基盤の重要性が増大している。この目標を達成するためには、予算とともに人材、組織の連携交流が重要性がある。省庁再編により、原子力研究開発を担ってきた文部省、科学技術庁が一体となって核融合に取り組むことができるようになったので、この機能を最大限活用していただきたい。
外国人が来るから環境整備するということをITERに限って強調する必要性はない。また、ITERを誘致する場合、外国人研究者に限らず日本人研究者への配慮も必要である、との意見があった。
- 日本がITER誘致に立候補したが、結果として日本以外に立地した場合の対応について議論されるべき、との意見があった。
- ITERの誘致を考える上で、国益にかなうという視点が重要である。我が国は財政的に苦しい状況にあるが、このような状況であっても、国際貢献や国際協調が国益にかなう、という説明が大切で、その方が国民の理解が得やすいのではないか。省庁再編もあり、大学との連携についてもう少し記載すべき。
誘致できれば国民に開かれたプロジェクトになるが、誘致しなければ専門家だけのプロジェクトにしかならないのではないか。
長期的な視点が重要であり、本プロジェクトの我が国誘致は、若い人の研究目標となり、人材育成にもつながるという意味において重要、との意見があった。
- 懇談会の提言としては要旨がわかりにくい。ITERは日本に誘致すべき、そのために努力すべき、誘致できなくても成果が得られるよう対応すべき、ということが端的にわかるような構成で書くべき、との意見があった。
- 核融合研究は、より優れた核燃焼の研究、よりすぐれた方式の開発研究、新しい材料の研究がベースとなっていることから、ITERが日本にあっても外国にあっても、研究ができる。核融合のグローバルプランの記述が、科学技術的潜在力のところに記載されているので、わかりにくくなっている。また、人材の養成という観点からも学術研究は大事、との意見があった。
- ITERの日本誘致に関わるメリット・デメリットは、懇談会に報告された各報告書に記載されており、これを本報告書にも取り入れて誘致の必要性を明確にしてはどうか、との意見があった。
(5)その他
次回会合について、3月中に開催することとし、報告書(案)について審議することとなった。
- 最後に座長より以下の意見があった。
大変有益な意見をいただいたので、ぜひ取り込んでいきたい。以下は私のコメントである。
① | 科学者の発想として、「科学は、全て人類のため」ということから語り出すのが鉄則である。したがって、将来の人類のエネルギー問題に対する回答であるとの認識のもとで、ITERをどこに建設しても良いという大きな立場がある。他方、日本がやるのだという立場がある。この二つの構造で議論を進めるのが大事である。しかし、まだ判然としないところもある。即ち、エネルギーのためにやるのか物理学の発展のためにやるのかという点で、実際には両者は重なり合っている。同じ事を二つの言葉で語らざるを得なくなったのが現在の科学の状況である。科学の恩恵を受けない最貧国の現状をみると、科学の成果を楽観的に語るだけでは不充分である。最貧国の人々の生活水準を引き上げるために何ができるか、その観点から地球環境に害を与えないエネルギーが浮上し、そういう形で核融合を理解することと、一方で長い科学の歴史の中で必然的に研究がこのような方向に進んでいく物理学である、というこの二つの側面が今重なり合っている。あるいは、日本においては政策的に両者が重なって実施できることが、ITERを日本で建設する理由の根幹にある。このような認識が、何とか読み取れるように書かれているものと思っている。 |
② | 第二点は、資源配分について本懇談会はどこまで検討するかという点である。米国は、最近バイオテクノロジー重視の予算配分をしている。この政策は、ビジネスにとって有利であるからである。米国は、基礎研究をそのように位置付け、経済振興のためバイオと言っている。一方、アジアを抱える日本は、状況が米国とは異なると思う。核融合は両国の違いを強調する例である。本懇談会では、実は資源配分は議論していない。資源配分を最終的に決めるのは、国民であって国会である。本懇談会では、ITERについて判断するためにどういう要因があるか理解し、判断条件を示すべきである。その際、他分野への言及や考慮は不要である。我が国においても、大型プロジェクトの意思決定プロセスが見えてきた。まず科学技術の専門家の「やりたい」という意思があり、これは必要条件である。次に、それを進めるためにどのような問題をクリアすべきか分析し判断する懇談会の仕事がある。その後、プライオリティを他と比較しながら決めなければならないが、今まで我が国にはその組織が全くなかった。新設された総合科学技術会議が今後その機能を果たす。そこでの議論が必要である。しかし、総合科学技術会議は科学技術の中だけのプライオリティ付けであり、さらに大きな立場で科学技術予算を議論して国家予算が決められる。大型プロジェクトでは、その意思決定プロセスに、このような四つの階層があることが明確になってきた。ITERのような大型プロジェクトを立ち上げようとすると、我が国の意思決定プロセスが浮き彫りになると本懇談会の開始当初に申し上げたが、事実その通りとなり大きく進歩した。逆に言えば、本懇談会のミッションが明快になったと言える。したがって、報告書ではミッションを明快にするように書くべきである。ご指摘のように結論が見えにくい面があるので、一つの提案は最初にまず結論をはっきり書き、その後に判断条件などを書くべきである。
先月開催されたITER計画検討会は画期的なことであり、ぜひ報告書に反映させるべきである。 |
以上