資料第13-2号

第12回ITER計画懇談会議事要旨(案)

 

1.日  時: 平成12年9月8日(金) 13:00~15:10

2.場  所: 三田共用会議所3階ABC会議室

3.出席者:

(原子力委員)遠藤委員、
(委   員)吉川(弘)座長、飯吉委員、井上委員、猪口委員、今村委員、井村委員大河原委員、大田委員、西室委員、木田委員、伊達委員、苫米地委員藤原委員、増本委員、村上委員、吉川(允)委員
(説 明 者)村上 国際基督教大学教授

4.議  題
(1)研究の資源配分と国際協力の責任分担に関する検討報告書について
(2)ITERを巡る最近の状況及び非公式政府間協議の状況について
(3)その他

5.配付資料
資料第12-1号 第11回ITER計画懇談会議事要旨(案)
資料第12-2号 研究の資源配分と国際協力の責任分担に関する検討報告書
資料第12-3号 ITERを巡る最近の状況及び非公式政府間協議の状況について
参考資料1 懇談会における論点の整理と今後の課題について(平成10年3月 原子力委員会ITER計画懇談会)

6.概  要:
(1)第11回議事要旨(案)について、P4の下4行~6行の記述に関して、発言とニュアンスが異なるとの指摘があり、修正することとした。

(2)「研究の資源配分と国際協力の責任分担に関する検討報告書」について報告書を纏めた検討委員会座長の村上先生から報告があり、質疑・応答及び意見があった。

 ITER計画におけるホスト国の利益/不利益の表(報告書p26)において、不利益として「施設閉鎖後の技能/専門知識の余剰」とあるが、得られた知見は次の計画に繋ぐわけで通常はメリットに挙げられることである。何故デメリットとされたのかとの質問があった。
 これに対し、利益/不利益には表と裏があり、ITER計画の一つの可能性としてリストアップしたものと理解頂きたい。例えば、本四架橋において投入された専門集団は余剰であると言う工学者がおられる。メンテナンスを考えると、個人的には引き続き必要ではと思うが、そういう意見があることも事実との説明があった。 また、得られた技術が波及し、新しい展開が生まれることから、技術の適応性は広い、とするとメリットになろうし、現実論として社会構造としては扱いにくい等の理由で産業界にとってはデメリットとなるかもしれないとの意見があった。

 報告書において、科学研究を「ボトムアップ」と「トップダウン」の2つのタイプに分けているが、ITERを考えると、核融合には信念と熱意を持った多くの研究者がいて、ボトムアップ型とも言えるのではないかとの質問があった。
 これに対し、委員会ではいろいろ議論があったが、ITERの建設は人類のためのエネルギーということを最終目標にしており、どちらかといえば、国家プロジェクトであるというのが共通認識だった。一方、ボトムアップ要素が全くないというわけではなく、日本のみならず国際的なサイエンスコミュニティにとっても望ましい研究であろうと理解している。全体としては、国家プロジェクトであり、トップダウン型であるが、幸福な一致としてボトムアップがあると理解しているとの説明があった。 また、幸福な一致をどうやってもたらすかが政策として重要である。ブッシュ主義が成功したということは、幸福な一致が潜在的にあったという理解であるとの意見があった。

 ITERは長期的かつリスクもある計画だが、このような計画を誰がどのように評価するのか、また、撤退のメカニズムとして、中間評価をどうするのか、2点に関する委員会の見解について質問があった。
 これに対し、委員会ではそこまで議論していないので、個人的見解だが、第1点目の長期的なリスクも含めた評価をどうするかについては、①peer、②政策決定者、③lay experts(qualified expertsでないという意。他分野の問題に関してはqualified expertsでありうる。農水省の試みがある。)、によるコンセンサス会議のようなものが考えられる。100%安全、100%成功確実だからやるということではなく、このような機関がある時間をかけて議論をして、結論を出すというメカニズムを作るべきである。特定のテーマについてだけ議論するのではなく、科学技術政策全般に関する基本的な議論をする場において議論し、そこで基礎を固めて、共通財産として積み重ねていく。その上で、特定のテーマについて、この場合のこういうケースであって特殊な条件としてこれが加味されており、ならばどうすればよいかを議論する。このようなことが恒久的にできる機関が必要。米国には政策評価局という事例があり、そのままモデルになるとは思わないが、そういうものがありうる。第2点目の撤退のメカニズムであるが、産業界では、最近中間報告で撤退する例が出てきており、日本の風土としては、新しい動きであると思う。米国では、SSCの実例が示すように相当程度進んだものでも撤退している。これは良き前例か悪しき前例か意見が分かれるところだが、撤退は出来ない、と退路を断たれて前に進むしかないという認識ではなくなりつつある。撤退できるという認識があった方が、場合によっては研究開発にお金を投じる思い切りも出てくるかもしれない。退路を用意しつつやっていけるしくみを作り上げる必要があるとの説明があった。

 国際協力の場合、撤退については複雑になると考える。ITERについては、ピュアーな原型科学ではなく、国家プロジェクトであり、トップダウンに近いと考える。集中したやり方をしなければいけない。このようなプロジェクトであるITERに対して、先程の評価の考え方は合致するのかとの質問があった。
 これに対し、国際協力の場合、確かに撤退は難しいであろう。難しいけれども撤退の構造そのものは本質的に変わらず、考慮すべき要素が増えるだけというのが個人的意見である。ITERが研究のどのカテゴリーかについては、委員会として踏み込んでいいのかという議論もあったが、カテゴリーとしては、8ページの①と②と③の要素を含むコンパウンドなプロジェクトと位置づければよいと思う。ボトムアップとの幸福な一致はあるとしても、ITERは、資源配分として、科研費と競合するようなものではないというところを報告書から読み取って頂きたいとの説明があった。

 大学の研究者としてITERを考えると、単純にいえばスモールサイエンスとメガサイエンスという対比で考える。エネルギーでいえば、メガは原子力、核融合、スモールは太陽や風力であり、研究費をどう配分するか研究者間の論争が起きる。エネルギー問題として、エネルギーの割合がどうあるべきか、それから研究費をどう配分するかといった整合性が必要であるとの意見があった。
 これに対し、エネルギー開発について、どう資源を分けるかという問題は委員会に提示されたが、本質的な回答が出るまでに至らなかった。エネルギーをどう分類していけばいいかについては、茅先生の方でやって頂けるという前提だったとの説明があった。

 ITER計画についての利益/不利益の表(p26)で、世界的COEとなることが利益となっているが、ホスト国として提供するテクノロジーが良くなかった場合は、逆に不利益になる。国民の受容性のみならず、このような条件もある。ITERが成功すればよいが、失敗したらそのリスクはどう考えればよいか。言い換えれば、ホスト国になるリスクをミニマムにするにはどうすればよいかとの質問があった。
 これに対し、p26の表においては、どのような利益がありうるかという可能性を列挙しており、常に達成されるという意味ではない。この表の原型となったOECDの表(p22)も同じである。利益が解釈によっては、不利益にもなる。ITER計画に関する表ではあるが、すべて実現するとして書かれているのではないことを理解して頂きたい。この利益を実現するためには、という条件を分析しておくことが、誤解を避けるためには必要があったかもしれないがそれはやってない。今でも、海外の研究者が比較的ハッピーに原研と共同研究をやっている。ITERを日本に設置し、またそれがうまくいけば、世界のCOEになりうる。うまくいかなければ、逆に大きな不利益になる。御指摘のとおりであり、表裏一体になっているとの説明があった。

 p26の表で、国民の理解、国民の受容性の変動という言葉があるが、国民の理解があるかどうかをまず前提にして、利益/不利益を議論しなければいけないのではとの意見があった。

 ITERは国家プロジェクトであり、トップダウンである。幸福な一致をどのように作っていくかというのが問題になる。ボトムアップということで、専門の研究者だけが支持するだけでなくて、産業界、生活者の幅広い支持を得て、プロジェクトを進める必要がある。国民の受容性の変動がないように、予め、幸福の一致を幅広く求める努力が必要との意見があった。

 これらに対し、今まで言われたことについて、p15に、委員会として提言を書いてある。委員会も、先ほど言われた意見と同じ意見であったとの説明があった。

 巨大科学に取り組む際の議論には、南極観測、高エネルギー加速器もそうだが、それをやろうという人とそれ以外の研究者とのせめぎ合いがある。また、人材が余るという議論はよくない。戦争に負けて、船、飛行機、みんな人材が余った。しかしこれが戦後の発展につながった。報告書の中でここだけは反対したいとの意見があった。
 これに対し、個人的には全く同意する。しかし、資源の配分、人材の配分というパイの奪い合いをしているときに、あそこには余っている人材がいるとの議論はどうしても出てくる。それを説得することも必要との考えから、あえて記述した。判断はITER計画懇談会に任せたい。すばる、南極も国家プロジェクトであり、サイエンスコミュニティの熱意と国家側の意思決定がうまく一致して進められてきた。南極もすばるも、またCERNもある意味で国際協力である。しかし、こういう国際協力と、ブッシュ的な科学研究における国際協力(ITER等)はやや違うのではないかというのが、報告書の論点でもある。

(3) 事務局より、「懇談会における論点の整理と今後の課題について」(平成10年3月原子力委員会ITER計画懇談会)の要点について説明があった。特段の質疑、応答はなかった。

(4) 事務局より、「ITERを巡る最近の状況及び非公式政府間協議の状況について」説明があり、質疑、応答及び意見があった。

 サイト提案を検討している国はカナダ、フランスである。カナダについては、政府が資金負担をあまりしないものの、電気料や土地が安いので運転段階の費用が非常に安くなり、トータルコストが安くなるというのがカナダの説明である。従って、カナダの資金負担が少ないことだけに論点を絞ると全体を見失う。また、先日カナダの連邦議員とお会いした時には、近くカナダ政府からはっきりしたコメントがあると言っており、カナダ政府が提案してくることは必至と考えた方が良い。フランスは国内で誘致を決めたら、EU委員会としての誘致となるようステップを踏む。第一段階ではフランスが国内でどのような判断をするのか、第二段階で、EU首脳会議においてフランスのシラク大統領が議長としてどのようなポジションをとるのかが注目すべき事項である。フランスのシュワルツェンベルグ研究大臣はホスト提案に強い意向を固めている様子である。ロシアは誘致の意向はないが、ロシアとフランスはかなり緊密的な関係にあり、両国の関係の近さは注意すべき点であるとの意見があった。
 また、日本はITERをどのようにするか決めなくてはいけない。オプションとして1つ目はITERをやめる、2つ目はITERには参加するが誘致はしない、3つ目は誘致するである。1はないと思うが、2、3について日本としてどちらの方向に行くのか、是非その方向性について本懇談会で早急に検討頂きたい。次回では骨子を出して頂いて、パブリックコメントを踏まえて来年の早い時期には懇談会としての方向性を与えて頂きたい。日本が誘致を決めても簡単にいかない状況にあり、本気になってオール日本で取り組んでいく必要があるとの意見があった。

 座長より、私もEUの方々と最近お会いしたが、昨年とはずいぶん違う状況が急速に起こっている印象であり、判断を先延ばしにする状況ではない。平成10年の中間とりまとめを踏まえて検討をし、この時点に至ったので、方向性を出す覚悟をした方が良い。ついては、骨子を作成して議論した方がよい。かなり具体的な問題についてクリアすべき点を整理すれば、国民の支援を得られるようなプロジェクトフォーメーションができるので、それを含めて議論する必要があるとの意見があった。
 タイムスケジュールとしては、今年末までに結論を出すことになるのかとの質問があった。
 これに対し、事務局より、今年中にパブリックコメントを求めるための報告書案を纏め、来年早々にパブリックコメントを求めるスケジュールを想定している。2週間から1カ月程度でパブリックコメントを頂き、その反映に関し再度懇談会で議論を行うことを想定しているとの回答があった。
 また、座長より、 本懇談会が本年中にあと2回議論するとすれば、12月位にパブリックコメントに出せる案を纏めるスケジュールになるとの発言があった。

 フランス、カナダはサイトをほぼ提示しているが、日本はサイトを曖昧にして名乗りを挙げるとすれば国際競争での迫力に欠ける。どの時点でサイトを決めるかが、この問題に重要な影響をもたらすとの意見があった。
 これに対し、事務局より、サイト提案を来年度開始される政府間交渉の前後に行うことになると、その前にサイトを一つに絞ることになる。その前に我が国として誘致するか否かを議論して頂きたい。その上でどこのサイトが良いか議論していくことになるとの回答があった。
 また、サイト選定は、まずは日本への誘致を決め、その後サイトを選定する方が現実的だと思うとの意見があった。

 サイト絞り込みに時間がかかることは、デメリットではないかとの意見があった。
 これに対し、事務局より、来年の早い段階で国内的な意思決定を行い、国際的にサイトを一つ提案するというのが非公式政府間協議等の整理であり、2001年7月にEDAが終了した後、2001年夏頃までにはサイト提案が可能なところは提案を行うこととしている。日本誘致の決断を行った後にサイトを絞る方が円滑に進むという議論もあるとの説明があった。

 カナダがサイトを提案した場合はどのような位置づけになるのか。カナダはEUの一部であるとするとカナダとフランスは両方を含めて一つが提案されると理解してよいかとの質問があった。
 これに対し、事務局より、EUの担当部長の現状認識は、カナダがITERを誘致することになればカナダは一つの極として参加するとのことである。ITERは国際的に開かれた計画であり、能力があり、有意な貢献が可能な多くの国に門戸を開くべきであるとの認識であるとの回答があった。

 パブリックコメントの段階で米国が何故ITERから撤退したかとの疑問が出るであろう。米国は将来ITERに戻ってくる可能性はあるのかとの質問があった。
 これに対し、事務局より、ITER工学設計活動が6年間を終了した後、直ちに建設に移行しないで設計活動を延長したので、スケジュール通りに計画が進まないと米国議会が懸念を持ち、撤退を決めた。米国は、ITERの建設地が決まるか、又は条約の交渉が進めば、改めて参加する可能性は十分ある。この点については、ITERからの撤退を決定した米国議会の委員会の委員長も発言しているし、DOE長官も文書で同様の考えを明らかにしている。各国の研究者も、EU及びロシア政府も同様に認識しているとの回答があった。

 カナダの参加についてコメントしたい。3極以外の国の参加については基本的にオープンという姿勢にあることは承知しているが、どのような形で参加を認めるかは決まっていないと理解している。また、負担問題については、主要機器部分を均等負担するという議論はなされているが、運営費の分担をどうするかといった議論が行なわれたとは聞いていない。ミスリードされるような説明になると議論が混乱するので、できるだけ整理願いたいとの意見があった。

 座長より、次回は、報告書の骨子案について、議論することとしたい。11月ごろの開催としたいとの発言があった。

以上