平成13年3月29日
ITER計画懇談会 吉 川 弘 之 殿
 飯 吉 厚 夫



今回のITER計画懇談会に出席できませんので、報告書案についてのコメントを書面により提出します。席上でご検討ください。

  1. 今回のITER計画懇談会の結論としては、「我が国がITERを設置国として主体的に推進することの意義が大きいことを理解するが、設置国に名乗りを挙げるか否かについては更に検討を行った上で、政府において総合的な判断をすることを望む」となっていて、ITERの誘致については、本懇談会は是非の結論を出していない、と理解する。

  2. なお、当懇談会の役割と位置づけが最終段階になって座長から提出され、本来ITER誘致の判断をするための基本となる科学的意義、科学者間における理解、実施体制などの重要課題が不十分なまま本懇談会の検討の枠外とされ問題提起に終っていることは、これまで無用な議論を多く繰り返していたことになり理解しがたい。

  3. 報告書案の表現については、少なくとも以下の2点について、修正を望みたい。

[3.核融合エネルギーの技術的見通し]

(P12)"材料開発を目指して中性子照射試験が行われる"については、材料の照射実験にはITERの中性子フルーエンスが小さいため、システム試験に終わる見通しであり、ITER計画の一環として低放射化材料の開発計画を明確に打ち出すべきである。

(P14)"ITERにおいては、・・・・・科学的知見や技術の大部分が発電炉に近い規模で実現されることになる"については、"ITERによって得られる科学的知見や技術の大部分は発電炉に応用が可能である。"が正しい表記である。

(理由:中性子のフルーエンスが低く、低放射化材料が主構造材として使われていないため、中性子による重照射を必要とする低放射化材料の開発は不可能であり、この重要な技術開発項目がITER計画から抜け落ちている。しかも、循環エネルギーの大きい定常化に大きな努力を要するトカマク型であるITERが次の実証炉に直接繋がるか否かは科学者の間でも意見が分かれており、我が国の第3段階の核融合開発計画においても、実証炉の建設の前にチェックポイントを置くことになっている。)